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2016年10月18日 (火)

ニッセイ基礎研による「中期経済見通し (2016-2026年度)」やいかに?

先週金曜日10月14日にニッセイ基礎研から「中期経済見通し (2016-2026年度)」が公表されています。もちろん、pdfのリポートもアップされています。2026年度までの実質GDP成長率は平均+0.9%と、過去10年平均の+0.3%よりも高まり、また、政府目標の名目GDP600兆円には2024年度に到達する、などと予想されています。まず、ニッセイ基礎研のサイトからリポートの要旨を4点引用すると以下の通りです。

要旨
  1. 世界経済は低成長が続いている。先進国の成長率は低水準ながら持ち直しているが、中国をはじめとした新興国の成長率が急低下している。今後10年間の平均成長率は先進国では過去10年平均を上回るが、新興国は少子高齢化に伴う潜在成長率の低下などから過去10年平均を下回ることが予想される。
  2. 日本経済は2014年度の消費税率引き上げの影響が一巡する中でも低成長が続いているが、2026年度までの実質GDP成長率は平均0.9%となり、過去10年平均の0.3%よりも高まると予想する。人口減少下で経済成長率を高めるためには、女性、高齢者の労働参加拡大を中心とした供給力の向上と高齢化に対応した潜在的な需要の掘り起こしを同時に進めることが重要である。
  3. 今後10年間の名目GDP成長率の伸びは平均1.5%となり、2026年度までに政府目標の名目GDP600兆円は達成されないが、本年12月に公表予定の基準改定後のGDP統計でみれば2024年度に名目600兆円が達成されると予想する。
  4. 消費者物価上昇率は10年間の平均で1.3%(消費税の影響を除く)と予想する。日本銀行が「物価安定の目標」としている2%を安定的に続けることは難しいが、1%台の伸びは確保し、デフレ脱却は実現する可能性が高い。

やや長い気もしますが、リポート本体がpdfファイルで27ページありますので、A4半分くらいに取りまとめてもこれくらいか、という気もします。以下、リポートから私の興味に従っていくつかグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。なお、リポートのタイトルから理解できる通り、地域的には決して日本経済だけの中期見通しではなく、米国や欧州などの先進国から始まって、中国やもちろんASEANなどのアジアを含み、当然ながら日本にスポットの当てられた対象範囲の広い見通しです。

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ということで、まず、世界経済全体を見通して、1人当たりGDPの推移のグラフをリポート p.3 から引用すると上の通りです。GDP総額では、日本経済はすでに中国に抜かれており、2016年度までのこのリポートの見通し期間中にはインドにも抜かれると見込まれていますが、1人当たりGDPではまだまだ中国ですら日本の1割にも満たない水準であろうと予測されています。

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次に、潜在成長率の寄与度分解のグラフをリポート p.13 から引用すると上の通りです。いわゆる成長会計に基づいて、生産要素である資本と労働の投入の増加、加えて技術進歩率で寄与度分解されています。労働投入はすでに1990年代から明確にマイナス寄与している一方で、先行きについては資本投入と技術進歩で+1%近くまで潜在成長率が高まると想定されています。

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次に、実質GDP成長率の推移のグラフをリポート p.14 から引用すると上の通りです。消費税率の10%への引き上げが2019年10月に予定されていますが、10月1日からという年度半ばの引き上げですので、2019年度全体としては駆け込み需要とその後の反動減が相殺し、さらに、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに伴う経済効果もあって、消費増税のマイナス効果はかなり限定的と見込んでいます。ただし、2021年度は直前の東京オリンピック・パラリンピックからの反動減でマイナス成長を予想しています。そして、ニッセイ基礎研では2024年度から消費税率が12%に引き上げられることを独自に想定していますので、2024年度はマイナス成長を記録すると見込まれています。しかし、最初のリポート要旨にあった通り、予測期間中の平均成長率は+0.9%と、2007-16年度の過去10年間の実績+0.3%を上回ると予想しています。

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次に、新旧基準の名目GDPの推移のグラフをリポート p.15 から引用すると上の通りです。現在の安倍政権では2020年ころまでに名目GDP600兆円を目標のひとつとして掲げているんですが、上のグラフの通り、2008SNAに準拠した基準では2024年度に名目GDP600兆円が達成される見込みです。もっとも、2024年度が「2020年ころ」といえるかどうかはビミョーなところかもしれません。

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最後に、シナリオ別基礎的財政収支(対名目GDP比)の比較のグラフをリポート p.21 から引用すると上の通りです。シナリオとしてはリポートで示されたメインシナリオに加えて代替シナリオとして、楽観シナリオと悲観シナリオが用意されており、それぞれの基礎的財政収支の名目GDP比の推移が示されています。なお、標準シナリオと楽観シナリオでは、繰り返しになりますが、ニッセイ基礎研の独自の想定として2024年度から消費税率が12%に引き上げられると仮定していますが、悲観シナリオではこの消費増税はナシで10%で据え置かれる前提です。ということで、メインシナリオでは、もちろん、悲観シナリオでも、予想期間中に基礎的財政収支は黒字化を達成できないんですが、楽観シナリオでは2024年度の消費増税の前提と相まって、2024年度から基礎的財政収支が黒字化する結果となっています。ただ、いくつかの財政赤字のサステイナビリティ検定があり、私も大学に出向していた折に紀要論文「財政の持続可能性に関する考察」として取りまとめていますが、中でももっとも緩やかと考えられるカリフォルニア大学サンタバーバラ校のボーン教授の提唱する検定では、直観的に、プライマリー・バランスが赤字であっても,その赤字幅が縮小していれば財政は持続可能と判断される、といわれており、メインシナリオでも財政は持続可能かもしれません。

最後に、ニッセイ基礎研のこのリポートは、地域的に日本に限定しないだけでなく、私が今夜のブログで取り上げた範囲以外にも、当然ながら、日本経済についてはより詳細な分野を網羅しており、例えば、物価や経常収支などの見通し、金融政策動向などについても着目しています。物価見通しは最初に引用した要旨のとおりですし、特に、要旨で触れられていない対外収支については、貿易収支が間もなく1-2年後には赤字に転じて、経常収支も予測期間終盤に小幅ながら赤字化すると予想しているようです。

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