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2016年10月25日 (火)

帝国データバンク「最低賃金改定に関する企業の意識調査」の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ながら、ちょうど1週間前に10月17日に、帝国データバンクから「最低賃金改定に関する企業の意識調査」の結果が明らかにされています。pdfの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果を豪華に5点ほど引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 最低賃金の改定を受けて給与体系を「見直した(検討している)」企業は35.0%となり、特に非正社員を多く抱える『小売』や『運輸・倉庫』『製造』で4割を超えた。他方、「見直していない(検討していない)」企業は49.1%となった。地域別では、『北海道』(43.4%)が最も高く、『九州』(40.7%)、『中国』(40.2%)で4割を上回った
  2. 従業員を実際に採用するときの最も低い時給は、全体平均で約958円。最低賃金(823円)を135円上回る。『東京』において最低賃金と採用時最低時給の差額が最も大きかったが、差額が大きい地域は西日本が上位を占めた
  3. 今回の引き上げ額について、「妥当」と考える企業が40.5%で最多。「妥当」は「高い」(11.6%)、「低い」(18.1%)を大きく上回り、総じて企業側に受け入れられている様子がうかがえる
  4. 自社の業績に対する影響では、「影響はない」が57.9%で最多。「プラスの影響がある」は1.7%にとどまった一方、「マイナスの影響がある」は21.7%と2割を超えた
  5. 今後の消費回復への効果について、「ある」と考える企業は10.2%にとどまる一方、「ない」は53.7%と半数を超えており、消費回復に対しては懐疑的な見方をする企業が多数を占める

ということで、とても長いサマリーなんですが、それだけにすべてを網羅している雰囲気もありますので、以下、リポートからいくつかグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから 給与体系を「見直した」企業の割合 を引用しています。35.0%の企業が給与体系の見直しや見直しの検討を回答していますが、特に、労働集約的な産業で、また、非正規社員の雇用割合が高い産業で、最低賃金の引き上げが直接的に給与体系の見直しにつながっている可能性が示唆されています。すなわち、小売が48.9%、運輸・倉庫43.4%、製造41.0%が4割を超えた一方で、金融は1割台にとどまっていたりします。また、地域別では、北海道43.4%が最も高く、次いで九州40.7%、中国40.2%となり、3地域が4割を上回る結果を示しています。逆に、南関東が31.3%、北関東も33.3%と低い比率を示しています。

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次に、上のグラフはリポートから 引き上げ額と業績への影響 を引用しています。そもそも、まず、最低賃金引き上げ額について、妥当と回答した企業が40.5%に上り、低い18.1%、高い11.6%よりかなり大きな割合を占めていて、しかも、高いよりも低いの回答の方が多くなっています、次に、最低賃金引き上げの業績への影響については、影響はないと回答した企業が57.9%で最多となっているんですが、他方で、プラスの影響は1.7%にとどまっているのに対し、マイナスの影響は21.7%と2割を超えており、マイナスの影響の方がプラスの影響を大きく上回っています。そして、その引き上げ額の高低と業績へのマイナスの影響の相関をプロットしたのが上のグラフです。いくつか、典型的な業種が明示されていますが、引き上げ額を高いと感じている業種ほど業績へのマイナスの影響を感じていることが、当然といえば当然ながら、調査結果から明らかになっています。コストアップを価格に転嫁するのが難しい点はデフレ経済の特徴のひとつかもしれません。

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