10月の米国雇用統計は利上げをサポートするのか?
日本時間の昨夜、米国労働省から10月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+161千人と前月の+191千人から伸びを鈍化させたものの、失業率は前月から0.1%ポイント下がって4.9%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから最初の4パラだけ記事を引用すると以下の通りです。
Last Economic Snapshot Before the Election Shows Healthy Job Growth
The government, delivering the last major snapshot of the economy before Election Day, reported on Friday that employers added 161,000 workers in October, a performance that suggested a healthy outlook for the months ahead.
The official unemployment rate dropped to 4.9 percent, from 5 percent. And average hourly earnings rose 2.8 percent year over year, a level not reached since 2008.
"It was pretty positive across the board," said David Berson, chief economist at Nationwide Insurance, adding that "most importantly, we got a nice jump in average hourly earnings and that actually corresponds with other data."
While the final weeks of the presidential campaign seemed to be preoccupied with everything but the economy, Friday's report from the Labor Department refocused attention - at least briefly - on the crucial bread-and-butter issue: jobs. For the candidates, the latest employment report serves as a Rorschach test, allowing each side to offer its own distinctive narrative of the economy's performance and prospects.
この後、さらにエコノミストなどへのインタビューや米国大統領選へのインプリケーションの分析が続きます。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。
非農業部門雇用者数は、私が耳にしていた範囲では+170千人とか、+175千人などの市場の事前コンセンサスだったんですが、それはやや下回ったものの、失業率が低下したのでキャンセルアウトし、しかも、下のグラフに示したように、時間あたり賃金が堅調に上昇しているのも相まって、12月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げをサポートする結果といえそうです。雇用者数の増加は10月単月では+161千人だったんですが、直前の9-10月の統計が上方改定されており、合わせて40千人ほどの改定幅ですから、合わせて200千人というわけでもないんでしょうが、米国の雇用はかなり堅調と考えるべきです。ただし、FOMCの前に11月の雇用統計も12月2日には公表されますし、何といっても、来週は米国大統領選挙が控えています。もちろん、金融政策運営は連邦準備制度理事会(FED)の専管事項ですし、中央銀行は政府から独立しているんですが、それでも、選出された米国次期大統領その人やその組織するであろう政府からの圧力では決してなく、選挙結果に示された主権者たる米国民の民意は中央銀行も無視することはできません。加えて、政策手段はともかく、政策目標は政府と同一歩調を取ることが求められますから、いずれにせよ、デッドヒートが繰り広げられている米国大統領選挙の結果は気にかかるところです。何ともいえませんが、トランプ候補が米国大統領選に勝利して、勝手な大放言を繰り返したりすれば、あるいは、市場が大荒れになる可能性もあったりするんではないでしょうか?
また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性はほぼなさそうに見えます。また、10月の伸び率は2009年6月以来、7年4か月振りの高い上昇率となっており、雇用の質も悪くないことを裏付けているものと私は受け止めています。
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