ようやく最悪期を脱しつつある消費者物価(CPI)と企業向けサービス物価(SPPI)!
本日、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、また、日銀から企業向けサービス物価指数(SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも10月の統計です。生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比は▲0.4%の下落を示し、ヘッドラインのSPPI上昇率は+0.5%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
10月の全国消費者物価、原油安で0.4%下落 生鮮野菜は高騰
総務省が25日発表した10月の消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きい生鮮食品を除く総合が99.8となり、前年同月比0.4%下落した。QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値(0.4%下落)と同じだった。原油安で電気代やガソリン代が下落し、8カ月連続で前年実績を下回った。
生鮮食品を除く総合では全体の56.6%にあたる296品目が上昇し、166品目が下落した。横ばいは61品目だった。
生鮮食品を含む総合は100.4と0.1%上昇した。天候不順の影響でレタスが54.5%上昇するなど生鮮野菜が高騰し、指数を押し上げた。前月比では0.6%上昇した。食料・エネルギーを除く「コアコア」の指数は100.6と前年同月比0.2%上昇した。
東京都区部の11月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が99.7と、前年同月比0.4%下落した。生鮮食品を含む総合は100.3と0.5%上昇した。
企業向けサービス価格、10月0.5%上昇
日銀が25日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2010年=100)速報値は103.2と前年同月から0.5%上昇した。前年同月を上回るのは40カ月連続。上昇率は前月の0.2%から拡大し、15年8月(0.6%)以来の大きさとなった。企業収益の増加に伴い新聞広告が伸びた。訪日外国人客数の増加を背景とした宿泊サービスの伸びも貢献した。ただ日銀は「企業収益の持続力や足元の円安を受けたインバウンド需要への影響に注視が必要」とみている。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。
ということで、現時点では日銀の物価目標である+2%にはほど遠いものの、マイナス幅が縮小に転じて、極めてゆっくりながら物価目標に近づきつつあるような気もします。小数点以下1位で丸めた指数によって私が試算した寄与度を見ると、まずエネルギーの寄与度は今年2016年3月の▲1.13%をボトムにして、緩やかにマイナス幅を縮小させ、直近の10月統計では▲0.62%とかつての半分近くまでに達しています。他方、先月▲0.18%とそれなりに無視できないマイナスを記録したコア財の寄与度は10月には+0.03%とわずかながらプラスに回帰しています。食料の寄与度も円高の進行などから10月には+0.14%まで落ち着きを取り戻して来ていて、家計への物価高感を和らげているものと感じています。サービスの寄与度も+0.15%から+0.2%くらいのレンジで安定的に物価上昇に寄与していますし、これらの要因から、食料とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率も先月の+0.1%を底にして、今月はわずかながらプラス幅を拡大して+0.2%に達しています。繰り返しになりますが、日銀の物価目標である+2%にはまだまだ遠いものの、国際商品市況の石油価格の下落に起因する物価下落の最悪期は脱したのではないか、と私は受け止めています。為替も円高修正、というか、トランプ次期米国大統領の政策を好感してドル高円安が進んでいますし、エコノミストの間でも来年に入れば物価はプラスに転じるとの見方が浮上しています。物価動向の先行き見通しはまだまだ不透明ですが、年明け早々にプラスに転じる可能性も大いにあるものと私は期待しています。
今夏に消費者物価指数(CPI)の基準改定があり、そこそこ統計が蓄積されて来ましたので、上のグラフはインフレ期待に重要な役割を果たすと考えられる頻度別支出や基礎的ないし選択的支出で分類したCPI上昇率の推移を見ています。上のパネルは購入頻度別の物価上昇率であり、月間1回程度以上か未満かで分類しています。下のパネルは基礎的消費と選択的消費により分類されています。まず、上のパネルについて見ると、購入頻度の高い財・サービスが下落を続けている一方で、購入頻度の低い財・サービスは+1%弱ながら安定的な上昇を示しています。従って、頻度高く接する商品の価格が下落しているために、一般消費者のインフレ期待が高まらない、という面は指摘できると私は考えています。ただし、下のパネルに見る通り、最近時点では基礎的支出と選択的支出に関しては物価上昇率の差が急速に縮小してきているのも事実です。また、直近統計では気候条件に起因する野菜や果物の値上がりが消費者に強く印象付けられている可能性が高く、インフレ期待にどのような影響を及ぼすか注目されるところです。
最後に、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ヘッドラインのSPPI上昇率は9月の+0.2%からジャンプして、10月は+0.5%を記録しました。ここ1年ほど+0.1%から+0.3%で膠着状態にあっただけに、エコノミストの間でもやや驚きを持って受け止められています。新聞広告をはじめとする広告、土木建築サービスや宿泊サービスなどの諸サービス、外航貨物輸送をはじめとする運輸・郵便、ソフトウェア開発などの情報通信がSPPI上昇率の拡大に寄与しています。引用した記事にある通り、円安に伴うインバウンド観光客の増加も忘れるべきではありませんが、SPPI上昇率がジャンプした背景には人手不足があるのではないかと私は想像しています。
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