上昇続く景気ウオッチャーもトランプ・ショックでマインドはどうなるのか?
本日、内閣府から10月の景気ウォッチャーが、また、財務省から9月の経常収支が、それぞれ公表されています。季節調整済みの系列で見て、景気ウォッチャーの現状判断DIは前月から+3.0ポイント上昇の49.3を、また、先行き判断DIは+1.5ポイント上昇の51.4をそれぞれ記録し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆兆8210億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りす。
10月の街角景気、3.0ポイント上昇 基調判断上げ
内閣府が9日発表した10月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整値)は49.3と3ポイント上昇し、4カ月連続で改善した。原数値は46.2と、前月比1.4ポイント上昇した。改善は2カ月ぶり。内閣府は基調判断を「持ち直している」と、2カ月ぶりに引き上げた。
企業動向は製造業と非製造業がともに改善した。「公共工事、民間建築工事とも、受注量が順調に確保できている」(北海道・建設業)という。雇用関連では「全業種において新規求人が増えているが、中でも労働者派遣業を含む製造業や娯楽業の求人が増加している」との指摘があった。
家計動向も改善した。小売りや飲食、サービス関連が伸びた。「例年10月は繁忙月だが、今年はインバウンドも含めた団体客が非常に多い」(北関東・都市型ホテル)という。
2-3カ月後の先行きを聞いた先行き判断指数(季節調整値)は前月より1.5ポイント高い51.4だった。上昇は4カ月連続で、節目の50を上回るのは、2015年12月(50.5)以来、11カ月ぶり。原数値は49.0と0.5ポイント上昇した。改善は4カ月連続。「受注の見込み情報が、増加傾向にある」(東海・一般機械器具製造業)との声があった。
内閣府は今回の街角景気から季節調整値を中心に公表する。これまで基準としていた原数値は参考データとして引き続き発表する。
9月の経常収支、1兆8210億円の黒字 原油安で貿易収支が改善
財務省が9日発表した9月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆8210億円の黒字だった。前年同月(1兆4521億円)に比べて3688億円黒字幅が拡大した。黒字は27カ月連続。原油安で貿易収支の黒字幅が拡大したことが寄与した。
貿易収支は6424億円の黒字(前年同月は684億円の黒字)だった。原油や液化天然ガス(LNG)など燃料価格の下落で輸入額が5兆1962億円と17.5%減少。円高で外貨建ての輸入額も目減りした。自動車や鉄鋼の落ち込みで輸出額も5兆8386億円と8.3%減少したが、輸入の減少幅が上回った。
サービス収支は1118億円の赤字(前年同月は593億円の赤字)だった。円高で知的財産使用料などが目減りした。旅行収支は670億円の黒字と、2カ月ぶりに黒字幅が拡大した。
第1次所得収支は1兆5066億円の黒字だった。円高で証券投資などの収益が目減りし、前年同月(1兆6811億円)から黒字幅を縮小した。
同時に発表した2016年4-9月の経常収支は10兆3554億円の黒字だった。黒字額は07年下期(10月-08年3月、11兆8560億円)以来の高水準。08年のリーマン・ショック以降で最高となった。原油安で貿易収支が黒字に転化したことが寄与した。貿易収支は2兆9955億円の黒字、第1次所得収支は9兆2599億円の黒字だった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいがちです。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。
引用した記事にもある通り、我がブログでは2か月前から景気ウォッチャーは季節調整済みの系列で見るように改めたところ、統計作成官庁の内閣府でも今月統計から季節調整済みの系列を中心に据えたようです。というのも、先月統計では、季節調整していない原系列の統計で見ると、現状判断DIが低下したものの、季節調整値で見ると、現状判断DIも先行き判断DIもいずれも上昇を示したわけで、軽く考えると、原系列の統計では季節要因により低下した、との結論だったんですが、判りにくくて評判が悪かった気がします。でも、今日発表の10月統計では、季節調整済みの系列でも、季節調整していない原系列でも、現状判断DIも先行き判断DIも、4つの系列すべてが上昇しています。特に、季節調整済みの現状判断DIは前月から+3.0ポイント上昇と上昇幅がとても大きくなっています。DIを構成する家計関連、企業関連、雇用関連すべてが前月から上昇し、単月ながら、特に、小売関連の+4.8ポイント上昇が目立っています。もう少し長く見て、現状判断DIは6月の39.8から10月には49.3まで上昇し、4か月間でほぼ10ポイント近い上昇を記録しています。従って、年央から供給サイドの消費者マインドはかなり上向いた、との結果が示されています。もっとも、水準としてはこの10月の現状判断DIは昨年の年末から今年の年始にかけてのレベルに戻っただけであるとの反論もあり得ますが、DIですので水準よりも方向性の方が重要であることは理解すべきです。統計作成官庁である内閣府が基調判断を「持ち直している」と、前月までの「持ち直しの動きがみられる」から半ノッチ引き上げたのも当然かもしれません。ただし、これは今日の夕方くらいまでの統計の評価であり、米国大統領選挙の結果は6月の英国のEU離脱=BREXITを大きく超えるショックだったと考えられますので、我が国の消費者や企業のマインドにどのような影響を及ぼすかは、今後、十分注視する必要があります。
次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもかなり震災前の水準に戻りつつある、と私は受け止めています。ただし、引用した記事にもある通り、経常黒字の背景は国際商品市況における石油価格低下であり、場合によっては、石油価格の動向という不透明な要因支えられていることは忘れるべきではありません。もちろん、為替要因についても円高の進行が企業収益だけでなく、対外バランスに及ぼす響は無視できません。加えて、インバウンド消費も経常収支を黒字の方向に引っ張って来ていましたが、この3要因、すなわち、石油価格、為替、訪日観光客の3要因すべてが、最近時点ではやや逆回りし始めた印象があり、経常収支も先行きが不透明な気がします。
最後に、米国大統領選挙では、トランプ候補が勝利し、アジアや欧州の市場はBREXITを大きく超える大混乱の様相です。この先、最大の不透明要因が米国政治なのかもしれません。エコノミストには見通しがたい先行きです。
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