着実にマイナス幅を縮小させる企業物価(PPI)上昇率の今後のゆくえやいかに?
本日、日銀から10月の企業物価 (PPI)が公表されています。ヘッドラインの国内物価上昇率は前年同月比で▲2.7%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
10月の企業物価指数、前年比2.7%下落 前月比は0.1%下落
日銀が11日に発表した10月の国内企業物価指数(2010年平均=100)は98.7で、前年同月比で2.7%下落した。前年比で下落するのは19カ月連続。原油や石炭などの国際商品市況の持ち直しや円高の一服を受け、下落率は5カ月連続で縮小し、15年6月以来の小ささとなった。
前月比では0.1%下落だった。7-9月の夏季電力料金期間の終了による電力価格の下落が主な背景。この影響を除けば前月比で0.1%の上昇だった。
円ベースの輸出物価は前月比で1.1%上昇、前年同月比で9.8%下落した。輸入物価は前月比で2.4%上昇し、前年比では14.4%下げた。輸出入物価の前年同月比での下落も原油や原料炭などの国際商品価格の上昇を受け、持ち直しつつある。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち前年同月比で下落したのは519品目、上昇は210品目だった。下落と上昇の品目差は309品目で、9月の確報値(302品目)から拡大した。
日銀は「資源・エネルギー価格の上昇を受け全体としては強めの動きだが、円高の影響は残っており、個々の品目では下落も目立つ」と指摘。その上で「為替や国際商品市況の動向に加え、米大統領選の結果がマーケットや物価に与える影響も注視していく」とした。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率、最後に、輸入物価のうちの円建て原油価格指数を、それぞれプロットしています。上の2つのペネルで影をつけた部分は、景気後退期を示しています。
日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスはヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率で▲2.6%の下落でしたから、やや下振れしたとはいうものの、ほぼジャストミートした気がします。引用した記事にもある通り、国内物価の前年同月比は今年2016年5月の▲4.4%の下落から今日発表の10月速報値の▲2.7%まで、5か月連続で一貫して下落幅を縮小させています。基本的には、国際商品市況における石油価格の動向に従った動きなんですが、上のグラフのうちの3枚目一番下のパネルに見る通り、最近時点では円建て原油価格の上昇が鈍っているのは円高の影響です。輸入物価の前年同月比で見ると明らかで、10月速報値で契約通貨ベースでは▲4.7%の下落までマイナス幅を縮小させた一方で、円建てではまだ▲14.4%と大きなマイナスが残っています。為替相場の先行きはそうでなくても不透明なんですが、今週は特には米国大統領選挙の結果で乱高下しています。経常収支や貿易収支などの対外収支の為替への反応は、私は基本的に弾力性ペシミストですので、それほど大きな影響もなく、むしろ、景気動向などの需要要因の方が大きいんではないかと考えているんですが、物価については為替や原油価格から物価へのパススルーが最近時点で復活しつつあり、円安は日銀のインフレ目標に貢献できる、との一橋大学塩路先生の研究成果などもあり、それなりの影響は認められます。国際商品市況の石油価格とともに為替相場も、ひょっとしたら、日銀の政策動向以上に今後の注目点かもしれません。
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