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2016年12月14日 (水)

1年半振りに景況感が改善した日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から12月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から+4ポイント改善して+10を記録し、本年度2016年度の設備投資計画は全規模全産業が前年度比+1.8%増と、わずかに9月調査から上方修正されました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

日銀短観、大企業製造業が1年半ぶり改善 米経済回復で
12月景況感指数プラス10

日銀が14日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス10だった。前回の9月調査(プラス6)から4ポイント改善した。改善は6四半期ぶり。米国など海外経済の回復で電気機械や自動車など輸出企業の景況感が改善した。米大統領選後の世界的な株高や原油市況の回復も追い風となった。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。12月の大企業製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値のプラス10に一致した。回答期間は11月14日-12月13日で、回答基準日は11月28日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業製造業がプラス8だった。2016年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=104円90銭と前回の107円92銭よりも円高・ドル安方向に修正された影響があった。トランプ次期米大統領に政策を見極めようとする雰囲気が経営者の間で根強かった面もあったようだ。
大企業非製造業の現状の業況判断DIはプラス18と前回と同じだった。円高進行による訪日外国人(インバウンド)消費の鈍化で小売りの景況感が悪化した。一方、都心の再開発が進み、建設関連が高水準を維持したほか、対事業所サービス、電気・ガスなどの改善が目立った。3カ月先のDIは2ポイント悪化し、プラス16を見込む。
中小企業は製造業が4ポイント改善のプラス1、非製造業は1ポイント改善のプラス2だった。先行きは悪化した。
2016年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比5.5%増だった。9月調査の6.3%増から下方修正された。昨年の同時期(10.8%増)を下回った。大企業のうち製造業は11.2%増、非製造業は2.5%増を計画している。
16年度の全規模全産業の設備投資計画は前年度比1.8%増で、市場予想の中央値(2.9%増)を下回った。大企業製造業の16年度の輸出売上高の計画は前年度比6.3%減で9月調査の3.7%減から下方修正された。
大企業製造業の販売価格判断DIはマイナス7と、9月調査(マイナス10)から3ポイント上昇した。DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。個人消費の伸び悩みや物価の低迷で販売価格には下落圧力が強い。金融機関の貸出態度判断DIは全規模・全産業でプラス24と、9月調査のプラス25から悪化した。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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まず、上のグラフは規模別産業別の業況判断DIをプロットしています。なかなかに複雑な動きをしているんですが、この12月調査については大企業非製造業で前回の9月調査と同じ横ばいの結果だった以外は、ほぼ全規模全産業で景況感は前回調査から足元で上向いています。しかし、先行きについては、逆に、すべての規模と産業で悪化を見込んでいます。大企業について細かい産業別に見ると、足元の12月調査では、大企業製造業のうち加工業種では円安を好材料に改善を示し、改善幅は加工業種に及ばなかったものの、素材業種も前回調査からは改善しています。前者については、電気機械、はん用機械、生産用機械などの改善幅が大きく、後者については、国際商品市況の底入れにより石油・石炭製品が大幅改善したのが寄与しています。大企業非製造業については、製造業からの波及が大きい対事業所サービスや電気・ガスなどの改善幅が大きい一方で、卸売、小売、対個人サービス、宿泊・飲食サービスなどの個人消費に関連する業種ではむしろ悪化を示しています。基本的な企業マインドは堅調であると私は受け止めていますが、企業が大きく内部留保を溜め込む一方で、天候不順などの要因も見逃せませんが、家計の消費が停滞している景気の現状が垣間見える気がします。ただし、ここまで広範な業種で先行き景況感が悪化すると見込まれているのは、まだまだ不透明感が高いと考えるべきです。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても不足感が広がっています。特に、採用に苦労しているように聞き及んでいる中堅・中小企業では大企業よりも不足感が強まっています。ただし、失業率や有効求人倍率などの雇用統計を見れば、量的にはほぼ完全雇用状態に達している可能性があり、今後は質的な雇用の改善、すなわち、正社員の増加や賃金上昇が実現される段階に進むんではないかと期待しています。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。もっとも、今年10月1日に公表された9月調査の短観までは大企業全産業の設備投資計画をヘッドラインと見なしてグラフにプロットしていたんですが、どうも、世間的に全規模全産業が設備投資計画のヘッドラインになっているような気がして、本邦初公開で私のこのブログでも全規模全産業の設備投資計画をグラフにするよう方針変更しました。ということで、今年2016年度の計画は黄緑色のやや太いラインと同色の大きなマーカで示されていますが、見ての通りで、9月調査からわずかに上方修正され前年度比+1.9%増と見込まれています。ただし、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+2.9%増でしたので、かなり下回りました。旧来のヘッドラインである大企業全産業でも前回調査を下回っており、設備投資についてはトランプ次期米国大統領の経済政策が未知数だけに、まだまだ先行きの不透明感から強く影響されているように見受けられます。

景気に関する企業マインドは、前回調査から大きな変化は見られない一方で、実体経済は踊り場的な景気状態からア少し回復の動きが出始めています。企業マインドについては米国の経済政策動向の不透明さを反映している可能性もありますが、徐々に実体経済の回復基調が明らかになるに従って、企業マインド・消費者マインドともに上向いていくことを私は予想しています。

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