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2017年1月31日 (火)

増産が続く鉱工業生産指数と完全雇用に近い雇用統計と日銀の「展望リポート」を考える!

本日、経済産業省から12月の鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。鉱工業生産は季節調整済みの系列で前月比+0.5%の増産、失業率は3.1%と前月と変わらず、有効求人倍率は前月からさらに0.02ポイント上昇して1.43を記録しています。生産は増産を続け、雇用はかなり完全雇用に近い状態にあります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、12月は0.5%上昇 10-12月は2.0%上昇
経済産業省が31日発表した12月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.5%上昇の100.4となり2カ月連続で上昇した。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(0.3%)より伸び率は大きかった。軽自動車や小型車など乗用車が新型車の投入もあり好調だった。化粧品なども春向けの新商品の生産が伸びた。経産省は生産の基調判断を2カ月連続で「持ち直しの動き」に据え置いた。10-12月は前期比2.0%上昇の99.6だった。
12月の生産指数は15業種のうち12業種が前月から上昇し、2業種が低下した。横ばいは1業種だった。輸送機械工業が2.0%上昇。化学工業も1.8%上昇した。一方で情報通信機械工業が10.7%の低下、はん用・生産用・業務用機械工業も0.4%低下した。
出荷指数は前月比0.3%低下の99.0だった。在庫指数は0.2%上昇の107.1、在庫率指数は0.9%上昇の108.8だった。
1月の製造工業生産予測指数は前月比3.0%の上昇となった。中国などアジアでスマートフォン向け部品や大型液晶などが好調で電子部品・デバイス工業が堅調に推移する。はん用・生産用・業務用機械工業なども伸びる見通しだ。予測指数は計画値での集計であるため実際より上振れしやすいため、経産省では実際の上昇率は0.5%程度になると予想している。
16年の求人倍率1.36倍、25年ぶり高水準
失業率は3.1%に改善

厚生労働省が31日発表した2016年の有効求人倍率は1.36倍と前年比0.16ポイント上昇し、1991年(1.40倍)以来25年ぶりの高水準となった。総務省が発表した16年の完全失業率は3.1%と0.3ポイント改善し、94年(2.9%)以来22年ぶりの低さ。バブル末期並みの雇用情勢だが、景気の緩やかな回復に加え、少子高齢化で人手不足感が強まっている面がある。
有効求人倍率の改善は7年連続。雇用の先行指標とされる新規求人倍率も2.04倍と91年以来の高水準となった。業種別の新規求人数をみると、教育・学習支援業(8.9%増)や医療・福祉業(7.1%増)などが目立った。
完全失業者数は208万人と14万人減少した。就業者数は6440万人と、前年に比べ64万人増加した。15-64歳の人口に占める就業者の割合は16年平均で74.3%で、比較可能な68年以降過去最高の水準だ。
内訳をみると男性が17万人増だったのに対し、女性は47万人増加した。年齢別にみると15-64歳の27万人増に対し、65歳以上は37万人増えた。15-64歳の生産年齢人口は16年は7633万人で、10年前と比べると771万人減った。今まで働いていなかった高齢者や女性が働き始めたことが雇用情勢の改善につながっている。
同時に発表した16年12月の有効求人倍率(季節調整値)は前月比0.02ポイント上昇の1.43倍だった。91年7月以来25年5カ月ぶりの高水準だった。正社員の有効求人倍率は0.92倍と過去最高で、就業地別の有効求人倍率は9カ月連続で全都道府県で1倍を上回った。12月の失業率(同)は3.1%と前月と同じだった。第一生命経済研究所の新家義貴主席エコノミストは「年内にも2%台に突入する可能性が高い」と指摘する。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、かなり長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は、次の雇用統計とも共通して、景気後退期です。

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生産については、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比で+0.3%増でしたから、やや上振れたとはいうものの、ほぼジャストミートした気がします。ただし、季節調整済みの系列の前月比で見て、出荷が減少し在庫が増加する結果となっていますが、ならしてみれば、生産と出荷が増加基調、在庫水準も低下基調と私は受け止めています。加えて、製造工業生産予測調査でも1-2月の増産が見込まれていますから、先行きも緩やかな増産を私は予想しています。12月統計については、自動車本体や部品の生産が好調だったほか、アジアで組み立てるスマートフォン向けなどの電子部品の生産も伸びており、我が国が比較優位ある製品の生産が増加しており、イレギュラーな受注が入ったのではなく、本来のいい形の増産と考えるべきです。また、先行きについても、米国のトランプ政権の見通しがたい通商政策を別にすれば、ようやく、というか、何というか、2014年4月の消費増税直前の駆け込み需要の反動が3年を経過してそろそろ剥落する部分が出始める時期を迎えるとともに、2011年3月まで続いた家電エコポイント制度により購入された白物家電などが買い替えサイクルを迎えつつあるとの見方もあり、耐久消費財の先行きに期待を持って注目しています。

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四半期データが利用可能になりましたので、上のように在庫循環図を書いてみました。ピンク矢印の2013年1-3月期から始まって、黄緑矢印の直近の2016年10-12月期までです。2002年12月の月例経済報告の参考資料である「鉱工業の在庫循環図と概念図」に従えば、45度線を下から上に切りましたので、機械的に見ると、景気は谷を過ぎて上昇局面に入ったことになります。出荷が増加して在庫調整が進んでいる段階です。

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引用した記事では、ついついメディアの報道のクセとして、雇用統計については年統計を重視していたりしますが、月次の景気動向として上のグラフを見て、遅行指標の失業率は横ばいながら、景気一致指標の有効求人倍率はさらに上昇し、先行指標の新規求人も増加を続けています。かなり完全雇用に近い印象を受けるんですが、それでも賃金が上がりません。それどころか、リクルートジョブズの調査による「2016年12月度派遣スタッフ募集時平均時給調査」では、派遣職員の時給が下がり始めていたりします。ということは、かなり完全雇用に近いながら完全雇用ではないんだろうと、私は考えを改めるに至りました。最近読んだ日経センターの『激論 マイナス金利政策』の影響もあります。そして、賃金が上がらないのは、引用した記事にもある通り、最近時点で労働市場に参入したのが中年女性と高齢男性であり、ともに非正規職員として賃金が低い職種への参入が多いんではないかと想像しています。その意味で、雇用の改善のすそ野が広がって、正規職員というか、安定した高収入の職、ILO のいうところの decent job が増加しているのかどうかは、まだ疑わしいのかもしれません。私の知り合いのエコノミストの中には、今年中に失業率は3%を割り込んで2%台に入るとの主張を持つ人もいますし、現状の労働需給はかなりタイトであるとはいえ、決して完全雇用に達したという意味ではないことを確認しておきたいと思います。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 2016年度+1.2~+1.5
<+1.4>
▲0.2~▲0.1
<▲0.2>
 10月時点の見通し+0.8~+1.0
<+1.0>
▲0.3~▲0.1
<▲0.1>
 2017年度+1.3~+1.6
<+1.5>
+0.8~+1.6
<+1.5>
 10月時点の見通し+1.0~+1.5
<+1.3>
+0.6~+1.6
<+1.5>
 2018年度+1.0~+1.2
<+1.1>
+0.9~+1.9
<+1.7>
 10月時点の見通し+0.8~+1.0
<+0.9>
+0.9~+1.9
<+1.7>

最後に、昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合ですが、金融政策は現状維持、というか、追加緩和なしで終了しました。上のテーブルは「展望リポート」の基本的見解から2016-2018年度の政策委員の大勢見通しを引用しています。昨年10月時点からはかなり上方修正されたんですが、インフレ目標である+2%の達成は、引き続き、「見通し期間の終盤(2018年度頃)」とされています。なお、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、引用元である日銀の「展望リポート」からお願いします。

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