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2017年1月16日 (月)

大きく減少した機械受注とマイナス幅が着実に縮小する企業物価(PPI)!

本日、内閣府から11月の機械受注が、また、日銀から12月の企業物価 (PPI)が、それぞれ公表されています。機械受注は変動の激しい船舶と電力を除くコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比▲5.1%減の8337億円を記録し、企業物価はヘッドラインの国内物価上昇率は前年同月比で▲1.2%の下落を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、11月5.1%減 非製造業が落ち込む
内閣府が16日発表した11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月比5.1%減の8337億円だった。2カ月ぶりに減った。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(2.0%減)を下回った。先月に大きく伸びた非製造業が落ち込んだ。製造業は増加したものの補えなかった。
機械受注の基調判断は、過去3カ月の動向を踏まえ「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業からの受注額は9.8%増の3635億円と4カ月ぶりに増加した。半導体製造装置や電子計算機が伸びた電気機械が68.0%増えた。原子力原動機などが好調だった非鉄金属は4.4倍になった。
非製造業からの受注額は9.4%減の4834億円と2カ月ぶりに減った。その他非製造業は前月の反動減が出て16.1%減少。鉄道車両や通信機が落ち込んだ運輸業・郵便業も12.5%減と振るわなかった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は前年同月比10.4%増だった。内閣府は10-12月期見通しを前期比5.9%減としている。10-11月の実績を踏まえると、12月実績が前月比11.0%減で達成できる。内閣府は「四半期見通しを上回りそう」との見方を示した。
12月の企業物価指数 前年比1.2%下落 下落幅は7カ月連続縮小
日銀が16日に発表した2016年12月の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は99.7で、前年同月比で1.2%下落した。前年同月比の下落は21カ月連続だが、下げ幅は7カ月連続で縮小した。円安進行や原油など国際商品価格の上昇で、企業物価には下げ止まり感が強まっている。
前月比では0.6%上昇した。石油輸出国機構(OPEC)の減産合意による原油需給の引き締まり観測や米国と中国の財政拡大期待を背景に、原油や銅地金などの非鉄金属の国際相場が上昇したことが影響した。
円ベースの輸出物価は前年同月比で1.8%下落、前月比で5.3%上昇した。輸入物価は前年同月比で2.8%下落、前月比で4.9%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち前年同月比で下落したのは478品目、上昇は250品目だった。下落と上昇の品目差は228品目で、11月の確報値(264品目)から縮小した。
日銀調査統計局は「トランプ次期政権の財政政策や中国の環境規制の行方に不透明感が強く、国際商品市況や為替相場の先行きが商品価格に与える影響を慎重に見極めないといけない」としている。
同時に発表した16年平均の国内企業物価指数(2010年平均=100、速報値)は99.2で前年比は3.4%下落した。中国などの新興国の経済減速を背景にした国際商品価格の低迷が響いた。市場予想よりも米国の利上げペースが鈍化し、為替相場が円高・ドル安基調だったことも輸入品の価格下落を通じた企業物価の押し下げ要因となった。16年の平均円相場は1ドル=108.84円と15年比で12円21銭の円高・ドル安だった。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、その次の企業物価とも共通して、景気後退期を示しています。

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機械受注については、引用した記事にもある通り、コア機械受注が日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの前月比▲2%減よりさらに減少幅が大きく出ています。もともと、10月統計で+4.1%とジャンプした反動が表れることは容易に想像されていたんですが、円安や株高が現れる前のトランプ次期米国大統領当選の初期ショック、すなわち、貿易制限的な政策に対する反応なのかもしれない、と考えてみたところ、どうも違う気がします。というのは、製造業で伸びて非製造業で減少を示しているからです。ですから、11月統計の機械受注は外的ショックとは大きな関係なく、自律的な動向を示している可能性も十分ありますし、私はそう見ています。結果として、10月に増加し11月に減少したわけで、もともと変動の激しい統計ですから、上のグラフのように移動平均で見るようにすべきであり、そのグラフではまだ太線の移動平均ラインは増勢を保っているように見えます。ただし、コア機械受注の外数ながら、外需と官公需は大きな増加を示しています。為替動向と経済政策動向に基づく増加であり、外需はコア機械受注の先行指標と見なされていることからも、機械受注の先行きを占う上で、決して悲観視する必要はないものと受け止めています。すなわち、11月統計については、減少幅を見れば悲観的な見方も出る可能性はありますが、それ相応に底堅い動きであると私は見ています。ですから、基本的なラインとしては、横ばいに近いながらも機械受注は増勢を保持する可能性が高いと考えています。

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次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。上の2つのパネルで影をつけた部分は、景気後退期を示しています。ということで、企業物価(PPI)上昇率はここ数か月でかなりマイナス幅を縮小させています。すなわち、ヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率で見て、2016年5月が直近のボトムで▲4.4%の下落を示した後、7月までは▲4%台だったんですが、8-9月は▲3%台に下落幅を縮小させ、10-11月は▲2%台、そして、12月はとうとう▲1.2%を記録して、11月統計から一気に1%ポイントも下落幅を縮小させました。国際商品市況の石油価格と為替動向が大きな要因であり、ここ数か月で画期的に需給バランスが改善したと考えるエコノミストは少ない気がしますが、デフレ脱却に向けた動きは着実に進んでいると私は受け止めています。従って、企業物価(PPI)でも、消費者物価(CPI)でも、今年中にはマイナスを脱却する可能性が高いと私は予想しているんですが、日銀のインフレ目標である2%に達するためには、単に国際商品市況とか為替だけでなく、需給ギャップの改善も併せて、景気回復の動きを強める必要がありそうな気がします。

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