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2017年2月13日 (月)

10-12月期GDP統計1次QEに見る日本経済は外需依存の物足りない成長なのか?

本日、内閣府から昨年2016年10-12月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.2%を記録しました。外需中心ながら、なかなかの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月の実質GDP、年率1.0%増 外需に伸び
内閣府が13日発表した2016年10-12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%増、年率換算では1.0%増だった。プラスは4四半期連続。輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った。
QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.3%増で、年率では1.0%増だった。
生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.3%増、年率では1.2%増だった。名目も4四半期連続でプラスになった。
実質GDPの内訳は、内需が0.0%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.2%分のプラスだった。項目別にみると、個人消費が0.0%減と、4四半期ぶりにマイナスだった。生鮮野菜の高騰が家計支出を抑制した。
輸出は2.6%増、輸入は1.3%増だった。アジア向けや北米向けに需要が回復し輸出が拡大した。国内需要が伸び、輸入量が増加した。設備投資は0.9%増と、2四半期ぶりにプラスだった。輸出増などを受けて生産活動が回復し、設備投資需要が高まった。住宅投資は0.2%増。公共投資は1.8%減。民間在庫の寄与度は0.1%のマイナスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス0.1%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.3%のマイナスだった。
同時に発表した16年暦年のGDPは実質で前年比1.0%増、生活実感に近い名目で1.3%増となった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2015/10-122016/1-32016/4-62016/7-92016/10-12
国内総生産GDP▲0.3+0.6+0.4+0.3+0.2
民間消費▲0.6+0.4+0.2+0.3▲0.0
民間住宅▲1.0+1.4+3.3+2.4+0.2
民間設備+0.5▲0.3+1.3▲0.3+0.9
民間在庫 *(▲0.1)(▲0.2)(+0.2)(▲0.3)(▲0.1)
公的需要+0.3+0.9▲0.7+0.0▲0.0
内需寄与度 *(▲0.3)(+0.2)(+0.5)(▲0.1)(▲0.0)
外需寄与度 *(+0.0)(+0.3)(▲0.0)(+0.4)(+0.2)
輸出▲0.8+0.9▲1.2+2.1+2.6
輸入▲0.8▲1.1▲1.0▲0.2+1.3
国内総所得 (GDI)▲0.2+1.1+0.6+0.2+0.1
国民総所得 (GNI)▲0.1+0.7+0.3+0.1+0.0
名目GDP▲0.3+0.8+0.3+0.2+0.3
雇用者報酬 (実質)+0.7+1.1+0.3+0.6+0.0
GDPデフレータ+1.5+0.9+0.4▲0.1▲0.1
内需デフレータ▲0.0▲0.3▲0.7▲0.8▲0.3

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2016年10-12月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、特に、黒い外需が大きくプラス寄与している一方で、灰色の民間在庫がマイナス寄与しているのが見て取れます。

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ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前期比+0.3%、前期比年率+1.0%の成長率が見込まれていましたので、ほぼジャストミートしました。直近の市場変動要因である日米首脳会談もほぼほぼ無風で終りましたので、今日の東証の日経平均は少しだけ上昇、で終っています。GDP統計に表れた成長率については、内需が寄与度ゼロで外需のみによる成長との批判もあり得ましょうが、内需のうちの在庫の寄与度が▲0.1%ですので、在庫調整が進んでおり、むしろ、在庫調整の進展が計算上は内需の下押し要因になっている点は忘れるべきではありません。同時に、仕上がりの数字として、10-12月期の四半期で見ても、2016年暦年で見ても、年率+1.0%というのは+1%にやや満たないと目されている潜在成長率をやや上回る水準であり、少子化による人口減少や高齢化が進んだ現在の日本の成長率としては決して悪くないと受け止めています。上のグラフを見て、2016年1-3月期から10-12月期にかけて、ジワジワと前期比成長率が低下しているように見えなくもないんですが、一昨年2015年10-12月期のマイナス成長からのリバウンドを考慮すると、こんなもんという気がします。

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上のグラフは雇用者報酬とインバウンド消費の推移をプロットしています。季節調整済みの系列の実額です。今日公表されたGDP統計の需要項目別の数字を見て、設備投資がマイナスを示した7-9月期から10-12月期にはようやくプラスに転じた一方で、消費がほぼ横ばいながらマイナスに転じた点が懸念されています。昨年秋口の天候要因で野菜などの食品価格が高騰したイレギュラーな要因もありましたが、やっぱり、所得の増加が伴っていないのが大きな要因のひとつと考えられます。ただし、サイクル的な要因として、リーマン・ショック以降に政策効果を発揮してきたエコカー減税・家電エコポイント制度による耐久消費財の買い替えサイクルがそろそろ到来すると言われており、加えて、2014年4月の消費増税前の駆け込みによる需要先食いの悪影響がようやく緩和しつつあると考えられますので、現在の人手不足に伴って、春闘などである程度の賃上げが実現されることを織り込めば、自律的な消費の動きとしては緩やかな回復・拡大に向かうものと期待してよさそうです。外需についても、価格要因の大きな部分を占める為替動向は不透明な部分が残されているものの、米国はもとより欧州や中国も含めて世界経済が底を脱して回復・拡大するという所得要因から輸出がさらに期待できますから、今年2017年は内外需ともに増加する可能性が高いと考えるべきです。

最後に、繰り返しになりますが、私は今日公表されたGDP成長率は決して物足りないものではなく、そこそこの高成長と考えているんですが、海外論調をいくつか見ておきたいと思います。ウォールストリート・ジャーナルは低成長と見ているようですが、ファイナンシャル・タイムズは潜在成長率から見て十分な高成長と私と同じような評価であり、ニューヨーク・タイムズもまずまずよいんではなかろうか、という評価のようです。順不同にご参考まで。

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