« 気象協会による「第4回2017年春の花粉飛散予測」やいかに? | トップページ | 発足1か月のトランプ政権に対する米国民の評価やいかに? »

2017年2月20日 (月)

5か月振りの赤字を計上した貿易収支の先行きやいかに?

本日、財務省から1月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+1.3%増の5兆4219億円、輸入額も+8.5%増の6兆5088億円、差引き貿易収支は▲1兆869億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の貿易収支、5カ月ぶり赤字 1兆869億円、輸入25カ月ぶり増加
財務省が20日発表した1月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆869億円の赤字だった。貿易赤字は5カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値は6293億円の赤字だった。資源価格の上昇などを背景に輸入額が2014年12月以来25カ月ぶりに増加に転じた。中国の春節(旧正月)をはじめとする季節要因で輸出が滞ったことも影響した。
輸出額は前年同月比1.3%増の5兆4219億円と2カ月連続で増加。1月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=116.48円と前年同月から2.6%の円高だったほか、春節が1月28日と前年より早かったことから中国向けの輸出が伸び悩むなどし増加幅は限られた。
中国向けの重油や自動車部品などの輸出が増えた。地域別では米国向けが6.6%減、欧州連合(EU)が5.6%減となった。中国を含むアジアは6.0%増だった。
輸入額は8.5%増の6兆5088億円となった。サウジアラビアからの原粗油、オーストラリアからの石炭などの伸びが顕著だった。原粗油の輸入は数量ベースでは前年同月から減少したが、資源価格の上昇に伴い金額が35.6%増と膨らんだ。米国からはシェールガス由来の液化天然ガス(LNG)の輸入を初めて計上した。
財務省は同日、5月22日に公表する4月の貿易統計から資料の記載項目を一部変えると発表した。「主要地域(国)別商品別輸出(輸入)」からアジア新興工業経済群(NIES)を削除し韓国を追加するなどの変更を行う。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo

季節調整していない原系列の統計で見て、5か月振りの貿易赤字とはいえ、上のグラフでも明らかな通り、トレンドに沿った季節調整済みの系列で見ると、一昨年2015年11月から直近1月まで黒字が続いています。もちろん、直近1月の黒字幅はわずかに+1555億円と大きく縮小していますが、明らかに、輸入面では石油価格の上昇、輸出面では中華圏の春節の影響が大きいと考えるべきです。国際商品市況における石油価格については何ともいえませんが、中国の春節が昨年の2月から今年は1月にずれ込んだ点については、イレギュラー要因としかいいようがありません。でも、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、▲6000億円余りの赤字を予想していたわけですから、▲1兆円を超えたとはいえ、貿易赤字の予想という点に関しては大きなサプライズはなかった気がします。従って、1月の貿易統計については、中国の春節効果を考慮すると、1-2月でならして見る必要があるものと考えられます。いずれにせよ、我が国の貿易は輸出入とも拡大局面に入ったと私は受け止めており、背景には我が国と世界経済の緩やかな回復・拡大があるわけですから、それはそれで評価すべきと私は考えています。

photo

輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。1月の中国向けの輸出については、明らかに、中華圏の春節によるイレギュラー要因の影響が出ています。春節効果を別にすれば、我が国の輸出は緩やかに拡大する方向にあると私は考えており、その理由は為替の円安化に伴う価格効果と中国や米国をはじめとする世界経済の回復による所得効果です。引用した記事にもある通り、1月の税関長公示レートこそ、前年同月に比べて円高でしたが、トランプ米国大統領当選後の為替相場は昨年11月半ばから円安傾向で推移しています。また、上のグラフに見る通り、OECD先行指数に見る先進国や中国の景気は回復を見せています。いずれも、我が国の輸出に追い風となっていると私は受け止めています。

ただし、最後に、輸出の先行きリスクについては、漠然とした影響ながら、米国のトランプ新政権による保護主義的な通商政策はリスクになり得ると考えられます。TPPについては、まだ発効すらしていませんし、NAFTAの再交渉も我が国は含まれていませんから、我が国の貿易に大きなダメージを及ぼすとはとても考えていませんが、むしろ、先行きの何らかの米国との二国間交渉があり得る可能性は排除できません。でも、1990年代のクリントン政権時の包括協議に巻き込まれた経験から、私自身がやや被害妄想になっている可能性はあります。

|

« 気象協会による「第4回2017年春の花粉飛散予測」やいかに? | トップページ | 発足1か月のトランプ政権に対する米国民の評価やいかに? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 5か月振りの赤字を計上した貿易収支の先行きやいかに?:

« 気象協会による「第4回2017年春の花粉飛散予測」やいかに? | トップページ | 発足1か月のトランプ政権に対する米国民の評価やいかに? »