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2017年2月28日 (火)

本日公表の鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計から何が読み取れるか?

本日、経済産業省から1月の鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が公表されています。鉱工業生産は季節調整済みの系列で前月比▲0.8%の減産、小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.0%増の11兆5820億円と、まずまずの結果を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、1月0.8%低下 2月予測は3.5%上昇
経済産業省が28日発表した1月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.8%低下の99.8だった。生産の基調判断は「持ち直しの動き」に据え置いた。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前月比0.4%上昇だった。
出荷指数は0.4%低下の98.5で、在庫指数は0.0%上昇の107.5。在庫率指数は1.7%上昇の111.4だった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では2月が3.5%上昇、3月は5.0%低下を見込んでいる。
1月の小売販売額、前年比1.0%増
経済産業省が28日発表した1月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比1.0%増の11兆5820億円だった。季節調整済みの前月比は0.5%増だった。大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計で1.0%減の1兆6739億円となった。既存店ベースの販売額は1.1%減だった。
コンビニエンスストアの販売額は3.2%増の9136億円だった。

いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は、次の商業販売統計とも共通して、景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前月比で+0.4%の増産でしたから、▲0.8%の減産という実績はややネガティブなサプライズと考えられなくもありません。減産の原因のひとつとして、モデルチェンジに伴う自動車生産の増産が一巡した点が上げられていて、その点は確かに気がかりといえます。しかし、大きく悲観する必要がないと私が考えるのは、やはり、中華圏の春節の影響です。引用した以外の別の日経の記事によれば、記者会見で経産省から「中国向け製品の生産が減るなどの影響は表れていない」との説明があったらしいんですが、昨年までの1月春節による季節調整の歪みの可能性は十分あります。また、足元での出荷の大幅な低下あるいは在庫の増加などは見られず、先行き3月には減算する可能性は残されているものの、目先の確度の高い2月の増産が見込まれている点などを考慮すると、基調判断を下方修正するほどの懸念はなさそうな気もします。何度かの繰り返しになりますが、家電エコポイントによる白物家電などの耐久消費財の買い替えサイクルを迎えつつある点や、3年前の2014年の消費増税に伴う駆け込み需要の反動の剥落も進んでおり、家計セクターの消費も緩やかながら増加の要因が調い、企業セクターの人手不足に伴う設備投資も今後期待できますので、生産の回復傾向は継続すると見込まれる一方で、もしも、大きなショックが生じるとすれば、米国の通商政策に起因する可能性なんですが、コチラは皆目見通せません。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。消費にリンクする小売販売額は季節調整していない原系列では前年同月比+1.0%増、また、季節調整済みの系列の前月比でも+0.5%と増加しています。しかし、生産における中華圏の春節の影響の真逆が商業販売統計のインバウンド消費で生じている可能性があります。すなわち、昨年までの2月春節に比べて、今年の1月春節でインバウンド消費が1月にズレ込んだため、1月の消費が大きめに見えている可能性が排除できません。特に、鉱工業生産指数(IIP)のグラフでも耐久消費財の出荷はまだ底ばっているようにも見えます。しかし、今後は、これも繰り返しになりますが、白物家電の買い替えサイクルや消費増税による駆け込み需要の反動の剥落が進み、耐久消費財も含めて、消費も緩やかな回復に向かうものと期待しています。

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2017年2月27日 (月)

リクルートジョブズ調査による派遣スタッフとアルバイト・パートの時給の推移やいかに?

今週金曜日に総務省統計局から失業率が、また、厚生労働省から有効求人倍率などがそれぞれ公表される予定になっており、世間一般では労働市場はほぼ完全雇用に近いんではないか、との見方が支配的になっている一方で、私なんぞは賃金が上がらないからまだ完全雇用ではない、と主張しているところ、政府統計で賃金の推移を見る毎月勤労統計の評判が必ずしも芳しくなく、今夜はリクルートジョブズの調査から、それぞれ今年1月の「派遣スタッフ募集時平均時給調査」と「アルバイト・パート募集時平均時給調査」のデータをグラフにして簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフはリクルートジョブズ調査による三大都市圏における派遣スタッフ及びアルバイト・パートのそれぞれの募集時平均時給の推移を実額と前年同月比伸び率でプロットしています。それぞれ凡例の通りです。下のパネルのアルバイト・パートについては、まだ前年同月比で+2%程度の伸びを示していますが、上のパネルの派遣スタッフについては昨年2016年9月に▲0.7%減を示してから10月こそ+0.1%増となったものの、11月▲0.1%減、12月▲0.4%減と続き、とうとう今年2017年1月には▲0.9%減を記録しました。
1月の派遣スタッフの平均時給の伸びを三大都市圏の地域別に見ると、東海ではまだプラス圏内で推移しているものの、関西と関東ではマイナスを記録しています。職種別ではデザイナーやweb関連などのクリエイティブ系が特に大きなマイナスを記録しています。リクルートジョブズの調査では、職種はオフィスワーク系、営業・販売・サービス系、IT・技術系、クリエイティブ系、医療介護・教育系の5系統に分割されているんですが、地域別・職種別に3x5の15のマトリックスのうち、直近の2017年1月調査で前年同月比伸び率がマイナスを記録しているのは、関東のクリエイティブ系と関西の医療介護・教育系だけですが、これが全体を大きく下押しして派遣スタッフの時給の平均を押し下げています。特に医療介護・教育系では看護師・准看護師の時給の下落が大きくなっています。私も何が起こっているのか、正確な情報は持ち合わせませんが、人手不足で非正規雇用のアルバイト・パートや派遣スタッフでも時給が上昇を続ける、という意味での完全雇用に達しているわけではない、という認識が成り立とうかと考えています。春闘をはじめとする賃金の先行き動向も不透明ですし、「人手不足で完全雇用」という状況にはまだ達していないという見方が正確なんだろうと私は受け止めています。

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2017年2月26日 (日)

マルハニチロ「ラーメンとチャーハンに関する消費者実態調査2017」に見る居住地別好きなラーメンやいかに?

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とても旧聞に属する話題かもしれませんが、2月8日付けで、マルハニチロから「ラーメンとチャーハンに関する消費者実態調査2017」が明らかにされています。私はラーメンもチャーハンもここ数年は食べておらず、特に興味もないんですが、中にひとつだけ興味ある画像がありましたので、引用しておきたいと思います。それは、p.7/16 の【図3】居住地別好きなラーメンです。以下の通りです。私は関西出身で現在は東京住まいですが、味の嗜好については関西人のままです。ラーメンの地域別の嗜好についても、何となく判る気がします。休日らしい話題で軽く終わっておきたいと思います。

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2017年2月25日 (土)

今週の読書は少しペースダウンして経済書など計7冊!

今週の読書はややペースダウンして、経済書と専門書・教養書に小説まで含めて、以下の通りの7冊です。先週の9冊から数字的にペースダウンしたのに加えて、ライトノベル(ラノベ)という言葉がありますが、経済書や教養書でもライトな本が多かった気がします。文庫本200ページほどのアンソロジーも含まれています。それも1冊ですが、先週くらいまでは500ページをラクに超えるヘビーな本があったりした分、今週は軽く読み飛ばした本もあったりします。誠に有り難いことに、来週はもっとペースダウンする予定です。

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まず、安達誠司『ザ・トランポノミクス』(朝日新聞出版) です。著者は証券業界の民間エコノミストであり、私は何度かドイツ証券のころにお会いしましたが、今は丸三証券の経済調査部長だそうです。リフレ派のエコノミストです。ということで、米国のトランプ大統領の経済政策、すなわち、トランポノミクスの解説をすべく努力しているんでしょうが、現時点ですら、イスラム教国からの入国停止などのわけの判らない大統領令が裁判所の執行停止命令で頓挫しているくらいですので、NAFTAの再交渉とか、TPPからの離脱とかいっても、現時点で我が国にそれほど関係するとも思えませんし、あまりにトランプ政権の経済政策に関してデータ不足ですので、ほとんど何も論じられるハズがない、と私は考えていたんですが、案の定というか、何というか、英国のEU離脱、BREXITから、中国のバブル崩壊から、いろんな経済的トピックを取り上げて、まあ、決してトランプ政権の経済政策に関する話題とも思えない部分も少なくないんですが、かなりコジツケに近くトランポノミクスを解説しようと試みています。ハッキリ言ってムリがありますので、2点だけ指摘しておくと、財政政策の物価理論については最近の浜田先生の心変わりに対応して、リフレ派でもソロリと金融政策とともに財政政策にも関心を寄せ始めた気がします。実は、私もそうですからよく判ります。それから、トランプ政権の米国経済に関する政策意図を実行しようとすれば、いずれかの時点で金融政策を緩和に向かわせる必要があるということは理解できます。でも、トランプ大統領自身が選挙前から現在のハト派のイエレン議長は再任しないと明言しており、タカ派の議長が就任する可能性も小さくありません。私の知る限り、スタンフォード大学のケヴィン・ウォルシュ教授が有力と聞いたことがありますが、本書の著者の理論的な金融緩和への政策変更と人事がどのように結びつくのか、特に、現時点でトランプ政権では人事に躓きを見せていますので、やや心配ではあります。いずれにせよ、本書はリベラルなエリート層が米国大統領選挙後にトランプ大統領の悪口を言い散らかしている本ではなく、トランプ政権の経済政策、まだそれほど全貌は明らかではないにしても、その政策意図を前向きに汲み取り、ひょっとしたら、トランプ政権の経済政策で米国だけでなく、日本も恩恵を受けるんではないか、と思わせるに足る内容ではなかろうかと思います。

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次に、森信茂樹[編著]『税と社会保障でニッポンをどう再生するか』(日本実業出版社) です。著者は財務省出身で、私の記憶が正しければ、財務総合政策研究所長を最後に退官して大学の研究者に転じています。本書では、かなりの景気拡大効果を示しているアベノミクスを否定して、あくまで財務官僚的な財政収支重視論を展開するとともに、同時に、アベノミクスでも大きな課題となっている格差や貧困の問題、あるいは、高齢者や女性の労働供給の問題なども取り上げています。もちろん、財政破綻や年金などの社会保障の崩壊を含めて、財政収支均衡を志向する流れは忘れられているわけではありません。3人の政府税調委員との対談でも、財政収支均衡が施行されていることは明らかです。しかしながら、本書でのポイントは3点あり、第1に、かつて「一体改革」と称されたように、税制と社会保障に代表される財政政策によって経済成長を支える仕組みを志向しています。もちろん、財政収支が均衡すれば日本経済がどうなってもいいというかつてのかたくなな姿勢は見えません。第2に、法人税と所得税+消費税個人向け税制のバランスを検討し、起業や企業への適切な税制を講じて経済の発展を志向しています。第3に、所得や資産の格差の今以上の拡大は、社会の持続可能性を危うくさせるとの観点から、再分配や世代間格差問題についても適切に対応する必要を説いています。世代間不平等のソースとしてシルバー民主主義に正面から税制の観点で切り込んだのは評価します。でも、ベーシック・インカムについては極めて否定的な姿勢のように見えるのは、財源が足らないというだけなんでしょうか。ここまでうはエコノミストから左派まで幅広い賛同を得ているベーシック・インカムについての議論を適当に切り上げるのは、税制や社会保障を扱っている本にしては、私にはよく判りません。最後に、対談の部分は仕方がないにしても、本書で展開されている議論があまりに精粗区々で、やや戸惑ってしまう場面も私にはありました。特に、例の「パナマ文書」に見られるような租税回避地の議論に関しては、極めて徴税手続き論に終始しているような気がします。いかに世界経済を害して格差を助長しているかについても何らかの見識を示しておくべきではないでしょうか。ただ、最後のXタックスについては短い記述ながらも、それなりに参考になり、もっと勉強しようかという気になりました。本書の最大の収穫かもしれません。

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次に、伊丹敬之『ビジネス現場で役立つ経済を見る眼』(東洋経済) です。著者は一橋大学の研究者の経歴が長く、経営学の大御所とも見なされていたりします。『経営を見る眼』という既公刊の本があり、それに合わせたタイトルのようです。ということで、いくつか「ご慧眼」と言い出したいところもある一方で、少し見方が狭いと感じるところもあります。例えば、身近な景気の良し悪しは需要の伸びに起因するというのはまったくその通りだという気がします。また、身近な街角の経済をマイクロ経済学に、高高度から俯瞰した経済をマクロ経済学になぞらえるのは、厳密性を重視すればともかく、なかなかいい例えではないかと受け止めています。その上で、マイクロな経済学を積み上げて行っても合成の誤謬などもあって、マクロ経済学的に見て正しい結論にたどり着くわけではない、という指摘も、しばしば忘れられがちで、リアル・ビジネス・サイクル(RBC)理論などでは意図的に無視している点だという気もしますが、極めて真っ当な議論だと思います。だた、細かい点ですが、日本の消費が停滞しているのは明らかに所得の観点から論じるべきであり、平均消費性向がものすごく低下していて、決して日本の家計は消費をせずに貯蓄を溜め込んでいるわけではない、という点は見落とされている気がします。最後に、もっとも私が疑問を持ったのは、経済学の論文や書籍で批判されることが多い点といっしょで、まったく人が出て来ない点です。経営学も同じなのかもしれません。しかし、労働者としてのスキルの形成やその生産性への反映、さらに、その生産性を基準にした賃金のあり方などを含めて、ケインズ的なアニマル・スピリットが強調されている割には、人間が出て来ないのが「人本主義」の伊丹教授のご著書にふさわしくないような気がします。従って、格差の議論も平板に見えてしまいますし、格差と貧困を取り違えているんではないかと読まれかねない部分もあったりします。格差により所得の少ない階層の教育が不十分となって成長を阻害する、というのは、OECD の Focus on Inequality and Growth の観点でしょうが、格差と貧困を同一視するべきではありません。少なくとも、正規雇用と非正規雇用の分裂、そして、そこを起点にした格差の問題、非正規雇用における熟練崩壊、すなわち、デスキリングの問題なども取り上げて欲しかった気がします。

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次に、 澤野雅樹『絶滅の地球誌』(講談社選書メチエ) と『起死回生の読書!』(言視舎) です。著者は社会思想や犯罪社会学を専門とする明治学院大学の研究者です。私はこの分野に詳しくありませんので、知りませんでした。『絶滅の地球誌』は3部構成となっており、極めて大雑把ながら、第1部が生物学的な絶滅を取り上げており、著者の専門分野とはかけ離れている一方で、コルバート『6度目の大絶滅』、ビアリング『植物が出現し、気候を変えた』などの種本があって、私はこれらをすでに読んでいましたので、まあ、金沢城のお堀のヒキガエルの絶滅を別にすれば、特段の著者の主張はなかったように感じました。なお、『6度目の大絶滅』は2015年5月10日付けの、また、『植物が出現し、気候を変えた』も同じ2015年4月18日付けの、それぞれこのブログの読書感想文で取り上げています。第2部から、一見すると無関係な主題に向かって行きます。核開発です。これも、バゴット『原子爆弾 1938~1950年』などの種本からの引用が多く、第1部か第2部か忘れましたが、時には2-3ページに及ぶ引用もあったりしました。たぶん、あくまでたぶん、なんですが、第3部が著者の専門に近い分野なのかもしれません。そして、タイトル的に考えて、人類を含めて地球が絶滅に向かっているというおそれに対して、いかにしてそれを防止するかというのが本書のテーマなんですが、もちろん、本1冊で回答が引き出せるハズもなく、ナチスの勃興に対してハンナ・アーレントが用いた「短慮」の概念を引いて著者は現代社会を批判しつつ、現実を直視しむやみに絶望するのではなく、ただ愚直に思考することを志向しています。そして、簡単には答えられない問いなわけでひょっとしたら、誰にも答えられない問いかもしれないかもしれませんが、だからといって現状を黙認すれば、絶滅という形で人類を含めて無数の生物が姿を消し、憎悪を抱えたテロリストが生み出され続ける可能性があると警告しています。結論は私にはよく判りませんでした。時には、フランス構造主義やポスト構造主義、あるいは、こういった社会学的な本を読むのもいいかもしれません。ただし、ソーカル事件のような事態は引き起こさないように気をつける必要はあるかもしれません。『起死回生の読書!』では、読書人口というか、人口割合が減少した事実につき考察を進めていますが、スマートフォンでのゲームが赤ちゃんのガラガラだとか、SNSは昔の井戸端会議、などとスマホに熱中する人々を切って捨てています。少なくともこの冒頭の部分は私も同感です。本が読まれないことは出版業界の問題にとどまらず、文明論的に恐るべき意味を持つという点に関してはそうかもしれないと思わないでもないものの、それは、本を受け取る読書家たちの問題なのか、それとも本を送り出す作者や出版社の側の問題なのか、そのあたりはややビミョーかもしれません。夏目漱石や森鴎外のように、100年後も読み継がれる作家は、現在の現役作家の中に何人いるんでしょうか。

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次に、東野圭吾『恋のゴンドラ』(実業之日本社) です。作者は売れっ子のミステリ作家ですが、この作品はミステリではなくコメディです。同じ出版社から文庫本で、同じ昨年11月に『雪煙チェイス』と3週間ほど時期をずらして発行されて、どちらも買い求めたんですが、埋もれていたのを今になって発掘したりしています。なお、文庫の『雪煙チェイス』の方はミステリで、来週の読書感想文で取り上げる予定です。ということで、この『恋のゴンドラ』はタイトルから想像される通り、ラブストーリーのコメディです。アラサー男女の恋愛事情とその進化形である結婚事情、さらに、結婚相手の父母、すなわち、義理の父母との付き合いなども含めて、ウィンター・スポーツであるスノーボードとスキーに絡めて賑々しく進行させています。基本的には、この作者の作品で冬の季節に刊行されるシリーズで、スキー場の監視員をしている根津が登場します。私の記憶が正しければ、根津は『白銀ジャック』と『疾風ロンド』に登場していて、『疾風ロンド』では本作と同じ里沢温泉スキー場で監視員をしています。チラチラと本作品にも登場して、もっとも登場場面が多いのは月村夫妻が義理の両親とスキー旅行する章です。この章のラストは、いかにも東野圭吾らしく、加賀恭一郎シリーズ的な人情噺チックに締めくくっています。いずれにせよ、アラサー男女の恋愛事情、結婚事情ですから、私のようなアラ還の男からはやや感情移入しにくいんですが、男から見れば女性の恋愛に関する見方が新鮮かもしれませんし、女から見れば男性の恋愛や結婚に関する見方が新鮮かもしれません。ただ、ミステリではなく恋愛コメディですので、読者の年齢層は限られるかもしれません。

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最後に、赤川次郎ほか『吾輩も猫である』(新潮文庫) です。赤川次郎ほかの売れっ子小説家の短編を集めたアンソロジーです。まず、小説の中身とは関係ないながら、上に引用した表紙画像が私にはキモいです。まあ、夏目漱石のもともとの『吾輩は猫である』が猫を擬人化した小説ですので致し方ないんですが、画像化するとここまでキモくなるのかと驚いています。ということで、上の表紙画像に見える通り、かなりの豪華キャストの布陣による短編集であり、読んでおいてソンはありません。なぜだか、そういう方針なのか、図書館の本の配列のように、作者名の50音順で配置してあります。赤川次郎の作品は、その昔の東野圭吾の出世作『秘密』のように、妻が死ぬ際に猫に人格が転移する、というもので、あり得ないだけに考えさせられるものがあります。それにしても、山内マリコの小説は猫でもセックスを話題にするんですね。少しびっくりしました。

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2017年2月24日 (金)

世銀リポート Trade Developments in 2016 に見る不確実性と貿易と生産性の関係やいかに?

今週2月21日付けで、世銀から Trade Developments in 2016: Policy Uncertainty Weighs on World Trade と題するリポートが公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。どうやら、ワーキングペーパーの扱いなんですが、要するに、最近の世界の政治経済情勢が不確実性を増していて、その不確実性が貿易の伸びを鈍化させ、ひいては、生産性の向上を阻害する要因になりかねない、という趣旨のようです。まず、世銀のサイトからリポートのハイライトを3点引用すると以下の通りです。

STORY HIGHLIGHTS
  • 2016 is the fifth consecutive year of slow trade growth and the year with the weakest performance in trade since the Global Financial Crisis.
  • Weak trade growth seen in 2016 was characteristic to both high-income and developing economies.
  • Trade developments in 2016 reflected a number of factors including slow global growth and low commodity prices, as well as increased policy uncertainty and maturing global value chains.

やや、海外報道を読んだ私の印象と異なるような気もするんですが、必ずしも国内のメディアから注目されていない国際機関のリポートなどを取り上げるのは、私のこのブログのひとつの特徴でもありますので、リポートからグラフをいくつか引用しつつ簡単に見ておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポート p.10 から Figure 6: World import growth and policy uncertainty, from mid-2012 to 2016 を引用しています。2013年を底にして経済政策の不確実性が増して来ており、特に、2015年の欧州難民危機から2016年の英国のBREXITを決めた国民投票、トランプ大統領を選出した米国大統領選挙で大きくジャンプしているのが見て取れます。そして、その経済政策の不透明性に逆相関する形で貿易数量の伸び率が低下しています。なお、ここでは輸入数量をもって貿易の代理変数としているようですが、その後の議論の進みを見れば、需要や成長に結びつく輸出ではなく、国内におけるGVCの起点となる輸入に焦点を当てているのは意味のあるところです。

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次に、上のグラフはリポート p.10 から Figure 7: Goods and services import volume growth and policy uncertainty, by country and year を引用しています。輸入で代理された貿易と経済政策の不確実性の相関を見ています。ハッキリ言って、ほとんど無相関に近いんですが、それでも、1985年から2015年までの18か国における長期系列を取ると、最初のグラフの結論の繰り返しになるものの、政策の不確実性と貿易の伸びの間には逆相関が観察されます。なお、縦軸は輸入数量の対数階差なんですが、計算すればわかるように、時系列変数の対数階差はほぼ伸び率に近似します。

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最後に、上のグラフはリポート p.15 から Figure 11: Manufacturing industries: vertical specialization and labor productivity, 1995-2009 を引用しています。輸入が増加すれば、それを起点とした垂直的な特化が進み、その特化に従って生産性が向上する、という見立てです。やや苦しい立論かもしれませんが、無視できない見方です。ですから、経済政策の不確実が増すと輸入の伸びが鈍化し、輸入の伸びが鈍化すると垂直的な特化が進まず労働生産性の伸びが停滞する、という見事な三段論法になっているわけです。そして、その経済政策の不確実性のソースとして、BREXITを決めた英国の国民投票とトランプ大統領を選出した米国大統領選挙を示唆しています。個別国の主権を有する国民の投票結果にケチをつけているようにも読め、その限りでは、やや不埒なリポートのように感じなくもないんですが、まあ、エコノミストの見方としてはこんなもんかもしれないという気もします。

最後の最後に、3枚引用したグラフのうちの2枚目と3枚目については相関を見た散布図ですので、縦軸と横軸は本来はどちらがどちらでもいいようにも考えられますが、あくまで、伝統的に関数形は y=f(x) であって、横軸のx軸の変数が縦のy軸の変数を決めるという因果関係を暗黙の裡に前提しており、その因果の流れに従ったグラフを作図しているような気がします。

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2017年2月23日 (木)

企業向けサービス物価(SPPI)上昇率は着実にプラス圏内を続ける!

本日、日銀から1月の企業向けサービス物価指数(SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て、ヘッドラインSPPIは+0.5%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.4%と、徐々に上昇幅が拡大しています。でも、誤差範囲かもしれません。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業向けサービス価格、1月は前年比0.5%上昇 貨物輸送が上昇
日銀が23日発表した1月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.0で、前年同月比で0.5%上昇した。43カ月連続で前年同月を上回り、プラス幅は昨年12月の確報値(0.5%)から横ばいだった。外航貨物輸送が前年比8.2%上昇となるなど、原油価格の上昇を受けた貨物運賃の持ち直しが寄与した。前月比では広告などが低下し、0.5%下落した。
対象の147品目のうち、価格が上昇したのは53、下落した品目は49だった。上昇品目数が下落を上回るのは16年9月以来。
テレビ広告は0.9%下落した。昨年にスポーツ特番などが寄与した反動が出た。ホテルなどの宿泊サービスは2.5%上昇となった。
日銀は企業向けサービス価格の先行きについて「価格改定期の4月がどう出るのかがポイント」(調査統計局)と説明した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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何分、粘着性が強い物価ですから、企業向けサービス物価(SPPI)についても前年同月比で見て+0.5%近辺で膠着しているように見えます。でも、ここ半年ほどで中身はかなり違って来ています。一例ですが、昨年はオリンピック開催年ということもあり、広告の上昇率が高かった一方で、今年に入って広告料金は失速し始め、1月にはとうとう前年同月比でマイナスに転じています。逆に、国際商品市況の石油価格の低下が燃料費に波及して長らくマイナスを続けてきた運輸・郵便が1月に入ってプラスに転じています。広告などの需要面からのプル要因がやや鈍化を見せ始めている一方で、石油価格などの供給面からのプッシュ要因が出始めているわけです。ただし、総じて人手不足ながら賃金がそれほど上昇しておらず、人件費の比率高いサービス物価の上昇も鈍っていることは確かです。日銀当局の指摘にある通り、4月からの価格改定に注目すべきなんでしょうか?

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2017年2月22日 (水)

東洋経済オンライン「海外勤務者が多い」トップ200社ランキングやいかに?

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先週2月17日付けで、東洋経済オンラインから「海外勤務者が多い」トップ200社ランキングが明らかにされています。私自身も南米はチリでの大使館勤務とインドネシアの首都ジャカルタでの国際協力機構の専門家としての勤務と、それぞれ3年間の海外勤務を経験していますので、少し興味を持って見ています。でも、諸般の事情により、簡単に1位から50位までのテーブルの画像を引用してお仕舞いにしたいと思います。なお、上の画像の通り、1位はトヨタ自動車です。いわずと知れた世界首位級の自動車メーカーで、海外30カ国約80事業体で約2450人の海外勤務者が働いているそうです。もちろん、三菱商事、三井物産、住友商事、丸紅などの総合商社も軒並みトップ10に入っていて、人数はともかく、従業員との海外勤務者比率では海運、プラントなどとともに高くなっています。ただ、海外勤務者比率がトップなのは日本貿易振興機構(JETRO)となっており、40%を超えています。同じく独立行政法人である国際協力機構(JICA)もかなり高率で20%を超えていて、総合商社並みのようです。就活生には参考になったかな?

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2017年2月21日 (火)

発足1か月のトランプ政権に対する米国民の評価やいかに?

1月20日の就任式以来ほぼ1か月を経過し、米国のトランプ大統領に関する世論調査結果が2月16日付けでピュー・リサーチ・センターから In First Month, Views of Trump Are Already Strongly Felt, Deeply Polarized と題して明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。サマリーを別にして以下の4部構成ですが、今夜の記事では最初のサマリーからグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

  1. Early public attitudes about Donald Trump
  2. Views of Trump's executive order on travel restrictions
  3. Views of Islam and extremism in the U.S. and abroad
  4. Attitudes toward increasing diversity in the U.S.
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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Trump has robust GOP backing, almost no crossover support を引用しています。レーガン米国大統領以降の数代に渡る米国大統領のこの時期の支持率は過半を超えているのが通常のような気もしますが、現在のトランプ大統領だけはわずかに支持率39%に低迷しています。大統領就任しょっぱなから支持率39%なわけです。特に2点指摘しておきたいのが、直前のオバマ前大統領の支持率から比べて、大きく低迷している点と、民主党と共和党の両党の党員・支持者間で極めて深刻な開きがあり、大統領野党の民主党からの支持がほとんどない点です。

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次に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Disapproval of Trump's refugee policy, broad criticism of how it was executed を引用しています。大きな注目を集めている難民政策とイスラム圏7か国からの入国停止に関する大統領令の支持率の調査結果です。入国停止に関しては、連邦控訴裁判所で効力を停止されていることは広く報じられているところです。民主党と共和党のそれぞれの支持率で特に大きな開きが出ています。グラフからは読み取れませんが、特に女性からの不支持が高いようです。

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最後に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Early impressions: Fewer view Trump as trustworthy, well-informed compared with Obama, Bush or Clinton を引用しています。実行力 (ability to get things done) だけはそこそこのスコアを示しているものの、信頼性 (Trustworthy) をはじめとして、直前のオバマ前大統領とはほぼダブルスコアの差をつけられ、直前4代のクリントン元大統領以降では実行力も含めて最低のスコアを記録しています。

ただし、グラフは引用しませんが、経済状況については改善が見られるとの評価が出始めています。何といっても、"It's the economy, stupid!" を大統領選挙のスローガンにして当選したクリントン元大統領のような例もありますから、経済が上向けばトランプ大統領に対する支持も上がる可能性はあるんではないか、と私は予想しています。

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2017年2月20日 (月)

5か月振りの赤字を計上した貿易収支の先行きやいかに?

本日、財務省から1月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+1.3%増の5兆4219億円、輸入額も+8.5%増の6兆5088億円、差引き貿易収支は▲1兆869億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の貿易収支、5カ月ぶり赤字 1兆869億円、輸入25カ月ぶり増加
財務省が20日発表した1月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1兆869億円の赤字だった。貿易赤字は5カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値は6293億円の赤字だった。資源価格の上昇などを背景に輸入額が2014年12月以来25カ月ぶりに増加に転じた。中国の春節(旧正月)をはじめとする季節要因で輸出が滞ったことも影響した。
輸出額は前年同月比1.3%増の5兆4219億円と2カ月連続で増加。1月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=116.48円と前年同月から2.6%の円高だったほか、春節が1月28日と前年より早かったことから中国向けの輸出が伸び悩むなどし増加幅は限られた。
中国向けの重油や自動車部品などの輸出が増えた。地域別では米国向けが6.6%減、欧州連合(EU)が5.6%減となった。中国を含むアジアは6.0%増だった。
輸入額は8.5%増の6兆5088億円となった。サウジアラビアからの原粗油、オーストラリアからの石炭などの伸びが顕著だった。原粗油の輸入は数量ベースでは前年同月から減少したが、資源価格の上昇に伴い金額が35.6%増と膨らんだ。米国からはシェールガス由来の液化天然ガス(LNG)の輸入を初めて計上した。
財務省は同日、5月22日に公表する4月の貿易統計から資料の記載項目を一部変えると発表した。「主要地域(国)別商品別輸出(輸入)」からアジア新興工業経済群(NIES)を削除し韓国を追加するなどの変更を行う。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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季節調整していない原系列の統計で見て、5か月振りの貿易赤字とはいえ、上のグラフでも明らかな通り、トレンドに沿った季節調整済みの系列で見ると、一昨年2015年11月から直近1月まで黒字が続いています。もちろん、直近1月の黒字幅はわずかに+1555億円と大きく縮小していますが、明らかに、輸入面では石油価格の上昇、輸出面では中華圏の春節の影響が大きいと考えるべきです。国際商品市況における石油価格については何ともいえませんが、中国の春節が昨年の2月から今年は1月にずれ込んだ点については、イレギュラー要因としかいいようがありません。でも、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも、▲6000億円余りの赤字を予想していたわけですから、▲1兆円を超えたとはいえ、貿易赤字の予想という点に関しては大きなサプライズはなかった気がします。従って、1月の貿易統計については、中国の春節効果を考慮すると、1-2月でならして見る必要があるものと考えられます。いずれにせよ、我が国の貿易は輸出入とも拡大局面に入ったと私は受け止めており、背景には我が国と世界経済の緩やかな回復・拡大があるわけですから、それはそれで評価すべきと私は考えています。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。1月の中国向けの輸出については、明らかに、中華圏の春節によるイレギュラー要因の影響が出ています。春節効果を別にすれば、我が国の輸出は緩やかに拡大する方向にあると私は考えており、その理由は為替の円安化に伴う価格効果と中国や米国をはじめとする世界経済の回復による所得効果です。引用した記事にもある通り、1月の税関長公示レートこそ、前年同月に比べて円高でしたが、トランプ米国大統領当選後の為替相場は昨年11月半ばから円安傾向で推移しています。また、上のグラフに見る通り、OECD先行指数に見る先進国や中国の景気は回復を見せています。いずれも、我が国の輸出に追い風となっていると私は受け止めています。

ただし、最後に、輸出の先行きリスクについては、漠然とした影響ながら、米国のトランプ新政権による保護主義的な通商政策はリスクになり得ると考えられます。TPPについては、まだ発効すらしていませんし、NAFTAの再交渉も我が国は含まれていませんから、我が国の貿易に大きなダメージを及ぼすとはとても考えていませんが、むしろ、先行きの何らかの米国との二国間交渉があり得る可能性は排除できません。でも、1990年代のクリントン政権時の包括協議に巻き込まれた経験から、私自身がやや被害妄想になっている可能性はあります。

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2017年2月19日 (日)

気象協会による「第4回2017年春の花粉飛散予測」やいかに?

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2月13日付けの都庁福祉保健局の発表「都内でスギ花粉の飛散開始 (速報)」にあったように、いよいよ東京でも花粉の飛散が確認され、本格的に花粉症シーズンが始まりました。都庁の発表の翌日2月14日に、気象協会から「第4回2017年春の花粉飛散予測」が明らかにされています。上の一連の画像の通りです。処方薬は入手しましたし、体調を整えて、もう、この季節はひたすら耐え忍ぶだけです。

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2017年2月18日 (土)

今週の読書も話題の経済書などハイペースに計9冊!

今週もお近くの区立図書館ががんばって予約を回してくれて、ヘリコプターマネーで注目の経済書など計9冊です。手軽に終わらせるべき本については読書感想文も短めにしています。今日の午前中にいくつかの図書館を回ったんですが、来週こそはペースダウンできるのではないかと期待しています。

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まず、アデア・ターナー『債務、さもなくば悪魔』(日経BP社) です。作者は英国金融サービス機構長官を務めたエコノミストであり、本書はヘリコプターマネーを提唱した話題の書です。英語の原題は Between Debt and the Devil であり、頭韻を踏んでいるんでしょうか。ショッキングな邦訳タイトルながら、かなり原題に近いといえます。出版は2016年です。ということで、ヘリコプターマネーがどうしても注目されるんですが、本書はそれにとどまらず、2009年からの金融危機やその後の Great Recession また長期停滞論なども視野に含めて、幅広い議論を展開しています。需要は貨幣創造で創出できるというのが結論であり、まさにリフレ派や私の直観と一致します。もっとも、本書でも銀行貸出は生産要素に向かうのではなく、最近では不動産ストックの取得に向かっているとの指摘が痛かったです。最近、私の所属する研究所で勉強会をやった折にも、マネーが資産購入には向かわず、文字通り「漏れなく」購買力に向かうというモデルの発表を聞いて脱力した記憶があります。また、100%準備銀行として、民間銀行に信用創造を許さないような制度を考えるかと思えば、ヘリコプター・マネーの議論をしてみたりと、偏見なく経済を上向かせる、あるいは、バブルを防止するような政策を網羅しているような気がします。ただ、最後の解説の早川さんはミスキャストです。本訴の結論に対しても、両論併記と言うか、いろんな見方を提起して議論を曖昧にしたり、本書の重要な結論のいくつかに疑問を呈したりと、本書で明確に否定された旧日銀理論を振りかざしています。理解のはかどらない出版社幹部が勝手にセッティングしてしまい、担当編集者がどうしようもなく断れなかったような気がします。こんな解説なら、むしろ、なかったほうが著者の意向に沿うような気がします。最後に、ヘリコプターマネーの有効性については私は著者とほぼほぼ一致しているんですが、現在の日本の経済情勢においては十分な成長を実現しており、ヘリコプターマネーは必要ない、というのが私の見立てです。ご参考まで。

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次に、フィリップ E. テトロック&ダン・ガードナー『超予測力』(早川書房) です。著者の2人は政治心理学の研究者とジャーナリストです。この組み合わせで連想されるのが『ヤバい経済学』の2人の著者なんですが、本書の場合、本文中に1人称で出現するのは研究者のテトロック教授が多いような気がします。英語の原題は Super-Forecasting であり、邦訳のタイトルはほぼほぼ忠実に原題を直訳しているようです。2015年の出版です。タイトル通りの超予測について、さらに、実在の超予測者について、彼ら彼女らがどのように予測しているかのプロセスを考察しています。特に、超予測者についてはまとめとして、pp247-49 にいくつかの特徴を箇条書きしています。必ずしも経済書ではないかもしれませんが、一貫して主張しているのが、ランダムな判断として「サルのダーツ投げ」を引用していて、明示的な引用でははいものの、引用元はマルキール教授の『ウォール街のランダムウォーカー』です。私は大学に出向していた際の紀要論文に "An Essay on Random Walk Process: Features and Testing" というのがあり、"a blindfolded monkey throwing darts at a newspaper's financial pages could select a portfolio that would do just as well as one carefully selected by experts" として最後の結論で引用しています。また、予想は新しい情報が加われば変更すべきであるという著者の主張を補強する意味で、ケインズの言葉も引用されています。"When my information changes, I alter my conclusions. What do you do, sir?" なんですが、これも超有名なフレーズです。こう話しかけられた相手はサムエルソンではなかったかと記憶しています。また、軍事情報の予測も数多く取り上げられており、例えば、先日、大統領補佐官をわずか1月足らずで辞任したマイケル・フリンが国防情報局(DIA)長官を退官する直前のインタビューを取り上げ、pp.297-98 で国際情勢判断の間違いが指摘されています。いずれにせよ、予測を行うのに必要なのは、本書では明記していませんが、インプットする情報の質と量、それに、そのインプットをプロセスする評価関数もしくはモデルであり、予想が間違う場合は後者の評価関数もしくはモデルがおかしい場合が圧倒的に多い、と私は考えています。ケインズ的な評価関数(モデル)の臨機応変な変更をはじめ、評価関数(モデル)を洗練させるのに必要ないくつかの要素を読み取れれば、本書の読書の成果といえるかもしれません。

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次に、安岡匡也『経済学で考える社会保障制度』(中央経済社) です。著者は関西学院大学の研究者であり、本書は、基本的に、大学生に対する教科書、あるいは、初学者向けテキストとして執筆されたものだそうですから、期待すべき水準を推し量ってから読み始めるべきような気がします。全18章のうち16章までがほぼ制度論で、年金、医療、介護、生活保護、雇用、育児支援、障害者福祉となっています。もちろん、すべてが制度論ではなく、いくつか経済モデルの実際の数値例を基に、効用関数との対比でマイクロな選択の最適化などが扱われています。公務員試験に出そうなものもあったりします。ただ、制度論ですから社会保障の全体像を政府予算から把握できるようにするとかの工夫も欲しかった気がします。国際比較はいくつかの社会保障政策の分野ごとに扱っていますが、なぜか、国内の社会保障政策全体像の中で個別の年金や医療などの政策がどのように位置づけられているのかが明らかにされていません。個別の制度論から外れるのは最後の2章だけで、所得格差の指標と財源調達の経済分析を扱っています。財源では、消費税の軽減税率を批判していますが、とてももっともです。

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次に、フランシス M. ネヴィンズ『エラリー・クイーン 推理の芸術』(国書刊行会) です。著者は米国のミステリ作家・研究家・アンソロジストだそうです。というよりも、1974年出版の原書 Royal Bloodline、1980年の邦訳書『エラリイ・クイーンの世界』の作者といった方が判りやすいかもしれません。我が国ミステリ界に大きな影響を残した名著です。なお、この作品の英語の原題は Ellery Queen Art of Detection ですから、ほぼ忠実に邦訳されています。2013年の出版です。要するに、前著で積み残した部分を補った完全版、という気がします。ただ、前著との比較は私の能力を大きく超えていますが、私にとって参考になったのは、いわゆる本格推理小説である国名シリーズをはじめとするクイーンの初期の著作、と中期も最初の方の『災厄の町』や『九尾の猫』などであり、1940年代前半くらいを中心とするラジオ・ドラマについては、ほとんど興味ありません。日本人にはアクセスできないでしょうし、聞けたとしてもネイティブの米国人などとは理解度が違うんではないかと思います。ただ、オーソン・ウェルズの「宇宙戦争」が大混乱を巻き起こしたのが1938年ですから、年配の世代にはクイーンといえば小説よりもラジオ・ドラマの印象が強かった時代があるのかもしれません。ほか、19章でランダムに取り上げた作品解説、20章からのクイーンではない作家の代作なども興味深かった気がします。なお、本書の序でクイーンの名前が(日本を除いて)忘れ去られていると著者が記していますが、そうなんでしょうか。私もクイーンの小説はドルリー・レーンが主人公の4作を入れても、国名シリーズと『災厄の町』や『九尾の猫』くらいしか読んでいません。我が家の倅もミステリは好きそうなんですが、彼らの世代になると日本でもだんだんと忘れ去られていくのかもしれません。

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次に、清武英利『プライベートバンカー』(講談社) です。著者は読売新聞の記者を長らく務めたジャーナリストであり、ジャイアンツの球団代表まで勤めましたが、コンプライアンス違反を内部から告発して解雇されています。もともと、ジャイアンツというのは後ろ暗い裏のある球団ではないかと私は勝手に想像していますが、それにしても、著者はとても信頼を置けて尊敬できるジャーナリストではないかという気がします。2015年11月に山一證券の最後の整理を担当した人々を取材した『しんがり』を読んで、このブログに読書感想文をアップしています。本書はタイトルなどからも理解できる通り、シンガポールを舞台にした富裕層や超富裕層の個人資金を預かるプライベートバンカーを中心にしたノンフィクソンなんだろうと思いますが、一部にフィクションの小説的な要素も含まれており、どこまでがノンフィクションの事実で、どこからがフィクションなのかは私には不明です。主人公は実名である旨が明記されており、野村證券営業部隊の出身であるプライベートバンカーです。相続税逃れのためにオフショアのタックスヘブンであるシンガポールに移住して、何をすることもなく英語が出来ないので現地に溶け込めずに日本人ムラでブラブラしている富裕層を相手にしたビジネスなんでしょうが、とても批判的な視点から事実や事実に近いフィクションを取りまとめています。加えて、我が国の国税庁からの長期出張者の活動、私が考える限りはこの部分がもっとも事実を伏せている気がしますが、また、最後は顧客の資金を横領するプライベートバンカーについても取り上げ、とても幅広い取材の苦労がしのばれますが、さすがに、数十億円単位のカネを集めながら、何に投資しているのか、この部分だけはブラックボックスで終えています。仕方ない気もしますが、何か臭いだけでも発しておいて欲しかった気がします。

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次に、ピーター・ペジック『近代科学の形成と音楽』(NTT出版) です。著者は物理学の研究者であり、在野の音楽家でもあるようです。英語の原題は Music and the Making of Modern Science であり、冒頭のはしがきに科学ではなく音楽が先行する旨を強調しているにもかかわらず、科学と音楽を逆に邦題にしたセンスが私には理解できません。2014年にマサチューセッツ工科大学(MIT)出版局から出版されている学術書です。どこがどう学術書なのかというと、基本的に入門レベルの科学史となっています。しかも、英語の原題でも「近代科学」をうたっているんですが、ギリシアの古代科学から始まります。ケプラー、デカルト、オイラーなど、数学の精緻な世界観や近代科学の宇宙論とか古代科学も含めて天文学のハーモニーと音楽は、何となくの直観ながら相性がいいように思わないでもないんですが、相対性理論や特に量子力学になった以降の確率論的な科学といまだに決定論的な音楽については、どう考えるべきなのかは本書では扱っていません。化学や生物学との音楽は疎遠な気がします。これらはどう考えるべきか、興味あるところです。音楽と科学に関する古代からの図版が数多く収録されていて、それらを見ているだけでも豊かな音楽性が身につくような気になったりします。

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次に、有栖川有栖『狩人の悪夢』(角川書店) です。作者はいわずと知れた新本格派のミステリ作家であり、火村シリーズ最新作です。思い起こせば、前作『鍵の掛かった男』を読んで読書感想文をアップしたのが2015年11月8日でしたから、1年余前になります。前作では、作家がタマネギの皮をむくように、ひとつひとつの事実解明に当たった後、最後の最後になって火村准教授が登場して、サヨナラの挨拶である「カウダカウダ」をキーワードとして、パタパタと一気に事件が解決する、という展開だったんですが、この作品は真逆というか、最初の方から火村が登場するものの、最後でとても以外な事実が判明する、という形になります。前作と同じで、新本格派らしからぬ動機のしっかりしたミステリです。「俺が撃つのは、人間だけだ」とうそぶきつつ、犯人を一気に追い詰め犯罪を狩る火村の迫力が尋常ではありません。最近は京都をホームグラウンドとする新本格のミステリ作家の中でも、我が母校の京大推理研出身作家よりも、ついつい、同志社出身の有栖川有栖の作品を読む機会が多いような気がして仕方がないんですが、綾辻行人、法月綸太郎、我孫子武丸などの活躍を期待します。

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次に、中山七里『セイレーンの懺悔』(小学館) です。著者は『さよならドビュッシー』でミステリ作家としてデビューし、私も何冊か読んでいます。この作品は『きらら』の連載を単行本に取りまとめています。主人公はテレビ局の女性取材記者ですが、まだ2年目と若く、中堅のエース格の男性記者と組んでいます。女子高生の誘拐殺人事件を取材しているんですが、テレビ局が放送倫理・番組向上機構(BPO)から度重なる勧告を受け、午後の看板ワイドショーの番組存続の危機にさらされた社会部記者として、ついついスクープを求めて不十分な裏付けで動いて誤報を演じてしまいます。すなわち、警視庁の刑事を尾行した主人公は廃工場で暴行を受け無惨にも顔を焼かれた被害者を目撃してしまい、クラスメートへの取材から被害者がいじめを受けていたという証言を得て、そのいじめの主犯格とその取り巻きを犯人と断定して報道し、別の犯行グループが警視庁に逮捕されて、看板番組のスタッフは総入れ替えとなってしまいます。しかし、その犯行グループも実際に被害者を考察した記憶がないとの供述を始め、驚愕の心煩人が逮捕され、さらにさらにで、その殺害に至るバックグラウンドに主人公が深く深く入り込んでしまいます。最後は、報道するメディア、というか、この作品では古式ゆかしく「マスコミ」という表現を使っていますが、報道機関のあるべき姿に主人公が気づいて締めくくりとなります。メディア論としては極めて薄っぺらですが、ミステリとしてのどんでん返しは読みごたえがあります。

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最後に、依田高典『「ココロ」の経済学』(ちくま新書) です。著者はわが母校の京都大学経済学部の研究者であり、本書では行動経済学を判りやすくカラー刷りで解説しています。とはいうものの、私は本書のタイトルである行動経済学とセイラー教授らの実験経済学とカーネマン教授らの経済心理学の区別がやや曖昧であるものの、これらに対する印象は決していいものではありません。第1に、本書でも指摘していますが、合理的なホモ・エコノミカスを前提とする主流派経済学の恒星に対する惑星というか、太陽に対する地球というか、地球に対する月というか、要するに、合理性を前提とする主流派経済学は第1次接近としてはまだまだ有効であり、それに対するアンチテーゼとしてのみ行動経済学の存在価値があるような気がします。第2に、行動経済学や実験経済学については、経済学のカテゴリーではなく、マーケティングやセ0ルスマンの口上の範囲にある事柄が少なくないような気もします。最後に、強烈に感じるのは、これらの学問領域はあくまでマイクロな個人レベルの選択に関する問題意識であり、企業レベルにすらなっておらず、多くの国民が関心高い景気や物価や失業やといったマクロ経済学に積み上げていく際に合成の誤謬なdpが生じて、マイクロな個人の選択がマクロの好ましい経済活動を保証しない、という点にあります。その意味で、この経済学領域にはまだ私自身で疑問が払拭されていません。

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2017年2月17日 (金)

東京商工リサーチによる「2016年 全国社長の年齢調査」やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、2月3日付けで東京商工リサーチから「2016年 全国社長の年齢調査」の結果が明らかにされています。300万社近い企業データベースから代表者の年齢データを抽出しているそうです。我が国全体の高齢化に従って、社長さんも高齢化しているようです。週末前の軽い話題としてグラフをとともに簡単に取り上げておきます。

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まず、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから 社長の平均年齢推移 を引用しています。5年間で1歳あまりジワジワと高齢化が進んでいるのが見て取れます。我が国全体でそうなんですから、社長さんもそうなんだろうという気がします。10歳刻みの年齢分布で見ると、60代の構成比が33.99%でもっとも高く、それでも、70代以上も24.12%を占めています。また、都道府県別では、社長の平均年齢のトップは高知県の63.21歳、次いで、岩手県の63.02歳、秋田県の62.97歳の順となっており、年齢の上位の県は総務省統計局の人口推計における「都道府県別人口増減率」の減少率上位とほぼ同じ顔ぶれだそうです。まあ、判る気がします。

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続いて、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから 産業別 社長の平均年齢 を引用しています。情報通信業の社長さんが際立って平均年齢が若いとの結果が示されています。これも判る気がします。なお、ほかに、社長さんの年齢と企業業績、すなわち、売り上げや利益、あるいは、黒字赤字などがデータとして示されていますが、ほとんど言いがかりに近いような気がしますので割愛します。

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2017年2月16日 (木)

労務行政研究所による「2017年賃上げの見通し」アンケート調査結果やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、2月1日付けで労務行政研究所から「2017年賃上げの見通し」アンケート調査結果が明らかにされています。興味深いのは、東証第1部および2部上場企業の労働組合委員長などの労働側、同じく東証第1部および2部上場企業の人事・労務担当部長の経営側、そして、主要報道機関の論説委員・解説委員、大学教授、労働経済関係の専門家、コンサルタントなどの労働経済分野の専門家の三者に対する調査を実施している点です。リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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東証第1部・2部上場クラスの主要企業を目安とした世間相場の観点からの回答を求めているので、中小企業を含む全国平均からはかなり上振れている可能性はありますが、今年2017年の賃上げ見通しは、労働側6235円1.98%、経営側6286円1.99%、専門家6510円2.06%との結果でした。特徴的なのは労働側の弱気姿勢で、上のグラフはリポートから、ここ10年ほどの【図表2】実際の賃上げ見通しに見る労使の差の推移 を引用していますが、今年の賃上げ予想は労使で逆転しています。繰り返しになりますが、あくまで、東証第1部・2部上場クラスの主要企業における今年2017年の賃上げがどうなるかについて世間相場の観点からの回答ですから、自社の経営業績や人手不足などの状況とは関係薄いとはいうものの、どうかという気もします。

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加えて、上のグラフはリポートから、これも労使別の【図表4】ベア実施意向の推移 を引用しています。コチラのグラフではベアについては、労働側の方が経営側を上回っているんですが、それでも、2017年は昨年から労働側のベア「実施すべき」比率が急減しています。現在の労働市場を考えると、失業率がかなり低い水準にあり、有効求人倍率もまだ低下を続けていて、もちろん、地域別や産業別などで差はあり得るんでしょうが、何度も繰り返しますが、東証第1部・2部上場クラスの主要企業を念頭に置けば、賃上げはかなり高い確度で実施されるべきであり、少なくとも、各企業の内部留保を賃上げに回すことは可能であろうと私は考えるんですが、そうなっておらず、要求水準ではないものの、労働側の見通しが低いのはとても不思議です。

月曜日にGDP統計の1次QEが公表された際に、+1%成長であれば潜在成長率と照らし合わせても十分高成長であると、このブログにも書きましたが、まだまだ「景気悪い」キャンペーンが労働側の賃上げ見通し感覚に影響を及ぼしている可能性があるのかもしれません。

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2017年2月15日 (水)

ESPフォーキャストに見るトランプ政権の経済政策の評価やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、日本経済研究センターで実施しているESPフォーキャスター調査の2月調査結果が2月9日に明らかにされており、11月調査に続いて「トランプ大統領の経済政策と米国の成長率」と題する特別調査結果が明らかにされています。

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上のグラフは、日本経済研究センターのサイトから引用しています。見れば判ると思いますが、トランプ大統領の経済政策により米国の成長率が高まるかどうかを問うた結果とその理由です。11月の当選直後の回答では、「高まる」20に対して「低くなる」9のダブルスコアだったんですが、2月調査では15-16とほぼ同数となり、慎重派が増えている印象です。その理由についても、「高まる」とする理由ではインフラ投資と法人税引き下げのいずれも回答者が減っている一方で、「低くなる」とする理由の保護貿易と長期金利上昇がともに回答者を増加させています。低くなるのほかの理由として、クローニー・キャピタリズムが上げられています。まるで途上国のようなファミリー・ビジネスが頭に浮かぶんですが、娘であるイバンカのブランドの洋服の宣伝なんかはそうなのかもしれません。

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2017年2月14日 (火)

@nifty 何でも調査団「マスクについてのアンケート・ランキング」やいかに?

先週金曜日の2月10日に @nifty 何でも調査団による「マスクについてのアンケート・ランキング」が明らかにされています。すでに花粉症の季節が始まっており、私もマスクが手放せないところ、アンケートの調査結果からいくつかグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは「マスクについてのアンケート・ランキング」から 普段どのタイプのマスクをつけますか? という問いに対する回答を引用しています。見れば明らかな通り、プリーツ型がかなり圧倒的と考えてよさそうです。男女で2-3割くらいマスクをつけない割合がありますから、マスクをする人の中ではプリーツ型が過半数のようです。私もそうです。続いて、立体型なんですが、私自身はカッコ悪いと思っています。もちろん、コストもプリーツ型に比べて割高な印象があります。この後に、マスクを交換する頻度に関する質問があるんですが、これまた、1日1回が圧倒的です。私もそうですし、グラフの引用はヤメておきます。ただ、男性よりも女性の方がマスク交換の頻度は高そうです。

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次に、上のグラフは「マスクについてのアンケート・ランキング」から どんなときにマスクをしますか? という問いに対する回答を引用しています。自分自身が風邪をひいた時がトップなんですが、それに続いて、風邪やインフルエンザの蔓延に対して予防的にマスクをつけるパターンが出ています。花粉症の季節もそうなのかもしれません。ただ、私の場合は、真ん中へんにある防寒用途も理解を示しています。しかしながら、私の場合はほぼ年中マスクをしていて、夏もマスクする場合が少なくありませんし、1日単位でも、例えば、夜寝る時もマスクすることもあります。私の役所のオフィスは、窓はいわゆるハメ殺しですし、特にこの季節はそれなりに空調も効いていますが、そのオフィスでもマスクをする場合はまれではありません。ですから、毎日1枚マスクを取り換えるとしても、年間300-350枚くらいは使うことになります。

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最後に、上のグラフは「マスクについてのアンケート・ランキング」から マスクを選ぶときに重視する点は? という問いに対する回答を引用しています。フィット感がトップで私も同じです。7番目にカット率が上げられていますが、マスクの布地を通すというよりもスキマから漏れる方が花粉などを通してしまいかねませんから、フィット感よくスキマから漏れにくい形状を重視するべきだと私は考えています。ですから、いろいろと試した結果として現在使っているマスクに落ち着いた記憶がありますが、それでも、適当に「浮気」をして、もっとフィット感のいいマスクがあるかどうかを試していたりします。また、5番目のメガネの曇りについては、少なくとも私の場合は諦めていて、メガネとマスクは両立しませんから、特に今のような花粉症の季節はマスクの方を重視しています。

なかなか興味深いアンケート調査結果でした。快適なマスク・ライフに役立てたいと思わないでもありません。

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2017年2月13日 (月)

10-12月期GDP統計1次QEに見る日本経済は外需依存の物足りない成長なのか?

本日、内閣府から昨年2016年10-12月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.2%を記録しました。外需中心ながら、なかなかの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10-12月の実質GDP、年率1.0%増 外需に伸び
内閣府が13日発表した2016年10-12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.2%増、年率換算では1.0%増だった。プラスは4四半期連続。輸出主導で外需が伸びた。個人消費は振るわなかったが補った。
QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.3%増で、年率では1.0%増だった。
生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.3%増、年率では1.2%増だった。名目も4四半期連続でプラスになった。
実質GDPの内訳は、内需が0.0%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.2%分のプラスだった。項目別にみると、個人消費が0.0%減と、4四半期ぶりにマイナスだった。生鮮野菜の高騰が家計支出を抑制した。
輸出は2.6%増、輸入は1.3%増だった。アジア向けや北米向けに需要が回復し輸出が拡大した。国内需要が伸び、輸入量が増加した。設備投資は0.9%増と、2四半期ぶりにプラスだった。輸出増などを受けて生産活動が回復し、設備投資需要が高まった。住宅投資は0.2%増。公共投資は1.8%減。民間在庫の寄与度は0.1%のマイナスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス0.1%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.3%のマイナスだった。
同時に発表した16年暦年のGDPは実質で前年比1.0%増、生活実感に近い名目で1.3%増となった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2015/10-122016/1-32016/4-62016/7-92016/10-12
国内総生産GDP▲0.3+0.6+0.4+0.3+0.2
民間消費▲0.6+0.4+0.2+0.3▲0.0
民間住宅▲1.0+1.4+3.3+2.4+0.2
民間設備+0.5▲0.3+1.3▲0.3+0.9
民間在庫 *(▲0.1)(▲0.2)(+0.2)(▲0.3)(▲0.1)
公的需要+0.3+0.9▲0.7+0.0▲0.0
内需寄与度 *(▲0.3)(+0.2)(+0.5)(▲0.1)(▲0.0)
外需寄与度 *(+0.0)(+0.3)(▲0.0)(+0.4)(+0.2)
輸出▲0.8+0.9▲1.2+2.1+2.6
輸入▲0.8▲1.1▲1.0▲0.2+1.3
国内総所得 (GDI)▲0.2+1.1+0.6+0.2+0.1
国民総所得 (GNI)▲0.1+0.7+0.3+0.1+0.0
名目GDP▲0.3+0.8+0.3+0.2+0.3
雇用者報酬 (実質)+0.7+1.1+0.3+0.6+0.0
GDPデフレータ+1.5+0.9+0.4▲0.1▲0.1
内需デフレータ▲0.0▲0.3▲0.7▲0.8▲0.3

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2016年10-12月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、特に、黒い外需が大きくプラス寄与している一方で、灰色の民間在庫がマイナス寄与しているのが見て取れます。

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ということで、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前期比+0.3%、前期比年率+1.0%の成長率が見込まれていましたので、ほぼジャストミートしました。直近の市場変動要因である日米首脳会談もほぼほぼ無風で終りましたので、今日の東証の日経平均は少しだけ上昇、で終っています。GDP統計に表れた成長率については、内需が寄与度ゼロで外需のみによる成長との批判もあり得ましょうが、内需のうちの在庫の寄与度が▲0.1%ですので、在庫調整が進んでおり、むしろ、在庫調整の進展が計算上は内需の下押し要因になっている点は忘れるべきではありません。同時に、仕上がりの数字として、10-12月期の四半期で見ても、2016年暦年で見ても、年率+1.0%というのは+1%にやや満たないと目されている潜在成長率をやや上回る水準であり、少子化による人口減少や高齢化が進んだ現在の日本の成長率としては決して悪くないと受け止めています。上のグラフを見て、2016年1-3月期から10-12月期にかけて、ジワジワと前期比成長率が低下しているように見えなくもないんですが、一昨年2015年10-12月期のマイナス成長からのリバウンドを考慮すると、こんなもんという気がします。

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上のグラフは雇用者報酬とインバウンド消費の推移をプロットしています。季節調整済みの系列の実額です。今日公表されたGDP統計の需要項目別の数字を見て、設備投資がマイナスを示した7-9月期から10-12月期にはようやくプラスに転じた一方で、消費がほぼ横ばいながらマイナスに転じた点が懸念されています。昨年秋口の天候要因で野菜などの食品価格が高騰したイレギュラーな要因もありましたが、やっぱり、所得の増加が伴っていないのが大きな要因のひとつと考えられます。ただし、サイクル的な要因として、リーマン・ショック以降に政策効果を発揮してきたエコカー減税・家電エコポイント制度による耐久消費財の買い替えサイクルがそろそろ到来すると言われており、加えて、2014年4月の消費増税前の駆け込みによる需要先食いの悪影響がようやく緩和しつつあると考えられますので、現在の人手不足に伴って、春闘などである程度の賃上げが実現されることを織り込めば、自律的な消費の動きとしては緩やかな回復・拡大に向かうものと期待してよさそうです。外需についても、価格要因の大きな部分を占める為替動向は不透明な部分が残されているものの、米国はもとより欧州や中国も含めて世界経済が底を脱して回復・拡大するという所得要因から輸出がさらに期待できますから、今年2017年は内外需ともに増加する可能性が高いと考えるべきです。

最後に、繰り返しになりますが、私は今日公表されたGDP成長率は決して物足りないものではなく、そこそこの高成長と考えているんですが、海外論調をいくつか見ておきたいと思います。ウォールストリート・ジャーナルは低成長と見ているようですが、ファイナンシャル・タイムズは潜在成長率から見て十分な高成長と私と同じような評価であり、ニューヨーク・タイムズもまずまずよいんではなかろうか、という評価のようです。順不同にご参考まで。

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2017年2月12日 (日)

気象協会による桜の開花予想やいかに?

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やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週水曜日の2月8日に気象協会から第1回目の桜の開花予想が明らかにされています。上の画像の通りです。ヘッドラインを引用しておしまいにします。

2017年の桜 (ソメイヨシノ) の開花は、九州では平年よりやや遅く、そのほか全国的に平年並みの見込みです。福岡で3月23日頃、次いで、東京・高知・熊本で3月24日頃の予想です。3月末までには関東から西の地域で続々と開花の便りが届き、4月上旬には北陸・東北南部で開花する見込みです。桜前線が津軽海峡を渡るのは、4月末の大型連休頃の予想です。

我が家の下の倅も今年は大学受験の年なんですが、受験生諸君も「サクラサク」を目指してがんばって下さい。

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2017年2月11日 (土)

今週の読書も計9冊のオーバーリーディング!

今週も、経済書をはじめ、小説や新書も含めて計9冊です。じつは、今日の午前中のうちに近くの図書館をいくつか自転車で回ったんですが、アデア・ターナーの『債務、さもなくば悪魔』が光が丘図書館に届いていました。ヘリコプター・マネーで話題の本です。来週のいっぱい読みそうな予感です。

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次に、アルン・スンドララジャン『シェアリングエコノミー』(日経BP社) です。著者はインド出身のニューヨーク大学の研究者であり、この分野でもいくつか学術論文を書いていますが、本格的な著書は初めてだそうです。でも、しっかりした本であり、キチンと基本は押さえられている上に、私もよく知らない新しいシェアリングのサービスも大いに取り込んでいます。もっとも、私が知らないだけかもしれません。英語の原題は The Sharing Economy であり、そのままです。2015年の出版となっていますが、ものすごく日進月歩の分野ですので、いくつかの分析はすでに古くなっている可能性があります。ということで、シェアリング・エコノミーの中でも、Uber や AirBnB のような比較的人口に膾炙して以前から存在するビジネスだけでなく、議事ネスとして料金を徴収しない単なるサービスも広く含めている上に、ビジネスやサービスに従事する雇用者や独立起業家の労働待遇、あるいは、法的な地位まで視野に入れており、とても幅広くシェアリング・エコノミーを分析・解明しています。また、ついでながら、シェアリング・エコノミーとほぼほぼ同じ意味で、クラウド資本主義という用語も著者は使っています。従来のコミュニティや家族親族とシェアするのではなく、クラウドとして雲の中に存在する赤の他人から何らかのサービスを引き出す、くらいの意味ではないかと私は受け止めています。また、単にシェアするだけであれば、古くから存在するレンタカーや貸衣装などもシェアしているわけでしょうから、クラウドから引っ張って来るといったニュアンスはいいように思います。いずれにせよ、十分に利用されていない遊休部分のあるストックについて、インターネットからのアクセスにより料金を取る/取らないは別にして、赤の他人に開放する、というのが定義に近い気がします。そこから派生する問題についても、著者は本書で十分に理解して分析も加えています。消費者保護や労働者保護の観点は、現状の行政では対応しきれていないのは当然かもしれませんし、レビューによる選別や淘汰についても、ホントにサービスに対するレビューなのか、提供者の人種や性別・年齢に対する差別意識を含むのか、といった問題です。後者はダーウィン的なデータ進化論とも呼ばれているらしいです。ただ、すでに著作権上の問題ですでに死に絶えたナップスター類似のサービスについては、もう一度スポットライトを当てるのが正しいかどうか、私には疑問でした。本書で取り上げているシェアリング・エコノミーが新たなビジネス・チャンスなのか、単なる底辺への競争をあおるだけなのか、もちろん、シェアリング・エコノミーで大くくりにした一般論はムリでしょうが、直感的には Uber のように、後者である可能性が高いものも少なくないような気がします。こういった方向に対して、本書では p.324 からベーシック・インカムの議論を展開しています。シェアリング・エコノミーを論じる中で、非常に興味深い論点です。この点に着目した書評は多くないような気がしますが、シェアリング・エコノミーのひとつの弱点克服のための手段になりそうな気もします。最後に、この著書で取り上げられているシェアリング・エコノミーのビジネスについては、私が詳細を知らないものもあったりするんですが、少なくとも、Uber や AirBnB については明確な仲介者、というか、プラットフォームの提供者が存在しますが、現時点のこれらのビジネスは、ビジネスとしては中間段階の形態ではなかろうかと私は想像しています。というのは、おそらく、こういった仲介者の存在すらなくなって、ダイレクトに需要者と供給者がインターネットで結びつくのが第2段階の、というか、本来のシェアリング・エコノミーではなかろうか、とホンワカと想像しています。当たるかどうかは不明です。

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次に、デヴィッド・グレーバー『負債論』(以文社) です。著者はニューヨーク生まれの文化人類学者であり、現在、ロンドン・スクール・オブ・エコノミックス大学人類学教授を務めています。同時に、反グローバリズム運動のアクティヴィストでもあるようです。ウォール街占拠運動に参加し、日本にも洞爺湖サミットに反対する運動に参加するために来日した経験があるようなことが訳者のあとがきに書いてありました。英語の原題は表紙画像に見える通り、DEBT であり、2011年の出版ですが増補改訂版が2014年に出されており、翻訳書はそれを底本にしているようです。なお、明示的ではないんですが、2部構成となっており、第8章がどちらかはビミューなんですが、第9章からが第2部になっています。第8章は第1部というよりは第2部なんでしょうが、ブリッジでつなぐ役割のような気もします。訳者あとがきでは、第8章からを後半と位置付けています。ということで、私なりに勝手に分割した第1部は貨幣の歴史を軽く考察し、実際には物々交換の時代は存在せずに、経済学者の頭の中だけにあると論じつつ、貨幣の起源を債務、というか、債務証券とそれに対する裏書による流通、との認識を示しています。でも主要には、哲学ないしモラルの観点から債務を考えます。というのは、債務は返済すべきであるというモラルがある一方で、返済できなければ、「債務奴隷」という言葉がありますが、文字通りに、逮捕・収監されたり、その昔は奴隷の身分に落とされたりしたわけなんですが、債務を返済するというモラルと奴隷制を認めるというモラルに関して、どちらがより強烈にモラルに反しているかという観点から論を進めています。著者の専門分野である文化人類学の観点から、アフリカや資本主義経済ではなかろうという段階の社会における婚礼や犯罪の際の社会的な支払ないし債務と債権の関係を解き明かそうと試みています。私にはどこまでが成功しているかは判断しがたいんですが、興味あるところです。第2部は副題の通りに債務の歴史をひも解いています。ただ、5000年というのはやや誇張があり、紀元前800年から紀元後600年の枢軸時代から始まっています。その次の中世までは、まあ、第1部の続きで軽く読み飛ばしてしまいました。本書の読ませどころは何と言っても第11章の大資本主義の時代と題された章とそれに続く現代までの時代、すなわち、米国発のニクソン・ショックにより貨幣が純粋にフィアット・マネーとなった時代の第12章といえます。新大陸からの貴金属の流入が欧州の価格革命を引き起こしたものの、その9割以上は中国に流れ、産業革命をもってしても欧州は中国に売るものがなく、アヘンを輸出する始末だったことが明らかにされます。その中で、イングランド銀行が中央銀行としての活動を始めますし、大航海時代の金融的基礎が整えられ、金本位制からその放棄に至り、ここ数十年は貴金属の裏付けのない純粋なフィアット・マネーの時代となります。しかし、著者からの具体的な提案はほとんどなく、p.577に示された債務放棄くらいなんですが、訳者あとがきではウォール街占拠運動の要求のなさとリンクさせていたりします。賃労働と奴隷制の類似点については私も理解できなくもないんですが、債権債務の関係をはじめとする格差問題については、著者のように債権債務に限って放棄を促すやり方もある一方で、政府による再分配政策やマルクス主義的な革命路線など、いくつかあるように感じないでもなく、著者的な債権放棄については、時の流れとともに同じことが繰り返される可能性が高いことから、どこまで有効なのかは疑問が残ります。また、歴史を振り返るスコープとしても、債権債務の関係を生じた商業のほかに、産業革命から勃興した製造工業をここまでスコープの外に置くのも疑問です。本書のメインテーマである貨幣と債務に関しては、面白い視点かと思わないでもありませんが、やや私の興味とはすれ違った気がします。

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まず、芝田文男『「格差」から考える社会政策』(ミネルヴァ書房) です。著者は厚生省から中央省庁再編で厚生労働省を経て、京都産業大学の研究者に転じています。本書はタイトルとはかなり違って、大学学部初級レベルの社会政策論の、特に、制度論を取りまとめています。格差論を正面から論じているわけではなく、制度論を展開する中で格差の解消にも役立つ制度である、などの解説を付け加えているだけです。その意味では、看板に偽りありで、私にはかなり物足りないレベルであったことは確かです。ミネルヴァですから、京都にある大学の先生が教科書で売れると判断したのかもしれません。読書感想文として取り上げておきたい論題は、第12章のベーシック・インカムに関する議論です。この章の冒頭には「従来の社会保障・雇用政策のアンチテーゼの性格を持つ」と明記し、厚生省・厚生労働省ご出身の著者からすれば、かなり明確に敵意をむき出しにしつつも、賛成論と反対論をいかにも役人らしくバランスよく並べています。月額7-8万円のベーシック・インカムの場合、4ネットで0-56兆円くらいの財源が必要との試算を示した一方で、年額70兆円近い年金がゴソッと廃止できるとも付け加えています。ひょっとしたら、年金関係の公務員も減らすことが出来そうな気がします。それにしても、消費税率を8%に引き上げる際に、低所得層対策として簡素な給付制度の導入や、かなりベーシック・インカムに近い負の所得税などの検討が始まるんではないかと私は期待していたんですが、公明党が軽減税率にこだわって議論を歪めたのが、返す返すも残念です。軽減税率では、むしろ、高所得層が税額の点で多額の利益を得ますし、低所得層対策というよりも、むしろ、ひょっとしたら公明党支持層なのかもしれませんが、小規模な食料品店などのパパママ・ストアに対する補助金のような役割を期待されているんではないかと私は考えています。高齢者に偏った社会保障制度の打破のためにも、年金を廃止してベーシック・インカムを導入する方向の議論が始まらないものかと、今でも私は期待を込めていたりします。まあ、かなり長い議論になることは明らかなんですが、現行の年金制度が破たんする前に、年金を年金として制度的な継ぎ接ぎの制度論で終わらせるんではなく、高齢者だけでない国民全体の福祉の向上のためにベーシック・インカムの議論を始めるべき時期に差しかかっている気がします。

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次に、ロレッタ・ナポリオーニ『人質の経済学』(文藝春秋) です。著者はイタリア人であり、マネーロンダリングとテロ組織のファイナンスに関する研究の第一人者と紹介されていますが、所属のアフィリエートは示されていません。もう60歳を超えていますので、すでにリタイアしているのかもしれません。また、本書は研究者の学術書というよりは、ジャーナリストが取材したり、公開ドキュメントを当たったりして、ファクトを集めたものではなかろうかという気がしています。少なくとも私が読んだ直観的な受け止めはそうです。そして、イタリア人ながら、本書の英語の原題は Merchants of Men であり、2016年の出版です。なお、タイトルから明らかな通り、人質ビジネスは本書の一部を代表しているに過ぎません。すなわち、イスラム・マグレブ諸国のアルカイダ(AQIM)を主たる取材源とし、人質ビジネス、おそらく「経済学」よりは「ビジネス」に近い印象ですが、その人質ビジネスに始まって、海賊行為とその投資者の解明、密入国の斡旋、るいは、難民ビジネスなどを対象に幅広く取材しています。もっとも、第7章と第14章で誘拐交渉人やシリア人難民のモノローグが登場しますが、その内容については著者を信用するしかなく、どこまで真実性が担保されているかどうかは、読者の中には疑問に感じる向きがある可能性は残されていると私は感じました。そして何より、こういった七時地ビジネスや海賊行為、あるいは、密入国斡旋や難民ビジネスなどは、それなりにリスクが高く、したがって当然に、リターンも大きいビジネスであり、それはイスラム教の教義やましてやジハードと呼ばれる聖戦とは何の関係もない、という事実を私なりに感じ取りました。そして、かなり似た意味で、無名のジャーナリストがスクープ欲しさに紛争地帯に入って七時地になったり、あるいは、その果てに殺害されたりしている事実を見て、ある意味で、そういったジャーナリストは、もちろん、被害者であるものの、持ちつ持たれつの間柄と捉える向きもありそうで怖い気がします。

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次に、榊原英資『日本国債が暴落する日は来るのか?』(ビジネス社) です。著者は著名なエコノミストであり、当時の大蔵省の財務官経験者でもあります。本書はかなり平明な語り口で、タイトルから理解できる通り、主として日本の財政のサステイナビリティについて、財政にとどまらずに金融政策、現在の黒田総裁の下での異次元緩和や社会保障政策による財政赤字拡大などを論じています。基本的には大蔵官僚らしく財政赤字を忌避する志向が鮮明ですが、必ずしもそういった限界を感じさせず、基本的な経済学の役割も十分に読者に理解させようとする著者の方向性には賛同したいと思います。そして、タイトルの問いに対して、著者はあと10-11年と回答しています。もちろん、国債価格の暴落、逆から見れば、金利の暴騰を防止するためには、社会保障をはじめとして、歳出のカットは容易ならざるものがあるとし、消費税を20%まで引き上げることが必要との立場を明らかにしています。しかしながら、その根拠はそれほど明らかではなかったりします。財政を議論の基本として、財政に関しては縦軸方向に歴史をさかのぼって、戦前の高橋財政による国際の日銀引き受けまでスコープを広げたり、また、現時点の経済政策という点では財政にとどまらずに日銀の金融政策まで視野を広げて、著者としてはインフレ目標2%はやや高すぎることから、1%くらいでもいいんではないかと論じていたりします。でも、購買力平価に従えば、円高が進む結果になるんですが、それはお忘れになっているような気がしてなりません。また、財政について世界的な例を引くにしても、せいぜいが1980年代のラテンアメリカ諸国や直近のギリシアなものですから、ホントに日本もそうなるのか、という直観的な疑問は残ります。論証なしで、国内貯蓄を直近までの傾向線で国債累増を考えるというのも簡便法に過ぎるきらいがあると考える読者もいそうです。いずれにせよ、それほど学術的に深い議論を展開しているわけではないので、定量的なエビデンスも示されていませんし、著者の直観的な感覚を知るという意味での読書になろうかという気がします。すぐ読み切れるだけに、それほどためにもならない、といったところでしょうか。むしろ、高校生向け?

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次に、宮内悠介『カブールの園』(文藝春秋) と『月と太陽の盤』(光文社) です。著者は若手のSF作家、ミステリ作家で、私は大いに注目しています。我が家で購読している朝日新聞の1月29日付けの書評で2冊いっしょに取り上げられていたので図書館に予約を入れたところ、何と、2冊いっしょに借りられましたので、私も2冊いっしょに読書感想文を書いておきたいと思います。ということで、まず、『カブールの園』は短編集、というか、中編2編を収録しています。表題作の「カブールの園」と「半地下」です。いずれもややSFがかった純文学のジャンルではないかと私は考えています。表題作は、米国西海岸を舞台に友人たちとシステム開発の起業をした米国在住の日系女性を主人公に、米国の日系移民の歴史と悲劇に焦点を当てています。主人公より年長の世代は、日米どちらの社会と言語に帰属するのかの選択を突き付けられ大きな問題を抱えた歴史に対して、主人公が作った国籍も人種も超える可能性があるプログラムを対比させ、アイデンティティとしての人種の日本人とか言語の日本語に関し、大きな問いを発しています。同時に母娘関係も複雑な様相を見せています。タイトルは、主人公が小学生のころにいじめられていたトラウマの治療をしているバーチャル・ルアルティ(VR)の名前で、これがややSF的な要素を持っているような気がします。もうひとつ、誇張した日本人を演じるプロレスラーの姉と暮らす主人公を描く「半地下」も、東海岸はニューヨークを舞台に、同じ日本人としてのアイデンティティの問題、また、英語の日本語の言語の問題などを掘り下げています。ただ、主人公は姉の死後に日本に帰国します。そこで、さらに言語の問題がクローズアップされます。小説ですからノンフィクションとは違いますが、移民を含む多民族国家の米国の実態が垣間見える気がします。次に、『月と太陽の盤』は基本的に短編ミステリ集で、2012年から2015年にかけて、「ジャーロ」と「ランティエ」に連載されていた作品を単行本にしています。6つの短編に共通していて、主人公の探偵は碁盤師の吉井利仙なんですが、ワトソン役が若い16歳の棋士である愼です。愼の姓は不明です。そして、主要な登場人物がもう2人いて、碁盤の贋作師である安斎優と愼の2歳上の棋士の姉弟子の衣川蛍衣です。収録されている短編は「青葉の盤」、「焔の盤」、「花急ぐ榧」、「月と太陽の盤」、「深草少将」、「サンチャゴの浜辺」の6編です。私は最初の短編「青葉の盤」については、何かのアンソロジーで読んだ記憶があります。でも、結末はすっかり忘れていましたので、私くらいの記憶力になると何度もミステリが楽しめることを実感させられてしまいました。収録された作品の中では、ページ数では表題作の「月と太陽の盤」がもっとも長くて中編くらいのほかは完全な短編です。繰り返しになりますが、碁盤師の吉井利仙が探偵役で謎解きをする連作ミステリです。サザエさん方式ではなく、着実に時間が流れて登場人物が年齢を重ねて行きます。殺人事件があるのは表題作だけなんですが、基本的に、ミステリの謎解きはそれほど本格的ではありません。「深草少将」なんぞは深草の少将と小野小町の物語の謎解きですから、謎の解決というよりは解釈に近く、ひとつの意見というカンジではないかと思います。「あとは、盤面に線を引くだけです。」というのが決めゼリフとして各短編の解決が示される直前に出て来ます。まあ、ミステリですからネタバレも避けたいですし、詳細は割愛します。

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次に、ロジーナ・ハリソン『わたしはこうして執事になった』(白水社) です。同じ作者が出している前作『おだまり、ローズ』については私も読んでいて、2015年1月3日付けの読書感想文のブログで取り上げています。アスター子爵夫人お仕えするメイドさんが作者であり、とても型破りな貴婦人に仕えた型破りなメイドの実話であり、古き良き時代の栄子の上流階級の活動を知る上で、とてもユーモアとウィットにとんだ文章でした。この作品は、やっぱり、お屋敷勤めの奉公人なんですが、男性、特に執事に目を転じています。同じアスター子爵家にお仕えした男性5人に作者が取材し、そのインタビュー結果を取りまとめています。Gentlemen's Gentlemen ですから、「紳士付きの紳士」ということなのでしょう。1976年の出版です。ノンフィクションなのか、あくまで小説なのか、境界はビミョーなところですが、前作と同じように19世紀から20世紀前半くらいまでの英国上流階級やそれを支えた使用人の実態を知ることが出来ます。しかも、今度は男性の視点からです。2番めに登場するアスター子爵家の執事エドウィン・リーは本書でもクリヴデンのリー卿との別名が出ますが、『日の名残り』の主人公のモデルではないかと聞いたことがあります。ホントかどうかは私は知りません。ニューヨークの英国大使館執事として有名なチャールズ・ディーンは英米2国を股にかけた執事ですし、いろいろとアスター子爵家にまつわる名の知れた執事が登場します。私は南米はチリの大使館勤務の経験がありますから、それなりの旧体制のような階層社会は認識があります。まず、我が国では見かけないような社交雑誌があります。Cosas という月刊誌で、実は、私も彼の地の上院議員といっしょに、どこかのパーティーに出席した時の写真が掲載されています。25年ほど前に発行された雑誌ですが、まだ、我が家のどこかに保存してあると思います。メイドはもちろん、執事も大使公邸にはいました。私も大使公邸でのレセプションや大規模なパーティーを采配したことがありますが、現地人スタッフはクロークかかりなどのチップを貰う役割をとても卑しんで嫌がった記憶があります。本書では、お屋敷奉公人の当然の権利としてチップの稼ぎも出てきますから、そのあたりの受け取り方の違いは時を隔てて変化したのか、距離や民族を隔ててアングロ・サクソン人とラテン人では違うのか、そのあたりはよく判りませんが、やや私には理解できないところです。最後に、本書でも王族の接待が投稿しますが、私の勤務地にも皇族がご訪問されたことがあります。本書ではどこかの貴族の旅行がスーツケース99個、とあり、流石にそこまでの量ではありませんでしたが、私のような簡便な観光や出張旅行と比べれば格段に多かったのを記憶しています。記念に焼き物の三段重ねの盃をいただきました。これも、我が家のどこかにあるような気がします。

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最後に、海老原嗣生『お祈りメール来た、日本死ね』(文春新書) です。著者は雇用や労働などのHRに関するコンサルタントであり、私はメディアなどでも見たことがありません。本書は話題になっていたので借りたものの、タイトル的に見て期待はしていなかったんですが、いい意味で期待はずれ、というか、日本的な雇用にも海外、特にフランスの雇用にも、ちゃんとした見識のある良書でした。特に、第5章で卒業後に新卒として採用することのムリ、職種と職務の違いに無理解なまま職種別採用を提唱するムリ、日本的なこと雇用慣行の全否定などにつき、キチンとした見方が示されていると思います。雇用や労働については、社会的な制度・慣行であるとともに、経済学的にある程度の制約条件を課した上での最適化行動と考えるべきです。ただし、雇用が人生の大部分の超長期に渡ってしまうことから、市場のスコープが行き届かずシジョウノシッパイが生じやすい分野とも言えます。私自身が就活をしたのは30年超の大昔であって、その当時は「就活」という言葉すらありませんでしたし、現在のように非正規雇用が広がっておらず、しかも、はばかりながら30年超の大昔に京都大学の経済学部を卒業していれば、就職にはほぼほぼ無敵でしたから、特段の思い出もありません。しかし、数年前にわずか2年間とはいえ、長崎大学経済学部の出向し、しかもその際に、リーマン・ショックというウルトラ級の経済ショックがあり、大学生の雇用の大きく悪化したのを目の当たりに見て、それなりの経験も積んだと自負しています。ですから、本書でも最終章で問うているように、就活を4年生の遅くに持って来れば、ホントに学生は勉強するのだろうか、教員は勉強させるのだろうか、という疑問はもっともです。逆から見て、終活が勉学の妨げになっていない現在の大学教育が問題であろうという気もします。いずれにせよ、タイトルが悪いので敬遠している人には、オススメです。もう少しタイトルを考えるべき新書だという気がします。

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2017年2月10日 (金)

22か月ぶりにプラスを記録した企業物価指数(PPI)の動向やいかに?

本日、日銀から1月の企業物価 (PPI)が公表されています。ヘッドラインの国内物価上昇率は前年同月比で+0.5%の上昇を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の企業物価指数、前年比0.5%上昇 上昇は15年3月以来
日銀が10日発表した1月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は前年同月比で0.5%上昇の97.7となった。前年比で上昇となるのは15年3月以来、22カ月ぶり。市場予想は前年比0.0%と横ばいだった。原油など国際商品価格の上昇や円安進行が寄与した。
前月比では0.6%上昇となった。前月比では石油・石炭関連や化学製品のほか、鉄鋼、非鉄金属などが上昇した。米国や中国のインフラ投資への期待感から銅の国際市況が回復したことも寄与した。
公表している746品目のうち前年同月比で上昇したのは273品目、下落は401品目だった。上昇と下落の品目差は128品目で、16年12月(186品目)から縮小した。縮小は3カ月連続。
日銀調査統計局は「国内需要の状況は徐々に強まっているが、企業物価への影響はあまりみられない。上昇の主因は国際商品市況の回復や円安の進行」と説明している。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。上の2つのパネルで影をつけた部分は、景気後退期を示しています。ということで、

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率は保ち合いと予想されていたんですが、ほぼ2年振りにヘッドラインの国内物価の前年同期比でプラス領域に達しました。基本的には、国際商品市況における石油価格の反発と円安による物価上昇であり、少なくとも前者は日銀金融政策の成果にはカウントされないんだろうと受け止めています。例えば、国内物価のうち石油・石炭製品は1月の前年同月比が+22.3%の大幅な上昇となっています。また、農林水産物も+4.7%の上昇と秋口からの天候不順による価格上昇がまだ続いていえる印象です。また、国内物価以外でも、前年同月比上昇率で見て、輸出物価上昇率も昨年2016年12月の▲1.8%から今年1月には+0.8%に、輸入物価も12月の▲2.6%から+4.5%に、それぞれ、1月からプラスに転じています。物価の先行きについては、小国になってしまった我が国の経済動向もさることながら、国際商品市況の方向性に強く影響を受けそうな気もしますが、基本的に、新興国も含めて世界経済が緩やかに回復を示すとともに、我が国景気も持ち直しを続けており、国内の需給や人手不足を背景に一般物価は緩やかな上昇を続けるものと私は考えています。

なお、ご参考まで、この1月指数から企業物価指数(PPI)は2015年基準になっています。消費者物価指数(CPI)の基準改定と異なり、世間的に注目されないものですから、データを拾っている間に先月統計までとかなり違っていて、少し面食らいました。ただ、企業向けサービス物価はまだ2010年基準のようです。指数をそのままプロットすることは余りない指標ですし、上昇率で見ると大きな違いはないのかもしれません。

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2017年2月 9日 (木)

設備投資と機械受注はいよいよ本格的な回復に向かうか?

本日、内閣府から昨年2016年12月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比+6.7%増の8898億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の機械受注6.7%増 1-3月は3.3%増見通し
10-12月は0.2%減、2四半期ぶりマイナス機械受注

内閣府が9日発表した12月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比6.7%増の8898億円だった。増加は2カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(3.1%増)を大幅に上回った。製造業と非製造業がともに増加した。判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業の受注額は1.0%増の3670億円と2カ月連続で増加した。需要者の業種別では、化学機械や電子計算機が伸びた「化学工業」が71.8%増と急増した。原子力原動機や重電機が増えた「非鉄金属」も53.2%増えた。
非製造業の受注額は3.5%増の5002億円と2カ月ぶりに増えた。需要者の業種別では、鉄道車両で大型案件があった「運輸業・郵便業」が60.9%増と伸びが目立った。建設機械や電子計算機が増えた「建設業」は16.9%増だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は6.7%増だった。
併せて公表した2016年10-12月期の船舶・電力を除いた民需の受注額は2兆6018億円と前期比0.2%減だった。電子通信機や産業機械の受注が予想以上に伸び、内閣府が昨年11月に示した16年10-12月期見通し(5.9%減)より減少幅は小さかった。
16年通年の船舶・電力を除いた民需の受注額は10兆2600億円と、前の年に比べ1.7%増えた。増加は4年連続。製造業は1.6%減の4兆3010億円と4年ぶりに減った。非製造業は4.1%増の5兆9854億円と2年連続で増えた。
1-3月期の船舶・電力を除いた民需の受注額は3.3%増の見通し。内閣府は「原動機や航空機の需要が好調に推移する」とみている。製造業は前期比11.6%増え、非製造業は2.3%減にとどまるとしている。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、その次の企業物価とも共通して、景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスではコア機械受注で見て前月比+3.1%増が予想されていたんですが、大幅にこれを超えた増加を示しています。しかしながら、先月11月の▲5.1%減もあり、10-12月期を通しては▲0.2%減を記録しています。このため、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いたようですが、先月の段階では10-12月期は▲5.9%減を予想していただけに、マイナス幅もかなり小幅でとどまったと私なんぞは受け止めています。しかも、今年2017年1-3月期の予想は前期比で+3.3%の増加を見込んでおり、海外経済情勢や経済外要因などの不透明さは払拭し切れないものの、基本的には設備投資や機械受注は本格的な回復に向かう可能性が高まったと考えるべきです。ただ、「本格回復」といっても、増加率や増加幅などを照らし合わせると、まあ、人によっては表現上の違いながら、緩やかな回復の範囲にとどまるのかもしれません。しかも、下振れリスクは基本的に海外要因ですが、足元の為替相場を見ると円高方向に向かう可能性は否定できませんし、米国のトランプ政権の通商政策や英国のBREXITの行方、大陸欧州のいくつかの国政選挙など、経済の自律的な動きを反映するものではない経済外要因もどのような方向に向かうか、現時点では不透明です。いくぶんなりとも雇用もそうですが、投資は中長期的な経済の見通しに基づいて実行するものだけに、こういった先行きの不透明さは下押し要因になる恐れがあると考えるべきです。もちろん、自律的な経済要因としては、企業部門の利益水準がかなり高い点や人手不足に伴う合理化や省力化のための投資が見込まれ、米国はもとより欧州や中国などの海外経済の回復に伴う外需も上向きの方向にあり、2020年東京オリンピック・パラリンピックのためのインフラ整備も視野に入って来ており、そろそろ、設備投資や機械受注が本格的に回復してもいい時期であることも確かです。最後に、12月データが利用可能になりましたので、いつもでしたら四半期ベースの達成率のグラフを書くんですが、今夜は遅くなったためグラフは割愛します。ただ、2016年いっぱいは、1-3月期103.2%、4-6月期99.1%、7-9月期98.8%、10-12月期104.4%と、景気転換点としてエコノミストの経験則である90%ラインより上に達成率が位置していたことだけ確認しています。

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2017年2月 8日 (水)

大きく低下し基調判断が下方修正された景気ウォッチャーと黒字の続く経常収支!

本日、内閣府から1月の景気ウォッチャーが、また、財務省から昨年2016年12月の経常収支が、それぞれ公表されています。、景気ウォッチャーは季節調整済みの系列で見て、現状判断DIは前月比▲1.6ポイント低下の49.8を、また、先行き判断DIは前月比▲1.5ポイント低下の49.4を、それぞれ記録し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で1兆1122億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の街角景気、現状判断7カ月ぶり悪化 判断11カ月ぶり下げ
内閣府が8日発表した1月の景気ウオッチャー調査によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整値)は前の月に比べ1.6ポイント低下の49.8だった。悪化は7カ月ぶり。内閣府は基調判断を「着実に持ち直している」から「持ち直しが続いているものの、一服感がみられる」に下方修正した。判断を引き下げたのは2016年2月以来11カ月ぶり。
部門別にみると、企業動向と家計動向、雇用の3部門がそろって低下した。企業動向では、製造業と非製造業ともに低下。家計動向も小売り関連を除き悪化した。
街角では企業動向に関して「為替が円安で推移していること、国内の景気がいまひとつ伸びていないことで材料仕入れ価格が上昇する一方で、国内販売価格はそれに伴う値上げを据え置きせざるを得ない状況になっており、収益上苦しい状況が続いている」(中国・スポーツ用品製造)との声があった。家計動向では「大雪の影響があり来客数が減少している」(東海・スーパー)という。
2-3カ月後の先行きを聞いた先行き判断指数(季節調整値)は、前の月から1.5ポイント低下し49.4だった。悪化は2カ月連続。家計動向と企業動向、雇用がそれぞれ低下した。
街角では家計について「税制改正により、エコカー減税の軽減率が下がるため、該当する車種の販売量の落ち込みを懸念している」(東北・乗用車販売店)との声が聞かれた。家計では「労働契約法や改正労働者派遣法の影響で、徐々に直接雇用への切り替えが進む可能性も高い。継続的な派遣活用が見通せなくなると企業からの派遣求人依頼数が減少し、採用時から直接雇用化を望む企業が増加してくる」(九州・人材派遣会社)との見方もあった。
経常黒字9年ぶり高水準 昨年、旅行収支は最大
財務省が8日発表した2016年の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は20兆6496億円の黒字だった。原油安で貿易収支が大幅に黒字転換したことが寄与し、前年同月から4兆2370億円黒字幅を拡大した。経常収支の黒字額は07年(24兆9490億円)以来9年ぶりの高水準で、通年ベースで過去2番目の大きさだった。訪日外国人の増加を背景に旅行収支は過去最大となった。
貿易収支は5兆5793億円の黒字と前年同月(6288億円の赤字)から黒字に転換した。原粗油や液化天然ガス(LNG)など燃料価格の下落で輸入額が16.6%減少。鉄鋼や自動車の低迷で輸出も8.5%減少したが、輸入の落ち込みが上回った。
サービス収支は9748億円の赤字(前年同月は1兆6784億円の赤字)だった。赤字額は1985年以降で過去最少。旅行収支が1兆3391億円の黒字と、比較可能な1996年以降で過去最大となったことが寄与した。
第1次所得収支は18兆1360億円の黒字と前年同期(20兆6526億円)に比べて黒字幅を縮小した。円高で企業が海外事業への投資で受け取る配当金や証券投資からの収益が目減りした。
併せて発表した16年12月の経常収支は1兆1122億円の黒字だった。経常黒字は30カ月連続。12月としては2010年(1兆3529億円の黒字)以来6年ぶりの高水準だった。貿易収支が8068億円の黒字と前年同月から6125億円黒字幅を拡大。輸出が6.6%増と16カ月ぶりに増加し、輸入は原油安の影響で3.3%減少した。サービス収支は2866億円の赤字、第1次所得収支は6759億円の黒字だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいがちです。さらに、経常収支は年統計がほとんどで、12月の月次統計は最後のパラだけでした。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーは現状判断DIも、先行き判断DIも、ともに大きく低下し、統計作成官庁である内閣府では基調判断を半ノッチ引き下げて「着実に持ち直している」から「持ち直しが続いているものの、一服感がみられる」に修正しています。しかし、私の方では判断に少し迷いがあります。というのは、大きく低下した雇用動向を別にして、現状判断DIでは前月からの変化幅が全体の▲1.6ポイント低下に対して、家計動向関連で▲0.7ポイント、企業動向関連で▲2.7ポイントと、家計部門の足元の判断の方が弱く、特に、家計動向関連のうちの飲食関連が▲2.1と最大の低下を示し、企業部門では製造業の方が非製造業よりも前月差で大きな低下を示している一方で、先行き判断DIでは、この真逆になっています。すなわち、家計動向関連が前月差▲1.1ポイントの低下を示し、企業動向関連は▲0.7ポイント低下ですし、家計の中では飲食関連が逆に+2.4ポイントの上昇を示し、企業部門の中では製造業が▲0.3ポイントの低下で済んでいるにもかかわらず、非製造業では▲1.1ポイントの低下となっています。要するに、モメンタム的な足元で下がったセクターは先行きでももっと下がる、というのではなく、足元で下がったセクターは先行きは反発する、という逆方向への動きを感じているマインドが示された、と私は受け止めています。ですから、1月のマインド低下は、この先もドンドン低下して行くドロ沼ではなく一時的な調整であって、先行きは何らかの要因で反転する可能性も秘めている、との割合と堅調なマインドではなかろうかという気がします。それにしても、トランプ米国大統領の通商政策や欧州の国政選挙などが、不透明な海外要因の印象を強めているのは確かなところです。これらの経済外要因については、私も不安を感じないでもありません。

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次に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもほぼ震災前の水準に戻った、と私は受け止めています。なお、12月統計をもう少し詳しく見ると、財務省のサイトから季節調整していない原系列に基づく情報によれば、為替相場はドル・円で米ドル当たり115.95円と、前年同月の121.84円の水準から4.8%の円高に振れていますが、他方で、原油価格はドルベースではバレル当たり46.67米ドルと、前年同月比+7.2%の上昇でしたが、円ベースではキロリットル当たり33,184円と、▲1.2%の下落でした。昨年2016年の地域別経常収支を見ると、やっぱり、国際商品市況における石油価格の低下が我が国の貿易を黒字にし、それがひいては経常収支の黒字幅の拡大をもたらした、と考えることが出来ようかと思います。他方、+20.6兆円の黒字のうちで国別で判明しているのが+16.4兆円に上り、うち、米国から+13.4兆円の黒字を計上しています。国別で判明していない分を含めても経常黒字の6割以上を米国から計上していることになります。近く予定されている日米首脳会談でアジェンダに上ったりするんでしょうか?

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2017年2月 7日 (火)

本日公表の景気動向指数に見る企業部門と家計部門の景気動向やいかに?

本日、内閣府から昨年2016年12月の景気動向指数が公表されています。CI一致指数は前月比+0.1ポイント上昇の115.2を示した一方で、CI先行指数は+2.6ポイント上昇の105.2を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の景気一致指数、2年9カ月ぶり高水準
内閣府が7日発表した2016年12月の景気動向指数(CI、10年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.1ポイント上昇し115.2だった。4カ月連続で上昇し、14年3月の117.8以来2年9カ月ぶりの高水準になった。電子部品デバイスや化学などが上昇し、鉱工業用生産財出荷指数や鉱工業生産指数が伸びた。内閣府は「高水準で堅調に推移している」との見方を示した。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。前月から比較可能な8指標のうち鉱工業用生産財出荷指数、有効求人倍率、鉱工業生産指数、中小企業出荷指数(製造業)の4つがプラスに寄与した。一方、投資財出荷指数(除く輸送機械)と、冬物の衣料販売が不振で商業販売額(小売業)はマイナスだった。
数カ月先の景気を示す先行指数は2.6ポイント上昇の105.2だった。上昇は3カ月連続。消費者態度指数や新規求人数(除学卒)などが寄与した。
内閣府は3月に開示する1月の景気一致指数から、中小企業出荷指数(製造業)を除くと発表した。同統計が昨年12月分を最後に公表を休止するため。景気一致指数は1つ少ない9指標で算出する。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だいう気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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実は、このブログでは先月の景気動向指数についてはやや懐疑的で、商業販売統計が伸びている背景は、国際商品市況における石油価格の動向から名目値で伸びているだけではないか、との懸念を示しておいたんですが、懸念は懸念だったものの、今日の公表指数から見て、明らかに景気は改善を示していることが裏付けられた気がします。寄与度の絶対値で比較的大きな項目を見ると、一致指数へのプラス寄与については、鉱工業用生産財出荷指数と有効求人倍率(除学卒)が上げられ、マイナス寄与では、投資財出荷指数(除輸送機械)と商業販売額(小売業)(前年同月比)と商業販売額(卸売業)(前年同月比)があります。また、先行指数へのプラス寄与では、消費者態度指数と新規求人数(除学卒)と日経商品指数(42種総合)などがあり、マイナス寄与では、最終需要財在庫率指数と新設住宅着工床面積といったところです。マインド指標の消費者態度指数だけが例外ですが、先月に続いて、ハードデータの範囲では弱い家計部門と強い企業部門がクッキリと分かれている気がします。あえてキツめの表現をすれば、内部留保を溜めまくっている企業部門と、そのあおりを受けて賃上げがかなわずに消費が伸び悩んでいる家計部門ということになろうかという気がします。家計部門も消費者態度指数や景気ウォッチャーなどのマインド指標は改善を示しているものの、賃上げに基づく所得の増加がなければ消費が回復してもサステイナビリティに疑問が生じます。米国新政権の通商政策の不透明性などはものともせずに、人手不足を背景にした賃金引上げを望みたいと思います。

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2017年2月 6日 (月)

本日公表の毎月勤労統計の賃金動向をどのように見るか?

本日、厚生労働省から昨年2016年12月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から横ばいを示し、他方で、現金給与指数のうちの所定内給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.1%の伸びとなっています。ただし、ヘッドラインの消費者物価がこの秋の天候不順で野菜の高騰を受けて12月は上昇していますので、物価上昇を差し引いた実質賃金に転じています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

16年の実質賃金、5年ぶり増、16年12月は1年ぶり減少 毎勤統計
厚生労働省が6日発表した2016年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は0.7%増となり5年ぶりに上昇した。企業の賃上げ効果で名目賃金にあたる現金給与総額が前年を上回って伸び、ボーナスなどの特別給与も増えた。一方で消費者物価指数(CPI)は原油安などで4年ぶりのマイナスとなった。
基本給や残業代など現金給与総額(月平均)は前年比0.5%増の31万5372円と3年連続のプラスとなった。特別給与は夏季のボーナス増などが寄与し2.0%増の5万5637円だった。パートタイム労働者の時給は1085円と過去最高を更新し、調査を開始した1993年以降で最高の水準となった。外食などで人手不足が続き時給の上昇が続いている。
同時に発表した16年12月の実質賃金は前年同月比0.4%減となり15年12月以来1年ぶりに減少した。雇用所得環境の改善で名目賃金の上昇基調は続いたものの、12月は生鮮食品の価格上昇などで消費者物価の上昇が賃金の伸びを上回った。厚労省は前月に続き賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を据え置いた。
現金給与総額は0.1%増の54万4823円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与は24万487円と0.5%増えた。一方、残業代など所定外給与は1.9%減の2万9円、特別給与は0.1%減の28万4327円だった。

年データが利用可能となったので、それに着目した部分が前半を占めていますが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、1番下の3番目のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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12月の生産の伸びがかなり小さかったことから、生産の派生需要である労働へのインパクトも小さく、製造業の所定ぎあい労働時間は季節調整済みの系列で見て前月から横ばいでした。また、賃金については上のグラフで示した通り、基本的に私は名目で見ているんですが、いわゆる恒常所得部分の所定内賃金については、ほぼ安定的に前年比でプラスを記録するようになったと受け止めています。ただし、引用した記事にある通り、ヘッドラインの消費者物価上昇率でデフレートした実質賃金は、天候不順に起因する野菜価格の高騰などから、最近時点で急ブレーキがかかっているのも事実です。11月統計では速報時点でマイナスを記録した後、確報で修正されてゼロとなりましたが、直近統計の12月速報ではとうとう前年から伸びがマイナスになってしまいました。このあたりは消費者マインドの低迷にもつながりかねないとと私は考えています。ただ、上のグラフのうちでも一番下のパネルに示された通り、フルタイムの一般労働者の増加率がパート労働者の伸びを上回り始めました。現在、かなり完全雇用に近いものの、決して完全雇用に到達していない労働市場の状況を考えると、賃金よりも先に正規雇用の増加という形で雇用の質の向上がもたらされるのかもしれません。完全雇用に伴う賃金上昇はさらに時間がかかるのかもしれませんが、よし悪しは別として、少なくともフルタイムの一般職員の方が給与水準が高いですから、パートタイムよりもフルタイム職員が増加するのはそれだけでマクロの所得増につながると考えるべきです。12月はボーナス月ですので差が大きくなっていますが、2016年12月ではフルタイムの一般労働者の現金給与総額が740,533円であるのに対して、パート労働者はわずかに107,963円にしか過ぎません。ボーナスの影響がより小さい例ということで、昨年2016年11月の先月統計を見てもフルタイムの一般労働者355,672円に対して、パートタイムは96,117円と4倍近い差があります。

賃金に限って先行きを考えると、目先は春闘の動向が大きな比重を占めます。春闘については、米国トランプ政権の通商政策の不透明さが何らかの悪影響を及ぼす可能性を否定できません。加えて、春闘とは別要因ながら、政府の働き方改革により残業が減少すれば、基本給で手当てできない限り、所得が減少することにもなりかねません。それでも、繰り返しになりますが、完全雇用による労働単価としての賃金上昇に先立って、雇用者増とともにフルタイム労働者の増加によるマクロの所得増加が生じる効果は無視すべきではありません。

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2017年2月 5日 (日)

今週の読書はかなり大量に読んで計9冊!

今週もかなり大量に読みました。特に、『ナショナリズムの昭和』が中身はかなり疑問だらけで大したことないながら、何と、700ページの大作でしたので読み切るのに時間がかかりました。でも、この週末に借りた本の中には800ページを超える本もあったりしました。今週もいっぱい読みそうな予感です。

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まず、日本経済研究センター[編]『激論 マイナス金利政策』(日本経済新聞出版) です。例えは悪いんですが、2014年11月22日付けの読書感想文で取り上げた『徹底分析 アベノミクス』と同じように、マイナス金利政策について効果ありとする論者と効果を疑問視する論者を並べて編集してありますが、元々は日本経済研究センターにおける講演会の議事録を起こしたもののようです。ということで、本書では日銀の理事や政策委員をはじめ、日銀OBや日本を代表するエコノミストら15人の識者が、マイナス金利政策の効果を中心に金融政策をめぐって熱い議論を繰り広げています。その陣容は上の表紙画像に並べてあります。議論は、(1)異次元緩和政策・マイナス金利政策の成否、(2)インフレ期待の引き上げに関する政策の論理の一貫性、(3)財政危機と隣り合わせの出口問題、(4)マイナス金利政策に特有な直接的な政策コスト・副作用の問題、(5)市中銀行のストックが尽きかねない国債購入、マイナス金利の深掘りなど金融政策技術上の限界、(6)異次元金融緩和政策の代替案、そして、マイナス金利政策以上に過激とみられるヘリコプターマネー政策へと及びます。私が読んだ限りでは、いずれもマイナス金利に効果ありとする意見の持ち主ですが、伊藤教授と日銀政策委員の原田さんのチャプターが理解しやすく、私の感覚とも合致していたような気がします。もっとも、私はその昔に原田さんとの共著論文を書いているくらいですから、経済に対する見方が似通っているのは当然です。まあ、私の直観的な理解では、旧来の日銀理論に立脚してマイナス金利の効果に疑問を持っている論者は、そもそも、金利レジームであろうと、量的なレジームであろうと、イールドカーブを対象にするレジームであろうと、かつての速水総裁を思い出しますが、ともかく円高と引き締めが好きで、何がどうあっても金融緩和に反対、という意見を持ち、ひたすら企業や国民に痛みを伴うカギカッコ付きの「構造改革」がお好きなんではなかろうか、と思わせる下りがいくつかありました。

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次に、井上智洋『ヘリコプターマネー』(日本経済新聞出版) です。この著者の主張は先日1月5日付けの読書感想文で文春新書の『人工知能と経済の未来』を取り上げたところです。その際も同じことを書いたんですが、本書も非常に正統的なマクロ経済学に基づいていると私は受け止めています。ですから、生産性の伸びに応じた貨幣を供給して需要不足を金融政策で創出する必要性なども共通しています。そして、冒頭(p.21)から「金融政策や財政支出拡大に積極的であるアベノミクスは左派的な経済政策」であり、「反対に、今の自民党より財政支出削減や増税に積極的で、金融緩和に否定的な民進党は、経済的には右派的である」と指摘し、まったく私も同感です。本書の著者の考えでは、貨幣の創造により需要は創出できるということであり、そして、長期にも価格の粘着性を仮定すれば、需要の不足が生じることがあり得る、というものです。昔々の大昔に私が経済学を習い始めたころ、経済に何かショックが生じる際、短期とは価格が固定的で数量で調整する世界であり、長期とは価格がすべてを調整する世界であり、しかも、我々はみんな死んでいる世界である、ということでしたので、長期でも価格が粘着的であれば需要不足は生じる可能性はあります。でも、私の知る大昔の経済学では長期とは価格が伸縮的であって粘着的ではなかったので、少し違和感はありました。それはともかく、その上で、長期のフィリップス曲線は正常なインフレ率の下では垂直かもしれないが、極めて低いインフレ率のデフレ経済の下ではマイナスの傾きを持っているとし、長期デフレ不況の理論的基礎としています。そして、ここからが著者の本領発揮なんですが、財政政策としては、ヘリコプター・マネーにより財源を調達した上で、ベーシック・インカムを実施することとし、他方、金融政策としては、銀行には100%準備を課し、すなわち、信用乗数をゼロにして貸し出しを禁止し、企業部門の資金調達は直接金融で社債などの発行で家計から借り入れる、というものです。いくつか疑問があるのは、ヘリコプター・マネーを実施した時点で中央銀行の独立性は完全に失われると私は考えており、財政政策と金融政策は一体化するんではないかと思います。そして、議論の本筋ではありませんが、本書で著者は量的緩和とゼロ金利を混同しているように見受けられます。中央銀行がマネーストックを増加させられず、単なる当預の「ブタ積み」になっているのはゼロ金利政策だからではなく、金融政策が金利ターゲットからレジーム・チェンジして当預をターゲットにした量的緩和に移行したからです。本書の論旨には大きな影響はありませんが、ゼロ金利と量的緩和のレジームを区別することはそれなりに重要かという気がします。いずれにせよ、本書では、ヘリコプター・マネーの議論に一石を投じるとても正統的ながら、おそらく旧日銀理論を信奉するエコノミストにはとても「奇っ怪」に見える議論を展開しています。ヘリコプター・マネーの議論を実りあるものとするため、多くのエコノミストが本書を読むよう、私は願っています。

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次に、モハメド・エラリアン『世界経済危険な明日』(日本経済新聞出版) です。著者は、たぶんエジプト人だったと記憶しているんですが、国際通貨基金(IMF)に勤務した後、投資会社PIMCOのCEOなども務めています。米国のオバマ政権でも公職についていたようです。英語の原題は The Only Game in Town であり、2016年の出版です。英語の原題はその昔のカーペンダーズの「ソリテア」にあった言い回しではないかと思うんですが、まあ、決してベストとは思えないけれど他の選択肢がない、くらいの意味ではないかと受け止めています。私の英語力ではそれ以上のことは判りません。といことで、リーマン・ショックなどの金融危機に続く Great Recession 大不況の後で、米国連邦準備制度理事会(FED)、欧州中央銀行(ECB)、イングランド銀行(BOE)、日銀などの中央銀行が世界経済にとって「最後の頼みの綱」となったわけですが、実は、中央銀行のとてつもない金融緩和それ自体が経済や金融を歪めかねない事態に陥っていて、金融緩和頼みではもはや経済が回らず、むしろ、その金融緩和政策がリスクを高め、所得・資産の格差を広げるなど問題を生み出していると指摘し、このままでは世界は重大なT字路の分岐点に直面すると警告しています。そして、どうすればいいかについて、急にお話しのレベルが違ってくる気がしましたが、先行き不確実な経済の中で多様性を重視した判断や組織、さらに、いくつかに分岐しかねないシナリオ分析が重要になり、投資においては流動性を重視すべきである、ということを指摘しているように私は受け止めました。指摘している経済問題は私のような官庁エコノミストが解決すべき課題だと思うんですが、解決方法が民間投資銀行の運営方針ではないのか、という気もします。問題の指摘はその通りなんですが、解決策や政策対応にやや不満が残りました。手短かに、サッサと店仕舞いにしておきます。

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次に、ハーマン・サイモン『価格の掟』(中央経済) です。著者は研究者の経験もありますが、基本的には、プライシングなどを専門とする経営コンサルタントのようです。英語の原題は Confession of the Pricing Man であり、2015年の出版です。企業活動を含む経済活動を評価す場合は、例えば、一昨日の金曜日に取り上げた成長率のように実質値で評価する場合が多く、すなわち、価格の変動を除去して数量ベースで評価するわけです。しかし、実際に企業活動で追い求められるべきは利潤の最大化というのが伝統的な経済学の立場であり、利潤とは売上げからコストを差し引いたものであり、売上げとは数量に平均価格を乗じた値として求められるのは当然です。ですから、経済活動、中でも企業活動を数量ベースで評価するのは片手落ちであり、価格付けの観点からも考えるべきである、というのが本書の立場であり、至極もっともな主張です。例えば、企業価値のひとつの尺度である株価なども企業業績に正の相関を持つと考えられているわけですから、価格動向は重要です。しかも、伝統的な経済学では市場における価格決定を需要曲線と供給曲線の交点から求められるとし、実は、市場で観測できるのは交点のデータだけであって、供給曲線はまだしも需要曲線は極めて観測が難しいと私なんぞは考えています。そして、現実の経済には古典派の考えるような完全競争市場などが存在するハズもなく、何らかの価格決定力を企業サイドが持っていることは明らかです。その点から、本書の極めて実践的なアプローチはとても興味深いものでした。特に、第3章のプライシングの心理学はカーネマン-ツベルスキー流のプロスペクト理論や価格のアンカリングなど、エコノミストにもなじみ深い分野であり、私の理解もはかどった気がします。そして、改めての感想ですが、行動経済学についてはエコノミストの観点ではなく、経営コンサルタントの目から分析した方が効率的な気がします。最後に、いくつか気づいた点ですが、私のプライシングに関する最大の関心のひとつは為替の変動と輸出価格付けの対応だったんですが、本書ではそれはありませんでした。その昔は、例えば、円安になれば外貨建ての価格を引き下げて数量を稼ぐ、という企業行動だったのが、最近時点では、円安になっても外貨建ての価格を変更せず、従って数量の増加を求めるのではなく円建ての売上げを伸ばす、という方向に企業行動が変化しているのではないか、と言われています。そのあたりの評価、というか、どう見るかを知りたかった気がしますが、本書の見方を私なりに敷衍すると、最近時点での外貨建ての価格を変更して数量を求めるのではなく円建ての売上げを伸ばす、という方向を評価するような気がします。企業にとって、右下がりの需要曲線から生じる消費者余剰をセグメント化された価格付けによって、いかにして企業サイドに取り込むか、の観点が重要という事実も理解できます。

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次に、保阪正康『ナショナリズムの昭和』(幻戯書房) です。著者はよく判らないながら、日本近代史に関するノンフィクション作家ということのようで、研究者ではないと本書にも記されてあります。本書は文藝春秋の『諸君!』に連載されていた論考を取りまとめて加筆修正して単行本にしています。700ページほどありますが、それほど中身が充実しているわけでもありません。重複している部分も少なくないですし、ダラダラと文章が続いている印象もあります。本書で著者は独特の視点を披露し、ナショナリズムの上部構造として政府や軍部を措定し、国益・国権・国威を置き、その下部構造として自然との共存、家族、共同体などを置いています。この時点で、「国益」を無批判的に用いていて、たぶん、判ってないんだろうなと私は予想してしまいました。その通りでした。国権はまだ西洋的な枠組ながら国際法の観点から理解できなくもないですが、国益については国内の階層構造や利益関係の中で、どのようにでも定義できますし、外からも見て取ることができます。ここに名ションリズムの本質のひとつがあるのであり、どうとでも取れるカギカッコ付きの「国益」を自己の属する集団などに有利なように解釈して、この作者のいうところの下部構造から支持を引き出し、ナショナルな国益に関する民主主義的な国民からの合意ないままに暴走したのが戦前日本の姿だったという分析は出てきません。逆に、本書では、ファナティックな戦前日本の軍国主義をナショナリズムではないと見ているようです。昭和史についてはそれなりに史料の調べがついているように感じ取れましたが、ナショナリズムに関しては基礎的な文献も目を通していないような印象を持ちました。一部の右派的な人々にはそれなりに受け入れられる論考かもしれませんが、著者本人が研究者ではないと自ら自任する通り、国際的な学界からの評価は得られそうもありません。ボリュームの割には失望感が大きかった気がします。

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次に、西森秀稔・大関真之『量子コンピュータが人工知能を加速する』(日経BP) です。著者は東京工業大学と東北大学の研究者です。早くても今世紀後半といわれてきた量子コンピュータが、カナダのベンチャー企業であるD-Wave社で、実験機や学術用途ではなく、いきなり商用機が開発され、しかも、世間の耳目を集めるにはもってこいというか、NASAやグーグルがそれに乗っかったものですから、ものすごい注目を集めた新技術です。それは、従来から開発途上にあった量子ゲート・コンピュータではなく、量子アニーリング・コンピュータであり、組み合わせの最適解を求めるのに特化した量子コンピュータだそうです。200ページ足らずで割合とガサッとした印刷で文字数も少なく、手軽に読めそうなので借りてしまいましたが、やっぱり、というか、何というか、先週のループ宇宙論と同じでサッパリ理解できませんでした。物理学については高校レベルの古典的なニュートン物理学でも私の理解は怪しいのに、20世紀的なアインシュタインのその先の量子物理学を基にした量子コンピュータなんですから、私が理解できるはずもなかったのかもしれません。取りあえず、最新技術に触れたかもしれない、という誤解に基づく充実した感じを持って読み終えることが出来ました。まあ、それはそれなりにいいもんです。なお、著者のうちの西森教授は量子アニーリングを発案したご本人だそうです。ですから、キチンと本書を読んで理解できれば、どのようにして量子力学で計算するのか、また、どのようにして人工知能、特に機械学習やディープラーニングに量子コンピュータが応用できるのか、そして、どうすれば日本の研究が世界をリードできるか、などなど、画期的な量子コンピュータの計算原理をはじめとして、ひょとしたら理解できるようになる本かもしれません。誠に残念ながら、私にはムリでした。

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次に、柚月裕子『慈雨』(集英社) です。この著者の作品では初期の検事の本懐の佐方シリーズが私は好きで、最近では、この作品の前の1月5日の今年最初の読書感想文で取り上げた短編集『あしたの君へ』もイイセン行っていたように思います。それから比べると、主人公の年齢が行ってしまったのもあるんですが、少し私の興味は後退した気がします。ということで、この作品の主人公は定年退官したばかりの群馬県警の警察官、もちろん、刑事だった警察官です。3月末で退官して6月から四国のお遍路さんを回り始めています。小学1年生の幼女に対する暴行殺人事件、それも、定年退官した後に発生した on-going の事件と、16年前のもう裁判すら終了して犯人と目された人物が服役している事件を結びつけて、後者が冤罪ではないかという可能性が生じ、娘の恋人、というか、ほとんど婚約者直前の元部下の刑事を通じて、夫婦で四国のお遍路さんを続けながらも、現在進行形の方の事件を解決に導く、というストーリーです。警察官として、だけでなく、家庭の夫として、娘の父親として、そして、何よりも善良で正直で正義感強いひとりの人間として、何が正しくて、でも、警察という組織の犠牲にすべきかどうか、を考え抜いた上での決断の過程を描き出しています。でも、ややストーリーのつながりや謎解きなんかも平板で、佐方シリーズや直近の『あしたの君へ』のような深みには欠ける気がします。でも、真っ正直で清々しい人生であることは確かです。そのような、というか、やや青臭いところもあるような正直で真面目な人生をよしとする人向けかもしれません。逆に、腹黒い人には向きません。

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次に、岡本隆司『中国の論理』(中公新書) です。著者は京都大学出身の東洋史学の研究者です。世間的には嫌中一色で、本書あとがきで著者も「中国・中国人が好きか、嫌いか、と聞かれれば、嫌いだ、と答えるだろう。」と書いています。日本とは尖閣諸島で、フィリピンやベトナムとも領土問題をかかえ、日本でも「爆買い」で潤っているごく一部の人を除けば、本書の著者のように「嫌い」と答える人が少なくないかもしれません。他方、地理的条件からどうしようもなくも隣国なわけであり、それなりのおつきあいが求められることも事実です。その嫌われかねない中国の論理を歴史的に明らかにしようと試みたのが本書であり、あらゆる場面に顔を出す二分法=ディコトミにその原因を求めているように見受けられます。すなわち、国内においては士と庶、あるいは、官と民であり、国外においては華と夷なわけで、いわゆる中華思想に基づき、日本のような夷は中国の風下にあるべき、との近代以降の世界ではとても通用しそうもない「中国の論理」を振りかざしているわけです。しかも、著者によれば、その昔の君主独裁制から立憲共和制へ、三民主義からマルクス主義へ、計画経済から市場経済へと変化しても、底流では脈々と続いているということで、歴史的に中国人に深く刻み込まれた思考回路なのかもしれません。それでも、少し前までは成金国家として、かつての日本と同じように勝手な振る舞いが部分的には許容されていましたし、現在でも我が国では「爆買い」を有り難がる人は少なくないような気がしますが、今や、中進国の罠にとらわれて成長率も大きく鈍化し、我が国でも「爆買い」の伸びがストップするのも間近かと見なされています。民主主義体制が整っていない現状では先進国とも見なし難く、かといって、核戦力をはじめとする軍事力では周辺諸国から見て無視しがたい実力があるともいえます。いずれにせよ、引っ越しのできないお隣さんですから、日本としては被害を最小限にくい止めつつ、それなりのおつきあいを願う、ということになるんだろうと思います。

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最後に、ピエール・ルメートル『傷だらけのカミーユ』(文春文庫) です。パリ警視庁のカミーユ・ヴェルーヴェン警部を主人公とするシリーズ3部作の最終編です。私も『その女アレックス』、『悲しみのイレーヌ』と読み継いで来てこの作者の3冊目です。ただし、原書と邦訳では出版順が違っており、原書では『悲しみのイレーヌ』が先で、『その女アレックス』が後の出版なんですが、邦訳は当然ながら意図的に1-2冊めの順を入れ替えています。でも、この『傷だらけのカミーユ』が3部作の締めくくりであることは違いがありません。ということで、とても出来のいいミステリです。『悲しみのイレーヌ』で妻を失ってから5年後という設定で、当然パリのど真ん中を舞台にします。ヴェルーヴェン警部の恋人が強盗事件に巻き込まれ瀕死の重傷を負い、しかも強盗犯人の顔を見たためなのか、命を付け狙われてしまいます。彼女を守るためヴェルーヴェン警部は警察の上司や判事にもハッタリをかませつつ、かなり独断で犯人を追います。その過程で、次々と新たな事実が浮かび上がっていく、というストーリでーで、とても大仕掛けなどんでん返しが待っています。

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2017年2月 4日 (土)

米国雇用統計の雇用者増はアッとびっくりの+227千人増で利上げをサポートか?

日本時間の昨夜、米国労働省から1月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+227千人増と、前月の+157千人増や市場の事前コンセンサスの+175千人増を大きく上回りました。ただ、失業率はさすがに前月から0.1%ポイント上がって4.8%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、Los Angeles Times のサイトから最初の7パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

U.S. economy creates robust 227,000 jobs in January; unemployment rate remains low at 4.8%
The labor market started the year strong, adding a robust 227,000 net new jobs last month while more people began looking for work, the Labor Department said Friday.
Although the January job growth figure exceeded expectations - and was the best since September - that was somewhat offset by a downward revision of job growth the previous two months by 39,000.
Those changes meant job growth averaged 187,000 for 2016 and that President Trump is inheriting a solid labor market.
The unemployment rate last month inched up a tenth of a percentage point to 4.8%, but that wasn’t bad news.
The uptick was caused by 76,000 more people looking for work. The percentage of working-age Americans in the force increased to 62.9%. That was the best level since September, though still near a 40-year low.
But wage growth remained a concern. Average hourly earnings were up 3 cents to $26 last month, down from December’s strong 6-cent increase. For the 12 months ended Jan. 31, wages increased 2.5%.
The slowdown in wage growth came even though worker pay got a boost last month because minimum wage increases kicked in on Jan. 1 in 19 states, either through automatic cost-of-living bumps or scheduled changes passed by voters or lawmakers.

この後、さらにカリフォルニア州の雇用情勢や産業別の分析などなどが続きますが、長くなりますので割愛しました。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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繰り返しになりますが、雇用者増が前月差で+200千人を超えたのは4か月ぶりで、改定後の昨年2016年12月が+157千人増、そして、市場の事前コンセンサスも+200千人増には届かない、というふうに私は聞いていましたので、ちょっとびっくりの大幅増でした。トランプ大統領の重視するメインストリームの製造業も、12月の+11千人増に続いて、わずかながら1月も+5千人増を記録しています。小売り業も+45.9千人増と堅調な個人消費を反映しているようですし、引き続き、ヘルスケアも+32.1千人増を示しています。米国連邦準備制度理事会(FED)の公開市場委員会(FOMC)は今週半ばの1月31日から2月1日にかけて開催されていて、年初の利上げは見送られていますが、ちょうど1か月後の3月3日に公表される米国雇用統計を見た上で、3月14-15日に開催される次回FOMCで利上げが議論される可能性も出てきたと私は受け止めています。ただ、引用した記事の最後のパラで触れられている通り、FEDのイエレン議長は下のグラフの賃金の伸びも重視していると報じられており、今後の動向が気にかかるところです。

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ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象ですが、それでも、12月の前年比上昇率は+2.9%を記録し、2009年6月以来7年半振りの高い伸びを示しています。1月の+2.5%も底堅い気がしますし、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなり、逆に、トランプ政権の経済政策次第では上昇率が加速する可能性もなしとしません。

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2017年2月 3日 (金)

2月13日に公表予定の10-12月期1次QE予想やいかに?

今週に入ってほぼ必要な統計が出そろい、さ来週月曜日の2月13日に昨年2016年10-12月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の今年1-3月期以降を重視して拾おうとしています。しかしながら、明示的に取り上げているシンクタンクは、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研であり、この5機関については、やや長めに先行き予想をリポートから引用しています。ほかはアッサリとヘッドラインの成長率だけの引用です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.4%
(+1.6%)
2017年1-3月期を展望すると、①在庫調整の進展を受けた製造業の生産活動の持ち直しや、②株価の上昇などを背景とした消費者マインドの改善が、景気下支えに作用。昨年11月に成立した2016年度第2次補正予算の執行に伴い、公共投資も増加に転じるとみられることから、景気回復基調が持続する見込み。もっとも、トランプ米新大統領が打ち出す政策や、英国のEU離脱、欧州大陸諸国の選挙など、海外の政治動向は不透明感が強く、マーケットの変動などが景気を下押しするリスクには注意が必要。
大和総研+0.1%
(+0.6%)
先行きの日本経済は、基調として足下の緩やかな拡大が継続するとみている。ただし、先行きも内需が力強さを欠くことが見込まれる中、長期的には外需の動向にこれまで以上に警戒しておく必要があるだろう。
米国では、Fedが2016年12月に利上げを実施し、2017年に入ってからも引き続き利上げが実施される可能性がある。加えて、米トランプ大統領がTPPからの撤退、NAFTAの再交渉・脱退を宣言するなど、米国が保護貿易主義に転換しつつある点は周知のとおりだ。後述するように、世界経済は緩やかな成長を続けると見ているが、米国の通商政策の転換を機に、世界経済の先行き不透明感が強まることとなれば、外需主導で成長する日本経済を下押しするリスク要因となるだろう。
みずほ総研+0.2%
(+1.0%)
2017年の日本経済について展望すると、輸出・設備投資を中心に、景気回復が続くと見込まれる。
上述した海外経済の回復(ITサイクルの改善や中国・鉱工業セクターの持ち直し、資源国経済の底入れ)が、引き続き輸出や設備投資の回復につながるだろう。五輪関連や都市再開発関連の案件が進捗すること、人手不足の深刻化を背景に省力化・効率化投資の積み増しが見込まれることも、設備投資の押し上げ要因になるとみられる。他方、個人消費については、耐久消費財が持ち直していること、株高などを背景に消費者マインドが改善していることがプラスに働くものの、年半ばにかけて見込まれるエネルギー価格の上昇が下押し要因となるだろう。
日本の景気回復に水を差しかねない要因として、海外の政治・経済情勢を巡る不透明性が上げられる。最大のリスクは、トランプ政権の保護主義姿勢の行方であろう。特に、為替の円安批判を強める可能性や、「国境税」が導入された場合のグローバル・サプライチェーンを通じた日本の生産への波及が懸念される。また、欧州の政治情勢や中国の共産党大会後の経済運営を巡っても、不確実性は高い。2017年は、メインシナリオとしては景気回復が見込まれるものの、こうした下振れリスクが顕在化した場合の影響は大きいため、世界の政治情勢に注意が必要だ。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.6%)
2016年10-12月期は7-9月期に続き外需主導のプラス成長となったが、国内需要は横ばい圏の動きが続いている。2017年1-3月期は円安、海外経済回復の追い風を受けて輸出は増加を続けるものの、輸入の伸びも高まることから外需による成長率の押し上げ幅は縮小するだろう。
一方、国内需要は2016年度第2次補正予算の顕在化から公的固定資本形成が増加に転じるが、住宅投資が減少に転じることに加え、エネルギーを中心とした物価上昇に伴う実質所得の低下が消費を下押しすることなどから、国内需要は低い伸びにとどまること見込まれる。現時点では、17年1-3月期の実質GDPはプラス成長と確保するものの、10-12月期に比べれば伸びは鈍化すると予想している。
第一生命経済研+0.4%
(+1.5%)
先行きについても、輸出の増加が続く可能性が高いことに加え、企業収益の持ち直しを受けた設備投資の回復、景気対策効果の顕在化といった押し上げが期待されるところだ。10-12月期の個人消費を下押しした生鮮食品の値上がりについても、足元では落ち着きをみせている。トランプ大統領の政策への不透明感は強いものの、メインシナリオとしては日本経済の着実な景気回復を見込んでおいて良いだろう。
伊藤忠経済研+0.4%
(+1.4%)
国内民間需要は個人消費が緩やかな拡大、設備投資は概ね横ばいにとどまる中で住宅投資の落ち込みにより前期比でマイナスが続き、専ら輸出の拡大が成長を支える姿は変わらず、日本経済は持ち直しつつあるも回復力は未だ弱いという評価になる。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+0.7%
(+2.9%)
10-12月期の実質GDP成長率を前期比年率2.9%と予想する。16年1-3月期以降、4四半期連続のプラス成長となり、かつ成長ペースは7-9月期の年率1.3%から大幅に加速する見通しである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.3%
(+1.1%)
2月13日に内閣府から公表される2016年10-12月期の実質GDP成長率は、前期比+0.3%(年率換算+1.1%)と4四半期連続でプラスとなったと見込まれる。景気が持ち直していることを確認する結果となろう。
三菱総研+0.1%
(+0.4%)
実質GDP成長率は、4四半期連続のプラス成長となるが、10-12月期は内需の減少が足を引っ張り、前期に比べ成長率は鈍化する見込み。

ほぼ、どのシンクタンクでもプラス成長を予想しており、2016年は4四半期連続でプラス成長の可能性が示唆されています。また、足元の1-3月期についても、緩やかな回復が継続しているとの認識がほぼほぼ全機関のリポートで示されており、景気の回復は緩やかながら続いている可能性が高いと受け止めています。ただし、いくつかのヘッドラインで引用しておきましたが、トランプ米国大統領の閉鎖的な通帳政策や為替政策、あるいは、英国のEU離脱=BREXITや大陸欧州の国政選挙における政治情勢など、経済の自律的な動向ではなく海外発の経済外要因でのリスクの懸念が何とも不気味です。昨年2016年10-12月期については、特に、外需の寄与が大きいと見込まれているだけに、国内需要のさらなる回復を前に海外需要が先に腰折れするようなことになる可能性が心配です。エコノミストには何やら見通しがたい要因だけに、逆に、不透明感が高まりかねないところです。なお、先日のブログで商業販売統計を取り上げた際に、消費はゼロ近傍と結論しましたが、上の表で取り上げた範囲では、日本総研と大和総研と三菱総研がマイナス、みずほ総研とニッセイ基礎研と伊藤忠経済研と三菱UFJリサーチ&コンサルティングがプラス、第一生命経済研と三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所がゼロ、と見方が分かれてしまいました。何とも言い難い結果です。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2017年2月 2日 (木)

基調判断が半ノッチ引き上げられた消費者態度指数やいかに?

本日、内閣府から1月の消費者態度指数が公表されています。前月比+2.2ポイント上昇の43.1を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の消費者態度指数、4カ月ぶり判断上げ 「持ち直しの動きがみられる」
内閣府が2日発表した1月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.1ポイント上昇の43.2だった。大幅上昇した昨年12月に続き、東京五輪開催が決まった2013年9月(45.4)以来3年4カ月ぶりの高水準。雇用環境の改善が続いていることが寄与した。前月を上回ったのは2カ月連続で、内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直しのテンポが緩やかになっている」から「持ち直しの動きがみられる」に引き上げた。上方修正は4カ月ぶり。
指数を構成する4つの指標のうち、「雇用環境」が改善した。高い有効求人倍率や低い失業率の好影響が出た。「耐久消費財の買い時判断」と「暮らし向き」は横ばいだったが高水準を保った。「収入の増え方」は悪化した。1年後の物価見通しは「上昇する」と答えた比率(原数値)は前月より0.7ポイント高い74.9%だった。
調査基準日はトランプ米大統領が就任する前にあたる1月15日、内閣府は「あまり影響が出てこない時期の調査だった」とみている。全国8400世帯が対象で、有効回答数は5633世帯、回答率は67.1%だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフからも明らかな通り、昨年2016年11月に秋口の天候不順で野菜価格が高騰したり、米国大統領選挙でトランプ大統領が当選したりと、いろいろなショックがあって落ち込んだ一時期を除けば、ここ2年余りはトレンドとしては消費者マインドは改善を示して来たように感じます。すなわち、2014年4月の消費増税からその年の12月の39.2と翌2015年1月の39.3あたりを底にして、直近統計の2017年1月の43.2まで、緩やかに消費者態度指数が改善を続けて来たのが上のグラフから読み取れるかと思います。特に、1月統計については、引用した記事にもある通り、雇用環境の改善が寄与しています。消費者態度指数の4つのコンポーネントのうち、暮らし向きと耐久消費財の買い時判断については前月から横ばいを示し、収入の増え方については前月差でマイナスだったんですが、雇用環境のプラスが大きく、消費者態度指数全体として前月から上昇という結果になっています。これも引用した記事にある通り、これらを総合して、統計作成官庁である内閣府では基調判断を半ノッチ引き上げて、「持ち直しのテンポが緩やか」から「持ち直し」に修正しています。先月のこの統計公表時には、トランプ効果であればサステイナブルではなく一過性の可能性を指摘しましたが、私の杞憂だったかもしれません。

今日発表の消費者態度指数が需要サイドのマインドの代表とすれば、来週は供給サイドのマインドの代表である景気ウォッチャーの結果が明らかにされます。景気ウォッチャーも昨年2016年7月以降の年後半でかなり改善を示しており、足元の景気の回復とともに、需給どちらのマインドも持ち直しています。今日の夕刊を見ると、経団連の榊原会長と連合の神津会長が都内で会談し今年の春季労使交渉が本格的に始まった旨の報道がありました。マインドの回復とともに、賃金の上昇により消費の活性化が待たれる段階に達したようです。

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2017年2月 1日 (水)

球春! プロ野球のキャンプイン!

まさに、球春!
プロ野球各球団がキャンプインしました。我が阪神タイガースは沖縄の宜野座でのスタートです。実り多いキャンプを過ごして、シーズン開幕に備えて欲しいもんです。
下の画像は各球団のキャンプ地一覧です。朝日新聞のサイトから引用しています。

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今年こそ、優勝目指して、
がんばれタイガース!

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そろそろ始まる花粉シーズンにインテージによる「2017花粉症みんなの対策」やいかに?

かなり旧聞に属する話題ですが、1月19日にインテージから「2017花粉症みんなの対策」と題する調査結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。小売店パネル調査と個人モニターに対するネットによるアンケートの2本立て調査のようです。まず、調査のポイントを5点、インテージのサイトから引用すると以下の通りです。

PICK UP
  • 首都圏の花粉症率は47%
  • 実行率トップ3は「マスク」「薬」「手洗い・うがい」
  • 取り入れ率トップ3は「ヨーグルト」「甜茶」「乳酸菌」
  • 効果実感トップ3は「ヨーグルト」「プロポリス」「乳酸菌」
  • 最近注目の花粉症対策キーワードは「舌下免疫療法」「減感作療法」

繰り返しになるものの、小売店パネル調査と個人モニターに対するアンケートの2本立て調査なんですが、主として、個人モニターの結果に着目しつつ、インテージのサイトからグラフも引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、グラフなどの図表は引用しませんが、上の PICK UP の1-3点目までについて、インテージが昨年末に実施した調査では、「自分は花粉症」と答えた人は47%で、そのうち、スギ花粉の時期である2-5月に発症する人は95%に上ったとリポートされています。そして、対策は順に、マスク56.5%、処方薬40.8%、うがい・手洗い39.8%、市販薬38.2%となっています。加えて、花粉症対策に取り入れたことのある食材/サプリメントを問うたところ、ヨーグルト46.4%、続いて、甜茶22.1%、さらに、乳酸菌13.2%がトップスリーで、以下は10%に達しません。それらの中で、効果を感じられたもの の結果が上のグラフの通りです。インテージのサイトから引用しています。トップのヨーグルトが44.7%と、半数近い効果の実感があったようです。実は、私も毎朝ヨーグルトを食べるようにしているんですが、それほどの効果は実感していません。どれくらいの量を食べる必要があるのか知りたい気もします。続いて、プロポリスが44%に上っていますが、取り入れた人が2.2%しかいませんので、ややサンプルの小ささに不安が残ります。3番目の乳酸菌はヨーグルト類似ではなかろうかという気がします。

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そして、上のテーブルは、最近注目している花粉症対策 について、自由回答を集計した結果をインテージのサイトから引用しています。薬系では、アレグラ、アレジオン、アレロックと、花粉症の人ならば知っていそうな個別具体的な商品名も見えます。もっとも、私は別のお薬を処方してもらっています。そして、舌下免疫療法と減感作療法が最近注目の花粉症対策のキーワードなんだそうです。免疫系に対する医学的な治療なのかもしれませんが、私には理解不能です。

私自身の個人的な体験としては、窓も開かないオフィス勤務のウィークデーと違って、週末に自転車で外出することが多いものですから、10日ほど前の1月21日(土)に今シーズン初めての花粉の飛散を私の鼻が感知しました。そして、その後、今週に入って月曜日から連続的に花粉を感知しています。対策としては、このアンケート結果と同じで、処方薬の服用とマスクに頼っています。早く花粉のシーズンが終わることを願っています。

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