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2017年2月 6日 (月)

本日公表の毎月勤労統計の賃金動向をどのように見るか?

本日、厚生労働省から昨年2016年12月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から横ばいを示し、他方で、現金給与指数のうちの所定内給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.1%の伸びとなっています。ただし、ヘッドラインの消費者物価がこの秋の天候不順で野菜の高騰を受けて12月は上昇していますので、物価上昇を差し引いた実質賃金に転じています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

16年の実質賃金、5年ぶり増、16年12月は1年ぶり減少 毎勤統計
厚生労働省が6日発表した2016年の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は0.7%増となり5年ぶりに上昇した。企業の賃上げ効果で名目賃金にあたる現金給与総額が前年を上回って伸び、ボーナスなどの特別給与も増えた。一方で消費者物価指数(CPI)は原油安などで4年ぶりのマイナスとなった。
基本給や残業代など現金給与総額(月平均)は前年比0.5%増の31万5372円と3年連続のプラスとなった。特別給与は夏季のボーナス増などが寄与し2.0%増の5万5637円だった。パートタイム労働者の時給は1085円と過去最高を更新し、調査を開始した1993年以降で最高の水準となった。外食などで人手不足が続き時給の上昇が続いている。
同時に発表した16年12月の実質賃金は前年同月比0.4%減となり15年12月以来1年ぶりに減少した。雇用所得環境の改善で名目賃金の上昇基調は続いたものの、12月は生鮮食品の価格上昇などで消費者物価の上昇が賃金の伸びを上回った。厚労省は前月に続き賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を据え置いた。
現金給与総額は0.1%増の54万4823円だった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与は24万487円と0.5%増えた。一方、残業代など所定外給与は1.9%減の2万9円、特別給与は0.1%減の28万4327円だった。

年データが利用可能となったので、それに着目した部分が前半を占めていますが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、1番下の3番目のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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12月の生産の伸びがかなり小さかったことから、生産の派生需要である労働へのインパクトも小さく、製造業の所定ぎあい労働時間は季節調整済みの系列で見て前月から横ばいでした。また、賃金については上のグラフで示した通り、基本的に私は名目で見ているんですが、いわゆる恒常所得部分の所定内賃金については、ほぼ安定的に前年比でプラスを記録するようになったと受け止めています。ただし、引用した記事にある通り、ヘッドラインの消費者物価上昇率でデフレートした実質賃金は、天候不順に起因する野菜価格の高騰などから、最近時点で急ブレーキがかかっているのも事実です。11月統計では速報時点でマイナスを記録した後、確報で修正されてゼロとなりましたが、直近統計の12月速報ではとうとう前年から伸びがマイナスになってしまいました。このあたりは消費者マインドの低迷にもつながりかねないとと私は考えています。ただ、上のグラフのうちでも一番下のパネルに示された通り、フルタイムの一般労働者の増加率がパート労働者の伸びを上回り始めました。現在、かなり完全雇用に近いものの、決して完全雇用に到達していない労働市場の状況を考えると、賃金よりも先に正規雇用の増加という形で雇用の質の向上がもたらされるのかもしれません。完全雇用に伴う賃金上昇はさらに時間がかかるのかもしれませんが、よし悪しは別として、少なくともフルタイムの一般職員の方が給与水準が高いですから、パートタイムよりもフルタイム職員が増加するのはそれだけでマクロの所得増につながると考えるべきです。12月はボーナス月ですので差が大きくなっていますが、2016年12月ではフルタイムの一般労働者の現金給与総額が740,533円であるのに対して、パート労働者はわずかに107,963円にしか過ぎません。ボーナスの影響がより小さい例ということで、昨年2016年11月の先月統計を見てもフルタイムの一般労働者355,672円に対して、パートタイムは96,117円と4倍近い差があります。

賃金に限って先行きを考えると、目先は春闘の動向が大きな比重を占めます。春闘については、米国トランプ政権の通商政策の不透明さが何らかの悪影響を及ぼす可能性を否定できません。加えて、春闘とは別要因ながら、政府の働き方改革により残業が減少すれば、基本給で手当てできない限り、所得が減少することにもなりかねません。それでも、繰り返しになりますが、完全雇用による労働単価としての賃金上昇に先立って、雇用者増とともにフルタイム労働者の増加によるマクロの所得増加が生じる効果は無視すべきではありません。

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