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2017年4月 3日 (月)

2四半期連続の改善を示した3月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から3月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から+4ポイント改善して+10を記録し、本年度2017年度の設備投資計画は全規模全産業が前年度比▲4.0%減と集計されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業製造業、2期連続改善 輸出けん引、雇用不足強まる 3月の日銀短観
日銀が3日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス12だった。前回の2016年12月調査(プラス10)から2ポイント改善した。改善は2四半期連続。米国など海外経済の回復を背景に、自動車やはん用機械、電気機械など輸出企業の景況感が改善した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。3月の大企業製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス14を下回った。回答期間は2月27日~3月31日で、回収基準日は3月13日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業製造業がプラス11だった。トランプ米政権の通商政策に対する不安や欧州の政治情勢の不透明感などから、先行きはやや低下した。17年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=108円43銭と、実勢レートより円高・ドル安だった。
大企業非製造業の現状の業況判断DIはプラス20と前回を2ポイント上回った。国内消費の持ち直しが支えとなった。情報サービスや対個人サービスなどの改善が目立った。3カ月先のDIは4ポイント悪化しプラス16を見込む。
中小企業は製造業が4ポイント改善のプラス5、非製造業は2ポイント改善のプラス4だった。先行きはいずれも悪化した。
大企業全産業の雇用人員判断DIはマイナス15となり、前回(マイナス13)から低下した。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、1992年2月以来のマイナス幅となった。
17年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比0.6%増だった。昨年の同時期(0.9%減)を上回った。大企業のうち製造業は5.3%増、非製造業は2.0%減を計画している。17年度の全規模全産業の設備投資計画は前年度比1.3%減で、市場予想の中央値(4.1%減)を上回った。大企業製造業の17年度の輸出売上高の計画は前年度比0.6%増だった。
大企業製造業の販売価格判断DIはマイナス3と、前回(マイナス7)から4ポイント改善した。DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。金融機関の貸出態度判断DIは全規模・全産業でプラス24と、前回の調査と同じだった。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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ということで、おおむね規模と産業を押しなべて、昨四半期に続いて2期連続で今期も景況感が改善しつつ、しかし、先行きの来期はやや落ちる、という典型的な短観の統計としての「クセ」が出ています。グラフは引用しませんが、価格動向なんぞでも、「当社製品の値上げは出来ないが、当社に納入する他社製品は値上がりする」という、クセもあります。日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の景況感は3月調査が+12と前期から+2ポイント上昇して、来期は+11に少し悪化すると見込まれていますが、我が国製造業の中でも比較優位があると考えられている自動車とはん用機械こそ3月調査の足元で改善を示した後、来期は悪化すると見込まれているものの、生産用機械と電気機械は今期の改善に続いて来期もさらに改善すると見込んでいます。また、前回の12月調査でも、全規模の製造業・非製造業で先行きは景況感が落ちると見込まれていましたので、4月以降の景気動向では上方下方のどちらの修正もあり得ることはいうまでもありません。従って、企業部門の景況感はかなり堅調と考えてよさそうです。特に見逃がせないのは、非製造業のうちでも小売がジワジワと業況判断を改善している点で、大企業小売業では12月調査+3に続いて、3月調査では+5、先行きは+11となっています。基本的に国内消費の伸びを表していると私は考えていますが、個人消費もそろそろ底を打って改善に向かうのかもしれません。また、事業計画の前提としている米ドル当たりの想定為替レートが、12月調査時点で2016年度104.90円だったのが、3月調査では2017年度108.43円と円安水準に振れていますので、製造業、特に規模の大きな製造業に景況感の改善をもたらしている可能性が高いと考えるべきです。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても不足感が広がっています。設備については、来期見通しでは中堅企業と中小企業でとうとう不足超のマイナスを記録し、大企業に比べて採用がやや難しい規模の小さな企業で、人員の省力化を進めるための設備投資が進む可能性を示唆していると私は受け止めています。同時に、雇用人員の不足超のマイナス幅も規模の小さい企業ほど大きくなっています。ただ、先週の雇用統計を取り上げた際にも書いた通り、この人員不足は「低賃金非正規労働者の不足」を意味しており、正規雇用を増加する方向に進みつつはあるものの、本格的に賃金が上昇する局面に入ったかどうかは私はまだ確信が持てません。ただ、巷間で「人手不足」がクローズアップされる中で、雇用や設備といった要素需要が増加する方向にあるのは当然です。特に、グラフは示しませんが、経常利益の計画が大企業全産業で2016-17年度は連続でマイナスの減益となっていますので、業績からではなく人員省力化の必要から設備投資が進む可能性があります。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2017年度の全規模全産業の設備投資計画は、先週の日銀短観予想では例年通りの前年度比▲4%減くらいで始まる、との予想を取り上げたんですが、異例の高さで▲1.3%減で始まりました。ピンク色のラインの2012年度と似た気がしないでもないんですが、黄緑色のライン2016年度計画が大きく下方修正されたのも、見た目で、2017年度計画をかさ上げした可能性があります。もちろん、方向性としては雇用人員と設備は人手不足の中で要素需要は拡大すると見込まれますので、このペースで設備投資が増加する可能性も十分あります。規模別では、大企業よりもむしろ中堅企業の設備投資意欲が高いような結果となっています。

円安と海外経済の回復に支えられた輸出が我が国経済を牽引し、景況感もゆっくりと改善する可能性が十分ある一方で、リスクもやっぱり海外要因にあり、トランプ米国大統領の通商政策に加え、すでに終わったオランダも含めて、大陸欧州各国で今年は大きな選挙があります。

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