アジア開発銀行による「アジア開発見通し」Asian Development Outlook やいかに?
本日、アジア開発銀行(ADB)から「アジア開発見通し 2017」Asian Development Outlook 2017 が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。日本、韓国、豪州、ニュージーランドといった域内先進国を除くアジア太平洋地域の新興国・途上国の成長率は、2016年実績の+5.8%に続いて、2017年+5.7%、さらに2018年も+5.7%と見通しています。以下のADBのサイトから引用したINFOGRAPHICの通りです。
ヘッドラインの成長率はここ2-3年で大きく変化するわけではないんですが、国別の成長率を見ると少し変化が見えてきます。すなわち、中国が2016年+6.0%成長の後、2017年+6.5%、2018年+6.2%と、引き続き高い成長率ながらゆるやかにに成長が鈍化していく一方で、インドは2016年+7.1%から、2018年+7.4%、2018年+7.6%と中国を上回る高成長で、しかも、成長率も加速すると見込まれています。インドの存在感がアジアで一段と高まる可能性が大きくなっています。また、東南アジア地域も2016年+4.7%の後、2017年+4.8%、2018年+5.0%と中国やインドよりは低成長ながら、徐々に成長率が加速します。ただし、堅調な成長に伴ってインフレもやや加速し、アジア新興国・途上国全体で2016年+2.5%のインフレから、2017年+3.0%、2018年+3.2%とややインフレ率が高まると見込まれています。大雑把に、アジア新興国・途上国の先行きは堅調と考えられているようです。この要因として、外需や国際的な1次産品価格の回復、さらに、各国の国内改革を上げており、アジア地域が世界の経済成長の60%を占め、最大の牽引力となっていると主張しています。
他方、アジア経済へのリスクとして、リポートでは追加的な米国の金利引上げ "sharper US interest rate hikes" に加え、資本流出と金融上のリスク "capital flows and financial risks" を上げ、特に後者の金融的なリスクの中でも家計債務 household debt が上昇している点に着目しています。ただし、アジア地域では流動性がまだまだ潤沢にあり、資本流出のリスクはある程度軽減されるとともに、米国の金融引き締めの影響が顕在化するには恐らく時間がかかることから、各国の政府や中央銀行が対策を整える時間は十分あると指摘しています。また、家計債務のリスクについても、慎重なマクロ・プルーデンス政策により回避が可能としています。その上で、サブタイトルが Transcending the middle-income challenge となっているように、中所得を確実に達成しつつ、中所得の罠に陥ることなく、さらに人的資本の向上やインフラ整備などにより所得の上昇を目指すべき、と結論しています。なお、キチンと隅から隅まで精査したわけでもないんですが、米国トランプ政権の通商政策に関するリスクについては取り上げていなかったような気がします。もっとも、私が見逃しているのかもしれません。
目を国内に転じると、本日、内閣府から3月の消費者態度指数が公表されています。前月比+0.7ポイント上昇の43.9を記録し、統計作成官庁の内閣府では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に上方修正しています。消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。なお、耐久消費財の普及に関する興味深いデータも公表されているんですが、省略します。
最後に、同じく国際機関の経済見通しということで、国際通貨基金(IMF)から4月の「世界経済見通し」分析編第2章と第3章が4月10日に公表される旨のアナウンスがなされています。各章のタイトルは以下の通りです。
- Chapter 2
- Roads Less Traveled: Growth in Emerging Market and Developing Economies in a Complicated External Environment
- Chapter 3
- Understanding the Downward Trend in Labor Income Shares
ご参考まで。
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