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2017年4月 8日 (土)

雇用者の伸びが大きく縮小した米国雇用統計をどう見るか?

日本時間の昨夜、米国労働省から3月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅はわずかに+98千人増と、2月までのペースから増加幅が大きく縮小しました。ただ、失業率はさらに前月から0.2%ポイント下がって4.5%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、Los Angeles Times のサイトから最初の8パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

Job growth slows, but unemployment falls to 4.5% as wages climb
After boosting the labor market the first two months of 2017, Mother Nature exacted some payback in helping push March job growth to the lowest level in nearly a year.
A snowstorm in the Northeast probably chilled hiring, particularly among construction companies that had been able to get an earlier start on projects because of unseasonably warm weather in much of the country in January and February, economists said.
That contributed to the surprisingly lackluster addition of just 98,000 net new jobs last month, including another significant decline in retailers' payrolls, the Labor Department said Friday.
But there also was some good news in what analysts called a mixed jobs report.
The unemployment rate fell to 4.5% from 4.7% in February, its lowest level in nearly a decade. And wages continued to show solid growth. Employers are finding that they need to boost pay to attract workers in a tightening jobs market.
"We're approaching full employment, where most people who want a job have a job, and that's a sign of the progress we've made in the labor market," said Gus Faucher, chief economist for PNC Financial Services Group.
Still, overall job growth in March was a little more than half of what economists had expected and well off the 219,000 figure from the previous month.
On top of that, the totals from January and February were revised down by a combined 38,000 jobs.

この後、カリフォルニア州のローカルな雇用の話題などが続きますが、長くなりますので割愛しました。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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さて、非農業雇用者数の伸びが前月から僅かに98千人にとどまったのは、私にはまったく理由が判りません。ひとつには小売業における雇用が前月から▲29.7千人減少し、実は、2月も▲30.9千人減少していたことから、個人消費に陰りが見られ、景気拡大に急ブレーキがかかっている可能性があります。これは米国雇用統計が正しく計測されているという前提でのひとつの仮説です。もうひとつは、まったく逆に、統計の誤計測という仮説です。すなわち、民間の給与計算会社であるADPの雇用者統計では、今年の1月+268千人、2月+245千人に続いて、3月も+263千人と順調に雇用増が続いているとの結果が示されているわけで、米国労働省の統計と大きく異なっています。加えて、米国労働省統計でも失業率は着実に低下を示しています。しかも、米国労働省の失業率統計は家計を対象とする調査であるのに対して、米国労働省とADPの雇用者統計はいずれも事業所を対象とする調査ですから、事業所対象の統計と家計対象の統計の間での乖離というわけでもなさそうです。私が考え得る最後の仮説は、とうとう米国労働市場が完全雇用に達した、というものです。従って、失業者のスラックはもはや存在せず、供給サイドの制約から雇用が増加しなくなった、という見方です。ただ、そんなことが急に生じるわけもなさそうな気がします。労働供給のサイドでスラックが尽きて、完全雇用の壁にぶち当たったのであれば利上げを急ぐ必要がありますが、労働需要のサイドで景気拡大にブレーキがかかったのであれば利上げを一度停止する可能性すら考慮されるべきです。3月末には米国連邦準備制度理事会(FED)のフィッシャー副議長が「年内はあと2回の利上げが適当」と発言した旨の報道を私は見かけましたが、金融政策の舵取りが難しげな指標に出くわしたもんだという気がします。

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ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、底ばい状態を脱して少し上向きに転じた印象で、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなり、逆に、トランプ政権の経済政策次第では上昇率が加速する可能性もなしとしません。

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