力強さに欠ける機械受注をどう見るか?
本日、内閣府から3月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比+1.4%増の8623億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
3月の機械受注1.4%増 4~4月見通しは5.9%減 製造業さえない
内閣府が17日発表した3月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.4%増の8623億円だった。増加は2カ月連続。製造業でコンピューターなど電子機器の受注が増えた。ただ、QUICKが事前にまとめた金融機関など民間の調査機関の予測中央値である2.5%増には届かなかった。内閣府は機械受注の基調判断について「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。
1~3月期では前期比1.4%減少した。同時に発表した4~6月期の見通しは5.9%減で、2四半期連続での減少を見込む。非製造業の9.6%減が響く。小売りや金融での需要が落ち込む見通し。製造業も1.1%減の予想。市場では「米国の通商政策に不透明感が残る間は、企業は設備投資に慎重にならざるを得ない」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)との見方があった。
3月の受注額は、製造業が0.6%増の3529億円だった。増加は2カ月連続だが、伸び率は前月の6.0%から減速した。非製造業の受注額は3.9%減の4964億円と4カ月ぶりの減少。廃棄物処理関連の原子力原動機の受注が減ったことが影響した。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額(原数値)は0.7%減だった。
2016年度の受注額は前年度比0.5%増の10兆2314億円で、2007年度以来9年ぶりの水準を回復した。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。
上のグラフを見ても、2013年のアベノミクス以降はジワジワとコア機械受注は増加の傾向にあることは確かですが、ジグザグと増減を繰り返しており、これだけの人手不足の要素市場にあって、省力化などの必要性が考えられるにもかかわらず、設備投資が盛り上がらないのも不思議な気がします。今年に入って、月次のコア機械受注は1月に前月比で▲3.2%の減少から始まり。2月+1.5%増、今日公表の3月も+1.4%増と小幅の増加が続いたものの、1~3月期でならしてみれば▲1.4%減を記録し、4~6月期の見通しも▲5.9%減と2四半期連続での減少が見込まれています。3か月前の調査では、1~3月期は前期比で+1.5%増が見込まれていましたが、結局、下振れて終わりましたし、4~6月期についてはそもそも見通しがかなり大きな減少となっています。
機械受注やその川下の設備投資については、現在の生産・出荷や輸出などの指標を見る限り、また、労働市場の人手不足とも考え合せて、緩やかな増加が見込まれると私は考えて来ましたが、北朝鮮をはじめとする北東アジアの地政学的なリスク、さらに、TPPからの離脱をはじめとする各種の大統領令を連発する米国トランプ政権の通商政策、というか、もっといえば、現在の「ロシアゲート」と呼ばれるような大統領としての政策遂行能力への疑問、などなど、経済外的な要因により下押し圧力がかかっている可能性は否定できません。なお、米国通商政策がクローズアップされることが多いんですが、例えば、今年2017年1~3月期に限ってみれば、コア機械受注のうち、製造業▲4.2%減、非製造業+0.0%の横ばいでしたので、そう見えなくもないんですが、4~6月期の見通しに目を転ずると、製造業▲1.1%減、非製造業▲9.6%減ですから、それだけでもない気がします。人手不足で賃金が上昇しない点とともに、私の目から見てややパズルです。
| 固定リンク
コメント