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2017年7月20日 (木)

2か月振りに黒字を記録した貿易統計における輸出の先行きやいかに?

本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+14.9%増の5兆8514億円、輸入額は+17.8%増の6兆547億円、差引き貿易収支は▲2034億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の貿易収支、2カ月ぶり黒字 4399億円 1~6月は3期連続黒字
財務省が20日発表した6月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4399億円の黒字だった。貿易黒字となるのは2カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想の中央値は4880億円の黒字だった。半導体製造装置や自動車などの輸出が好調に推移したが、石炭などをはじめとした輸入額の伸びが上回り前年同月の黒字幅(6864億円)は下回った。
輸出額は前年同月比9.7%増の6兆6075億円と7カ月連続で増加した。6月の為替レート(税関長公示レートの平均値)が1ドル=110.91円と前年同月に比べ円安だったことに加え、数量ベースでも堅調に推移した。
韓国向けのIC製造装置が好調だったほか、米国向けの自動車や台湾向けの鉄鋼板製品の伸びなども目立った。地域別では対米国が7.1%増、対欧州連合(EU)が9.6%増、対アジアが13.6%増といずれも増加した。
輸入額は15.5%増の6兆1676億円となった。資源価格が前年同月から上昇しているのに伴い、石炭や液化天然ガス(LNG)、原粗油の輸入額が増加した。石炭は主要な輸入先であるオーストラリアをサイクロンが襲った影響などで価格が高くなっているうえ、数量ベースでも19.8%増加した。
併せて発表した2017年1~6月の貿易収支は1兆444億円の黒字だった。半期ベースで3期連続の黒字となったが、資源関連の輸入額の増加によって前年同期と比べ黒字幅は4割縮小した。輸出額は前年同期比9.5%増の37兆7872億円、輸入額は12.2%増の36兆7428億円となった。輸出について、財務省は昨年発生した熊本地震からの反動増も「少なからず出ているのではないか」とみている。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

photo

まず、貿易収支については、季節調整していない原系列の統計では、4月黒字、5月赤字、6月黒字となった一方で、季節調整済みの系列では4~6月の3か月とも黒字ながらも、一貫して黒字幅は縮小を続けました。ひとつには国際商品市況における石油などの資源価格の動向に起因する輸入額の増加が要因なんですが、少なくとも、我が国の輸入価格指数に見る原油価格については、昨年2016年1~3月期にほぼ底を打って上昇に転じた後、今年2017年1~3月期に上昇局面を終えて、その後は小幅な動きになっています。大雑把に直近時点で高止まりしているカンジですが、ここ2~3か月はそれなりに安定して推移していると評価できます。それにしても、輸入物価が上昇しているんですから、我が国から見て交易条件が悪化しているわけです。また、引用した記事にもある通り、昨年4月の熊本地震からの反動による輸入増も一定のボリュームがあったようです。先月と同じように、鉱物性燃料の6月の輸入額について前年同月比を計算すると+31.1%であり、5月の+40%超よりやや伸び率は鈍化したものの、このブログでも私が何度か主張した通り、輸入については「要るモノは要る」というのが私の考えであり、特に、そのモノが鉱物性燃料であれば輸入せざるを得ないわけですから、我が国のマクロ経済には何ら問題なはいと考えています。

photo

輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。中国や欧州をはじめとする海外経済の順調な回復・拡大に応じて、我が国の輸出数量も拡大を示しています。上のグラフのうちの一番上のパネルを見ても、最近数か月では輸出額の伸びのうち、青い価格の寄与よりも赤い数量の寄与の方が大きくなっているのが見て取れます。下の2つのパネルからも、先進国や中国のOECD先行指数の上昇に伴った我が国からの輸出の拡大が示されています。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げの
影響を除くケース
 2017年度+1.5~+1.8
<+1.8>
+0.5~+1.3
<+1.1>
 4月時点の見通し+1.4~+1.6
<+1.6>
+0.6~+1.6
<+1.4>
 2018年度+1.1~+1.5
<+1.4>
+0.8~+1.6
<+1.5>
 4月時点の見通し+1.1~+1.3
<+1.3>
+0.8~+1.9
<+1.7>
 2019年度+0.7~+0.8
<+0.7>
+1.4~+2.5
<+2.3>
+0.9~+2.0
<+1.8>
 4月時点の見通し+0.6~+0.7
<+0.7>
+1.4~+2.5
<+2.4>
+0.9~+2.0
<+1.9>

最後に、貿易統計を離れて、上のテーブルは日銀金融政策決定会合で示された「展望リポート」から政策委員の大勢見通しを引用しています。日銀のインフレ目標である「2%程度に達する時期は、2019年度頃になる可能性が高い」(p.4)と、目標達成時期は後送りされました。

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