IMF「世界経済見通し改定」やいかに?
本日、クアラルンプール時間の午前11時に国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update, July 2017 が公表されています。ヘッドラインとなる世界経済の成長率は今年2017年が+3.5%、来年2018年が+3.6%とともに4月時点から据え置かれています。
まず、IMFのサイトから世界経済の成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。4月の「世界経済見通し」World Economic Outlook から大きな変更はありませんが、米国の成長率は2017年+2.3%から+2.1%に、2018年+2.5%から+2.1%に、それぞれ下方修正されています。どうしてかというと、財政政策が先に想定していたほど拡張的ではない "fiscal policy will be less expansionary than previously assumed" ということだそうです。他方、国別の数字は上げませんが、フランス、ドイツ、イタリア、スペインなどの多くのユーロ圏諸国の成長率は2017年の成長予測が上方修正されています。2017年1-3月期の成長率が予想以上に良好で、想定よりも強い国内需要のモメンタムが示されていると指摘されています。私のややひねくれた見方を示せば、フランス大統領選挙でのEU支持派の勝利という政治的な動向も影響しているんではないか、という気がしています。そして、我が日本については、2017年の成長見通しがやはり+0.1%ポイント上方修正されて+1.3%と見込まれており、来年2018年は4月時点の見通しから変わらず+0.6%で据え置かれています。なお、2018年の成長率見通しが2017年から大きく縮小するのは、2017年の成長率が過去にさかのぼった統計の見直し "a comprehensive revision of the national accounts" によるものであると、4月の「世界経済見通し」に明記されている通りです。ですから、ゼロ・パーセント台半ばが我が国の成長率の実力というか、潜在成長率であると考えるべきです。中国などの新興国についても4月時点から大きな変更はありません。
最後に、先行きリスクについては、短期的なリスクは概ね均衡状態にある一方で、中期的には依然として下振れリスクに傾いている "Short-term risks are broadly balanced, but medium-term risks are still skewed to the downside." と指摘しています。また、私の解釈としては、主として米国の金融引き締めの影響についてだろうと思うんですが、世界的な金融引き締めが予期していたよりも急速に行われたり、先進国・地域が保護主義へとシフトしたりした場合は、新興国市場からの資本流出が再び加速することになる "a shift toward protectionism in advanced economies could reignite capital outflow pressures from emerging market" リスクも指摘しています。
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