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2017年7月 7日 (金)

一致指数が下降した景気動向指数と賃金がわずかに上昇した毎月勤労統計!

本日、内閣府から5月の景気動向指数が、また、厚生労働省から4月の毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月比+0.5ポイント上昇の104.7を、CI一致指数は逆に▲1.6ポイント下降の115.5を、それぞれ記録しています。毎月勤労統計からは、景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.7%減を、また、現金給与指数のうちのきまって支給する給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.7%増を、それぞれ記録しています。なお、消費者物価が上昇を示していますので、消費者物価でデフレートした実質賃金は前年同月から+0.1%増となり、5か月振りにプラスの伸びを示しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の景気一致指数、2カ月ぶり低下 自動車関連の落ち込みで
内閣府が7日発表した5月の景気動向指数(CI、2010年=100)によると、景気の現状を示す一致指数は前月比1.6ポイント低い115.5となり、2カ月ぶりに低下した。前の月に自動車関連の生産や出荷が堅調だった反動が出た。
一致指数を構成する指標で、前月と比べられる7つの指標のうち、5指標が押し下げ要因となった。自動車関連が落ち込み、耐久消費財出荷指数や鉱工業生産指数などが低下した。生鮮食品の販売減が響き、小売業の商業販売額も減少した。
内閣府は、一致指数の動きからみた基調判断を「改善を示している」とし、8カ月連続で据え置いた。
数カ月先の景気を示す先行指数は0.5ポイント上昇の104.7だった。上昇は2カ月ぶり。
実質賃金、5月は0.1%増 5カ月ぶり増加 毎月勤労統計
厚生労働省が7日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月に比べて0.1%増加した。増加は5カ月ぶり。名目賃金が0.7%伸びたものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月比0.5%上昇し、上昇を抑えた。
名目賃金にあたる現金給与総額は前年同月比0.7%増の27万241円だった。2カ月連続で増加し、伸び率は昨年7月(1.2%増)以来10カ月ぶりの高水準だった。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が0.9%増加し、2000年3月(0.9%増)以来17年2カ月ぶりの大きな伸び率だった。残業代など所定外給与は0.7%増、ボーナスなど特別に支払われた給与は1.6%減少した。
パートタイム労働者の時間あたり給与は2.0%増の1108円だった。パートタイム労働者比率は30.18%で、前年同月に比べて0.14ポイント低下した。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との見方を示した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとついつい長くなってしまいます。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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5月のCI一致指数はやや下降を示しましたが、3か月後方移動平均も7か月後方移動平均もまだ上昇を続けており、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「改善」に据え置いています。基調判断は、昨年2016年10月に「足踏み」から「改善」に上方改定されており、半年余り据え置かれているわけです。CI一致指数を構成するコンポーネントを詳しく見ると、5月指数では、商業販売額(卸売業)(前年同月比)と投資財出荷指数(除輸送機械)はプラス寄与となりましたが、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、商業販売額(小売業)(前年同月比)などがマイナス寄与を示しています。鉱工業生産指数(IIP)と連動性の高いCI一致指数ですから、単月では5月はマイナスになりましたが、上のグラフを見ても理解できる通り、トレンドとしてはまだ上昇中であると考えてよさそうです。なお、CI先行指数を詳しく見ると、もっとも大きなマイナス寄与を示したのが中小企業売上げ見通しDIであり、その次がマネーストック(M2)となっています。規模別では大企業よりも中小企業の方が景気に敏感であり、先行性あることから、今後の景気のゆくえについては中小企業に着目すべきなのかもしれません。ただ、私は所得についてはトリクルダウンは生じず、お金持ちが豊かになれば、徐々に所得の低い層にも裨益する、というのはまったく信じられませんが、企業規模の波及経路については大企業から徐々に規模の小さい企業に波及することは十分あり得ると考えており、為替が安定し、海外経済が順調な現状では、中小企業から景気が反転する可能性は決して大きくないものと考えています。もっとも、その小さい可能性の原因となる可能性があるのは人手不足です。人手不足から非正規雇用に依存していた規模の小さな企業経営が苦しくなる可能性はあり得るものと考えます。要するに、人手不足で非正規雇用の安い労働力に依存していた企業については、正規雇用を活用しつつ生産性を向上させることに失敗すれば、あるいは、淘汰される可能性が残ります。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。なお、賃金についてはかなり長期の季節調整済みの系列が公表され始めていますが、どうも世間一般ではまだ季節調整していない原系列の統計の前年同月比を名目賃金上昇率として見て、さらに、消費者物価(CPI)の前年同月比でデフレートして実質賃金として見る、というエコノミスト間の慣行が残っており、当ブログでも、世間一般の動向を見極めつつ対応いたしたいと思います。ということで、景気に敏感な所定外労働時間は5月に▲3.3%の減産を示した生産と整合的に、製造業の季節調整済みの前月比で▲0.7%になっています。賃金は、現金給与総額・きまって支給する給与ともに、名目で前年同月比+0.7%、実質で+0.1%の伸びを示しています。なかなか賃金の伸びが渋いんですが、今日の日経新聞の経済教室でも、東大の渡辺先生が価格硬直性が先進国の中でも突出して大きいとの分析結果を明らかにしていますが、賃金もご同様な気がします。ただ、引用した記事にもある通り、人手不足から雇用を確保するためにパートタイム比率がじわじわと低下し始めています。我が国賃金の伸び悩みは、いわゆるシンプソン効果でパートなどの非正規雇用比率の上昇による寄与がそれなりに大きく、個別の賃金上昇とともにフルタイム正規雇用が増加すれば、マクロでの賃金上昇につながる可能性が高く、大いに期待したいと思います。賃金と物価はニワトリとタマゴですから、ともに手を携えて上向きになることが十分にあり得ます。

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