企業物価(PPI)上昇率は前年同月比+2%強でそろそろ頭打ちか?
本日、日銀から6月の企業物価 (PPI)が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計と同じ+2.1%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の企業物価指数、2.1%上昇 6カ月連続で前年上回る 伸び率は頭打ち
日銀が12日に発表した6月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は98.4で、前年同月比で2.1%上昇した。6カ月連続で前年を上回った。原油や天然ガスなどの国際商品価格の前年比での上昇を製品価格に転嫁する動きが続いた。ただ、伸び率は頭打ちで、前月比では横ばいだった。
燃料の天然ガスや原油の1~3月期の価格高を反映し、電力価格が値上がりした。北海道の秋サケの不漁が原因でいくらの価格も上がった。一方で、原油価格の足元での下落を背景に石油・石炭製品などの価格は下がり、上昇分を打ち消した。
円ベースの輸出物価は前年比で5.6%上昇し、前月比では0.8%下落した。輸入物価は前年比で11.9%上昇し、前月比では1.6%下落した。前月比での原油安や外国為替市場での円高の進行が影響した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年比で上昇したのは353品目、下落したのは300品目だった。上昇と下落の品目差は53品目と、5月の確報値(72品目)から減少した。
日銀の調査統計局は「サービス価格とは異なり、人手不足による人件費の上昇を財の価格に転嫁する動きは見られない」と分析している。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

ヘッドラインの国内物価の前年同月比上昇率は先月や先々月と同じ+2.1%ですから、引き続き堅調な推移と考えていますが、現在の+2%の国内物価上昇率はかなりの部分を国際商品市況における石油価格や資源価格の上昇の寄与によるものですから、例えば、上のグラフの下のパネルに見られる通り、石油を含む素原材料価格がすでにピークアウトした今後の物価の推移に注目すべきであり、金融政策よりも石油価格の動向に敏感な物価ですから、年度後半には物価上昇率がピークアウトする可能性も否定できません。ただ、先月や今月のPPI統計を見る限りは、4月の年度替わりの価格改定期の値上げがいくぶんなりとも浸透し、その流れを引き継いでいるように見受けられます。PPIの外数でSPPIなんですが、運輸サービスなどで順調に価格転嫁が進めば、PPIの上昇やひいては賃金上昇にもプラスなんではないかと私は考えています。輸入物価と素原材料価格はヘッドラインとなる国内物価の先行指標と考えられるんですが、上のグラフのうちの下のパネルの素原材料の上昇率はまだまだ高いものの、ピークアウトしつつある印象ですし、輸入物価上昇率もまだ2桁ながら5月+12.5%から6月は+11.9%へ伸びが鈍化しているのも事実です。消費者物価(CPI)への本格的な転嫁は少し先になりそうで、PPIとCPIには当然のラグがあり、PPI上昇率が鈍化すればCPIの伸びも停滞する、ということになる可能性が高いと考えるべきです。そして、そのCPIの伸びが鈍化する時期において、日銀の物価目標である+2%に達している可能性は低いんではないかと懸念しています。
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