3か月連続マイナスを記録した機械受注と上昇幅の拡大した企業物価(PPI)!
本日、内閣府から6月の機械受注が、また、日銀から7月の企業物価 (PPI)が公表されています。機械受注では変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比▲1.9%減の7900億円だった一方で、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計から上昇幅を拡大して+2.6%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の機械受注1.9%減、電子部品向けなど鈍化
内閣府が10日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月と比べ1.9%減の7900億円だった。受注額は2016年5月以来、1年1カ月ぶりの小ささ。情報通信機械を中心に製造業が振るわなかった。前月割れは3カ月連続で、QUICKがまとめた市場予想(4.3%増)を大きく下回った。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業が5.4%減と5カ月ぶりの大幅減となった。スマートフォン向けを含む電子部品用機械などの受注が鈍化し、情報通信機械が26.8%減となった。ただ自動車関連は12.7%増と、5月の7.4%減から持ち直している。内閣府は製造業の動向について「弱いとはいえないが目立った大型案件がなく、目先は実質的に横ばいとなりそうだ」(内閣府経済社会総合研究所)とみていた。
非製造業は0.8%増と4カ月ぶりに増加に転じた。通信業が28.8%増、運輸・郵便業が14.1%となったことが寄与した。いずれも前月に20%台の大幅なマイナスとなった反動増の面が大きい。非製造業は受注額でみると4508億円と、約2年ぶりの小ささとなった前月(4473億円)とほぼ同水準にとどまっている。
4~6月期の「船舶、電力を除く民需」の受注額は前期比4.7%減と1~3月期に続きマイナスだった。環境規制にからんだ駆け込み需要が剥落し建設機械が振るわず、非製造業の前月割れが続いたことが響いた。内閣府は7~9月期は非製造業が持ち直すとして7.0%の伸びを見込んでいる。
7月の企業物価指数、2.6%上昇 7カ月連続で前年上回る7月の企業物価指数、2.6%上昇 7カ月連続で前年上回る
日銀が10日に発表した7月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は98.8で、前年同月比で2.6%上昇した。7カ月連続で前年を上回り、消費増税の影響を除くと2013年11月(2.6%上昇)以来3年8カ月ぶりの伸びだった。電力料金の上昇に加え、銅市況の改善で銅地金などの価格も上がった。中国の通販市場拡大に伴い、段ボールに使う古紙の価格も上昇が目立ったという。前月比では0.3%上昇した。
円ベースの輸出物価は前年比で7.7%上昇し、14年1月(8.1%上昇)以来3年6カ月ぶりの伸びとなった。一方で前月比では1.3%上昇だった。輸入物価は前年比で11.9%上昇したが、前月比では横ばいだった。前月比での円高・ドル安の進行などが響いた。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年比で上昇したのは356品目、下落したのは277品目だった。上昇と下落の品目差は79品目と、6月の確報値(66品目)から増加した。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。ただし、統計2本の記事を並べましたので、やたらと長くなってしまいました。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、次の景気ウォッチャーとも共通して、景気後退期を示しています。

日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の前月比伸び率は+4.5%と予想されていたんですが、実際には▲1.9%のマイナスで、しかも3か月連続の前月比マイナスですし、引用した記事にもある通り、季節調整済みの前期比で見ても、1~3月期の▲1.4%減に続いて、4~6月期も▲4.7%減と、2四半期連続の前期比マイナスを記録しています。ただし、3月時点での見通しでは、4~6月期も▲5.9%減が見込まれていましたから、それは上回って推移しています。加えて、先行き四半期である7~9月期の受注見通しについては、コア機械受注ベースで前期比+7.0%増の2兆6,011億円を見込んでいます。先行き7~9月期には製造業がマイナスと予想される一方で、非製造業はプラスと見込まれています。ということで、設備投資の先行指標であるコア機械受注は横ばい、というか、一進一退が続いているんですが、それほど悪い数字ではないものの、何とも先行きは見通しがたくなっています。標準的なシナリオでは、昨年末あたりからの製造業における稼働率の上昇や人手不足などに加えて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、緩やかながら設備投資は増加の方向を示すんではないか、と多くのエコノミストは考えています。私もそうです。今でもそうです。ただし、足元の企業マインドなどを考え合わせると、維持・更新投資は当然増加するとしても、国内での能力増強投資につては海外投資との見合いで慎重姿勢を示す企業も少なくないことから、どこまで設備投資がマクロでして伸びるかは必ずしも明らかではありません。1点だけ私から強調しておきたいのは、6月統計では引用した記事にもある通りに我が国のリーディング・インダストリーである自動車関連で持ち直しの動きがみられる点です。ただ、設備投資の先行きについては、そろそろ、緩やかな増加から横ばいの範囲に下方修正するエコノミストもいそうな気はします。

続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、最初のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、真ん中の2番目は需要段階別の上昇率、そして、最後の3番目は原油価格の指数そのものを、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2枚のパネルの影をつけた部分は、機械受注と同じく、景気後退期を示しています。ということで、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で見て、7月は+2.6%の上昇と前月からさらに上昇幅を拡大しています。ただ、上昇幅拡大の主因は電気やガスなどのエネルギー関連の価格上昇であり、原油価格がラグを伴って波及しているだけという気もします。上のグラフの中の一番下のパネルでは原油価格の指数をそのままプロットしていますが、前年同月比上昇率のベースでは、今年2017年1~3月期の各月に+90%超の大幅な上昇を記録した後、すでに上昇率ではピークアウトし、直近7月統計では+6.0%まで落ち着きを取り戻しています。国際商品市況で決まる価格ですので先行きは見通しがたいんですが、大幅な価格上昇の時期は過ぎた気もします。ですから、PPI上昇率の先行きについては、このまま上昇幅がさらに拡大することは考えにくいと私は受け止めています。
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