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2017年8月25日 (金)

プラスの続く消費者物価(CPI)と企業向けサービス物価(SPPI)をどう見るか?

本日、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、また、日銀から企業向けサービス物価指数(SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は+0.5%、また、SPPIのヘッドライン上昇率も+0.6%と順調にプラスを継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価7月0.5%上昇 2年7カ月ぶり水準、ビール類寄与
総務省が25日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数が100.1となり、前年同月比で0.5%上昇した。プラスは今年1月から7カ月連続で、電気代などエネルギーのほか、安売り規制が強化されたビール類が上昇に寄与した。
前年比の伸び率は消費増税の影響を除くと、14年12月以来、2年7カ月ぶりの水準。物価が上昇したのは282品目(53.9%)で、前月(279品目)を上回った。
全体の伸びをけん引した品目はエネルギーで、全体を0.42ポイント押し上げた。電気代が6.1%、ガソリンが6.3%がそれぞれ上がった。
生鮮食品を除く食料は0.9%上昇した。国税庁が6月から酒の安売り規制を強化。メーカーと小売業者に対して、行き過ぎた安売りをさせないようにしたことで、例えばビールは前年を7.9&上回るなど上昇材料になった。
エネルギーも除く総合指数は0.1%上昇にとどまった。5カ月ぶりの上昇だが、エネルギー以外の物価の伸びは鈍い。スマートフォンを含む携帯電話機は8.6%低下した。
総務省が同日発表した東京都区部の8月のCPI(中旬速報値)は、生鮮食品を除く総合指数で0.4%上昇した。エネルギーが引き続き全体を押し上げたほか、8月から70歳以上の高額療養費の自己負担額の上限が引き上げられた影響で、診療代が3.5%のプラスになった。
一方、携帯電話の通信料は5.4%低下した。前月の2.3%から下落幅が広がった。同省は「KDDIの新しい値下げプランの影響が出ている」と指摘。来月発表の8月の全国分も押し下げ要因になるもようだ。
生鮮野菜は2.3%低下した。8月は東京都心で40年ぶりに21日連続で雨が降るなど、関東や北日本で天候不順が続いているが、同省によると「長雨の影響はまだ出ていない」という。
7月の企業向けサービス価格、前年比0.6%上昇 49カ月連続前年上回る
日銀が25日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.9で、前年同月比で0.6%上昇した。前年比での上昇は49カ月連続。人手不足による労働者派遣サービスの価格上昇などが指数全体を押し上げた。
輸送関連の価格も上昇した。「貨物輸送ではドライバー不足による人件費上昇分を輸送価格に転嫁する動きが続いている」(調査統計局)。今年は夏休みシーズンの旅客需要が好調なこともあり航空旅客輸送では割引運賃の設定が減少しているという。訪日外国人の利用増もあり宿泊サービスの価格も上昇基調が続いている。
一方で前年同月比での指数の上昇幅は6月(0.7%上昇)から縮小した。自動車やオンラインゲーム関連の広告需要の落ち込みでテレビ広告の価格が下落したことが響いた。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の147品目のうち、価格が前年比で上昇したのは80品目、下落は33品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は47品目と6月の確報値(45品目)と比べて拡大した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計を2つも取り上げたので、とても長くなってしまいました。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。

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上のグラフについては、加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。ということで、現状での物価上昇は財関係ではエネルギーが、そして、サービスでは人手不足が物価上昇を牽引しているように見えます。ただし、私の計算によれば、サービスの寄与度は先月6月統計からマイナスに転じており、7月統計で全国CPI上昇率+0.5%を牽引しているのは、私の計算による寄与度ベースで、エネルギー+0.42%、生鮮食品を除く食料+0.20%であり、上のグラフからも明らかな通り、コア財とサービスの寄与度はマイナスです。もっとも、財についてはビールの安売り規制が、また、サービスについては携帯電話料金の低下の影響もあり、やや官の行動に民が追随している印象もあり、必ずしも、人手不足の緩和や需給ギャップなどの市場要因ではなく、やや攪乱要因ではないか、と私は受け止めています。本来の需給要因としては、買い替えサイクルに従って、そろそろ、耐久消費財の価格の下落も終息に向かい、年内いっぱいはコアCPI上昇率は+1%近くを目指して上昇幅を拡大する可能性が高い、と私は予想しています。しかし、来年に入った後については、そのまま日銀の物価目標である+2%に向かって上昇幅を拡大するかどうかは不透明で、為替や国際商品市況の石油価格などの動向を見る限り、再びCPI上昇幅が縮小する可能性も決して小さくないと受け止めています。賃金動向も気がかりですが、日銀金融政策の正念場かもしれません。

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続いて、SPPI上昇率のグラフは上の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。SPPI上昇率については、コアCPI上昇率が徐々に上昇幅を拡大しているのに対して、逆に、2-5月で4か月連続して+0.8%の上昇を示した後、6月+0.7%、7月+0.6%と上昇幅を縮小させています。引用した記事にもある通り、テレビ広告をはじめとする広告の前年同月比上昇率が6月▲0.4%に続いて、7月も▲2.9%と下落している影響が大きいんですが、逆に、人手不足の中で労働者派遣サービスは6月+1.4%に続いて、7月も+1.8%と着実なプラスを記録しており、底堅い動きを示しています。貨物輸送をはじめとする運輸・郵便なども堅調です。

日銀の物価目標+2%が順調に進んでいると考えているエコノミストは少数派ではないかと思うんですが、私は現実に合わせて物価目標を引き下げることについては疑問を持っています。すなわち、為替相場がいくぶんなりとも購買力平価に基づいて決定される部分があるなら、諸外国のインフレ率より日本の方が低ければ円高に振れるおそれが高いからです。少なくとも物価と為替については国際標準を目指して金融政策を割り当てるべきであろうと考えています。

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