毎月勤労統計に見るなかなか上がらない賃金をどう考えるか?
本日、厚生労働省から5月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.1%減を、また、現金給与指数のうちのきまって支給する給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.4%増を、それぞれ記録しています。ただし、消費者物価が上昇を示していますので、現金給与総額を消費者物価でデフレートした実質賃金は前年同月から▲0.8%の大きなマイナスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の名目賃金0.4%減 1年1カ月ぶりマイナス
厚生労働省が4日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、名目賃金にあたる現金給与総額は42万9686円と前年同月比0.4%減となった。減少に転じるのは1年1カ月ぶり。夏のボーナスが減ったことが要因だ。
名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は前年同月比0.4%増の24万2582円と3カ月連続で増加。一方、ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は1.5%減の16万8103円だった。
背景には夏のボーナスが幅広い産業で前年より減少したことがある。産業別では「鉱業、採石業等」(17.7%減)、「飲食サービス業等」(14.7%減)、「不動産・物品賃貸業」(12.3%減)が目立った。
物価変動の影響を除く実質賃金は0.8%減少した。減少は3カ月ぶり。消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が0.5%上昇したことで、実質賃金を押し下げた。
厚労省は「基本給は上昇傾向が続いており、給与総額の減少は一時的ではないか」との見方を示した。
今週の報道については、いつもの包括的なニュースではなくて、ほぼほぼお給料に終始している印象です。続いて、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。
まず、グラフを上から順に、製造業の所定外労働時間は、なぜか、季節調整済みの前月比でマイナスを記録しています。今週月曜日に取り上げた鉱工業生産指数(IIP)がかなりのプラスでしたので、とても意外です。労働は生産の派生需要ですから、基本的には同じ方向に動くハズなんですが、私にはよく判りません。次に、2番目と3番目のパネルの賃金ですが、引用した報道では6月賃金がボーナスの影響で落ち込んだ点が強調されていましたが、少なくとも、消費に影響を及ぼす度合いの強い恒常所得と見なされている部分については、名目でプラスを続けています。ただし、デフレからの脱却はしていないものの、消費者物価がそれなりの上昇を示していますので、実質賃金はまだマイナスです。それから、6月の賃金総額が前年同月比でマイナスなのは、何といってもボーナスなんですが、夏季ボーナスについては額とともに、支払時期も注視すべきです。すなわち、年末ボーナスの支給が12月期決まりきっているのに対して、夏季ボーナスは6月支給と7月支給の両パターンあります。夏季ボーナスの総額ないし1人当たりとして前年よりも減少したのか、それとも、6月支給が減って7月支給に繰り延べられたのか、については気にかかるところですので、来月の統計もその点を忘れずチェックしたいと思います。最後に、4番目のグラフで、雇用の増加はパートタイムから徐々にフルタイムの一般労働者にシフトしているのが見て取れると思います。従って、賃金の上昇がはかばかしくなくても、パートタイムではなくフルタイムの正規雇用が増加することにより、マクロの賃金支給総額が増加する効果は望めるんではないかと私は期待しています。
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