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2017年8月 8日 (火)

やや低下を示した景気ウォッチャーと金融危機前の水準に復した経常収支!

本日、内閣府から7月の景気ウォッチャーが、また、財務省から6月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調史絵済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.3ポイント低下して49.7を、先行き判断DIも▲0.2ポイント低下して50.3を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+9346億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の街角景気、現状判断指数4カ月ぶり悪化 企業動向が鈍化
内閣府が8日発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前の月に比べ0.3ポイント低下し49.7となった。悪化は4カ月ぶり。企業動向の鈍化と、人手不足への懸念を背景とする雇用の悪化が響いた。
部門別にみると、企業動向は1.4ポイント低下の51.1だった。節目の50は超えているものの、受注や販売の鈍化が指摘された。雇用は0.4ポイント低下の56.8だった。人手不足が労働力などの供給制約になるとする捉え方が広がったもようだ。家計動向は48.1と横ばいだが、6月から7月にかけての豪雨災害を受け、九州の百貨店などでは客足が鈍化したとの指摘が目立った。
街角では企業動向について「ここ3カ月の受注量が極端に減ってきている」(近畿の出版・印刷・同関連産業)との指摘や、鋼材値上げに関連し「仕事量が思うようには増えず、(鋼材価格の)販売価格への転嫁は5割程度である」(東海地方)との声があった。雇用動向については「派遣求人は多数あるものの、求職者が減少しており、目標の人数に届いていない」(北関東の人材派遣会社)との見方があった。
23カ月後を~占う先行き判断指数は、前の月から0.2ポイント低下の50.3と4カ月ぶりに悪化した。家計動向が0.4ポイント低下し49.2となったほか、企業動向が1.2ポイント低下の50.9となった。半面、雇用は3.2ポイント改善し56.2となった。
内閣府は現状の基調判断を「持ち直しが続いている」に3カ月連続で据え置いた。先行きについては「人手不足に対する懸念もある一方、引き続き設備投資等への期待がみられる」とした。
1~6月経常黒字、10兆5101億円 リーマン前水準に
財務省が8日発表した1~6月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は10兆5101億円の黒字(前年同期は10兆4802億円の黒字)だった。上半期(1~6月)としては2年連続で10兆円の大台を上回り、リーマン・ショック前の07年(12兆6993億円の黒字)以来10年ぶりの高水準だった。
貿易収支は2兆531億円の黒字となり、前年同期(2兆3244億円の黒字)に比べて黒字額が縮小した。原粗油などの輸入が増加し、輸入全体で11.8%増加した。半導体製造装置や自動車部品の好調を映し、輸出も全体で10.1%増加したが、輸入の影響が上回った。
サービス収支は2974億円の赤字と前年同期(2489億円の赤字)に比べて赤字幅が拡大した。知的財産権使用料の支払いが増え、「その他サービス収支」の赤字額が拡大したことが響いた。一方、旅行収支は7903億円の黒字と訪日外国人の増加を背景に1~6月期としての過去最高の黒字額を記録した。
第1次所得収支は9兆7622億円の黒字と前年同期(9兆5527億円の黒字)に比べて黒字額が拡大した。海外子会社から受け取る配当金などが増えた。
併せて発表した6月の経常収支は9346億円の黒字だった。経常黒字は36カ月連続だが、黒字額は前年同月(9765億円の黒字)に比べて減少した。石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入増加で、貿易収支の黒字額が前年同月に比べて2441億円縮小したことが響いた。
サービス収支は499億円の赤字と比較可能な1985年以降で最小の赤字額だった。旅行収支の黒字が追い風となった。第1次所得収支は5072億円の黒字と前年同月(4127億円の黒字)に比べて黒字額が拡大した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。ただし、経常収支の記事は1~6月の年上半期計数に重点を置き過ぎているきらいがあり、また、統計2つの記事を並べましたので少し長くなってしまいました。次に、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIとも、わずかに低下を示しましたが、ほぼ前月から横ばいと私は受け止めています。先週水曜日8月2日に取り上げた消費者態度指数が需要サイドの消費者マインドを示していて、7月の指数は前月からわずかに上昇を示したのに対し、今日発表の景気ウォッチャーは需要サイドのマインドの代表であり、前月からわずかに低下を見せています。需要サイドと供給サイドで方向性は逆なんですが、ほぼ前月から横ばいという点では違いはありません。景気ウォッチャーをもう少し細かく、3つのコンポーネントである家計関連、企業関連、雇用関連、特に前2者の企業関連と雇用関連について詳しく見ると、現状判断DIについては家計関連が前月から横ばいであるのに対して、企業関連では前月からマイナスとなっており、また、先行き判断DIについては、家計関連・企業関連ともに前月差でマイナスですが、マイナス幅は企業関連の方が大きくなっています。この差について考えると、引用した記事にもある通り、人手不足の影響が上げられるかもしれません。すなわち、現状では人手不足の要因から量的に雇用者が増加したり、失業率が低下しつつも、賃上げはまだ緩やかな段階であり、家計にとってはマイナスではないかもしれませんが、大きなメリットも感じられない一方で、企業サイドではかなりの程度にデメリットを感じ始めている可能性が高いと私は考えています。人手不足に応じた賃上げがなされれば、家計にはプラスであることはいうまでもなく、人手不足に対応した賃上げが可能な企業にとっても売り上げ増のチャンスなんですが、他方で、賃上げを出来ない企業には大きな痛手となります。場合によっては、市場から退出することにもつながりかねません。もちろん、低賃金の未熟練労働に頼ったデフレ型企業が退出し、高賃金が可能な脱デフレ型企業が生き残るのは望ましい、という見方もあり得ますが、同時に、何らかの経済社会的な摩擦を生じる可能性も秘めています。人手不足を通じて、デフレに適応してしまった企業行動から、脱デフレへの対応を進める企業活動が求められていると考えるべきです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。引用した記事のタイトル通り、国際商品市況における石油価格の動向による振れはあるものの、我が国の経常収支はほぼほぼ2009年のリーマン・ショック前の水準に戻っています。ただ、経常黒字の構成はかなり違いがあり、2009年リーマンマン・ショック前は、極めて大雑把に、貿易黒字も第1次所得収支=投資収益収支もともに1兆円前後でしたが、最近時点では、第1次所得収支が1.5兆円を超える月もめずらしくない一方で、貿易黒字は大きく縮小しています。もっとも、輸出は世界経済の順調な回復・拡大に従って緩やかながら増加を続けており、この先も、経常収支や貿易収支がかつてのように赤字に突入する可能性は低いんではないかと私は受け止めています。

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