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2017年9月29日 (金)

いっせいに公表された政府統計から日本経済の先行きを考える!

今日は、月末の閣議日であり、いっせいに主要な政府経済統計が公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数 (IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI)が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。>鉱工業生産指数 (IIP)は季節調整済みの系列で前月比+2.1%の増産を示し、商業販売統計のうちの小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.7%増の11兆4850億円と増加し、雇用統計は失業率が2.8%、有効求人倍率が1.52倍といずれも前月と同じ水準で、生鮮食品を除く総合で定義されるコア消費者物価(コアCPI)の前年同月比上昇率は+0.7%と前月統計より上昇幅を拡大して8か月連続のプラスを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、8月は2.1%上昇 半導体関連に伸び、出荷も高水準
経済産業省が29日発表した8月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比2.1%上昇の103.6となった。上昇は2カ月ぶり。半導体製造装置などを中心とした汎用・生産用・業務用機械工業や輸送機械工業など、7月に生産が減少していた業種が持ち直した。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(1.9%の上昇)も上回った。
8月の出荷指数は前月比1.8%上昇だった。指数値は101.8となり、14年4月に実施された消費増税以降の最高水準まで回復した。在庫指数が0.6%低下の107.2、在庫率指数が4.3%低下の108.4となったことも踏まえ、経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いた。
8月の生産指数は15業種のうち11業種が前月から上昇し、4業種が低下した。汎用・生産用・業務用機械工業が3.7%上昇したほか、乗用車と自動車部品が内外需ともに好調な輸送機械工業が2.4%の上昇となった。電子部品・デバイス工業も1.8%上昇した。半面、医薬品を除く化学工業は0.7%低下となり2カ月連続で減少した。
製造工業生産予測調査によると、9月は前月比1.9%の低下、10月は3.5%の上昇を見込む。経産省では9月について「決算前の調整で最終的に当初計画より多めに作る」傾向があるとして、補正済みの試算値では1.4%程度の低下になるとみている。低下幅が試算値程度に収まれば、7~9月期も前四半期比でプラスを維持できる可能性が高いとの見通しも示した。
8月の小売販売額、1.7%増 自動車販売がけん引
経済産業省が29日発表した8月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比1.7%増の11兆4850億円だった。10カ月連続で前年実績を上回った。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
業種別でみると、最も増加寄与度が高かったのは自動車小売業で、前年同月と比べて8.3%増加した。新型車効果が続いている。次に高かった医薬品・化粧品小売業は引き続きインバウンド(訪日外国人)需要も寄与し、5.4%増となった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.7%増の1兆5655億円だった。既存店ベースでは0.6%増となった。百貨店は全店ベースで0.5%増加した。化粧品や高額品に加え、気温の低下によって秋物衣料が伸び、増加幅の大きさは2015年10月(3.8%増)以来となった。
コンビニエンスストアの販売額は1.9%増の1兆513億円だった。新規出店効果を背景に商品販売が伸びたほか、プリペイドカードなどが好調でサービス売上高も2カ月連続で増加した。
雇用安定、消費心理改善 消費支出2カ月ぶり増加
厚生労働省が29日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と同じ1.52倍だった。1974年2月以来の高さだ。企業は人材確保のため正社員の採用に力を入れており、正社員の有効求人倍率も1.01倍となり求人が求職を上回った。雇用環境の安定が消費者心理を下支えし、8月の消費支出は物価変動の影響を除いた実質で前年同月比0.6%増えた。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたりに何件の求人があるかを示す。
新たに出された求人を示す新規求人数は前年同月を6.3%上回った。産業別にみると、集団授業から個別指導へのシフトがすすむ教育・学習支援業が18.3%増えたほか、運輸・郵便業も12.3%増加した。
ただ企業の人手不足感は強まるばかりだ。企業の求人に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率は14.7%となり、比較可能な2002年以降で最低だった。インターネットなどを通じて企業に直接求職する場合を含まないが、7人雇おうとして採用できるのが1人という計算だ。
総務省が同日発表した8月の完全失業率は、前月と同じ2.8%だった。求人があっても職種や勤務地など条件で折り合わずに起きる「ミスマッチ失業率」は3%程度とされる。3%割れは働く意思のある人なら誰でも働ける「完全雇用」状態にあるといえる。
8月の失業者は189万人と前年同月と比べて23万人減った。一方、自営業を含めた就業者は84万人多い6573万人となった。
こうした雇用改善が消費を下支えしている。8月の家計調査によると、2人以上世帯の1世帯当たり消費支出は前年同月比0.6%増の28万320円だった。前年を上回るのは2カ月ぶり。消費の基調判断は「持ち直してきている」として据え置いた。
自動車の購入費用やガソリン代が膨らみ、交通・通信が7.1%増えた。住居は2.7%のプラスで、リフォーム費用が押し上げた。「昨年8月は台風が多く、リフォームの施工が滞った反動が出た」(総務省)。食料は0.6%増と、13カ月ぶりにプラスに転じた。
8月の全国消費者物価指数(CPI、15年=100)は、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数が100.3となり、前年同月を0.7%上回った。14年4月の消費増税の影響を除くと、14年10月以来2年10カ月ぶりの水準となった。
ガソリンや灯油などエネルギーが7%上昇した。生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は100.8で、前年同月比0.2%上昇した。厚労省が70歳以上の高額療養費の負担上限額を8月診療分から引き上げた影響で、診療代が3.5%上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、3つのの記事を並べるとやや長くなってしまいました。特に、3番目の記事で「消費支出」として触れられているのは総務省統計局の家計調査の結果であり、2番目の記事で取り上げている供給サイドの統計である経済産業省の商業販売統計とは異なり、需要サイドの統計です。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上は2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下のパネルは輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は、続く商業販売統計や雇用統計とも共通して、景気後退期を示しています。

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鉱工業生産は季節調整済みの前月比で+2.1%の増産を示し、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスである+1.9%増にほぼジャストミートしました。生産だけでなく、出荷もほぼ2%近い伸びを示し、在庫調整も進んでいる印象です。特に、自動車の増産が目立っており、国内の小売販売だけでなく、海外経済の回復・拡大に伴う輸出増も相まって、我が国のリーディング・インダストリーが順調に生産を伸ばしています。製造工業生産予測調査により先行きを考えると、足元の9月が▲1.9%減ながら、10月は+3.5%増との結果が示されており、10月の増産幅はやや大き過ぎてどこまで信頼できるかが疑問ですが、隔月でジグザグした動きながら、ならして見れば緩やかな増産という先行き見通しが示唆されていると受け止めています。少なくとも、9月の減産を悲観的に捉える必要はないものと考えるべきです。さらに先の見通しに関しても、家計部門を考えると、自動車や家電などの耐久消費財が、エコカー減税、家電エコポイント、消費増税などの政策的な攪乱要因が一巡し、自律的な買い替えサイクルがようやく復活しつつあり、企業部門を考えると、世界経済の順調な回復・拡大に伴う輸出の増加に加え、国内でも維持補修が中心ながら企業業績に支えられた設備投資が増加を見込めることから、生産・出荷は緩やかな回復・拡大を続けるものと期待してよさそうです。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。上のパネルの季節調整済みの系列で見ると、8月の小売販売額は▲1.7%減でしたが、季節調整していない原系列の前年同月比では+1.7%増ですから、評価としては難しいところですが、8月の天候、すなわち、梅雨が続いていたような雨が多くて日照時間が少ない気候条件を考え合わせると、消費は底堅い動きであり、昨年半ばくらいからの緩やかな回復が続いていると考えるべきです。鉱工業生産指数の前項で書いた通り、自動車や家電などの耐久消費財が、エコカー減税、家電エコポイント、消費増税などの政策的な攪乱要因が一巡し、自律的な買い替えサイクルがようやく復活しつつあるところですし、先行きも含めて消費は順調に回復・拡大を続けるものと期待しています。引用した記事にもある通り、今後とも雇用とマインドが消費をサポートするものと私は考えています。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。失業率も有効求人倍率も前月と同じながら、かなりタイトな労働需給を示しています。加えて、正社員の有効求人倍率も前月から横ばいのながら1.01 倍と高い水準にあります。さらに、雇用の先行指標と考えられている新規求人数は一段と伸びています。ただし、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。要するに、まだ遊休労働力のスラックがあるということで、グラフは示しませんが、性別年齢別に考えると、高齢男性と中年女性が労働供給の中心となっています。もっとも、定量的な評価は困難ながら、そのスラックもそろそろ底をつく時期が迫っているんではないかと思います。特に、中小企業では人手不足が深刻化する可能性もあります。さらに、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規職員が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用水準ではないかと私は考えています。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。ということで、コアCPI上昇率は、6月+0.4%から7月+0.5%、8月+0.7%と徐々に上昇幅を拡大しています。ただし、私の計算では、8月のコアCPI上昇率+0.7%に対する寄与を先ほどの4分割で考えると、大雑把にいって、エネルギーが+0.5%、食料が+0.2%であり、コア財とサービスはともにほぼゼロです。先行きについて考えると、エネルギー価格の動向が不透明ながら、引き続き根強い家計の節約志向に基づく価格引き下げ方向と人手不足とエネルギー価格などのコスト上昇に伴う価格引き上げの動きが入り混じっている気がします。国際商品市況における石油価格が急落しない限り、コアCPIのプラスがデフレに戻る可能性は低いものと考えていますが、逆に、現状のままでは日銀のインフレ目標である2%に達するほどのコアCPIのプラス幅拡大も見込めないものと考えるべきです。だからこそ、片岡委員がさらに積極的な金融政策を求めて反対票を投じたんだろうと私は認識しています。

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