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2017年10月31日 (火)

順調な回復を示す鉱工業生産指数(IIP)と完全雇用に近い結果の雇用統計とまたまた物価上昇率の見通しが下方修正された「展望リポート」!

今日は、月末の閣議日であり、いくつか主要な政府経済統計が公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数 (IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも9月の統計です。鉱工業生産指数 (IIP)は季節調整済みの系列で前月比▲1.1%の減産を示し、雇用統計では失業率が2.8%、有効求人倍率が1.52倍といずれも前月と同じ水準を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、9月1.1%低下 電子部品振るわず 基調判断据え置き
経済産業省が31日発表した9月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は102.4と、前月に比べ1.1%低下した。低下は2カ月ぶり。スマートフォン(スマホ)向けの電子部品やディスプレー製造装置などが振るわなかったことが響いた。経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いた。
全15業種のうち9業種で前月を下回った。最も低下に寄与したのは電子部品・デバイス工業(5.6%低下)で、中小型液晶素子や半導体集積回路などスマホやタブレット端末に使われる電子部品の生産が落ち込んだ。輸出が伸び悩んだほか、有機ELへ代替する動きも生産絞り込みに影響した可能性がある。汎用・生産用・業務用機械工業も2.4%低下した。ディスプレー製造装置や掘削機械など、受注生産する品目が多いため前月の反動が生じたとみられる。
一方、上昇したのは5業種だった。上昇に最も寄与したのは、美容品やモイスチャークリームといった化粧品の生産が好調だった化学工業で7.6%上昇した。石油・石炭製品や非鉄金属なども上昇しており、素材系の業種が目立った。プラスチック製品工業は前月比横ばいだった。
QUICKがまとめた民間予測の中央値(前月比1.5%低下)は上回った。出荷指数は2.6%低下の99.2で、在庫指数は横ばいの107.3だった。在庫率指数は1.6%上昇の110.3となった。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、10月は前月に比べ4.7%上昇、11月が0.9%低下となった。ただ予測には、神戸製鋼所(5406)の品質データ改ざん問題や、日産自動車(7201)やSUBARU(7270)の無資格検査問題の影響は織り込まれておらず、今後表面化する可能性もある。
正社員求人1.02倍、9月過去最高 人手不足より鮮明に
雇用情勢の改善が続いている。厚生労働省が31日発表した9月の正社員の有効求人倍率(季節調整値)は1.02倍で、前月より0.01ポイント上がった。統計をとり始めた2004年以降で最高となった。緩やかな景気回復に人手不足などが重なり、企業は正社員採用を増やして人材の囲い込みを進めている。ただ賃金への波及は鈍く、消費はなお勢いを欠いている。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に何件の求人があるかを示す。パートタイム労働者らも含めた全体の有効求人倍率は1.52倍で、8月と同じだった。高度経済成長末期の1974年2月以来の水準で高止まりしている。
新たに出た求人をさす新規求人数は前年同月を5.6%上回った。業種別にみると、スマートフォン関連が好調な製造業が最も高く11.3%増だった。慢性的な働き手不足に直面している運輸・郵便業(10.2%増)や医療・福祉(8.6%増)も伸びが大きかった。
求人を出しても企業は思い通りに採用できていない現状がある。実際に職に就いた人の割合を示す充足率(季節調整値)は14.9%。インターネットで企業の採用サイトに直接求職するといった場合を含まないため「7人雇おうとしても採用できるのは1人」という計算になる。
総務省が31日発表した9月の完全失業率は、前月と同じ2.8%だった。求人があっても職種や勤務地など条件で折り合わずに起きる「ミスマッチ失業率」は3%程度とされる。3%割れは働く意思のある人なら誰でも働ける「完全雇用」状態にあるといえる。
正社員は3483万人で、前年同月より76万人増えた。伸び幅は1年5カ月ぶりの大きさだった。非正規社員は2万人減り、7カ月ぶりに減少に転じた。また15~64歳の人口に占める就業者の割合を示す就業率は75.8%で、前年同月より0.8ポイント上がった。比較可能な1968年以降で最高を記録した。
雇用改善の割に消費の回復は勢いを欠く。総務省が同日発表した9月の家計調査によると、2人以上世帯の1世帯当たり消費支出は26万8802円だった。物価変動の影響を除いた実質で前年同月を0.3%下回り、2カ月ぶりに減少した。
気温が高かった前年の反動で、エアコンなど家庭用耐久財が17.9%減と大きく落ち込んだ。ゴルフのプレー料金や宿泊料など教養娯楽サービスも5.0%減った。「敬老の日を含む連休に台風が直撃したため」(総務省)という。食料や衣料品への支出は増えており、消費の基調判断は「持ち直してきている」として据え置いた。
消費持ち直しが緩やかなため、物価上昇ペースも緩慢だ。9月の消費者物価指数(CPI)は値動きの激しい生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.7%上昇となったが、主因のエネルギーも除くと、伸び率は0.2%にとどまる。家計の節約志向も根強く、小売り大手による日用品などの値下げが消費を下支えしている面もある。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2本の統計に関する記事を並べるとやや長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上は2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下のパネルは輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は、続く雇用統計とも共通して、景気後退期を示しています。

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生産については、ここ1年でほぼほぼジグザグの動き、すなわち、隔月でプラスとマイナスを繰り返す変動をもって推移して来ていますが、9月統計ではマイナスの減産と出ました。鉱工業生産指数(IIP)の季節調整済み系列の前月比で見て、ここ半年6か月間の浮き沈みを追うと、4月+4.0%、5月▲3.6%、6月+2.2%、7月▲0.8%、8月+2.0%、そして、9月▲1.1%となります。どのペアで見るかにもよりますが、おおむね、絶対値でプラスの方がマイナスより大きく、統計作成官庁である経済産業省の基調判断も「生産は持ち直しの動き」で据え置かれています。先行きについては、製造工業生産予測調査に従えば、10月+4.7%の増産の後、11月は▲0.9%の減産とされており、この統計は過大推計のバイアスがあることから経済産業省では予測誤差について加工しており、それでも、足元の10月については+2.4%±1%の増産と試算しています。11月は減産ということのようですが、引き続き、絶対値でプラスの増産の方が大きい傾向は続いており、緩やかながら生産は回復・拡大の方向にあると考えてよさそうです。もちろん、先行きのリスクは目白押しで、最大のリスクは米国連邦準備制度理事会による利上げを伴う出口戦略の成り行きです。そして、国内要因では製造業の品質に関わるスキャンダルです。すなわち、自動車では日産とスバルによる不正検査、そして、神戸製鋼の品質偽装などが、今後、国内市場だけでなく、海外においてもどのように展開するか、あるいは、他企業の不正事案が発覚するかどうか、などなど、エコノミストには追い切れないリスクのような気がします。

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本年2017年7~9月期の四半期データが利用可能となりましたので、久し振りに、在庫循環図を書いてみました。上の通りです。ピンクの上向き矢印の2013年1~3月期から始まって、黄緑の今年2017年7~9月期まで、この4年余りは一貫して景気拡張気だったんですが、在庫循環図は1周しています。2002年12月の月例経済報告の付属資料である鉱工業の在庫循環図と概念図を見るまでもなく、現在の足元の景気局面が意図的な在庫積み増し期という点は幅広い合意あることと思いますが、景気後退期があった可能性が示唆されているところ、景気循環日付では確認されていません。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。失業率も有効求人倍率も前月と同じながら、かなりタイトな労働需給を示しています。加えて、正社員の有効求人倍率も前月から横ばいのながら1.01 倍と高い水準にあります。さらに、雇用の先行指標と考えられている新規求人数は一段と伸びています。ただし、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。要するに、まだ遊休労働力のスラックがあるということで、グラフは示しませんが、性別年齢別に考えると、高齢男性と中年女性が労働供給の中心となっています。もっとも、定量的な評価は困難ながら、そのスラックもそろそろ底をつく時期が迫っているんではないかと思います。特に、中小企業では人手不足が深刻化する可能性もあります。さらに、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規職員が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用水準ではないかと私は考えています。

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加えて、一般職業紹介状況 (職業安定業務統計) から正社員とパートのそれぞれの有効求人倍率のグラフは上の通りです。いずれも、季節調整済みの系列です。引用した記事にもある通り、正社員の求人倍率は1倍を超えて高い水準にありますが、他方で、パートの求人倍率はさらに高い水準にあるものの、単月統計の結果ながら、直近の統計ではジワジワと上昇を続ける正社員有効求人倍率に対して、パートの方は6~8月の3か月連続の1.80倍からスリップして1.77倍に低下を見せています。もう少し継続的に統計を見極める必要がありますが、人手不足の中で求人の潮目に変化が現れつつあるのか、どうか、とても気にかかるところです。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げの
影響を除くケース
 2017年度+1.7~+2.0
<+1.9>
+0.7~+1.0
<+0.8>
 7月時点の見通し+1.5~+1.8
<+1.8>
+0.5~+1.3
<+1.1>
 2018年度+1.2~+1.4
<+1.4>
+1.1~+1.6
<+1.4>
 7月時点の見通し+1.1~+1.5
<+1.4>
+0.8~+1.6
<+1.5>
 2019年度+0.7~+0.8
<+0.7>
+2.0~+2.5
<+2.3>
+1.5~+2.0
<+1.8>
 7月時点の見通し+0.7~+0.8
<+0.7>
+1.4~+2.5
<+2.3>
+0.9~+2.0
<+1.8>

最後に、昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合ですが、本日、「展望リポート」を公表しています。政策委員の大勢見通しは上の通りです。「展望リポート」 p.8 から引用しています。2017~18年度の物価上昇率はわずかながら7月時点での見通しから下方修正されています。なお、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で、引用元である日銀の「展望リポート」からお願いします。

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