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2017年10月20日 (金)

ニッセイ基礎研「中期経済見通し」を読む!

先週10月13日付けで、ニッセイ基礎研から「中期経済見通し」が明らかにされています。対象年度は2027年度までのほぼ10年間です。主要国別を含む世界経済の中期見通しと、もちろん、日本経済の見通しをセットでリポートにしています。今日びのことですから、pdfの全文リポートもアップされています。まず、ニッセイ基礎研のサイトからリポートの要旨を4点引用すると以下の通りです。

要旨
  1. 世界経済は緩やかな回復が続いているが、労働需給が引き締まる中でも賃金、物価上昇率は依然として低水準にとどまっている。今後10年間の平均成長率は先進国では過去10年平均を上回るが、新興国は少子高齢化に伴う潜在成長率の低下などから過去10年平均を下回ることが予想される。
  2. 日本はすでに人口減少局面に入っているが、そのペースは想定されていたよりも緩やかで、先行きの見通しも上方修正されている。今後10年程度は人口減少による経済成長への影響を過度に悲観する必要はない。2027年度までの実質GDP成長率は平均1.0%となり、過去10年平均の0.5%よりも高まると予想する。名目GDPの伸びは平均1.8%となり、2023年度に政府目標の名目GDP600兆円が達成されるだろう。
  3. 人口減少、少子高齢化が進む中で経済成長率を高めるためには、女性、高齢者の労働参加拡大を中心とした供給力の向上と高齢化に対応した潜在的な需要の掘り起こしを同時に進めることが重要である。
  4. 消費者物価上昇率は10年間の平均で1.3%(消費税の影響を除く)と予想する。日本銀行が「物価安定の目標」としている2%を安定的に続けることは難しいが、1%台の伸びは確保し、デフレ脱却は実現する可能性が高い。

なかなか包括的によく取りまとめられている印象です。なお、世界経済の中期見通しも興味あるところながら、今夜のブログでは日本経済に関して、リポートからいくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。なお、この見通しでは消費税については、2019年度と2024年度にそれぞれ消費税率を2%ポイント引き上げることを想定しており、従って、予測期間最終年度には消費税率は12%に達します。

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まず、リポートの p.19 から 実質GDP成長率の推移 を引用すると上の通りです。2019年度の消費増税は年度途中の10月である上に、その次の年度の2020年度に東京オリンピック・パラリンピックが開催されることから、景気押し下げ効果は限定的であるものの、逆に、2021年度が東京オリンピック・パラリンピックの反動で成長率が下振れし、また、2024年度は消費増税の影響で成長率が低下します。中期見通しですから、短期変動の循環的要因は必ずしも明確ではありませんが、まあ、そうなんだろうと私も思います。なお、上に明記した以外の年度については、ほぼ潜在成長率見合いの1%強くらいの成長で推移すると見込まれています。

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その潜在成長率について、順序が逆になりますが、リポートの p.16 から 潜在成長率の寄与度分解 を引用すると上の通りです。労働投入のマイナス寄与は必ずしも大きくなく、資本投入と技術進歩で相殺して、ほぼ1%強の水準を確保しています。

冒頭の要旨との重複をいとわず、最後に、リポートの見通しの特徴を私なりにいくつか上げると、まず第1に、消費低迷の主因は巷間いわれているような家計の節約志向や将来不安に伴う過剰貯蓄ではなく、可処分所得の伸び悩みであると明快に指摘しています。私もほぼほぼ100%合意します。まったく、その通りです。ただ、短期的には少し天候要因やマインドも影響するかもしれません。でも、リポートは中期見通しですから、所得要因以外はあり得ないと私も考えています。第2に、消費者物価については日銀のインフレ目標である2%には届かないものの、1%台は確保してデフレ脱却は達成する、と主張しています。私もそう思わないでもありませんが、インフレ率が2%に達しない場合の購買力平価に基づく為替水準がどうなるか、とても気にかかるところです。なお、リポートでは中長期的には経常収支は貯蓄投資バランスで決まるとして、為替相場は必ずしも大きな考慮が払われていません。第3に、というか、最後の最後に、いくつかのキーナンバーをバラバラと脈絡なく取り上げておくと、名目GDP600兆円は2023年度にずれ込み、経常収支は予測期間最終盤に小幅ながら赤字化する一方で、訪日外国人旅行者数は2018年に3000万人を超え、東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年政府目標の4000万人を突破する可能性が高く、政府財政のプライマリ・バランスは2024年度の消費増税を盛り込んでも予測最終年度の2027年度にGDP比▲2.2%の赤字が残り、財政収支の黒字化は達成できず、現在の日銀の異次元緩和は2022年度に出口局面を迎え、無担保コールの政策金利は+0.1%に設定され、長期金利も上昇局面に入るが、物価目標の2%を達成できないため大きな金利上昇は見込めない、とされています。ご参考まで。

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