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2017年11月15日 (水)

7-9月期GDP速報1次QEは7四半期連続のプラス成長を記録!

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.3%、年率では+1.4%を記録しました。外需主導ながら、+1%をやや下回るといわれている潜在成長率を超えた高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月期GDP、年率1.4%増 外需がけん引、個人消費は減少
内閣府が15日発表した2017年7~9月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.3%増、年率換算では1.4%増だった。プラスは7四半期連続。輸出が増え、輸入が減り外需が伸びた。設備投資も堅調だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.4%増で年率では1.5%増だった。
生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.6%増、年率では2.5%増だった。名目は2四半期連続でプラスだった。
実質GDPの内訳は、内需が0.2%分の押し下げ効果、外需の寄与度は0.5%分のプラスだった。
項目別にみると、個人消費が0.5%減と、7四半期ぶりにマイナスだった。天候不順で衣料品などへの支出が低迷した。
輸出は1.5%増、輸入は1.6%減だった。米国向け自動車やアジアへの半導体などが伸びた。国内需要の低迷で輸入量が減少した。
設備投資は0.2%増と、4四半期連続でプラスだった。企業収益や景況感の改善を背景に企業の設備投資需要が高まった。住宅投資は0.9%減。公共投資は2.5%減。民間在庫の寄与度は0.2%のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.1%だった。プラスは5四半期ぶり。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.5%のプラスだった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/7-92016/10-122017/1-32017/4-62017/7-9
国内総生産GDP+0.2+0.4+0.3+0.6+0.3
民間消費+0.4+0.1+0.4+0.7▲0.5
民間住宅+2.9+0.3+0.9+1.1▲0.9
民間設備▲0.1+1.9+0.5+0.5+0.2
民間在庫 *(▲0.5)(▲0.2)(▲0.2)(+0.0)(+0.2)
公的需要+0.2▲0.5+0.0+1.6▲0.6
内需寄与度 *(▲0.1)(+0.1)(+0.1)(+0.9)(▲0.2)
外需寄与度 *(+0.4)(+0.3)(+0.1)(▲0.2)(+0.5)
輸出+2.1+3.0+1.9▲0.2+1.5
輸入+0.1+1.2+1.4+1.4▲1.6
国内総所得 (GDI)+0.0+0.1▲0.1+0.7+0.4
国民総所得 (GNI)▲0.1+0.1+0.2+0.7+0.6
名目GDP+0.0+0.5▲0.0+0.6+0.6
雇用者報酬 (実質)+0.7▲0.2+0.3+1.0+0.5
GDPデフレータ▲0.1▲0.0▲0.8▲0.4+0.1
内需デフレータ▲0.8▲0.3+0.0+0.3+0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7~9月期の最新データでは、前期比成長率が7四半期連続でプラスを示し、黒い外需(純輸出)が大きなプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前期比成長率が+0.4%、年率+1.5%でしたので、やや下回ったとはいえ、ほぼジャストミートに近い気がします。7四半期連続のプラス成長は、少なくとも上のグラフでは現れませんので、10年振りよりもっと前なんだろうと思います。というか、私の目で統計表を確認したところ、1999年4~6月期から2001年1~3月期の足かけ3年8四半期連続でのプラス成長、ただし、プラス・ゼロ成長を含む、というのが見つかりました。私のことですから、ひょっとしたら見落としがあるかもしれませんが、たぶん、この期間以来の7四半期連続でのプラス成長なんではないかと思います。消費がマイナスで、その影響もあって内需がマイナスとなっている一方で、外需でプラス成長を確保している姿が示されています。従って、私の想像では、メディアの論調では、特に現在のアベノミクスを批判しようという意図があれば、4~6月期の内需主導成長が7~9月期には続かずに外需主導になった、と批判すればいいわけですし、逆に、アベノミクスを擁護しようとすれば、4~6月期と7~9月期をならして見れば、ということになるんではないかという気がします。ですから、何とでも評価できそうですし、例えば、証券会社の債券販売の営業マンであれば、前者のポジション・トークをして、金利は上がらず債券価格は上昇する、という営業活動も出来ますし、逆に、株式の営業マンなら、後者のならして見て日本経済は好調、という営業トークも出来そうです。ただ、7四半期連続でのプラス成長は日本経済の堅調な動きを反映していることは間違いなさそうです。消費はマイナスでしたが、引用した記事にもある通り、基本は、長雨や台風などの天候要因と私も考えています。というのも、消費の財別をもう少し詳細に見ると、減少しているのはサービスと耐久消費財であり、衣料品をはじめとする半耐久財と食料などの非耐久財は増加を示しています。急に消費が全体として冷え込んだわけではありませんし、ボーナスも増えそうですし、さらに、後で見るように、マクロでの所得のサポートはあると考えるべきです。ですから、ボーナス要因も含めた可能性として、10~12月期には消費が大きな増加を示す可能性があり、これまた「ならしてみれば」、ということになるかもしれません。

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上のグラフは、上のパネルでは実質の雇用者報酬の推移を、下は非居住者家計の購入、すなわち、いわゆるインバウンド消費の推移について、それぞれプロットしています。毎月勤労統計などを見る限り、マイクロな1人当たりの賃金についてはなかなか上昇の気配が見られないんですが、1人当たり賃金に雇用者数を乗じたマクロの雇用者報酬は着実に増加を示しています。上のグラフに見られる通りです。1人当たり賃金がそれほど増加していないわけですから、雇用者数の方が増加していることになります。私の見方としては、もちろん、人数ベースで雇用者数が増加している一方で、雇用の質として非正規雇用ではなく正規雇用の増加がマクロの雇用者報酬の増加に寄与しているように受け止めています。他方、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったインバウンド消費は最近時点でかなり伸び悩みを見せているのが読み取れます。

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最後のグラフは上の通り、2000年以降の経常収支と経常収支の対GDP比の推移です。2011年の震災とそれに伴う原発停止に加え、国際商品市況における石油価格の上昇などから、一時、経常収支は赤字を計上していたんですが、最近時点の7~9月期には4%台半ばを記録しており、サブプライム・バブルの崩壊前の2007年くらいの水準に近づいています。1990年代半ばの米国クリントン政権期に日米包括協議に引っ張り出された私としては、やや懸念が募ります。

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