この冬のボーナスは増えるのか?
先週のうちに、例年のシンクタンク4社から冬季ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因が作用しますので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。ついでながら、支給総額に関する見通しも可能な範囲で併せて収録しています。特に、第一生命経済研のリポートは、来年度の賃金見通しまで幅広く言及してありましたので、超長めに取っています。なお、その他の機関についても、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 民間企業 (伸び率) | 公務員 (伸び率) | ヘッドライン |
日本総研 | 37.3万円 (+0.8%) | 73.1万円 (+3.7%) | 今冬の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+0.8%と年末賞与としては3年ぶりのプラスとなる見込み。 (略) 賞与支給総額は、同+2.9%増加する見込み。一人当たり支給額の増加は小幅ながら、支給労働者数が引き続き堅調に増加することが主因。 |
第一生命経済研 | 37.3万円 (+0.8%) | n.a. | 増加が予想されるとはいえ、伸び率自体はそれほど高いわけではない。物価上昇率を考慮した実質賃金でみるとゼロ近傍の推移が続くものと思われる。17年度後半の景気も引き続き好調に推移する可能性が高いが、それはあくまで輸出の増加を背景とした企業部門主導の回復になるだろう。 賃金の回復が実現するのは18年度と予想している。17年の春闘は、物価が下落し企業業績も伸び悩んだ16年の結果を反映したことで物足りない結果に終わったが、18年の春闘では、物価が上昇し、企業収益も好調な17年の経済状況をベースに交渉が行われる。18年の春闘賃上げ率は17年対比で上昇する可能性が高いだろう。また、17年度の好調な企業業績を反映して18年のボーナスは夏・冬とも増加が予想される。18年については、物価上昇を上回る賃金増加が実現するとみられ、実質賃金も改善するだろう。遅ればせながら家計部門への景気回復の波及が進むことが期待できる。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | 37.2万円 (+0.6%) | 72.2万円 (+2.4%) | 2017年冬の民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上)のボーナスは、前年比+0.6%と小幅ながら3年ぶりに増加すると予想する。内外需要の回復を背景に企業業績の拡大が続いていることが押し上げ要因となる。 雇用者数の増加が続いており、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数も増加が見込まれる。冬のボーナスの支給労働者数は4,288万人(前年比+2.4%)に増加し、支給労働者割合も84.9%(前年差+0.1%ポイント)に上昇しよう。また、ボーナスの支給総額は16.0兆円(前年比+3.0%)に増加する見通しである。夏に続いて冬も支給総額が増加することは、個人消費にとって追い風となるだろう。 |
みずほ総研 | 37.4万円 (+1.1%) | 78.9万円 (+3.5%) | 2017年冬の民間企業の一人当たりボーナス支給額を前年比+1.1%増と予想している。冬季ボーナスとしては3年ぶりに増加する見込みだ。 (略) 支給対象者についても、人材確保のための正社員化や非正社員の待遇改善の動きを受けて、増加が続くとみられる。実際、2017年入り後はパートタイム比率が低下傾向にあり、正社員化の動きが進んでいるようだ。その結果、支給総額(民間企業)は、前年比+3.6%と比較的高い伸びを見込んだ。 (略) 民間企業・公務員を合わせた冬季ボーナスの支給総額は、前年比+3.6%と前年(同+2.1%)から大きく伸びが高まるだろう。冬としては2014年以来の伸びとなり、当面の個人消費を下支えするとみている。 |
ということで、今冬のボーナスの支給額は、3年振りに1人当たり支給額が増加するとともに、支給対象者も増加し、従って、支給総額はかなりの増加を見せると見込まれています。ただし、上のテーブルのヘッドラインにはうまく取り込めなかったんですが、大手企業については伸び悩みないし悪化すら予想されている一方で、中堅企業や中小企業では堅調と見込まれています。どうしてかといえば、大企業ではに海外経済等の不透明感や円高の影響で伸び悩んだ昨年2016年の企業業績の結果が反映された一方で、中堅・中小企業では引き続き好調な企業業績と人手不足感の強まりとを背景に冬のボーナスも明確な増加を示すものと期待されています。従来、大企業ほどボーナスがいいとの見方もあったんですが、少なくとも、今冬のボーナスの前年からの変化については、大企業で伸び悩む一方で、中堅・中小企業では好調、という結果が出るように予想されています。そして、このボーナス支給の増加は少なくとも当面の消費をサポートするものと期待されています。もちろん、いわゆる恒常所得仮説からすれば、ボーナスは恒常所得の外数であって、消費に対しては大きな影響を及ぼすものではない、と考えられていますが、さはさりながら、なかなか賃金が上がらない中でボーナスが増えれば財布の紐が緩むのは当然だという気がします。
下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。最近時点では、ボーナスだけでなく毎月のお給料も同じ傾向ではないかという気がしますが、1人当たりの支給額はそれほど大きく増加しないんですが、正社員化の進展や非正社員の待遇改善などにより支給対象者が増加する寄与が大きくなっており、マイクロな雇用者あたりの賃上げやボーナスの増加はやや伸び率が低いものの、マクロの支給総額はかなりの増加を示すようになっています。
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