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2017年12月26日 (火)

本日公表の雇用統計と消費者物価(CPI)と企業向けサービス物価(SPPI)の動向からもう一段の景気加速には賃上げが必要と痛感!

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI)が、さらに、日銀から企業向けサービス物価指数 (SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも11月の統計です。失業率は前月からさらに▲0.1%ポイント低下して2.7%まで下がり、有効求人倍率は前月から+0.01ポイント高い1.56倍まで上昇した一方で、消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は+0.9%とやや上昇幅を拡大し、企業向けサービス物価(SPPI)の前年同月比上昇率は前月と同じ+0.8%を示しています。まず、長くなりますが、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

失業率11月2.7%、24年ぶり低さ 物価3年ぶり上昇幅
雇用改善が一段と進んでいる。総務省が26日発表した11月の完全失業率(季節調整値)は2.7%と、24年ぶりの低さとなった。厚生労働省がまとめた有効求人倍率も約44年ぶりの水準に上がった。雇用の安定が消費を支え物価も緩やかに上昇するが、政府・日銀の2%目標には届いていない。20年来の懸案であるデフレ脱却は2018年の大きな課題になる。
完全失業率は10月から0.1ポイント下がり、5カ月ぶりに改善した。求人があっても勤務地など条件で折り合わずに起きる「ミスマッチ失業率」は3%程度とされる。3%割れは、働く意思がある人なら職に就ける「完全雇用」状態といえる。
11月は求職中の失業者が減った。完全失業者は178万人で1年前から19万人減少。1994年12月以来の少なさだ。
全国のハローワークで仕事を探す人1人に何件の求人があるかを示す有効求人倍率は1.56倍だった。前月を0.01ポイント上回り、高度経済成長期の74年1月以来43年10カ月ぶりの高水準だ。
企業の求人に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率は14.2%で、比較できる02年以降で最低を更新した。ハローワークを通さないインターネットでの求職を含まないが「7人雇おうとしても採用できるのは1人」という計算になる。企業は将来の人手不足を見越して、正社員の採用に力を入れる。11月の正社員の有効求人倍率は1.05倍と最高となった。
賃金水準が高い正社員が増えて家計の心理が改善し、消費も持ち直している。総務省が26日発表した11月の家計調査によると、2人以上世帯の1世帯あたり消費支出は27万7361円だった。物価変動の影響を除いた実質で前年同月を1.7%上回り、3カ月ぶりに増えた。冷蔵庫や洗濯機の買い替え需要で、家庭用耐久財が30%増加。外食も5.6%増と堅調で、すしや焼き肉などのチェーン店が好調だった。
消費が持ち直し、物価の上昇ペースも少しずつ加速している。11月の消費者物価指数(CPI、2015年=100)は値動きの激しい生鮮食品を除く総合で100.7と、前年同月比0.9%上がった。指数の水準は1997年11月以来、20年ぶりの高さだ。消費増税の影響を除いた伸び率も14年10月以来3年1カ月ぶりの大きさだった。
けん引役のガソリンや電気などエネルギーが、0.6%分押し上げた。エネルギーも除いた伸び率は0.3%。訪日外国人客の増加を背景に宿泊料が1.5%伸びた。
政府はデフレ脱却の目安として、経済全体での物価の動きを示す「国内総生産(GDP)デフレーター」など4指標を重視する。2017年7~9月期は4指標がそろってプラスとなり、内閣府は「局面変化」の状態にあると分析する。物価上昇の流れを明確な脱デフレにつなげるには、消費を底上げする賃上げの持続が欠かせない。
11月の企業向けサービス価格、前年比0.8%上昇 ホテル単価上昇で
日銀が26日発表した11月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は104.1で2005年3月以来、12年8カ月ぶりの高水準だった。前年同月比では0.8%上昇した。上昇は53カ月連続。前月比でも0.1%上昇した。企業の出張増に伴いビジネスホテルの単価上昇が影響した。
トラック運転手の不足を背景にした宅配便などの価格上昇も一因。「ドライバー不足による価格転嫁が進んでいる」(調査統計局)という。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは84品目、下落は30品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は54品目で、10月の確報値から2品目増えた。
ビジネスホテルの価格が上昇する一方、広告関連の価格は低迷した。「インターネット広告では企業が費用対効果を厳密に見るようになっている」(調査統計局)といい、業種ごとの価格動向には濃淡がある。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、いくつもの統計を一挙に並べると、とても長くなってしまいました。なお、記事ではこのブログで取り上げていない家計調査にも言及しています。次に、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。

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まず、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。失業率も有効求人倍率も前月からさらに改善を示しており、かなりタイトな労働需給を示しています。加えて、グラフは示しませんが、正社員の有効求人倍率も前月からさらに上昇して1.05倍と高い水準にあります。ただし、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。逆から見ても、失業率が、引用した記事に見られる通り、ホントに3%が完全雇用なのだとすれば賃金上昇が生ずるハズですし、有効求人倍率がまだ上昇を続けているのも事実です。要するに、まだ遊休労働力のスラックがあるということで、グラフは示しませんが、性別年齢別に考えると、高齢男性と中年女性が労働供給の中心となっています。もっとも、定量的な評価は困難ながら、そのスラックもそろそろ底をつく時期が迫っているんではないかと思います。特に、採用しやすい大企業に比べて、中小企業では人手不足がいっそう深刻化する可能性もあります。さらに、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規職員が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用水準であり、さらに、雇用面の不安や懸念が大きく軽減されていることから、消費者マインドに寄与しているのではないかと私は考えています。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。ということで、単純に見ると、コアCPI上昇率は6月+0.4%から7月+0.5%、8~9月+0.7%、10月+0.8%、11月+0.9%と徐々に上昇幅の拡大を続けており、加えて、全国の先行指標となる東京都区部でもコアCPI上昇率が全国から4か月遅れて今年2017年5月にプラスに転じ+0.1%を記録した後、10~11月の+0.6%、12月の+0.8%まで順調にプラス幅を拡大しています。しかし、先行きの消費者物価(CPI)上昇率を考える場合、要因として2点考慮する必要があり、ひとつは国内要因であり、要するに、いわゆる需給ギャップと賃金動向です。現時点で、これらはともに、物価を上昇させる方向にあると考えるべきです。需給ギャップは文句なしですが、賃金動向はまだ本格的な上昇に至っておらず、デフレ脱却にはさらなる賃上げが必要です。ただし、もうひとつは海外要因であり、国際商品市況における石油価格です。上の消費者物価のグラフにおいて、私の計算に従えば、寄与度分解した積上げ棒グラフの黄色のエネルギーの寄与度は、コアCPI+0.8%のうちの+0.61%に達しています。新興国経済が中国を含めてかなり堅調に回復を示していることから、相場が下げに向かう可能性は小さいと私は受け止めていますが、何分、相場モノですので先行きは不透明です。

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続いて、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は雇用統計と同じで景気後退期を示しています。サービス物価については人件費の占める比重が高く、賃金との連動性もそれだけ大きくなっていると私は考えて来たんですが、今年に入ってから前年同月比で+1%に近い上昇率を示しながらも、それ以上に達していないのは、逆から見て、それだけ賃金上昇が進んでいない、ということなんだろうと受け止めています。景気についてはアベノミクス5年を迎えてかなり回復を示しており、企業業績が絶好調な一方で、個人消費の増加も物価の上昇も賃上げの役割が大きくなっているように感じます。

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