前月から伸びを示した機械受注をどう見るか?
本日、内閣府から10月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比前月比+5.0%増の8509億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
機械受注5.0%増 10月、2カ月ぶりプラス
内閣府が13日発表した10月の機械受注統計によると、民間企業の設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比5.0%増の8509億円となった。2カ月ぶりに増加し、製造業を中心に人手不足を補う省力化投資が活発なことを示した。
QUICKが算出する市場関係者による事前予測の中心値(3.0%増)を上回った。内閣府は「持ち直しの動きがみられる」との基調判断を前月から据え置いた。
製造業は前月比7.4%増と2カ月ぶりに増えた。17業種中12業種でプラスだった。発注者別では電気機械(20.2%増)やはん用・生産用機械(9.9%増)などの増加が目立つ。世界経済の回復を背景に、スマートフォン向けの半導体製造装置のほか、産業用ロボットへの投資が好調に推移している。外需は前月比4.9%増だった。
非製造業も前月比1.1%増と2カ月ぶりにプラス。運輸業・郵便業が26.2%増と大きく伸びた。大型の道路車両の受注があったという。卸売業・小売業からの受注も堅調だった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で前月比+3.0%でしたので、これを上回って、まずまず堅調な伸びを示したと受け止めています。ただし、記事には人手不足大作のような表現がありますが、製造業で堅調な一方で、非製造業ではそうでもないわけですので、やや疑問が残ります。少し詳しく業種別に10月の統計を見ると、製造業については、化学工業で前月比+82.1%増、あるいは、石油製品・石炭製品でも+88.9%増といった資源関連の素材業種のほか、情報通信機械の+53.9%増とか電気機械の+20.2%増などの加工業種まで、幅広い業種で増加を示している一方で、船舶と電力を除く非製造業では、引用した記事にもある通り、大型発注のあった運輸業・郵便業の+26.2%増のほかは、卸売業・小売業の+10.0%増くらいで、しかも、製造業が9月前月比▲5.1%減を上回る10月+7.4%増なのに対して、非製造業は9月▲11.1%減に及ばない10月+1.1%増ですので、明らかに製造業中心の受注増と考えるべきです。月次で変動の激しい統計ですので、もっとならしてみるべきかもしれませんが、少なくとも10月統計に関しては、国内要因の人手不足に起因した省力化・合理化投資よりも、新興国を始めとする世界経済の回復・拡大に基づく我が国からの輸出の増加に対応した投資増が中心であった、と考えるべきであろうと私は受け止めています。今後については、世界経済の先行きリスクが米国の利上げで不透明であると考えるべきでしょうし、国内の人で不足に対応する投資が、もしも10月統計に示されたように不活発と仮定すれば、あくまで総仮定すれば、ということですが、先行きの機械受注や設備投資は横ばいないし増加であるとしても緩やかな増加になる可能性が高い、と私は予想しています。ただし、繰り返しになりますが、変動の激しい統計ですので、単月での評価には限界があり、もう少しならして見る必要はあります。
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