1月貿易統計の大きな赤字は先行き日本経済の悲観材料か?
本日、財務省から1月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+12.2%増の6兆856億円、輸入額も+7.9%増の7兆290億円、差引き貿易収支は▲9434億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1月の貿易収支、8カ月ぶり赤字 9434億円、原油高で輸入増
財務省が19日発表した1月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は9434億円の赤字(前年同月は1兆919億円の赤字)だった。貿易赤字は8カ月ぶり。原油相場の高止まりが続き、輸入が増加した。
輸入額は7.9%増の7兆290億円だった。13カ月連続で増加した。原油や液化天然ガス(LNG)など資源価格上昇の影響を受けた品目が全体を押し上げたほか、医薬品の輸入も増えた。対中国の輸入額は3.3%減少したが、11カ月連続の貿易赤字だった。対米国の輸入額は9.4%増加し、貿易黒字幅は2カ月連続で縮小した。
輸出額は前年同月比12.2%増の6兆856億円と、14カ月連続でプラスだった。地域別に見ると、アジア向け輸出は3兆3503億円と16.0%増えた。このうち中国向けは30.8%増の1兆1600億円で、いずれも1月としては過去最高だった。輸出全体の増加に寄与したのは、中国向けのハイブリッド(HV)車や車両用エンジン、IC製造装置などだった。
中国は毎年、春節(旧正月)前に輸入を絞る傾向がある。1月の中国向け輸出額の伸び率が高かったのは春節の時期の違いが影響した面がある。今年の春節は2月16日だったため「対中輸出への影響は2月にずれこむ可能性がある」(財務省)という。
税関長公示レートは1ドル=112.47円。前年同月に比べ3.4%円高にふれた。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。
毎年、この1~2月の季節になると、いかんともしがたく貿易統計の輸出額には中華圏の春節の影響が現れます。春節は、昨年2017年は1月28日、今年2018年は2月16日でしたので、月が違うと季節調整すらままならず、前年同月比で見ても大きなバイアスがかかりかねません。ただ、輸入額は我が国経済の回復・拡大と国際商品市況における石油価格の上昇により着実に増加を示しています。もっとも、NY市場における原油価格は、貿易統計の1月ではなく2月の現時点で、1バレル60ドルを少し超えたくらいのレンジですので、かなり上昇したとはいえ、それほどムチャな水準ではありません。そして、上のグラフの季節調整済みの系列の方の下のパネルに見られる通り、傾向を見る目的で引用している季節調整済みの系列ではまだ貿易収支は黒字であり、引用した記事にもあるように、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスを下回り、大差ありませんから、原系列統計での貿易赤字をもって悲観材料とは考えられません。ただ、ひとつだけ、為替相場については、最近時点でも円高に振れていることから、例えば、最近の株式市場の乱高下などを見るにつけ、貿易にとどまらず、株価やマインド面も含めて為替の影響は大きいと、改めて感じています。
輸出の動向については、繰り返しになるものの、春節効果による振れが大きく、それだけ我が国輸出に対する中国経済の影響度合いが大きくなったことを実感します。最近時点では、特に昨年2017年12月と直近統計の今年2018年1月には、為替相場における円高の影響から輸出価格上昇の抑制が観察されましたが、輸出数量の方で伸びを確保しているのがグラフから見て取れます。一番上のパネルです。輸出の先行きについては、中国をはじめとする新興国や先進国ともに世界経済が緩やかに回復・拡大する中で、我が国輸出も堅調に推移するものと見込んでいます。ただし、もう一度確認ですが、為替相場が安定的に推移するという前提の下ですので、米国が金融政策の正常化を進めて米国金利の動向が不透明な中で、為替だけは相場モノでもあり先が見通せません。
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