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2018年2月24日 (土)

今週の読書は経済書を中心に計7冊!

先週末に自転車で図書館を回ると、予約しておいた本がいっぱい届いていましたので、ついつい今週は読み過ぎた気がします。経済書を中心に計7冊なんですが、新書が2冊ですし、それほどのボリュームではありませんでした。今日はこれから図書館を周る予定ですが、来週もそこそこな量の読書をするような予感です。

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まず、チャールズ・ウィーラン『MONEY もう一度学ぶお金のしくみ』(東洋館出版社) です。著者は米国ダートマス大学の経済学研究者であるとともに、経済学や統計学の入門書のライターとしても人気あるところで、本書の英語の原題は Naked Money なんですが、すでに、Naked EconomicsNaked Statistics というタイトルで、いかにも同一ラインにあると思しき本を出版しています。本書の英語の原書は2016年の出版です。ということで、翻訳者の1人である山形浩郎が役者解説にも書いていますが、本書の内容は Naked Economics に含まれていないのか、という疑問が残りますが、私は読んでいないので詳細は不明ながら、まあ、含まれないわけはない一方で、別途論じてもいいともいえるような気がします。本書では基本的にとても標準的な経済学の見方考え方をベースに、冒頭にマネー=お金の役割について、会計的な計算単位、価値貯蔵手段、交換手段の3つのを提示し、その後も、金本位制のような本来的に価値あるもの、貴金属とは限らないものの、何らかの使用価値あるモノにマネーを結び付ける制度や現行の管理通貨制度、さらには話題のビットコインまで、もちろん、国内金融だけでなく国際的な取引の為替まで、幅広くマネーやその制度を概観しつつ、やっぱり、というか、何というか、2008年後半のサブプライム・バブル崩壊後の一連の金融危機についても分析を試みています。我が国については、1980年代後半のバブル経済崩壊後の長期停滞を、星-カシャップ論的な追い貸しを含めたゾンビ企業の存続に伴う生産性の停滞に一因を見出すとともに、アベノミクスについては基本的にとてもポジティブな取り上げ方がなされています。ただ、黒田総裁の5年の任期をもってしても2%インフレには到達していない現状についても批判的に見ているようです。本書の著者のような標準的な経済学の見方や考え方を適用すれば、ある意味で、当然の評価だという気もします。欧州のユーロについても、マンデル授の最適通貨圏理論を援用しつつ、金本位制に近い独立した金融政策を奪う可能性、特に、為替相場の調整政策の手段がなくなる危険に焦点を当てています。何度も繰り返しになりますが、とても標準的な経済理論・金融理論を当てはめた明快な解説・入門書ですので、判りやすいんではないかと思います。

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次に、岡崎哲二『経済史から考える』(日本経済新聞出版社) です。実は、私の大学時代の専門分野は西洋経済史で、その経済発展史を就職してからは開発経済学に当てはめているんですが、著者は日本経済史や比較経済史を担当する東大教授であり、その意味で、我が国でも屈指の経済史学者であるといえます。私なんぞとは大違いです。そして、本書では、朝日新聞などのコラムで書き溜めた小論を中心に書き下ろしも含めて、経済発展と停滞を解き明かそうと試みています。その意味で、かなり雑多なテーマを詰め込んでおり、私の興味ある分野に引きつけて感想を書いておくと、まず、高度成長期における産業政策の評価がやや高過ぎる気はしますし、産業政策の評価が高いのにつれてそれを策定した官僚の評価にもバイアスあるように感じなくもありません。ただ、おそらく、著者の専門外なので私から見て大きな疑問があるのはアベノミクスの評価です。財政均衡を重視し、金融緩和については、いまだに、ハイパーインフレを懸念するのもどうかという気がします。そして、財政規律に引きつけて昭和初期の軍拡路線を論じるのもやり過ぎだと思います。そして、これも極めてありきたりで表面的なアベノミクスに対する批判なんですが、成長率のトレンドを引き上げる政策の必要性を強調しています。高度成長期の産業政策評価の観点から、本書でもターゲティング・ポリシー、すなわち、政府が将来性ある分野に何らかの優遇措置を講じる政策が推奨されていますが、意地悪な見方をすれば、アベノミクスにおける財務省の財政政策は大赤字を出して財政均衡を失して間違っているが、経済産業省のターゲット産業を探す能力にはまだ信頼を置いている、ということなんでしょうか。また、デフレの原因のひとつに、1990年代で成長の源泉、すなわち、ルイス的な二重経済解消の過程における労働移動と先進経済へのキャッチアップ成長の2つの源泉が枯渇した、との議論も意味不明です。最後に、ピケティ教授の『21世紀の資本』における成長率と資本収益率の乖離から格差が生じる、という論点を批判していますが、本書でもご同様で、いくつか因果推論が逆ではないか、という議論が私のようなシロート、とまではいいたくないものの、少なくとも著者に比較して大いに格下のエコノミストの目から見てもあるような気もします。

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次に、リチャード E. ニスベット『世界で最も美しい問題解決法』(青土社) です。著者は米国ミシガン大学の社会心理学の研究者であり、10年余り前に『木を見る西洋人 森を見る東洋人』がベストセラーになったのを記憶している人も多いんではないでしょうか。それなりの心理学の権威なんではないかとおもいます。本書の英語の原題は Mindware であり、2015年の出版なんですが、邦訳タイトルはかなりミスリーディングであり、売上げ重視でやや不誠実の域に近いと思います。中身はかなりの重厚な読書になると思いますが、私は勉強不足にして第5部の論理学と第6部の認識論については理解が及びませんでした。副題で「賢く生きるための行動経済学、正しく判断するための統計学」とあるのが私の専門分野に近いと思って読み始めましたが、この副題に相当する部分は決してページ数で多くはありません。出版社に騙されないように注意することが必要です。統計学に関する部分では、ありきたりながら相関と因果の違いを強調しているものの、何度かこのブログでも指摘しましたが、本書でまったく取り上げていないビッグデータの世界では相関が重要であって、因果推論はそれほど重視されないというのも事実です。それから、あくまで私の理解であって、本書の著者の見方ではありませんが、経済学や医学で統計が重視されるのは、実は、分析の背景にあるモデルがかなりいい加減で、因果推論を成り立たせるのが苦しいので、仕方なく、リカーシブに統計的な有意性でお話を進めようとしているフシがあります。すなわち、本書でも因果の流れが実は逆というケースをいくつか取り上げていますが、理論的な因果関係が不明確であるがゆえに、統計で帰無仮説が棄却されるかどうかでごまかしている面があるような気がしてなりません。冗談半分によくいわれるように、セックスと妊娠には統計的に何の相関関係も見いだせませんが、因果関係があるのはそれ相応の大人なら誰でも知っていると思います。前著に続いて、東洋的というよりは中国的な円環的歴史観、というか、循環的な輪廻転生の時間の進み方とかなり一直線に近い西洋的な歴史観、時間の進み方の対比がまたまた示されたんではないかと思います。

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次に、ガルリ・カスパロフ『ディープ・シンキング 人工知能の思考を読む』(日経BP社) です。著者はご存じチェスの世界チャンピオンであり、同時に、世界チャンピオンとしてIBMのディープ・ブルーに敗れたことでも、逆に、その名を高めたチェス・プレーヤーです。英語の原題は Deep Thinking であり、2017年の出版です。将棋の永世名人であり、チェス愛好家としても名高い羽生善治二冠が巻末で解説しています。チェスの世界王者といえば、本書の著者であるカスパロフから1世代前の米国の」ボビー・フィッシャーがあまりに有名でかつ衝撃的であり、ついつい変人であると想像しがちなんですが、本書ではそれは否定されています。1996~97年にかけての2回に及ぶIBMディープ・ブルーとの対戦が有名であり、1996年はカスパロフが3勝1敗2分で勝利したものの、1997年は1勝2敗3分で敗戦しています。特に1997年のシリーズには引き分けに持ち込める対戦を投了して負けてしまった2回戦を中心に、本書では第6章から第10章くらいが読ませどころなんでしょうが、やはり、著者のカスパロフは敗者ですので、ついつい愚痴が多くなるのも致し方ありません。IBM主催のゲームであったために多くの不利を背負い込んだのは理解できます。例えば、クラッシュ-リセット-再起動などで集中力が殺がれたことはまだしも、事前にディープ・ブルーの棋譜が公開されなかったこと、ロシア語を理解できる警備員を配されて控室での内密の会話をまるで盗聴するように聞き出されていたこと、そして、これは世間一般にも怒りの声が噴出したのを覚えていますが、カスパロフにはリターン・マッチが許されず、1997年の勝利を最後にIBMディープ・ブルーが勝ち逃げしたことなどです。チェスの世界チャンピオンでなくても、コンピュータが極めて大きなスピードで進化を遂げて、チェスの世界だけでなく人間の思考を代替したり、人間の認知能力を上回ったりする時点が、すでに過ぎ去りはしないものの、急速に近づいているという事実については理解しています。カーツワイル的に大雑把にしても、2050年の前にシンギュラリティが来る可能性についても否定できません。AIが人間の認知作業に取って代ろうとする現時点で、チェスの世界から人間と機械との向かい合い方に関して興味深い本が出版されたと受け止めています。

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次に、グレアム・アリソン『米中戦争前夜』(ダイヤモンド社) です。著者のアリソン教授はハーバード大学ケネディスクールの初代のトップであり、米国の歴代国防長官の顧問を務めリアルな国際政治にも通じる研究者です。英語の原題は Destined for War であり、2017年の出版です。私ははるか大昔に『決定の本質』を読んだ記憶があります。いわゆるキューバのミサイル危機をモデル分析した名著ですが、その点以外はすっかり忘れてしまいました。本書では、いわゆるトゥキディデスのトラップに基づき、新興国の台頭が覇権国のヘゲモニーを脅かして生じる構造的なストレスが戦争という武力衝突につながるかどうか、について分析し、現時点での焦眉の的である米国という覇権国に対抗する新興国である中国との関係をモデル分析しています。トゥキディデスの罠は古典古代の覇権国スパルタと新興国アテネの関係から始まり、本書ではいくつかのケースのデータベースを整備し、米中関係がどのように帰結するかを予測・考察しています。そのデータベースでは、覇権国の交代に伴う構造ストレスについては、戦争になってしまうケースが多いんですが、最近100年ほどの大きな衝突として、英国から米国への覇権の移行、さらに、米ソ間での覇権争いで米国の覇権にソ連が挑戦して敗れた冷戦、の2ケースについては小競り合いはともかく、全面戦争には至らなかった稀有な例として引き合いに出されています。もちろん、その昔にもポルトガルとスペインはローマ教皇という極めて高い権威を引き入れて戦争を回避し、トルデシラス条約により南米を分割した例もあります。そういった高い権威は現時点では国連というわけにもいかないでしょうから、戦争=武力衝突を避けるために米国が取りえるオプションとしては、覇権の移行=新旧逆転を受け入れて何らかの交換条件を設定するか、新興国の中国を弱らせるか、日中間で国交回復時に尖閣諸島の領有権問題を扱ったように一定の時期だけ継続する期限付きの平和を交渉するか、共通のグローバルな課題に対応するために米中関係を再定義するか、といったところが上げられています。ただ、オープンな外交姿勢を示したオバマ政権期にはともかく、米国ファーストのトランプ政権の現時点で採用可能なオプションは限られている気もします。

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次に、小野善康『消費低迷と日本経済』(朝日新聞出版) です。著者は大阪大学をホームグラウンドとしていたエコノミストであり、本書は朝日新聞などで掲載されていたコラムなどを取りまとめています。ですから、この著者の一貫性ない見識ゆえに仕方ないのかもしれませんが、内容的にムリある矛盾した中身となっています。ご案内の通り、民主党政権の菅内閣のころに私の勤務する役所の研究所の所長に政治任命されたエコノミストですので、野党的な見方でアベノミクスに反論しており、例えば、物価目標の2%を達成していないのでアベノミクスは失敗だと結論したかと思えば、円安で景気が回復した点はアベノミクスの成果ではなく、震災で原発が停止して燃料輸入が増加し経常収支が赤字になったのが原因であると主張するなど、およそ、真面目な経済に関する議論とは思えず、繰り返しになりますが、現政権に反対するための無理矢理な論陣を張るために、その昔の関西名物だったボヤキ漫才のような経済解説になっています。特に、私が理解できなかったのは、本書の著者の小野教授の何が何でもな前提は中長期に渡る需要不足が日本経済の低迷の根本原因だそうで、そのために失業が生じているらしいんですが、同時に、アベノミクスによるハイパーインフレの懸念も表明されており、不況克服が日本経済の課題なのか、インフレ抑制が重要なのか、現政権の経済政策をムリにでも批判する必要あることから、経済の現状に関してかなりムリある解釈、あるいは、矛盾した見方を必要としているような気がします。もっと、見識あるエコノミスト、あるいは、常識的なビジネスマンとして虚心坦懐に日本経済を見れば、確かに物価目標には達しないものの、民主党政権時に再確認されたデフレからの脱却も視野に入り、日本経済はかなりの長期にわたる回復・拡大過程にあると思うんですが、どうしても党派的な観点から現政権の経済政策に対する批判をせねばならないとすれば、本書のような形になるのかもしれません。

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最後に、中野信子『シャーデンフロイデ』(幻冬舎新書) です。著者はベストセラーをバンバン出している脳科学者であり、私も前著の『サイコパス』は読んでいたりします。本書のタイトルは、ネットにおけるスラングのひとつである「めしうま」と同じ意味であり、他人の不幸を喜ぶ心情を指しています。そして、その脳の働きにはオキシトシンが関係しており、このオキシトシンは愛情や人とのつながりを醸成する肯定的な働きをしつつも、「可愛さ余って憎さ百倍」のように、あるいは、愛情から出たストーカー行為が犯罪に転じるように、愛情から妬ましさに転化するらしいです。ただ、私はこのあたりの心理は理解できません。例えば、私は京都の出身であり小さいころからタイガースのファンですが、その昔にはいわゆる「アンチ・ジャイアンツ」といわれる人々がいたことを記憶しています。これは私には理解できませんでした。好きな球団があるのはいいことですし、それを応援するのも娯楽のひとつだと思うんですが、嫌いな球団を設定してそれを貶める、というのは私の理解を越えていました。本書のめしうまや他人の不幸を喜ぶ心情も、まったく同様に、私には理解できません。ですから、本書の問題設定自身が理解できないといってもよかろうかと思います。ですから、人類を代表して不埒な人にサンクションを加えるという心情も理解できません。ひょっとしたら、私は何らかの意味でサイコパス的な共感、あるいは、反感の心情が欠落しているのかもしれません。それはそれで心配な気もします。経済的な観点から、極めて大きな偏見を持って、どこかに金持ちがいたら、「お前ももっとよく勉強して立身出世して、もっと金持ちになれ」というのが、日本をはじめとするアジア的な発想であり、それゆえに教育が重視されたりしますが、ここから大きな偏見なんですが、「お金持ちがいれば自爆テロに巻き込んで殺してしまえ」というのがイスラム教原理主義だという見方も何かで聞いたことがあります。私はまったく同意できませんが、もしもそうだと仮定すれば、私は確かに圧倒的に前者の信条に近いと思います。

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