さらに上昇した景気動向指数と賃金上昇が物価に追いつかない実態を明らかにした毎月勤労統計!
本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも、昨年2017年12月の統計です。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月比+2.8ポイント上昇して120.7を、CI一致指数+は▲0.3ポイント下降して107.9を、それぞれ記録した一方で、毎月勤労統計の名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+0.7%増の55万1222円を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
17年12月の景気一致指数、2.8ポイント上昇
内閣府が7日発表した2017年12月の景気動向指数(CI、2010年=100)は、景気の現状を示す一致指数が前月比2.8ポイント上昇の120.7だった。数カ月先の景気を示す先行指数は0.3ポイント低下の107.9。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。
実質賃金、12月は0.5%減 17年は2年ぶり減少 毎月勤労統計
厚生労働省が7日発表した2017年12月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月比0.5%減少した。減少は2カ月ぶり。名目賃金は増加したものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月比1.3%上昇し、賃金の伸びを抑えた。17年の実質賃金は前年比0.2%減となり、1年ぶりに減少した。
12月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比0.7%増の55万1222円と5カ月連続で増加した。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が0.6%増、残業代など所定外給与は0.9%増、ボーナスなど特別に支払われた給与は0.7%伸びた。
パートタイム労働者の時間あたり給与は前年同月比2.1%増の1117円だった。パートタイム労働者比率は0.04ポイント高い31.23%となった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。
同時に発表した17年の実質賃金は前年比0.2%減と2年ぶりに減少した。名目賃金にあたる現金給与総額は0.4%増となったものの、消費者物価指数が0.6%上昇した。
所定内給与は0.4%増、所定外給与は0.4%増、特別に支払われた給与は0.4%増だった。パートタイム労働者の時間あたり給与は2.4%増の1110円となり過去最高となった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

まず、CI一致指数に対するプラス寄与度で大きかった系列を順に上げると、投資財出荷指数(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、有効求人倍率(除学卒)などとなっています。何と、現時点では昨年2017年12月の一致指数についてはすべてがプラス寄与であり、マイナス寄与の系列はありません。CI先行指数では、マイナス寄与では中小企業売上げ見通しDI、マネーストック(M2)(前年同月比)、新設住宅着工床面積などが上げられ、プラス寄与では新規求人数(除学卒)、最終需要財在庫率指数、日経商品指数(42種総合)などがあります。2017年12月までで、現在の2012年11月を底とする第16循環の現在の景気拡張局面は61か月に達し、高度成長期の1965年11月から1970年7月までの57か月続いた「いざなぎ景気」を超えて、戦後最長の景気拡大期間を記録した米国のサブプライム・バブルに対応した第15循環の景気拡張期の73か月に、あとちょうど1年=12か月と迫っています。ただ、米国のサブプライム・バブルに対応した第15循環の景気拡張期に比べて、現在の景気拡張局面は2014年4月からの消費税率引き上げや2015年年末から2016年年初にかけての新興国経済の減速の影響などがあって、景気動向指数が下降を示す景気の踊り場が多かったような気がします。そのあたりは、上の示したグラフに加えて、日本経済研究センターが昨年2017年5月から提供を始めた景気後退確率のグラフなどからも読み取れます。また、長期に及んでいる割には、景気拡大の実感が乏しい理由は賃上げによる所得の増加がほとんどなく消費拡大が実現していないのが大きな原因のひとつであろうと私は考えています。まさか、高度成長期のような2ケタ成長を目指すべきとの意見はほとんどないものと受け止めており、従って、景気拡大の果実を国民に均霑するためには、企業サイドで内部留保を溜め込むのではなく、賃金上昇という形で国民に広く還元する必要があるといえます。

続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。賃金に着目すると、上のグラフのうちの2番目のパネルに見られる通り、現金給与総額は前年同月比+0.7%増の55万1222円と5か月連続で増加したものの、生鮮野菜などの値上がりなどによる物価上昇が+1.3%あって、実質賃金は減少を記録しています。また、引用した記事にもある通り、2017年を通じても実質賃金はマイナスでした。もちろん、デフレ脱却の初期局面では、物価上昇が賃上げを上回って実質賃金が低下することから雇用増がもたらされる、というのが教科書的な理解ながら、そろそろ、この人手不足が続く中で賃金の上昇がここまで抑え込まれているのは不可解ともいえます。ただ、上のグラフのうちの最後のパネルに見られる通り、パートタイム労働者の伸び率がかなり鈍化して、フルタイム雇用者の増加が始まっているように見えますから、労働者がパートタイムからフルタイムにシフトすることにより、マイクロな労働者1人当たり賃金がそれほど上昇しなくても、マクロの所得については、それなりの上昇を示す可能性があり、同時に、所得の安定性も向上して消費に向かいやすくなる可能性も出始めているんではないかと期待しています。
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