とうとう前年同月比上昇率が+1%に達したコア消費者物価(CPI)をどう見るか?
本日、総務省統計局から2月の消費者物価指数 (CPI)が公表されています。前年同月比上昇率でみて、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は前月からわずかながら上昇幅を高めて+1.0%に達しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
2月の全国消費者物価1.0%上昇 電気代やガソリンが押し上げ
総務省が23日発表した2月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が100.6と前年同月比1.0%上昇した。プラスは14カ月連続で、消費増税の影響を除いたベースで、2014年8月(1.1%上昇)以来3年6カ月ぶりの上昇率となる。QUICKがまとめた市場予想の中央値は1.0%上昇だった。電気代やガソリンなどエネルギー品目が引き続き押し上げた。
生鮮食品を除く総合では、全体の57.6%にあたる301品目が上昇し、169品目が下落した。横ばいは53品目だった。生鮮食品を除く総合指数を季節調整して前月と比べると0.1%上昇だった。
生鮮食品を含む総合は101.3と1.5%上昇した。キャベツやミカン、マグロなどの高騰が背景で、消費増税の影響を除いたベースで14年6月(1.6%上昇)以来3年8カ月ぶりの高水準だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.8と前年同月比0.5%上昇した。中国の春節(旧正月)が2月にずれ込んだ影響で宿泊料が上昇した。平昌冬季五輪の開催に伴い、外国パック旅行費も上昇した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、やや長くなってしまいました。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

昨年2017年年央くらいからエネルギー価格の上昇に伴って、生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの上昇率もジリジリと上昇幅を拡大し、昨年11月から今年2018年1月まで3か月連続で+0.9%を記録した後、とうとう2月には+1.0%に達しました。ただ、上のグラフに見られる通り、私の雑な計算による寄与度でみる限り、+1%のコアCPI上昇率のうち、半分強の+0.53%の寄与がエネルギー価格から出ています。加えるに、+0.28%の寄与が生鮮食品を除く食料から、サービスから+0.16%、最後にコア財から+0.04%となります。なお、サービス以外の消費財のうち、電機製品などの耐久消費財と衣類などの半耐久消費財はともに、前年同月比上昇率が+0.3%であるのに対して、食料などの非耐久消費財が突出して上昇率が高く、+3.6%を示しています。前月に書いた購入頻度別とか、基礎的・選択的支出別とかのグラフは示しませんが、先月から傾向は変わらず、購入頻度が高い財サービス、また、基礎的な消費支出にかかる物価上昇が大きくなっていますから、全体の+1%の上昇率よりも、国民生活の中でより大きな物価上昇の実感がある可能性があります。加えて、もっとも重要なポイントと私が考えるのは、賃金上昇が小幅にとどまる中で、今年の賃上げが伸び悩むなら、2018年は実質賃金の上昇率がマイナスを記録する恐れもあります。
先週3月16日の「月例経済報告」では「消費者物価は、このところ緩やかに上昇している。」と久し振りに判断を引き上げましたし、単純に+1%の物価上昇だけを見ると、デフレ脱却宣言もあるいは可能な物価上昇に達した気もします。ただ、まだまだ未達の日銀の物価目標に加えて、実質賃金の動向などを考え合せると、デフレ脱却宣言を政府が出すことが可能かどうか、なかなか難しい判断になるような気がします。
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