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2018年3月10日 (土)

300千人超の雇用増を記録した米国雇用統計により3月利上げは確実か?

日本時間の昨夜、米国労働省から2月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+313千人増と、市場の事前コンセンサスだった+200千人くらいの増加という予想を大きく上回り、失業率も前月と同じ4.1%という低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の6パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added booming 313K jobs in Feb.
U.S. employers added a blockbuster 313,000 jobs in February as the hot labor market showed no sign of cooling despite persistent worker shortages.
The unemployment rate, which is calculated from a differnt survey, was unchanged at 4.1%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 205,000 job gains. Many predicted that unseasonably warm weather and light snowfall would boost employment, particularly in industries such as retail, restaurants and construction.
Average hourly earnings rose 4 cents to 26.75, pushing down the annual increase to 2.6% from January’s 2.9%. The drop suggests that January’s big increase was an anomaly caused by a sharp decline in average weekly hours as a result of harsh weather and a nasty flu season.
The jump in January was the largest in nearly nine years. It appeared to signal that growing competition among employers for fewer available workers was finally leading to stronger wage growth. But what seemed like good news triggered a massive market sell-off as investors feared it would prompt faster interest rate hikes by the Federal Reserve to head off excessive inflation. Higher rates for bonds make stocks less attractive.
February's pullback in wages could ease investor worries and boost markets.

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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ということで、1月の+239千人の雇用増の後、繰り返しになりますが、2月は+313千人増と、ちょっとびっくりするくらいの雇用の増加を記録しています。引用した記事にもある通り、ブルームバーグなどでは+205千人と、大雑把に米国の雇用の好調さのひとつのメルクマールとなる+200千人増周辺が市場の事前コンセンサスだったんですが、これを大きく上回っての+300千人超の雇用増です。米国の雇用は極めて堅調と考えるべきです。設備投資が好調で建設業が+61千人の雇用増を示し、トランプ大統領が重視する製造業でも+31千人増、これまた好調な消費を反映して小売業でも+50.3千人増と、産業別に見ても軒並み雇用増を記録しています。
従って、3月20-21日に予定されている米国連邦公開市場委員会(FOMC)での追加利上げが極めて濃厚になったと、私を含めた多くののエコノミストやアナリストは受け止めています。というか、文句なしでしょう。2月5日に就任したばかりのパウエル米国連邦準備制度理事会(FED)新議長の下での最初のFOMCが追加利上げの決定で幕を開けるということになります。むしろ、今後は利上げのペースに注目が集まることになりそうです。すなわち、昨年暮れの段階から2018年は年3回の利上げペースが予告されていましたが、パウエル新議長の下で、年4回の利上げの可能性が取り沙汰されることになりそうです。

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最後に、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、底ばい状態を脱して少し上向きに転じつつも、もう一段の加速が見られないと考えられてきましたが、それでも、2月は前年同月比で+2.6%の上昇を見せています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、+2%の物価目標を上回る賃金上昇が続いているわけですから、そろそろ金融政策で対応すべき段階であるのかもしれません。

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