輸出数量が減少した貿易統計について考える!
本日、財務省から12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+1.8%増の6兆4630億円、輸入額も+16.5%増の6兆4596億円、差引き貿易収支は;34億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
2月の貿易黒字34億円 2カ月ぶり黒字も春節要因で前年比大幅減
財務省が19日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は34億円の黒字だった。ハイブリッド(HV)車の輸出が大きく伸び、2カ月ぶりに貿易黒字に転じた。ただ資源高に春節(旧正月)要因が加わったことで黒字幅は前年同月(8045億円)から大幅に縮小した。
輸出額は前年同月比1.8%増の6兆4630億円だった。15カ月連続で増加した。米国向けのHV車のほか、南米の仏領ギアナ向けの人工衛星、中国向けの金属加工機械がけん引した。地域別に見ると、米国向けは1兆2762億円と4.3%増加。欧州連合(EU)向けも11.5%増えたが、中国を含むアジア向けは3.2%減少した。
輸入額は16.5%増の6兆4596億円だった。14カ月連続で前年実績を上回った。中国から衣類の輸入が伸びたほか、資源価格の上昇を受けてオーストラリアからの液化天然ガス(LNG)や韓国からの灯油の輸入も増加した。アジアからの輸入額は26.5%、米国からは5.2%ぞれぞれ増えた。
対中国でみると輸出は9.7%減少したが、輸入は39.2%増と大幅に伸びた。毎年、春節のある月は中国向けの輸出が控えられる一方で中国からの輸入が増える傾向にある。今年の春節は2月16日で、前年は1月末だった。財務省は「春節が(黒字幅の縮小に)影響した」とみている。
税関長公示レートは1ドル=109.26円だった。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

ということで、先月の貿易統計を取り上げた記事でも書いたところですが、引用した記事にもある通り、毎年1~2月は中華圏の春節効果で大きなスイングが見られますので、何とも評価が下しがたいところ、2月の貿易統計では季節調整していない原系列の統計では小幅に貿易黒字を記録したものの、季節調整済みの系列では貿易収支は赤字を計上しています。上のグラフの通りです。2011年3月の震災に伴う原発停止に起因してエネルギー輸入が急増したために貿易収支が赤字化し、季節調整済み系列で見る限り、大雑把に2015年10月まで赤字が継続し、2015年11月から直近の2018年1月まで貿易黒字が計上されていたんですが、2月統計では季節調整済みの系列で見て久々の貿易赤字でした。米国のセンサス局法による季節調整ですから、中華圏の春節をどこまで季節調整し切れているかは不明ですが、私の想像によれば、季節調整もかなり攪乱されている可能性が高いと受け止めています。季節調整済みの系列では、1月が+3523億円の貿易黒字、2月が▲2015億円の赤字ですから、今年に入ってからの2か月をならして見れば各月で数百億円の黒字、という形になります。現状での日本企業の国際競争力の実情という気もします。というのは、次のパラでもう少し詳しく展開しますが、資源高で燃料輸入の金額がかさんでいることに加えて、為替で円高が進んでいるからです。

ということで、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。グラフを見る限り、先進国の経済動向は真ん中のパネルで見るOECD加盟国の先行指標の前年同月比がやや右下がりに転じていて、2月の我が国からの輸出数量が前年同月比で▲2.1%の減少を記録しています。もちろん、春節効果により中国に対する輸出数量が大きく攪乱され、前年同月比で見て今年2018年1月の中国向け輸出数量は+27.6%と大きく伸びた後、2月は▲13.6%と落ち込んでいたりします。ただ、輸入サイドの燃料価格の高騰とともに、上のグラフを見ても、輸出の増勢が鈍化しているのは明らかですし、特にその主因は輸出数量の伸びの鈍化にあります。輸出数量の伸び鈍化の要因のひとつとして、為替の円高進行が輸出の伸びを抑制している点は忘れるべきではありません。税関長公示の2月末から3月初めの円ドル為替を見ると、昨年2017年2月26日~3月4日の期間で113.84円だったのが、今年2018年2月25日~3月3日では107.03円に、5%超の円高となっています。為替の動向については相場モノですので、基本的にランダム・ウォークすると私は考えており、何とも見通しがたいところですが、もうすぐ、米国の公開市場委員会(FOMC)も始まりますし、金融政策の動向が注目されることはいうまでもありません。ただ、2月統計については為替要因もあって輸出数量がやや減少を示しましたが、先進国をはじめとする世界経済の回復・拡大の足取りはしっかりしており、所得要因から見れば、我が国の輸出も緩やかに増加を続けるものと私は期待しています。
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