低い失業率と高い有効求人倍率を続ける雇用統計をどう見るか?
本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも4月の統計です。失業率は2.5%と低い水準にあり、有効求人倍率は1.59倍と高い倍率を示しています。いずれも前月と同じ水準です。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
有効求人倍率1.59倍 4月、前月から横ばい
厚生労働省が29日発表した4月の有効求人倍率(季節調整値)は1.59倍となり、前の月と同水準だった。このうち正社員は1.09倍と、過去最高を更新した。総務省が同日発表した完全失業率(同)も2.5%と、低い水準で横ばいだった。働く意思のある人なら誰でも働ける「完全雇用」にあるといえる状態だ。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に対し、何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は前の月から0.01ポイント上昇した。企業が人材確保を急ぎ、正社員採用を増やしていることなどが背景にある。給与水準が非正規より高い正社員が増えれば、消費にプラスに働く効果も期待できる。
新規求人は96万6323人で、前年同月比4.6%増えた。産業別にみると製造業(同9.3%増)、建設業(同5.4%増)で伸びが目立った。求人に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率(季節調整値)は14.3%と、前月から0.2ポイント低下。「7人雇おうとしても採用できるのは1人」という計算だ。
総務省が同日公表した4月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.5%で、前の月から横ばいだった。そのうち女性は2.1%で、25年10カ月ぶりの低水準となった。同省は非正規で就労する女性が増えたためとみている。
完全失業率は働く意欲がありながら職がなく求職活動をしている人の割合を指す。求人があっても職種や勤務地など条件が合わずに発生する「ミスマッチ失業率」は3%程度とされる。3%を下回れば「完全雇用」状態にあるといえる。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。
最初に書いた通り、失業率も有効求人倍率もいずれも前月から同水準とはいえ、引用した記事にもある通り、ほぼほぼ完全雇用に近い状態が継続していると多くのエコノミストは考えているようです。しかしながら、本日の雇用統計では明らかではありませんが、毎月勤労統計などを見る限り、労働市場はまだ賃金が本格的に上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、完全雇用には達していない可能性がある、と私は考えています。他方で、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしているのではないかと私は考えています。例えば、グラフは示しませんが、パート労働者の有効求人倍率が昨年2017年10月に1.80倍に達した後、今年2018年4月の同じく1.80倍まで横ばいに近い動きを示している一方で、正職員の有効求人倍率は2017年10月の1.03倍から2018年4月の1.09倍まで、半年かけてジワジワと上昇しています。そうはいっても、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼしますから、マクロの所得だけでなく個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう期待しています。
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