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2018年6月23日 (土)

今週の読書はいろいろ読んで計7冊!!

今週は経済書や専門書・教養書は大した読書ではなかったんですが、小説とエッセイについてはとても好きな作家さんの作品を読んで満足のいく読書でした。

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まず、神津多可思『「デフレ論」の誤謬』(日本経済新聞出版社) です。著者は日銀OBであり、典型的にリフレ派の経済学を否定して旧来の日銀理論にしがみついています。ですから、本書の唯一の主張は需要の構造の変化のスピードに供給がついていけていない、という1点なんですが、少し考えれば理解できるように、需要に供給がついていけないのであれば、デフレではなくボトルネック・インフレが生じるはずであり、まったく、私には理解できません。加えて、必ずしも明記されているわけではありませんが、要するに、複合的な要因で持ってデフレに陥っていること、さらに、デフレの何が悪いといわんばかりのマイルド・デフレ肯定論ですから、繰り返しになりますが、旧来の破綻した日銀理論を振り回しているだけであり、特段の見るべき内容はありません。デフレの本質は物価の持続的な下落であり、従って、今日買うよりも明日買う方がおトクなわけですが、それに対する本質的な議論はなされていません。理論的にも実証的にも破綻した大昔の議論を展開しているとしか思えません。ムダな読書だった気がします。

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次に、アーサー R. クローバー『チャイナ・エコノミー』(白桃書房) です。著者は中国在住の英国人エコノミストではないかと思うんですが、確信はありません。極めて包括的に中国経済を論じている一方で、よく見かけるたぐいの中国共産党の決定文書の引用とか、制度論に深入りするとかの傾向が一切なく、私のような中国経済のシロートにもとても判りやすい解説書となっています。特に私の目を引いたのは、第5章であり、国営企業を含む企業に対する見方です。さらに特定すれば、中国企業の成長が資本主義的なイノベーションに基づいているか、それとも、資本と労働を大量に投入することによる要素投入型の成長か、という点に関しては、強く後者であることが示唆されています。その流れの中で第9章のルイス転換点の議論を読むべきです。ただ、ルイス転換点については、私もエレガントに数式を解いたペーパーを書いたりしましたが、現在の我が国の労働市場において賃金が上昇しないこともルイス転換点で説明する向きもあり、おそらく、中国のような人口超大国では数十年のスパンで持って分析する必要がありそうな気がします。ひょっとしたら、中国経済に詳しい向きには物足りないのかもしれませんが、なかなかオススメな1冊です。

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次に、セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ『誰もが嘘をついている』(光文社) です。著者はニューヨーク・タイムズにコラムなどを寄稿する研究者であり、前職ではグーグルのチーフエコノミストであるハル・ヴァリアン教授らと研究をしていたということのようです。特に、大きな影響を受けたのは10年近く前に出版されたレヴィット教授らの『ヤバい経済学』であると明記しています。ということで、博士号も持ったビッグデータ研究のデータサイエンティストと考えてよさそうで、必ずしもポリティカル・コレクトネスに合致しないかもしれないものの、ビッグデータから明らかになる人間の本性のようなものを本書では議論しています。そして、そのビッグデータはグーグル検索から得ています。そして、人間の本性を明らかにする以外で、データサイエンス的に興味深かったのはビッグデータの使い道です。例えば、統計学的に標本の平均は母集団に一致することなどはハナから明らかなんですが、ですから、どマクロ的に平均値を出すのにビッグデータを使うのは意味ありません。ビッグデータはもっと細かいセグメント化されたグループの特徴をあぶり出すのに使うべきだと主張しています。地域別の特徴とか、年齢階級別の特徴とか、ということです。データを使えば、いろんな事が判る、という点では『ヤバい経済学』の続編ともいえそうです。

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次に、中野雅至『没落するキャリア官僚』(明石書店) です。著者は、地方公務員・国家公務員から研究者に転じたようです。私もその一員であるキャリア官僚に関する分析です。キャリア官僚に関する定義はいろいろありますが、広義には最上位の採用試験合格者であり、狭義には採用時の事務次官資格者です。本書は、キャリア官僚を「エリート」として対象にしていますので、大きな違いはないかもしれません。本書では、バブル崩壊後のキャリア官僚について没落の始まりとみなしているんですが、もう少し分析が欲しかった気がします。要するに、経済が成長しなくなって、それまで既得権を保証しつつ経済成長の果実を分配することにより官僚がパワーを奮っていたものが、その成長の果実が消滅したことが没落につながった、ということなのかもしれません。さらに、官界の周辺事情がやや狭く考えられていて、政官関係で私が不思議に感じている選挙制度との関係には行き届いていません。すなわち、中選挙区制度下では与党政治家が複数名当選しなければならないことから、いわゆる族議員として専門領域を持ち、それが政官関係に影響を及ぼしていたのが明らかなんですが、そういった政治家=国会議員の専門性が低下しつつある現在、典型例は税調なんでしょうが、それでも専門性高い官僚が政治家に対して専門性で優位に立てないのは不思議な気がします。終章近い6~7章で右傾化やポピュリズムとの関係を考察していますが、感心しません。

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次に、吉田修一『ウォーターゲーム』(幻冬舎) です。著者はご存じ売れっ子の小説家であり、本書はアジアネット(AN)通信の産業スパイを主人公とするシリーズです。このシリーズは既刊に『太陽は動かない』と『森は知っている』があるらしいんですが、私は前者を読んだ記憶があります。ひょっとしたら、後者も読んだかもしれません。記憶はあいまいです。本書はタイトルから想像される通り、水資源を巡る産業スパイの暗躍をテーマとしています。欧州の水メジャー企業による我が国水資源の制圧などなど、です。そして、水資源を巡る本筋とは別に、シリーズ第2段『森は知っている』でかなり明らかにされているようなんですが、AN通信の産業スパイの訓練とかその前段階のリクルートの秘密について、『森は知っている』未読の私は初めて知りました。そして、そのルートからドロップ・アウトした人物が水メジャーの一角に食い込んだりしています。また、水メジャーの暗躍をすっぱ抜くのが九州のローカル新聞の女性記者だったりするのはなかなか凝った作りになっていますが、長崎出身の著者らしいともいえます。ラストの終わり方がさすがといえます。どうでもいいことながら、相変わらず、謎の女性アヤコが「ルパン3世」の峰不二子のイメージのように私には思えて仕方ありません。

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次に、川上未映子『ウィステリアと三人の女たち』(新潮社) です。久し振りの川上作品短編集です。私はこの作家を極めて高く評価していて、今年こそノーベル文学賞は持ち越しと発表されていますが、我が国で村上春樹に次いでノーベル文学賞に近い作家ではないかと考えています。表題作はとても暗い雰囲気で、「死」を濃厚に感じさせる作品でもありますから、好き嫌いはあるかもしれません。しかも、いわゆる純文学であって、エンタメ作品ではありませんから、起承転結を期待する読者にはややハードルが高い気もします。でも、尋常でないくらいの表現力の豊かさや、何ともいえずに「透明感」ある文体など、文学としても水準の高さを読み取れる読者であれば、この作者のいいところが随所に感じられます。私は5月末の産経新聞のインタビューを見て借りて読む気になったんですが、そのインタビューの最後は「次はまた、まったく違う文体で、一番長い話を書くつもりです」と結ばれています。次回作もとても楽しみです。

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最後に、三浦しをん『ビロウな話で恐縮です日記』(新潮文庫) です。私は三浦しをんの小説やエッセイはかなり読んでいて、この作品も読んだような気になっていたんですが、ブログを遡って確かめると読書感想文の記録がなく、文庫本で出版されたのを機に読んでみました。三浦しをんのエッセイは太田出版で単行本が出て、新潮文庫に収録されるというパターンが多く、本書もそうです。そして、私はついつい対象的なもので、酒井順子のエッセイと三浦しをんを比べてしまうんですが、いかにも優等生が下調べよくリポートを取りまとめたような酒井順子のエッセイに比べて、三浦しをんのエッセイは生活実感が丸出しで、特に本書などでは少女マンガのBLモノに話題が集中しています。まほろ駅前シリーズのバックグラウンドがよく理解できるエッセイです。ただ、好き嫌いはあるかもしれません。

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