小幅減産の鉱工業生産指数(IIP)とほぼ完全雇用を示す雇用統計と弱含み続く消費者態度指数!
本日、経済産業省から鉱工業生産指数 (IIP) が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から消費者態度指数が、それぞれ公表されています。鉱工業生産指数(IIP)と雇用統計は5月の統計であり、消費者態度指数だけは6月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で前月から▲0.2%の減産を示し、失業率は前月からさらに▲0.3%ポイント低下して1992年以来の2.2%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇して1.60倍と、これまた1974年以来の高い倍率を示しています。また、消費者態度指数は前月から▲0.Ⅰポイント低下して43.7を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
5月の鉱工業生産、半導体関連が小幅上昇 市場「需要は依然弱い」
経済産業省が29日発表した5月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は104.4で前月比0.2%低下したが、市場の注目度の高い半導体関連(電子部品・デバイス工業)は前月比3.4%増(前年同月比3.2%増)と小幅に上昇した。
モス型半導体集積回路(メモリ)やアクティブ型液晶素子(大型)などの生産増が寄与した。経済産業省によると「海外向けの輸出が伸びた」という。
もっとも市場では「世界的に需要が弱い状況は依然変わっていない」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)との指摘もある。電子部品・デバイス工業は4月が5.7%と大きな低下だったため、「小幅に戻しただけ」(同)との見方だ。
在庫も積み上がっている。5月の生産者在庫率(季節調整値)は前月比5.4%上昇の144.1となった。高水準の在庫はこの先の生産の重しになる。6月の製造工業生産予測指数は1.2%の低下を見込んでいる。
求人倍率44年ぶり高水準 5月1.60倍、正社員は最高
厚生労働省が29日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.60倍で、前月から0.01ポイント上昇し44年4カ月ぶりの高水準となった。うち正社員は過去最高を更新した。総務省が29日発表した5月の完全失業率(季節調整値)は2.2%と、25年7カ月ぶりの低水準。働く意思のある人なら働ける「完全雇用」の状況が続いている。
有効求人倍率は、全国のハローワークで仕事を探す人1人に何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率(季節調整値)は1.10倍で、前の月から0.01ポイント上昇し、過去最高となった。企業が優秀な人材を厚待遇で囲い込むため、正社員採用を増やしていることが背景にある。
新規求人は96万2465人で、前年同月比5.5%増えた。産業別では製造業(9.2%増)や建設業(8.8%増)で伸びが目立った。厚労省は生産が緩やかに回復し、人手を確保する動きが広がっていると指摘している。
求人に対して実際に職に就いた人の比率を示す充足率(季節調整値)は14.7%となり、4月と比べて0.4ポイント上昇した。企業の採用効率は改善したが「7人雇おうとしても採用できるのは1人」という計算になる。
総務省が29日公表した5月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.2%で、4月から0.3ポイント下がった。失業者が減り、就業者数が比較可能な1953年以降で最多の6698万人となり、失業率を押し下げた。男性の正規雇用が増えるなどした影響が大きい。
完全失業率は働きたいのに職がなく求職活動をしている人の比率。求人があっても勤務地など条件が合わない「ミスマッチ失業率」は3%程度とされる。2017年初めから3%以下の「完全雇用」状態が続いている。
6月の消費者態度指数、2カ月ぶり低下 暮らし向きなど悪化
内閣府が29日発表した6月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.1ポイント低下の43.7だった。低下は2カ月ぶり。「暮らし向き」などの指標が悪化した。内閣府は消費者心理の基調判断は「弱含んでいる」に据え置いた。
指数を構成する意識指標を項目別にみると、「暮らし向き」が41.9と0.2ポイント低下した。一部日用品などの値上げが消費者心理を冷やした。「収入の増え方」と「耐久消費財の買い時判断」も悪化した。
一方で、雇用情勢の改善を背景に「雇用環境」は48.3と0.1ポイント上昇した。消費者態度指数に含まれない「資産価値」の意識指標は前月と比べて0.1ポイント低い43.2だった。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比0.4ポイント低い81.7%だった。「低下する」は0.1ポイント高い3.3%、「変わらない」は0.2ポイント高い12.6%だった。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と答えればゼロになる。
調査基準日は6月15日。調査は全国8400世帯が対象で有効回答数は5987世帯、回答率は71.3%だった。
とても長くなってしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上は2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下のパネルは輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

生産については、5月統計では▲0.2%と4か月振りの減産となりましたが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲1%を超える減産幅が予想されていましたし、製造工業生産予測調査では6月+0.4%、7月+0.8%の増産が見込まれていますので、製造工業生産予測調査の上振れバイアスを考慮するとしても、決して悲観すべき内容ではないと私は受け止めています。加えて、1~3月期には天候不順などもあって、生産も▲1.3%の減産を記録しましたが、4~6月期には、6月の製造工業生産予測指数の結果に含まれる予測誤差を含めても前期比+2%前後の増産に転じる計算になります。ただ、グラフは示していませんが、在庫調整には進展が見られていません。というのは、生産は前月比▲0.2%の減産にとどまっていますが、出荷が▲1.6%減を記録しているからです。輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業で出荷が低下しており、結果的に、鉄鋼業、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業などで在庫が増加していると報告されています。特に、電子部品・デバイス工業では先行き在庫調整の圧力がかかる可能性があります。単純に生産の傾向だけでは評価し切れない部分です。

続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。失業率がとうとう2%そこそこに低下して来ています。グラフにはありませんが、正社員の有効求人倍率も1.10倍と1倍を超えて推移しており、雇用はいよいよ完全雇用に近づいており、いくらなんでも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、2%台前半の失業率が続くかどうかは不明であり、2%台半ばくらいまで上下する可能性は十分あります。賃金については、、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。しかしながら、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼしますから、マクロの所得だけでなく個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

さらに、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。消費者態度指数を構成するコンポーネントを前月差でみると、「暮らし向き」が▲0.2ポイントの低下、「収入の増え方」が▲0.2ポイントの低下、「耐久消費財の買い時判断」が▲0.1ポイントの低下の一方、「雇用環境」が+0.1ポイントの上昇を示しています。賃金上昇が鈍くて「収入の増え方」が前月差マイナスを示した一方で、「雇用環境」はプラスであり、5月の雇用統計とも整合的です。統計作成官庁の内閣府では基調判断を「弱含んでいる」で据え置いています。
鉱工業生産から見る限り、1~3月期はGDP統計でもマイナス成長でしたが、4~6月期にはプラス成長に回帰しそうです。これで賃上げが加われば、さらにいいセン行くんではないかという気がします。
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