18か月連続のプラスを記録した消費者物価(CPI)上昇率の先行きやいかに?
本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。前年同月比上昇率でみて、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は前月からやや上昇幅を拡大し+0.8%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
6月の全国消費者物価、0.8%上昇 エネルギー高が影響
総務省が20日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合が101.0と前年同月比0.8%上昇した。上昇は18カ月連続。原油高によるエネルギー価格の上昇が影響した。ただ、エネルギー以外の品目は上昇幅が限られ、物価上昇の勢いは鈍化している。
生鮮食品を除く総合では、全体の52.2%にあたる273品目が上昇した。ガソリン価格や都市ガス代が上昇した。ただ5月に比べると上昇品目数は減少した。
下落は183品目だった。安売り規制による価格上昇の効果が一巡し、ビールなど酒類が下落した。横ばいは67品目だった。
生鮮食品を含む総合は100.9と0.7%上昇した。まぐろなど生鮮魚介類が値上がりした。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIは100.9と前年同月比0.2%の上昇にとどまった。診療代や外国パック旅行費は上昇したものの、通信料が下落した。NTTドコモが5月に新たな携帯電話料金プランを導入したため。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIが前月比で0.1%低下した。物価上昇の勢いは一段と鈍化している。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

ということで、国際商品市況における石油価格の上昇を受けたCPIの上昇幅拡大であり、引用した記事にもある通り、エネルギーを除けば物価上昇は限定的と私も考えています。上のグラフに反映されている私の独自計算による寄与度では、6月のコアCPI上昇率+0.8%のうちエネルギー寄与度が+0.56%と7割を占めます。生鮮食品を除く食料が+0.18%ですので、この食料とエネルギーの除く総合で定義されるコアコアCPIの上昇率は、上のグラフでは赤い折れ線グラフでプロットしてあるところ、ほぼほぼゼロにまで低下しています。ただ、このブログでは旧来の食料とエネルギーを除く総合でコアコアCPIを定義していますが、最近の統計局の定義では、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」となっているようですので、来月あたりからは、このブログでも変更いたしたいと予定しています。脱線してしまいましたが、物価上昇率に話を戻すと、日銀の企業向けサービス物価(SPPI)を見ている限りでは、年度替わりの4月に価格改定がスムーズに進んだような印象だったんですが、この46月期の消費者物価(CPI)を見ると、そうでもない気がします。B to B では価格転嫁がそれなりに理解されるものの、B to C ではまだ消費者の財布のひもは堅い、といったところなのかもしれません。
繰り返しになるものの、石油をはじめとするエネルギー価格に牽引された物価上昇であり、CPIのフレーム外ながら、日銀の企業物価(PPI)や企業向けサービス物価(SPPI)の輸入物価や素原材料からジワジワと中間財や最終財に、そして、消費者物価に波及が見られるものの、コストプッシュの物価上昇で実体経済への影響が懸念される上に、政府のデフレ脱却はともかく、日銀の2%の物価目標からはほど遠く、ホントに石油価格からの波及によるコストプッシュだけで物価が上昇するのがデフレ脱却といえるのかどうか、やや疑問に感じないでもありませんが、いまさら「いいインフレ」と「悪いインフレ」を区別するのも気が引けています。
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