2か月振りに黒字を記録した貿易統計の評価やいかに?
本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+6.7%増の7兆524億円、輸入額も+2.5%増の6兆3310億円、差引き貿易収支は+7214億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
貿易収支2カ月ぶり黒字 6月7214億円、中国輸出好調
1-6月は5期連続黒字
財務省が19日発表した6月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7214億円の黒字だった。黒字は2カ月ぶりで黒字額は66.5%増加した。QUICKがまとめた市場予想の中央値(5342億円の黒字)を上回った。輸出入ともに増加したが、中国向けの好調を背景に輸出の伸びが上回った。
輸出額は前年同月比6.7%増の7兆524億円だった。19カ月連続で増加した。中国向けの原動機や半導体等電子部品が伸びた。
輸入額は2.5%増の6兆3310億円。原油高を背景に中東から原粗油が増加した。原油の円建て輸入単価は45.0%上昇した。南アフリカから非鉄金属の輸入が伸びたことも寄与した。
6月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=109.86円。前年同月に比べて0.9%円高・ドル安に振れた。
対米国の貿易収支は5903億円の黒字で、黒字額は0.5%増加した。増加は2カ月ぶり。輸出入ともに減少したが、輸入減の影響が上回った。対米輸出の減少は17カ月ぶりとなる。
同時に発表した2018年1~6月の貿易収支は6067億円の黒字だった。黒字は半期ベースで5期連続だが、エネルギー関連の輸入増が響き、黒字額は前年同期比39.9%減少した。
輸出額は6.2%増の40兆1305億円で、上半期としては08年以来の高水準となった。自動車や半導体等製造装置が伸びた。輸入額は7.5%増の39兆5238億円。原粗油や液化天然ガス(LNG)が増加した。
いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

上のグラフを見ても、例えば、下のパネルの季節調整済み系列で見ても、最近時点ではかなりグラフがギザギザになっており、細かな変動があることが読み取れます。特に、輸入額については国際商品市況の変動に連動している可能性が高いと私は受け止めています。ただ、大雑把に見て、輸入額は国際商品市況の上昇とともに緩やかに増加を示している一方で、輸出はかなり横ばいに近くなっています。その輸入の増加傾向についても、もっとも直近で利用可能な6月統計で、原油及び粗油の輸入額は季節調整していない原系列の前年同月比で+20.2%の増加を見せているものの、数量ベースでは逆に▲17.1%の減少を示しており、輸入については、製品輸入は別かもしれませんが、特にエネルギーや非鉄金属などの素原材料の動向については、国際商品市況における価格動向に伴う名目値の変動であり、数量ベースでは大きな変動ではない、というか、むしろ原油及び粗油については価格と数量が逆に動く場合すらある、ということが出来ます。

輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。OECD先行指数に基づく海外の需要動向を見ると、中国では上り坂、先進国の集まりであるOECD加盟国では下り坂となっています。2017年のデータに基づいて極めて大雑把にいって、アジアへの輸出が年間43兆円、そのうち中国向けが15兆円、先進国が北米の16兆円と西欧の9兆円を合わせて25兆円ですから、最近時点での貿易収支を見る限り、上向きの中国需要動向と伸び悩む先進国需要がその時々によって我が国輸出に影響を及ぼしている、ということになります。もちろん、中長期的には米国を起点とする貿易制限的な通商政策、いよいよ始まりそうな貿易戦争のゆくえも気にかかるところです。
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