第一生命経済研「天変地異が日本経済に及ぼす影響」やいかに?
やや旧聞に属する話題ながら、先週8月7日(火)に、第一生命経済研から「天変地異が日本経済に及ぼす影響」と題するリポートが明らかにされています。タイトルはキャッチーなんですが、地震などの天災も分析の対象に入っているものの、実は、主たる部分は気象と消費の関係に着目している感もあります。ただ、私のようなエコノミストの目から見て、天災はもちろん、気候条件は経済外要因として片づけてしまいがちでしたので、それなりに目を啓かせてくれるような気もします。グラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。
まず、上のグラフはリポートから夏季に当たる7~9月期の日照時間と家計消費の関係を引用しています。基本的に、消費と日照時間と気温の関係を初歩的な最小二乗法(OLS)を用いた消費関数で推計しようと試みているんですが、その結果として、過去20年のデータを用いた推計パラメータから、7~9月期の日照時間が全国平均で+10%増加すると、同時期の家計消費支出が+0.51%程度押し上げられることになり、これを気温に換算すれば、7~9月期の平均気温が全国平均で+1℃上昇すると、同時期の日照時間が+10.5%増加する関係があることから、家計消費支出を約+3,186億円(+0.54%)程度押し上げる、との結論を示しています。気温が高くて日照時間が長ければ消費は上振れする、という経験的な事実を確認できるように私は受け止めています。
すでに爆買いの段階は終息しつつあるような気もしますが、インバウンド消費と天変地異の関係も気にかかるところで、上のグラフはリポートから非居住者家計の直接購入額と訪日外客消費の関係を引用しています。ここでは消費ではなく需要項目別では輸出ということになりますが、天変地異に起因するインバウンド消費の変動については、豪雨被害や大阪北部地震の悪影響といった潜在的な押し下げリスクを指摘しています。
最後に、このリポートでは、最初に指摘した通り、かなり初歩的な推計手法を用いていて、気温や日照時間と消費の間にリニアな関係を想定していますが、私は今年のような猛暑を目にして quadratic な関係を想定すべきではないか、すなわち、気温/日照時間と消費は単純な正の相関ではなく、逆U字型の関係があり、ある気温までは正の相関を保ちつつ、反転して気温が高過ぎると消費にマイナスの影響を及ぼし始める転換点がある可能性を忘れるべきではないと考えます。実証していませんので、直観的な思考結果に過ぎませんが、その転換点を探るためには、単純にリニアな関係を想定するのではなく、消費関数に気温/日照時間の二乗項を入れるなどの工夫が必要そうな気がします。
| 固定リンク
コメント