ようやく4か月振りの増産となった鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計と雇用統計!
本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で前月から▲0.1%の減産を示し、小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.5%増の12兆4140億円となり、失業率は前月から▲0.1%ポイント上昇したものの、依然として2.5%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月からさらに0.01ポイント上昇して1.63倍と、これまた、高い倍率を続けています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
8月の鉱工業生産、0.7%上昇 基調判断は据え置き
経済産業省が28日発表した8月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は前月に比べて0.7%上昇し、103.0だった。上昇は4カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中心値(1.5%上昇)を下回った。経産省は8月の生産の基調判断を「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に据え置いた。
生産指数は15業種のうち10業種が前月から上昇した。輸送機械工業は前月比5.2%増。はん用・生産用・業務用機械工業は5.6%増だった。一方、低下は5業種だった。電子部品・デバイス工業は8.8%減となった。上昇した業種が多いものの、「8月初旬段階の生産計画値から下方修正となり、当時想定された伸びを下回った」(経産省)。
出荷指数は前月比2.1%上昇し101.9。在庫指数は0.4%低下の110.7、在庫率指数は2.2%低下の114.4だった。
同時に発表した、メーカーの先行き予測をまとめた9月の製造工業生産予測指数は前月比2.7%の上昇となった。10月の予測指数は1.7%上昇だった。
8月の小売販売額、2.7%増 石油製品の価格上昇
経済産業省が28日発表した商業動態統計(速報)によると、8月の小売販売額は前年同月比2.7%増の11兆8120億円だった。前年実績を上回るのは10カ月連続。経産省は小売業の基調判断を「横ばい傾向にある」で据え置いた。
業種別では燃料小売業が15.4%増と伸びが目立った。原油高を背景に石油製品の価格が上昇した。飲食料品小売業は2.8%増。野菜の価格高騰が影響した。一方、機械器具小売業は1.1%減。デジタルカメラやテレビが不調だった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.6%増の1兆5750億円だった。既存店ベースは0.1%減だった。コンビニエンスストアの販売額は2.2%増の1兆745億円だった。
8月の完全失業率2.4% 男性が改善で3カ月ぶり低下
総務省が28日発表した8月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.4%と前月比0.1ポイント低下した。男性の完全失業者数の減少が寄与し、3カ月ぶりに低下した。QUICKがまとめた市場予想の中央値は2.5%だった。
完全失業率を男女別にみると、男性が2.5%と前月比0.2ポイント低下した。女性は前月と同水準の2.3%だった。
完全失業者数(季節調整値)は167万人と前月比5万人減少した。男性は6万人減、女性は1万人増だった。自己都合による「自発的な離職」は2万人減で、勤め先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は前月と同数だった。
就業者数(季節調整値)は26万人増の6662万人だった。非労働力人口は24万人減の4259万人となった。
総務省は雇用動向について「着実に改善している」との見方を示した。
有効求人倍率1.63倍 8月、求職者減り高水準維持
厚生労働省が28日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と同水準の1.63倍だった。1974年1月(1.64倍)以来の高水準だった。求人が増えた一方で、堅調な雇用環境から求職者が減った。QUICKがまとめた市場予想の平均の中心値(1.63倍)と同じだった。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率は2.34倍と前月比0.08ポイント低下した。
企業の新規求人(原数値)を業種別にみると、運輸業と郵便業が前年同月比8.0%増えた。製造業は5.9%増となった。一方、教育・学習支援業は5.6%減った。
正社員の有効求人倍率は1.13倍と前月と同水準だった。調査開始(2004年11月)以来最高の水準を維持している。
いくつかの統計を並べましたので、とても長くなってしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

季節調整済みの生産指数の前月比で見て、ようやく4か月ぶりに前月比プラスの増産を記録しましたが、5月▲0.2%減、6月は西日本豪雨でやっぱり▲1.8%減、7月も▲0.2%減と来ての8月+0.7%増ですから、かなり力強さに欠けるとの見方も仕方ないという気がします。国内にあっては天候不順・気象災害や地震、海外での先進国景気のスローダウンなど、国内の設備投資を除いて需要要因としては悪条件が続いている気がします。さらに、先行きについても製造工業生産予測調査に従えば、9月は+2.7%、10月も+1.7%との増産が続くとの結果とはいえ、上振れバイアスの大きい予測指数ですので、試算値としては9月+0.2%増との結果が示されています。7~9が月の生産がマイナスとの予想がもっぱらです。加えて、本格化し始めた米中の関税率引き上げによる貿易戦争の影響も来年あたりから出始めるとすれば、景気は成熟化局面からさらに反転する可能性も出てきます。来年は10月に消費税率引き上げが予定されており、その直前に駆け込み需要があることはかなり確実で、消費税率引き上げとともに景気後退局面入りという可能性も十分に考えられるシナリオのような気がします。

続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。ということで、消費の代理変数である小売販売額は増加が続いています。季節調整していない前年同月比で+2.7%増、季節調整済み指数の前月比で+0.9%増です。もちろん、増加寄与の一部は価格による名目値の上昇であり、これは国際商品市況における石油価格の上昇に起因します。典型的には、燃料小売業の前年同月比+15.4%増が上げられます。しかし、グラフなどは引用しませんが、本日、総務省統計局から公表された東京都区部の9月中旬速報による消費者物価(CPI)のうちの生鮮食品を除くコアCPI上昇率が+1.0%でしたので、ベースが異なるとはいえ、商業販売統計の小売販売額から見て実質の消費もプラスであろうことが強く推察されます。

続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。また、グラフにはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.13倍と1倍を超えて推移しています。単なる偶然でしょうが、失業率、有効求人倍率、正社員有効求人倍率がそろって前月と同じ結果となり、一見して雇用の改善がストップしたかの誤解を生みかねませんが、これだけ人で不足の高水準が続いているんですから、雇用はいよいよ完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼしますから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。
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