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2018年9月30日 (日)

台風24号は和歌山県に上陸し関東付近を今夜通過!!

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先ほど、気象庁から台風24号が和歌山県田辺市付近に上陸とのニュースが発表されました。今夜これから関東付近を通過する模様です。どうでもいいことながら、台風24号はチャーミーだそうです。上の画像は日本気象協会のサイトから引用しています。
我が家の上の倅は、明日10月1日に就職内定をもらいに行くんだろうと認識しているんですが、明日は台風一過でいいお天気になり気温も30度を超えるらしいです。

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2018年9月29日 (土)

やや時間的余裕あった今週の読書はとうとう2ケタ10冊に達する!!

今週は偶発的な事情により、止むを得ず仕事が停滞し、その分、時間的な余裕が出来てしまい、大量の読書をしてしまいました。経済・経営に歴史に数学、宗教、さらに、ミステリなどなど、以下の通りの計10冊です。なお、台風到来前にすでに図書館を回り終えたんですが、来週もそこそこ通常通りに数冊くらい読みそうな雰囲気です。

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まず、小黒一正[編著]『薬価の経済学』(日本経済新聞出版社) です。編著者は財務省から法政大学に転じた経済学の研究者です。各チャプターごとに研究者が担当執筆しています。タイトルは薬価になっているんですが、さすがにそこまで狭い議論ではなく、幅広く社会保障における医療、その中の投薬や薬価や、その他、お薬に関する分析が集められています。本書にもある通り、国民医療費年間40兆円のうち約10兆円が薬に投じられており、ジェネリック薬普及のキャンペーンなどもあるものの、高齢化の進展が進む我が国経済社会ではすべからく社会保障関係経費が増加し、そうでなくても世界中を見渡しても我が国では例のない財政赤字が積み上がっている中で、単に国民の傾向に関する厚生労働省の製作というだけでなく、財政政策としても重要な論点です。ただ、本書はやや中途半端な議論に終始しているきらいは否めません。制度論も中途半端ですし、情報の非対称性に関する経済学的な議論も少なく、財政収支への影響の分析も物足りません。社会保障の経済学のうち、さらに狭い医療、さらに薬価の狭い分野の絞った議論を展開するのであれば、もっと突っ込んだ分析が求められると私は考えます。従来にこのような分析が決して多くはなかった、という意味ではそれなりの評価が出来る一方で、やや物足りない読後感も同時に持ってしまいました。

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次に、ダグ・スティーブンス『小売再生』(プレジデント社) です。私は専門外で詳しくないながら、著者は世界的に著名は小売りコンサルタントだそうです。アマゾンなどのネット通販の急成長を前にして、冒頭に、著名な投資家マーク・アンドリーセンの「もう小売店は店をたたむしかない」との発言を引くところから始まって、最後の結論ではこれを否定してリアル店舗の生き残りに関してご高説を展開しています。私もシンクタンクのマイクロな消費を見ているエコノミストなどから、ミレニアル世代の消費を見るにつけバブル期のような爆発的な消費ブームはもうあり得ない、といった意見を聞くこともあるんですが、私はこういったマイクロな消費動向を将来に単に外挿してマクロを判断しようとする見方には賛成できません。私が青山に住んでいたころには、アップル・ストアの行列を目の当たりにしましたし、あのアマゾンがシアトルにリアル店舗を構えたわけですから、本書で指摘する通り、五感すべてで商品やブランドを体験する、という意味で、リアル店舗の存在は消費には欠かすことは出来ません。同時に、英国などのミレニアル世代の消費動向の変化についても興味深い分析が紹介されています。

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次に、砂原庸介『新築がお好きですか?』(ミネルヴァ書房) です。著者は、神戸大学の政治学の研究者であり、副題は「日本における住宅と政治」となっており、経済学的な観点から中古住宅流通の問題もなくはないですが、副題に沿った中身と考えて差し支えありません。ですから、近代的な都市の形成と、特に、戦後の核家族化や地方からの労働シフトに起因する大都市での住宅不足の解消などのプロセスを、取引費用などの経済学的な観点を踏まえつつ、政治的な意思決定のプロセスに関する議論も重視して、解き明かそうと試みています。日本人が新築が好きな一方で、経済学的な選択の問題としても、終身雇用の下で社宅などの給与住宅から始まって、アパートを借りたり、公団住宅に入ったりした後、いわゆる「住宅双六」で最後の上がりに一戸建てを購入し、終の棲家とするというプロセスです。しかし、私が疑問なのは、従来の人生50年とか60年であれば、「住宅双六」の上りで終わったかもしれませんが、高齢化が進み、特に女性が配偶者を亡くした後に一定の単身時期を過ごすような人生を送る現在、郊外の一戸建てで「住宅双六」を上がりには出来ず、さらにその先があるんではないか、という気がする点です。我が家の私が定年近くに達し、給与住宅である公務員住宅を出てマイホームを購入したわけで、さらにその先を考える時期に差しかかった気もします。

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次に、高木久史『撰銭とビタ一文の戦国史』(平凡社) です。著者は、越前町織田文化歴史館学芸員を経て安田女子大学の研究者であり、日本中世・近世史が専門です。我が国の古典古代である奈良時代の和同開珎が国の手によって発行されてから、本書で対象とする織豊政権期から江戸期には、高額貨幣は国=幕府または藩から発行された一方で、銭については中国からの輸入や民間発行に任されていた、という事実があります。特に、江戸期は各藩の藩札などを別にすれば金貨、銀貨、銭の3種の貨幣が流通している中で、幕府では金貨と銀貨を発行し、庶民の使う銭は幕府ではほとんど発行していませんでした。その銭について、基準貨の移り変わりを論じた議論に興味を持ちました。すなわち、戦国ないし織豊政権期からタイトルにある撰銭が始まり、この時点では品位が高く、正貨と見なされる銭が基準貨となっていて、品位の低い銭、そのうち、もっとも品位が低いのがビタなわけですが、の正貨との換算比率などを領主が定めていたところ、時代を下るについて、ビタが基準貨になった、というものです。最初はビタに対して品位の高い正貨からディスカウントする、という方法だったんですが、グレシャムの法則よろしく、品位の高い銭をビタに比較してプレミアムを付ける、という方向に変更したわけです。とても合理的な方法だと私は受け止めました。

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次に、先崎彰容『維新と敗戦』(晶文社) です。著者は日大の研究者です。本書は第Ⅰ部と第Ⅱ部に分かれており、第Ⅰ部では福澤諭吉から始まって戦後の吉本隆明や最後の高坂正堯まで明治期以降のオピニオン・リーダー23人の人としての軌跡や論調を振り返ります。我が国の国のかたち、近代化とは何か、福沢は圧倒的に近代化とは西洋化であると考えていたのに対し、西郷隆盛は日本的な要素、アジア的な何かを大切にしていた、と著者は主張し、そこからナショナリズムの萌芽を認めています。第Ⅱ部ではテーマ別に、ナショナリズムとパトリオティズムの対比、水戸学の流れを明らかにしたりと、私のような官庁エコノミストにして左派を任じている視点からは、かなり右派的な観点からの論調が多いような気もします。ただし、本書のタイトルにあるような明治維新と終戦の対比はそれほどクリアではありません。産経新聞などに連載されていたコラムなどを取りまとめて単行本として出版したもののようですが、それほど矛盾、というか、違和感はなく、第Ⅰ部で取り上げるオピニオン・リーダーにより濃淡はもちろんあるものの、それなりに整合性は感じます。

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次に、山本義隆『小数と対数の発見』(日本評論社) です。著者は有名大手予備校に勤務だそうで、本書の著者略歴を見る限りでは、数学講師かどうかは明らかにされていません。決して学術書ではないんですが、読み進むに当たっては、それなりの数学的なリテラシーは要求されると考えるべきです。タイトル通りに、小数と対数をテーマにしていますが、小数が小学校レベルであるのに対して、対数は高校レベルですから、やや不思議な取り合わせで、この違和感は読後でも解消されませんでした。小数の60進数小数は、やや面食らいましたが、英語やドイツ語の12進数的な計数、すなわち、twelve の後に thirteen が来る、というのはよく知られた事実ながら、ラテン語系の言語、典型的にはスペイン語は15進数で計数する、というのも視野に入れて欲しかった気がします。対数については、自然対数のベースをネイピア数というがごとくにネイピアの貢献はとても大きいんですが、ネイピアは指数に至る前に対数の概念を得ていた、というのは私には大きな驚きでした。また、対数の発展におけるケプラーの貢献は、私も含めて知られていない事実かもしれませんが、ケプラーといえば何といっても天文学となり、天文学に対する対数の貢献なども議論を展開して欲しかった気がします。といった点からして、私はやや物足りない気がしました。

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次に、永野裕之『数に強くなる本』(PHP研究所) です。著者は大人のための数学塾の塾長だそうで、これだけでは何のことやら私は理解できません。ただ、タイトルにあるようにあくまで「数」であって、「数学」ではない点は注意すべきかという気はします。ということで、「数字を比べる」、「数字を作る」、「数字の意味を知っている」の3つのテーマを基に、数学を一部含みつつも、数に対するシテラシーについて論じています。友愛数や完全数といった整数論も少し出現しますし、ラングドン教授っぽい黄金比やフィボナッチ数列も登場しますが、やっぱり数を論じる時はフェルミ推定が欠かせません。私はこのフェルミ推定については、桁数であっていればいい、という観点は別にして、まるでミステリ作家が自分自身の作品の犯人当てをするようなインチキっぽさを感じてしまいます。答えを知っている人が推定しても仕方ないような気がするんですが、どうでしょうか。最後に、経済で把握しておくべき数字を4つ上げており、それらは、GDP、労働分配率、国家予算、出生率だそうです。なかなかイイセンいっているような気がしますが、経済部門では、数字そのものよりも系図的な複利の概念が重要ではないか、という気が私はします。

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次に、ロバート・ライト『なぜ今、仏教なのか』(早川書房) です。著者は科学ジャーナリストであり、宗教的な出版はほとんどないと思うんですが、本書ではかなり日本人が考える仏教とは異なる仏教を取り上げている気がします。すなわち、著者はマインドフルな瞑想から仏教に入っていて、禅宗の座禅とも少し違っていて、やや原始仏教に近い瞑想観ではないかと思ってしまいました。さとりについて、輪廻転生からの解脱という観点はなく、瞑想からつながるさとりを論じています。仏教は、原始仏教のころから心理の体系、システムであり、それはキリスト教と同じだと私は考えていたんですが、より創始者のイエスに強く依存するキリスト教と、ブッダは崇めつつもそれほどの依存はなく、父なる神と子なるイエスと精霊の三位一体を説くキリスト教の一方で、仏と創始者ブッダが同じわけではない仏教の特徴かもしれません。人の心がモジュールで出来ていて、直観的な判断を下す点については、カーネマン教授のシステム1に近く、瞑想で熟慮するのがシステム2なのか、とエコノミスト的な見方をしてしまいました。

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次に、国分拓『ノモレ』(新潮社) です。著者はNHKのディレクターであり、南米アマゾン源流の秘境で未開の原住民を取材した記録を基にしたドキュメンタリーだと私は受け止めています。でも、ひょっとしたら、フィクションの小説として読むべき本なのかもしれません。タイトルの「ノモレ」とは、友人とか仲間とか、場合によっては家族などの極めて親しい間柄の人をア指す言葉だそうです。舞台はアマゾン源流とはいえ、我々文明人が引いた国境に従えば、ブラジルではなくペルーの施政下になります。本書での表現に基づいて、私なりの表現に従えば、我々文明サイドと未開の原住民サイドの交流をテーマにしています。表紙画像が雰囲気をよく表しています。主人公はペルー政府を代理して先住民との交流の最前線の役割を担う男性です。第2部では、接触先の原住民のクッカも登場します。開発経済学を専門分野とするエコノミストとして、私自身は西洋化あるいは近代生活化を進めるのが圧倒的な目標と考えていて、本書でもあるように、未開の原住民を現代人から隔離するがごとき政策はムリがあると考えています。ただ、それがホントに国民、というか、人々の幸福につながるかどうかはたしかに疑問が残ります。他方で、永遠にバナナをあげ続けることは出来ないような気もします。少し考えさせられるところのある議論展開でした。私なりに消化するのに時間がかかるかもしれません。

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最後に、島田荘司『鳥居の密室』(新潮社) です。著者は、我が母校の京大ミス研の綾辻行人や法月綸太郎などのいわゆる新本格派の生みの親といえるミステリ作家であり、本格派といえます。本書は謎解きの探偵役に御手洗潔を配し、1964年の東京オリンピックから10年後の1970年代半ばの京都を舞台に、東野圭吾のガリレオ張りの工学的、というか、自然科学的な要因も取り入れたミステリ作品です。経済社会の下層や底辺に位置する恵まれない階層に対する著者の温かい眼差しを感じることが出来ます。クリスマスとサンタクロースを隠しテーマに、心温まる物語です。

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2018年9月28日 (金)

ようやく4か月振りの増産となった鉱工業生産指数(IIP)と商業販売統計と雇用統計!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で前月から▲0.1%の減産を示し、小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.5%増の12兆4140億円となり、失業率は前月から▲0.1%ポイント上昇したものの、依然として2.5%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月からさらに0.01ポイント上昇して1.63倍と、これまた、高い倍率を続けています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の鉱工業生産、0.7%上昇 基調判断は据え置き
経済産業省が28日発表した8月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は前月に比べて0.7%上昇し、103.0だった。上昇は4カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中心値(1.5%上昇)を下回った。経産省は8月の生産の基調判断を「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に据え置いた。
生産指数は15業種のうち10業種が前月から上昇した。輸送機械工業は前月比5.2%増。はん用・生産用・業務用機械工業は5.6%増だった。一方、低下は5業種だった。電子部品・デバイス工業は8.8%減となった。上昇した業種が多いものの、「8月初旬段階の生産計画値から下方修正となり、当時想定された伸びを下回った」(経産省)。
出荷指数は前月比2.1%上昇し101.9。在庫指数は0.4%低下の110.7、在庫率指数は2.2%低下の114.4だった。
同時に発表した、メーカーの先行き予測をまとめた9月の製造工業生産予測指数は前月比2.7%の上昇となった。10月の予測指数は1.7%上昇だった。
8月の小売販売額、2.7%増 石油製品の価格上昇
経済産業省が28日発表した商業動態統計(速報)によると、8月の小売販売額は前年同月比2.7%増の11兆8120億円だった。前年実績を上回るのは10カ月連続。経産省は小売業の基調判断を「横ばい傾向にある」で据え置いた。
業種別では燃料小売業が15.4%増と伸びが目立った。原油高を背景に石油製品の価格が上昇した。飲食料品小売業は2.8%増。野菜の価格高騰が影響した。一方、機械器具小売業は1.1%減。デジタルカメラやテレビが不調だった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.6%増の1兆5750億円だった。既存店ベースは0.1%減だった。コンビニエンスストアの販売額は2.2%増の1兆745億円だった。
8月の完全失業率2.4% 男性が改善で3カ月ぶり低下
総務省が28日発表した8月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.4%と前月比0.1ポイント低下した。男性の完全失業者数の減少が寄与し、3カ月ぶりに低下した。QUICKがまとめた市場予想の中央値は2.5%だった。
完全失業率を男女別にみると、男性が2.5%と前月比0.2ポイント低下した。女性は前月と同水準の2.3%だった。
完全失業者数(季節調整値)は167万人と前月比5万人減少した。男性は6万人減、女性は1万人増だった。自己都合による「自発的な離職」は2万人減で、勤め先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は前月と同数だった。
就業者数(季節調整値)は26万人増の6662万人だった。非労働力人口は24万人減の4259万人となった。
総務省は雇用動向について「着実に改善している」との見方を示した。
有効求人倍率1.63倍 8月、求職者減り高水準維持
厚生労働省が28日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は前月と同水準の1.63倍だった。1974年1月(1.64倍)以来の高水準だった。求人が増えた一方で、堅調な雇用環境から求職者が減った。QUICKがまとめた市場予想の平均の中心値(1.63倍)と同じだった。
雇用の先行指標とされる新規求人倍率は2.34倍と前月比0.08ポイント低下した。
企業の新規求人(原数値)を業種別にみると、運輸業と郵便業が前年同月比8.0%増えた。製造業は5.9%増となった。一方、教育・学習支援業は5.6%減った。
正社員の有効求人倍率は1.13倍と前月と同水準だった。調査開始(2004年11月)以来最高の水準を維持している。

いくつかの統計を並べましたので、とても長くなってしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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季節調整済みの生産指数の前月比で見て、ようやく4か月ぶりに前月比プラスの増産を記録しましたが、5月▲0.2%減、6月は西日本豪雨でやっぱり▲1.8%減、7月も▲0.2%減と来ての8月+0.7%増ですから、かなり力強さに欠けるとの見方も仕方ないという気がします。国内にあっては天候不順・気象災害や地震、海外での先進国景気のスローダウンなど、国内の設備投資を除いて需要要因としては悪条件が続いている気がします。さらに、先行きについても製造工業生産予測調査に従えば、9月は+2.7%、10月も+1.7%との増産が続くとの結果とはいえ、上振れバイアスの大きい予測指数ですので、試算値としては9月+0.2%増との結果が示されています。7~9が月の生産がマイナスとの予想がもっぱらです。加えて、本格化し始めた米中の関税率引き上げによる貿易戦争の影響も来年あたりから出始めるとすれば、景気は成熟化局面からさらに反転する可能性も出てきます。来年は10月に消費税率引き上げが予定されており、その直前に駆け込み需要があることはかなり確実で、消費税率引き上げとともに景気後退局面入りという可能性も十分に考えられるシナリオのような気がします。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。ということで、消費の代理変数である小売販売額は増加が続いています。季節調整していない前年同月比で+2.7%増、季節調整済み指数の前月比で+0.9%増です。もちろん、増加寄与の一部は価格による名目値の上昇であり、これは国際商品市況における石油価格の上昇に起因します。典型的には、燃料小売業の前年同月比+15.4%増が上げられます。しかし、グラフなどは引用しませんが、本日、総務省統計局から公表された東京都区部の9月中旬速報による消費者物価(CPI)のうちの生鮮食品を除くコアCPI上昇率が+1.0%でしたので、ベースが異なるとはいえ、商業販売統計の小売販売額から見て実質の消費もプラスであろうことが強く推察されます。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。また、グラフにはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.13倍と1倍を超えて推移しています。単なる偶然でしょうが、失業率、有効求人倍率、正社員有効求人倍率がそろって前月と同じ結果となり、一見して雇用の改善がストップしたかの誤解を生みかねませんが、これだけ人で不足の高水準が続いているんですから、雇用はいよいよ完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼしますから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

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2018年9月27日 (木)

失速の9月に横浜にも負けてクライマックスシリーズは遠のく!!

  RHE
横  浜002000110 471
阪  神000021000 370

失速の9月に負け続けてクライマックス・シリーズが遠のいたカンジです。阪神タイガースのポストシーズンといえば、クライマックス・シリーズや日本シリーズではなく、ストーブ・リーグなのかもしれません。

がんばれタイガース!

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9月調査の日銀短観予想に見る設備投資計画は空前の伸び率か?

来週10月1日の公表を前に、シンクタンクなどから9月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2018年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、今年度2018年度の設備投資計画に着目しています。一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
6月調査 (最近)+21
+24
<+7.9%>
n.a.
日本総研+22
+24
<+10.3%>
大企業・製造業は、前回調査対比+1.8%ポイントの上方修正を予想。企業収益の拡大を背景に、例年に比べやや強めの足取りとなる見込み。大企業・非製造業は同+1.2%ポイントと、上方修正を予想。都心部での再開発事業や宿泊施設などの建設投資が引き続き堅調に推移する見込み。
一方、中小企業は、全産業ベースで前年度比▲4.9%と、前回調査対比+7.9%ポイントの上方修正を予想。キャッシュフローが潤沢ななか、老朽化した既存設備の維持・更新投資、人手不足を背景とした合理化・省力化投資の需要が下支えとなり、例年の足取りに沿った推移となる見込み。
総じて先行きの設備投資は堅調を維持する見通し。海外情勢の不透明感が重石となるものの、底堅い設備投資需要を背景に、例年に比べやや強めの足取りとなる見通し。
大和総研+21
+22
<+8.8%>
大企業全産業は前年度比+13.6%と、前回(同+13.6%)から横ばいになると見込む。前回調査において、製造業と非製造業がともに過去の修正パターンを大きく上回ったことから、今回は例年の修正パターンより弱くなると予想した。高水準の企業収益を背景に、更新・改修投資、合理化・省力化投資、新製品の能力増強投資が計画されているとみられる。さらに、例年の修正パターンに比べて、「不動産」「運輸・郵便」「宿泊・飲食サービス」の計画が強かったことから、物流拠点、オフィス、宿泊施設の建設などが計画されている可能性も指摘できる。
中小企業全産業は前年度比▲7.5%となり、業種別には、製造業が同+9.2%、非製造業が同▲15.5%になると予想した。製造業の前年度比の水準は例年の修正パターンより高く、引き続き強気の見通しが維持される見込みだ。非製造業では、大幅なマイナスが続いているが、これは例年の修正パターン並みの結果であり、現在のところ懸念する必要はないと考える。
みずほ総研+21
+23
<+10.9%>
製造業については、全体的にIoT化や人手不足への対応が設備投資を押し上げよう。また、自動化運転など、業種ごとに前向きな投資がみられることもプラスになると考えられる。
非製造業は、製造業と同様に人手不足を背景とした自動化・省力化投資需要が高まっていることに加え、オリンピック・都市関連開発の建設投資やインバウンド対応投資が引き続き行われていくだろう。
ニッセイ基礎研+22
+22
<+10.5%>
今回の短観で最も注目されるテーマは「設備投資の強さは維持されるか」という点だ。既述の通り、前回6月調査時点では、今年度設備投資計画において極めて高い伸び率が示されていた。前回調査時点でも既に貿易摩擦激化への懸念が燻っていたが、堅調な内外経済動向や企業収益増加による投資余力改善、人手不足という追い風の影響が勝ったためと考えられる。米トランプ政権の強硬な交渉姿勢によって、その後も貿易摩擦はエスカレートする方向にあるが、引き続き例年の同時期と比べて遜色ない上方修正が行われるかが焦点となる。
既述のとおり、例年以上の上方修正が予想されるが、もしも、それに反して抑制的な結果となれば、貿易摩擦激化への懸念から、企業の間で設備投資計画に様子見や先送りの動きが出始めている可能性を示唆することになるだろう。
第一生命経済研+22
+22
<大企業製造業+18.0%>
9月短観でも、中小企業の設備投資はマイナス計画の上積みが続くだろう。大企業も、経常利益計画が上方修正されるのを受けて、高めの計画が維持されるだろう。短観では、そうした前向きの変化を確認することも大きな役割となる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+23
+22
<大企業全産業+13.8%>
2018年度の大企業の設備投資計画は、9月調査時点では例年大きく見直されることはないため、今回も6月調査並みの高い計画となる見込みである。企業の設備投資意欲の強さが維持されていることを確認することになろう。
製造業では前年比+17.0%、非製造業では同+12.0%と、いずれも2ケタの増加計画が示されると予想する。製造業では、人手不足への対応や生産性向上のための投資に対するニーズが強いうえ、足元では能力増強のための投資も増えつつあると考えられる。非製造業でも、人手不足への対応のための情報化投資の増加や、東京オリンピック関連のインフラ投資への需要の高まりが押上げ要因になると考えられる。
三菱総研+21
+23
<+10.1%>
2018年度の設備投資計画(全規模・全産業)は、前年比+10.1%と予測する。生産性向上を目的とする情報化関連投資に加え、老朽化する設備の維持・更新投資、人手不足の深刻化を背景とする自動化・省力化投資などへのニーズの高まりが、企業の設備投資計画の押し上げ要因となろう。
富士通総研+21
+23
<+9.1%>
2018年度の設備投資計画(全規模・全産業)は前年度比9.1%と、6月調査から上方修正されると見込まれる。高水準の企業収益が投資を支えており、設備投資の先行指標である機械受注、一致指標である資本財総供給とも、緩やかな増加基調を維持している。景気拡大長期化に伴い、能力増強投資が行われているほか、人手不足を補う省力化投資に対する企業の意欲も衰えていない。また、IoT関連の投資拡大も顕著になっている。2018年度の設備投資計画は、大企業を中心に6月調査で過去の平均を大幅に上回ったが、9月調査もその傾向が続くと予想される。中小企業も例年並みに上方修正されると見込まれる。

ということで、私が他も含めて拝見した範囲で、大雑把に、大企業製造業については業況判断DIが上向く可能性がある一方で、逆に、大企業非製造業は悪化する可能性を示唆するリポートも少なくない印象でした。最大公約数的には、製造業が海外経済、特に、米国経済の堅調さを背景にした輸出の伸びと企業収益に支えられた設備投資に基づく拡大を期待できる一方で、非製造業については天候不順や大阪北部地震によるインバウンド消費の伸び悩み、人手不足に起因するコストアップによりやや業況感を悪化させている可能性があります。ただ、上のテーブルを見ても判る通り、各シンクタンクとも業況感は大企業においては製造業・非製造業とも6月調査から大きな変化はない上に、20を超える高い水準にあると見込んでいます。
加えて、設備投資計画は全規模全産業で+10%増の2ケタ増を予想する向きもあり、ほぼ空前の計画ではないかと私は思います。私の手元には2007年3月調査以来の設備投資計画を残してあるんですが、リーマン・ショック後の2009年度がマイナスの2ケタ減の計画となっているほか、ここ10年余りで設備投資計画が2ケタ増になったことはありません。でも、ヘッドラインとして引用したニッセイ基礎研のリポートにあるように、「例年以上の上方修正が予想されるが、もしも、それに反して抑制的な結果となれば」というのも気にかかるところです。ただ、北海道地震などの自然災害も懸念されるものの、大きな下振れ材料にはならない可能性があるようで、すなわち、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用していますが、上のパネルはフツーに業況判断DIの推移を示している一方で、下のパネルは東日本大震災直後の業況判断D.I.をプロットしており、回収された時期について地震発生前後で分割して集計した場合でも、足元の景況感下振れは限定的であった、と結論しています。

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2018年9月26日 (水)

広島カープ優勝おめでとう!

  RHE
ヤクルト000000000 021
広  島50001220x 10170

広島カープ、セリーグ優勝おめでとうございます。来年こそは、我が阪神タイガースのリーグ優勝を祈念します。

来季は、
がんばれタイガース!

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リクルートジョブズによるアルバイト・パートと派遣スタッフの賃金動向やいかに?

明後日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる非正規雇用の時給調査、すなわち、アルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の8月の調査結果を見ておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%前後の伸びで堅調に推移していて、三大都市圏の7月度平均時給は前年同月より+2.4%、25円増加の1,039円となり、職種別では、「販売・サービス系」前年同月比+3.1%、「製造・物流・清掃系」+2.9%、「フード系」+2.8%など全職種で前年同月比プラスなど、全職種で前年同月比プラスとなり、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアでプラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、一時期は前年同月比マイナスを記録する月もありましたが、最近では2017年9月から12か月連続でプラスを続けていて、8月は+15円、+0.9%増の1,643円に達しています。最近では、人材確保のために正社員の求人も増加し、正社員有効求人倍率が1倍を超えているんですが、ご同様に、パート・アルバイトや派遣スタッフの求人も堅調と考えてよさそうです。

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2018年9月25日 (火)

企業向けサービス物価(SPPI)上昇率はやや加速して+1.3%に到達!!

本日、日銀から8月の企業向けサービス物価指数 (SPPI)が公表されています。いずれも統計です。前年同月比上昇率でSPPI上昇率は前月と同じから少し加速して+1.3%を示しています。国際運輸を除く、コアSPPIの上昇率も+1.2%とやや上昇幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の企業向けサービス価格、前年比1.3%上昇 人件費上昇や広告の伸びで
日銀が25日発表した8月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は104.9で、前年同月比1.3%の上昇となった。伸び率は7月の1.1%から拡大し、消費増税の影響を受けた時期を除くと、1992年12月(1.3%上昇)以来、25年8カ月ぶりの高い伸び率だった。人手不足による人件費の上昇を価格に転嫁する動きが続き、特にシステム関連の人材不足が顕著だった。指数が上昇するのは62カ月連続となった。指数は前月比では変わらずだった。
職業紹介サービスや労働者派遣サービスなどで高い伸びが続いた。新聞広告は前年同月比9.7%上昇(7月は5.7%上昇)、雑誌広告は4.3%上昇(同1.1%上昇)と上げ幅を拡大した。一時的に出稿意欲が回復したことに加え、紙面あたり単価の上昇が寄与した。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは84品目、下落は26品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は58品目で前月の57品目から拡大した。差し引きでのプラスは21カ月連続となる。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、SPPIは62か月連続の前年比プラスを示し、さらに前月統計からも上昇率がわずかながら加速しています。7月統計では前年同月比で+1.1%の上昇率に対して、8月統計では+1.3%ですから、この+0.2%ポイントの上昇幅の拡大に対して、寄与したのが広告、情報通信、不動産です。広告は新聞広告・テレビ広告・雑誌広告の3つの小分類がすべてプラス寄与となり、合計で+0.05%ポイントの寄与を示し、情報通信でもソフトウェア開発など+0.02%ポイントの寄与、不動産も事務所賃貸など+0.02%ポイントの寄与でした。他方、土木建築サービスなどの諸サービスは▲0.02%ポイントのマイナス寄与を示しています。ですから、8月統計単月の特徴ながら、引用した記事のタイトルとは少し実感が異なり、景気敏感サービスについては前年同月比でプラス寄与を示し、人件費が上昇しているといわれているサービスでマイナス寄与となっています。もっとも、土木建築サービスについては、前年比前月差寄与でマイナスを示しているだけであり、7月統計での+3.6%の前年同月比上昇率から8月には+3.0%にやや上昇幅を縮小したとはいえ、引き続き高い上昇率を記録していることは変わりありません。

別件ですが、10月のIMF世銀総会を前に、IMF「世界経済見通し」World Ecocnomic Outlook の分析編 Analytical Chapters が10月3日に公表とアナウンスされています。章別タイトルは以下のようになっており、リーマン・ショック後の10年を振り返る、及び、米国利上げなどを背景に金融正常化の時期における新興国金融政策のあり方、となっています。また、利用可能になった時点で、日を改めて取り上げたいと思います。

Ch 2
The Global Recovery 10 Years after the 2008 Financial Meltdown
Ch 3
Challenges for Monetary Policy in Emerging Economies as Global Financial Conditions Normalize

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2018年9月24日 (月)

いくらやっても巨人には勝てないのか!!

 十一十二 RHE
読  売000000000000 040
阪  神000000000000 041

サッカーならスコアレスドローで、巨人には勝てませんでした。クライマックス・シリーズは厳しいんでしょうか、望みがあるんでしょうか、私にはまったく判りません。

次の横浜戦は、
がんばれタイガース!

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2018年9月23日 (日)

クラリベイト・アナリティクス「引用栄誉賞」やいかに?

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例年通り、10月上旬はノーベル賞ウィークとなります。ノーベル財団のサイトには以下の発表予定が明らかにされています。

10月1日
医学生理学賞
10月2日
物理学賞
10月3日
化学賞
10月5日
平和賞
10月8日
経済学賞

例年は木曜日が文学賞の公表なんですが、今年についてはご存じの通り、来年2019年に今年の授賞者も含めて公表される運びとなっています。
ということで、ノーベル賞の科学部門、すなわち、医学生理学賞、物理学賞、化学賞、経済学賞の4部門に相当するクラリベイト・アナリティクス「引用栄誉賞」が9月20日に明らかにされています。経済学賞については、以下の3組5人が受賞の栄誉に浴しています。

  • Manuel Arellano, CEMFI, Madrid, Spain, and Stephen R. Bond, Oxford University, UK, for contributions to panel data analysis, especially the Arellano-Bond estimator. This method exploits time patterns in panel data to estimate the economic response to a change in a policy or other variable, while controlling for permanent unobserved confounding variation.
  • Wesley M. Cohen, Duke University, Durham, NC, and Daniel A. Levinthal, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA, for their introduction and development of the concept of absorptive capacity (i.e., the ability of firms to evaluate, assimilate, and apply external knowledge) and its contribution to advancing our understanding of the innovative performance of firms, industries and nations.
  • David M. Kreps, Stanford University, Stanford, CA, for contributions to dynamic economic phenomena, in choice theory, finance, game theory, and organization theory.

功績については、最初のアレジャーノ教授とボンド教授は、パネルデータ分析のうちのアレジャーノ・ボンド推計と呼ばれるダイナミックパネル推計手法の開発、次のコーエン教授とレビンソール教授は、研究開発などにおける吸収能力をイノベーションに活かすとの概念、最後のクレプス教授は、不完備情報の動学ゲーム理論、に対するそれぞれの貢献と私は受け止めています。まあ、研究所の同僚などとお話をしないでもなかったんですが、クレプス教授のゲーム理論について私は詳しくないものの、アレジャーノ・ボンド推計なんて1990年ころに開発されていますし、吸収能力 absorptive capacity についても原著論文は大昔の1990年ではなかったかと記憶しています。ノーベル賞も経済学賞については、そんなものかもしれません。

最後に、今年のノーベル経済学賞の私の予想は、新々貿易理論のメリッツ教授ということにいておきますが、アレジャーノ教授とボンド教授もとても親しみを覚えています。

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2018年9月22日 (土)

猛虎打線が序盤から爆発し大量援護で藤浪投手は6回4失点ながら4勝目!!

  RHE
阪  神036002101 13180
広  島002002000 483

ほとんど試合は見ていないんですが、猛虎打線が序盤から爆発し大量援護で藤浪投手は6回4失点ながら4勝目だったようです。最下位から5位に順位をひとつ上げて、明日からの甲子園でのジャイアンツ戦に連勝すれば、あるいは、クライマックス・シリーズに望みが出てくるかもしれません。

甲子園に戻ってのジャイアンツ戦は、
がんばれタイガース!

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今週の読書はバラエティ豊かに計8冊!!

今週は三連休でスタートしましたし、それなりに時間的な余裕もあって、経済書も含めて、歴史書や米国のトランプ政権批判本、さらにミステリなどなど、バラエティ豊かに、あるいは、バランスよく、以下の通りの計8冊です。今日のうちに近くの図書館を自転車で回ったんですが、これほどではないとしても、来週は経済書らしい経済書がない一方で、今週と変わりなく、そこそこのボリュームの読書をしそうな予感です。

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まず、若林公子『金融市場のための統計学』(金融財政事情研究会) です。私はこの著者はまったく知らないんですが、研究者というよりは実務家のようで、各章末に数学的捕捉と題した解説があって数式もいっぱい出て来る一方で、金融市場の実際の商品取引の実務で統計がいかに生かされているかも取り上げられています。なお、数式も偏微分はごくわずかに出て来るに過ぎず、その意味で、高校レベルの数学の知識でも何とかがんばれば理解できそうな気もします。ただ、VaR = Value at Risk については、もう少し解説して欲しかった気もします。最近では今年2018年8月11日付けの読書感想文で三菱UFJトラスト投資工学研究所『実践金融データサイエンス』を取り上げたんですが、ソチラの方がやや学術的な内容かという気がします。その昔、ジャカルタにいたころには慶應義塾大学の蓑谷千凰彦先生の『よくわかるブラック・ショールズモデル』とか、『金融データの統計分析』などで勉強していたんですが、実務上の金融市場の商品開発に比べて、それほど大きな進歩があったようには見受けられないのは、私の見識が不足しているからかもしれません。

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次に、朝倉祐介『ファイナンス思考』(ダイヤモンド社) です。著者は、私の知る範囲では、コンサルのマッキンゼーからのご転身でmixi社長だったと記憶しています。本書では、タイトル通りのファイナンス思考に対比して、PL脳という概念を批判的に捉え、ファイナンス思考でキャッシュフローを重視するのではなく、PL脳で売上げや収益を重視し、無借金経営や経常黒字に重点を置く経営を批判しています。こういったPL脳的な目先の会計上の数字を重視して、逆に、将来的な収益の芽を育てない経営ではなく、ファイナンス思考では、将来的な成長の姿を描き、キャッシュを有効の使いつつも回収する意思決定を推奨しています。また、別の観点ではPL脳に過去という視点を当て、ファイナンス思考は未来を構想する、という見方も提供しています。長らく公務員をしてきた身にはやや縁遠いながら、エコノミストとしては判る部分もあります。

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次に、玉木俊明『逆転の世界史』(日本経済新聞出版社) です。著者は京都産業大学の経済史の研究者なんですが、実は、私も経済史ながら、私が経済学部卒業であるのに対して、著者は文学部の歴史学科ではなかったかと記憶しています。なお、今年2018年2月17日付けの読書感想文で、同じ著者の『物流は世界史をどう変えたのか』を取り上げており、物流がご専門のようです。従って、本書でも物流や交易を軸に、長い人類の歴史をヘゲモニーの観点から解き明かし、従来の定説に対比させる新しい観点を提示しています。特に、アジアに位置する日本人研究者として、中国を中心とする先進地域アジアが、後発の欧州によってい大航海時代から産業革命の時期くらいに経済力で逆転され、そして、再び、21世紀になって逆転しつつある現状を解説し、最後に、中国の一帯一路政策を取り上げて本書を締めくくっています。中国の中原の統一は現在の欧州EUになぞらえたり、世銀・IMFといった国際機関を米国ヘゲモニーの手段として捉ええたり、決して丸ごと斬新とはいいかねる視点ですが、それなりに面白くはあります。

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次に、前田雅之『書物と権力』(吉川弘文館) です。著者は研究者なんですが、略歴を見ても、歴史学なのか文学なのかは判然としません。古典学というべき分野があったりするんでしょうか。本書では、印刷技術が未発達で書物の大量生産が出来ない中世、おおむね平安期から江戸初期の書物の占めるポジションについて、特に、源氏物語や平家物語などの古典的な価値ある文学作品の書物の権力との関係を解き明かそうと試みています。ケーススタディとでもいえましょうが、宗祇などの連歌師の書物の流通への関与、伏見宮家から足利将軍への『風雅集』贈与の持つ意味、また、書物の贈与と笛などの名器の寄贈の異同の解明、さらに、書物の伝播・普及と権力との結びつきを解明すべく議論を展開しています。中世期における古典的な価値ある書物を持つことの意味がよく判ります。ただ、ページ数もそれほどない小冊子ながら、古典的な書物以外の文物、本書でも取り上げられている笛の名器、あるいは、もっと時代が下がれば茶の湯の茶器など、本書で「威信財」と呼んでいる関連ある名器文物との比較ももっと欲しかった気がします。書物が政治的権威を帯びるには「古典」としての正統性を得る唯一の「威信財」ではなかった気がするからです。ただ、終章で、別の比較ながら、私もずっと念頭に置いていた欧州中世の修道院を舞台にしたウンベルト・エーコ教授の『薔薇の名前』との直接的な対比が検討されています。とても興味深い視点です。

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次に、ナオミ・クライン『NOでは足りない』(岩波書店) です。著者は米国出身のカナダ在住の左派ジャーナリストであり、同時に活動家 activist の面も持っていたりします。私は10年ほど前に同じ岩波書店から出版された『ショック・ドクトリン - 惨事便乗型資本主義の正体を暴く』を読もうとチャレンジしたことがあったんですが、何と諦めました。邦訳が悪い可能性もありますが、私がこの10年で途中で読むのをギブアップしたのは、外国書を含めて片手で数えるくらいであり、中には、海外旅行中に日本から持っていった本を読みつくして、現地で2冊10ドルで買い入れたペーパーバックの『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』もあったりします。ハリーがエラ昆布を食べて湖に潜るあたりまで読んだ時点で我が家に帰宅したと記憶しています。それはともかく、本書はタイトルから容易に想像される通り、トランプ米国大統領に対して「NOでは足りない」No is not Enough と表現しています。最近の気候変動の観点を含めて、さまざまな視点からトランプ米国大統領にNOを超える意見を突き付けていますが、私に印象的だったのは、通商制限的な公約によりトランプ支持に回った労働組合幹部への著者の冷ややかな視線です。米国だけでなく、独裁的な政治指導者、それもポピュリズム的な指導者に対しては、かなりの程度に成り立つ視点かもしれません。

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次に、安田正美『単位は進化する』(DOJIN選書) です。著者は産業技術総研の研究者であり、専門は時間の測定ということです。本書では、国際単位系(SI)で定義されている7つの単位のうち、長さ、質量、時間、電気、温度を取り上げ、さらに、単位の定義の歴史的な変遷を振り返る際に、経済社会的な要因も忘れずの盛り込んでいます。科学の進歩は生産を通じて経済社会の発展に直結し、その同時進行的、というか、共存して進行する車の両輪のような存在を感じさせます。経済では基本的に有効数字は3ケタです。私は統計局で消費統計を担当する課長として、家計で月単位に支出する金額が円単位で6ケタになることから、そこまでの有効数字は保証できないと主張した記憶がありますが、その昔は4ケタだったのが、経済の成長とともに6ケタまで達したわけです。でも、単位の世界では最低でも8ケタ、場合によっては十数ケタの精度が必要とされます。有効数字のケタ数の中途半端な経済の世界のエコノミストでよかった、と思わないでもありません。

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次に、知念実希人『祈りのカルテ』(角川書店) です。著者は慈啓会医大卒の医師であるとともに、医療分野のミステリなどの著書も少なくない売れっ子の作家ですが、私は作品は初めて読みました。大学病院の研修医を主人公に、内科、外科、小児科、皮膚科などを研修で回り、患者のさまざまな、そして、ちょっとした謎を解き明かしていきます。すなわち、睡眠薬を大量に飲んで救急搬送されてきた女性、初期の胃がんの内視鏡手術を拒否する老人、薬の服用を回避して入院することを希望するかのような女児、循環器内科に入院し米国での心臓移植を待つ我が儘な女優、などなど、決して健康ではない入院患者の心情をちょっとした謎解きで解明します。計5章の長編ともいえれば、連作短編集ともみなせます。決して、出版社のうたい文句のように「感涙必至」とは私は思いませんし、それほど読後感がいいわけでもなく、でも、一定の水準をクリアしてまずまずの出来ではないかという気はします。ただし、今後もこの作家の本を読むか、といわれれば、ややビミョーかもしれません。

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最後に、本格ミステリ作家クラブ[編]『ベスト本格ミステリ 2018』(講談社) です。収録作品は、岡崎琢磨「夜半のちぎり」、阿津川辰海「透明人間は密室に潜む」、大山誠一郎「顔のない死体はなぜ顔がないのか」、白井智之「首無館の殺人」、松尾由美「袋小路の猫探偵」、法月綸太郎「葬式がえり」、東川篤哉「カープレッドよりも真っ赤な嘘」、水生大海「使い勝手のいい女」、西尾維新「山麓オーベルジュ『ゆきどけ』」、城平京「ヌシの大蛇は聞いていた」、有栖川有栖「吠えた犬の問題」であり、最後の『バスカビル家の犬』を素材にした評論を除いて短編ミステリとなっています。すべてではないかもしれませんが、「どんでん返し」をテーマにする作品が少なくなく、なかなか楽しめます。代表的なミステリ近作を集めているので、別のアンソロジーなどで読んだ作品もありましたが、出来のいい作品ばかりですので、結末を記憶しているミステリでも2度楽しめるかもしれません。

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2018年9月21日 (金)

やっぱり広島に負けて最下位定着か?

  RHE
阪  神003000000 391
広  島00002023x 780

リリーフ陣が終盤に打ち込まれて広島に逆転負けでした。最下位定着かもしれませんが、それでも、3位に食い込んでクライマックス・シリーズ進出のチャンスあるというのは、セリーグにとっていいことなのか、そうでないのか、ビミョーなところです。

甲子園に戻ってのジャイアンツ戦は、
がんばれタイガース!

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世界経済の成長率見通しが下方修正された OECD 「中間経済見通し」やいかに?

昨日、経済協力開発機構(OECD)から「中間経済見通し」OECD Interim Economic Outlook が公表されています。副題は High uncertainty weighing on global growth となっており、5月に公表された「経済見通し」と比較して、世界経済の成長率がやや下方修正されています。しかし、我が国経済については今年2018年と来年2019年とも+1.2%成長で据え置かれています。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。まず、プレゼンテーション・スライドの p.2 から Key messages を引用すると以下の通りです。なお、どうでもいいことながら、p.24 の最後のスライドも同じ Key messages になっています。

Key messages
  • Global growth is peaking and is less synchronised
    • Global growth should plateau at 3.7% in 2018 and 2019
    • The job market has recovered but slack remains and wage growth is disappointing
  • Risks are intensifying, uncertainty is widespread
    • Rising trade restrictions risk hurting jobs and living standards
    • Tightened financial conditions increase stress on a number of EMEs
    • Political risks could prevent Europe from thriving
    • Ten years after the crisis, some financial risks have built up again
  • Policies should aim to enhance resilience, productivity and inclusiveness
    • Reduce policy uncertainty, especially for trade, to support confidence and investment
    • Review fiscal policy to react in case of a downturn and prioritise investment
    • Implement reforms to boost long -term productivity and opportunities for all

やや長くなりましたが、利上げを継続する米国金融政策の動向や米中間の貿易摩擦の高まり、さらに、雇用を増加させ生産性を向上させるための構造政策など、いろいろな論点が提示されているんですが、私のブログは国際機関のリポートに着目するのもひとつの特徴であり、景気局面と成長率見通しに関してグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、スライドの順番は前後しますが、「中間経済見通し」のプレゼンテーション・スライド p.5 から成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。今年5月の「経済見通し」と比較して、世界各国がおしなべて成長率の下方修正されている中で、我が国と中国については成長率見通しが据え置かれています。サウジアラビアが上方修正されているのは国際商品市況における石油価格の上昇を反映したものですが、左側の先進国ではかなり多くの国が下方修正されている中で、右側に並べられたG20のうちで新興国や途上国では、決して多くはないものの、上方修正されている国も見受けられます。ということで、現在の世界経済の景気局面について、リポートでは、"The expansion may now have peaked." と表現されています。

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加えて、「中間経済見通し」のプレゼンテーション・スライド p.3 から景気局面に関して、成長率がピークアウトしつつあり、各地域でシンクロしなくなったとのグラフを引用すると上の通りです。左側の棒グラフは成長率の停滞を示し、右側は成長率のばらつきが表されています。利上げ継続の観測が強い米国経済については、成長率は日欧と比較して高いながらも徐々に低下すると見込まれている一方で、我が国の成長率は低いながらも安定的に推移すると予想されており、欧州経済はその間を行く、といったところでしょうか。

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最後に、目を国内に転じると、本日、総務省統計局から8月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月統計から緩やかに加速して+0.9%を記録しています。いつものグラフは上の通りであり、折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

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2018年9月20日 (木)

敬老の日は何歳からが対象なのか?

今週月曜日9月17日は敬老の日の祝日でした。私は誕生日が9月14日で、その昔は敬老の日は9月15日に固定されていましたので、敬老の日の前に必ず年を取ることになっていました。今年は特に還暦の60歳の誕生日を終えて敬老の日が来ましたので、そろそろ私も「敬老」される年齢に達したような気がしなくもなく、加えて、キャリコネ・ニュースで「62歳の父親に『敬老の日ギフト』贈ったら『まだ老人じゃない』とブチギレ 何歳になったら祝っていいの?」なんてのも見て、それとなく調べてみると、9月12日付けでビデオリサーチひと研究所から「『敬老の日』の対象は68歳から」と題するリポートが明らかにされています。5年前より1.2歳上昇したらしいです。pdfの全文リポートもアップされています。

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上のグラフは、ビデオリサーチのサイトから、「敬老の日」の対象は何歳から? という問いに対する回答結果をプロットしたグラフを引用しています。そして、結果は、15~74歳の調査対象者全体の平均値は「68.3歳」でした。2013年の調査の結果と比べると、約+1.2歳上がっているそうです。右のグラフは回答者の年代別の結果なんですが、大雑把に、自分の年齢が上がれば敬老の日の対象年齢も上がる、と捉えているようで、その中で、若い世代でも66~67歳くらいからを敬老の日の対象と考えているようですので、少なくとも成りたて60歳の私は対象外のような気がして、やや安心していたりします。

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この調査では、「敬老の日」の対象だけでなく、いろんな呼称についてのイメージ年齢も聞いているようで、上のグラフは、ビデオリサーチのサイトから、呼称からイメージされる年齢ゾーン のグラフを引用しています。40代初めから60代初めは「おじさん」と「おばさん」で、60代末から「おじいさん」と「おばあさん」になるようです。私がもうすぐ達するであろう60代半ばは、どちらなのか不明なんですが、まあ、見た目や動作などから、どちらかに区分されるんだろうという気はします。

まったく別の経済に関する話題を2つ取り上げておくと、まず、経済協力開発機構(OECD)から「経済見通し中間評価」OECD Interim Economic Outlook が本日夕刻に公表されています。世界経済の成長率はやや下方修正されましたが、我が国の成長率は5月見通しから変更なしで、今年2018年来年2019年とも+1.2%成長が見込まれています。次に、10月に入ればノーベル賞の発表がありますが、本日午後に、ノーベル賞との相関が高いクラリベイト・アナリティクス「引用栄誉賞」が明らかにされています。ノーベル賞と同じように、医学・生理学、物理学、化学、経済学の各分野で日本人も含めて何人か上げられています。どちらも公表されたばかりですので私の方でフォローが追いつかず、日を改めて取り上げたいと思います。

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2018年9月19日 (水)

2か月連続で赤字を計上した貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+6.6%増の6兆6916億円、輸入額も+15.4%増の7兆1362億円、差引き貿易収支は▲4446億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易収支、4446億円の赤字 原油高で輸入額膨らむ
財務省が19日発表した8月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4446億円の赤字だった。赤字は2カ月連続。輸出入ともに増えたが、原油高を背景に中東からの原油輸入額が増え、輸入額の増加が上回った。QUICKがまとめた民間予測の中央値は4477億円の赤字だった。
輸出額は前年同月比6.6%増の6兆6916億円だった。増加は21カ月連続。中国向けの半導体等製造装置やベルギー向け自動車が伸びた。パナマ向け船舶も増加に寄与した。
輸入額は15.4%増の7兆1362億円。アラブ首長国連邦(UAE)からの原粗油やオーストラリアからの液化天然ガス(LNG)が伸びた。原油の円建て輸入単価は57.8%上昇した。
8月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=111円33銭。前年同月に比べて0.5%円安・ドル高に振れた。
8月の対米国の貿易収支は4558億円の黒字で、黒字額は14.5%減少した。減少は2カ月連続。医薬品などが伸びたことで輸出は5.3%増加した。輸入は航空機類などの影響で21.5%増だった。対米国の自動車輸出は金額ベースで1.5%減少した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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上のグラフを見て理解できる通り、輸出入とも増加している中での2か月連続での貿易赤字ですし、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも▲4,550億円の赤字との結果が出ていましたから、大きなサプライズもなく、輸出額の増加を輸入額の増加が上回った結果です。その輸入額の増加も、国際商品市況における石油価格の上昇に起因しています。すなわち、季節調整していない原系列の統計で見て、原粗油の輸入数量は8月統計では前年同月比で+1.1%増にとどまっていたのに対して、輸入額の方は+59.6%増を示しています。この伸び率の差は価格の上昇ということになります。輸出は伸び率がやや落ちてきているとはいえ、引用した記事にもある通り、21か月連続で前年比で伸びています。国際商品市況の動向については、我が国がかなりの程度に小国になって影響力を及ぼせないわけですから、やや同しようもないと私は受け止めています。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。OECD先行指数に基づく海外の需要動向を見ると、中国では上り坂、先進国の集まりであるOECD加盟国では下り坂となっています。ただ、今週あたりから米中間のいわゆる貿易戦争が本格化し始めており、この両国への輸出の割合が高い我が国としては、今後の世界貿易の行方が気になるところです。大いに気になります。どのようなリパーカッションがあるかは私には想像もできません。

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2018年9月18日 (火)

秋めいて気温が下がって体力と体調が戻る!!

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上のグラフは今年元旦1月1日から昨日9月17日までのBMIの推移です。黄色いラインはタイムトレンドで回帰しています。今年7月からの猛暑では、私は確実に体調を落とし、ついでに体重も落ちて、もう還暦を迎えて9月には60歳だから仕方ないと思っていたんですが、ここ数日気温が下がってやや体調が戻りつつあります。体重は昨夜の段階ではBMIできっかり22.0でした。
私は週末の休日にはほぼ土日2日ともプールで泳ぎます。今まで普段2時間で4キロ泳いでいたのが、7月の猛暑のころから3キロほどしか泳げなくなり、もうダメかと思っていたものの、この3連休は3日ともプールに皆勤で、3日とも4キロ余りを泳ぐことが出来ました。もう少し様子を見なければ確かなことはいえないかもしれませんが、まだまだ4キロ泳ぐ体力は残っており、今夏の猛暑で普段から体調が低下していたのが水泳の距離にも影響していたのかもしれません。
元来、私は中学高校のころから陸上も水泳も短距離も長距離もダメで、ではどの距離が得意かというと、要するに中途半端な中距離しか得意ではなかったんですが、中学高校のころは、たぶん私の出身校でしか出来ない大仏殿1周競走というのがたまにあり、体育の先生にいわせれば、1マイルくらいか、ということで、その当時は知らなかったもので調べたら1.6キロくらいの距離なら、私でもそこそこの順位につけることが出来ていました。還暦を迎えた今では水泳でも3キロから5キロくらいを1時間半ないし2時間余りかけて泳いでいます。
還暦を迎えて、もはや、画期的に運動能力が向上することはあり得ませんが、出来るだけの体力と体調の維持管理はしておきたいと思います。

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2018年9月17日 (月)

終盤にホームラン攻勢を受け横浜に逆転負け!!

  RHE
阪  神1000020100 491
横  浜3000000102x 691

終盤のホームラン攻勢で横浜に逆転負けでした。とうとう先発投手がいなくなって、今日は榎田投手との交換トレードで加わった岡本投手の先発でした。出した方の榎田投手はそれなりに先発で結果を出しているものの、入った方の岡本投手は初回にスリーランを食らって4回で降板でした。終盤はホームラン攻勢で同点、サヨナラとリリーフ陣が打ち込まれました。今さらながら、ホームランの威力を見せつけられました。

次のヤクルト戦は、
がんばれタイガース!

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2018年9月16日 (日)

猛虎打線が19安打20得点の乱れ打ちで横浜を下し藤浪投手3勝目!!

  RHE
阪  神209000090 20192
横  浜200110000 480

猛虎打線の乱れ打ちで横浜を下し藤浪投手が3勝目でした。今日は中抜けのテレビ観戦で、3回の藤浪投手の満塁ホームランは見ていませんが、大山選手の3ホーマーの最後のスリーランは見ることが出来ました。最下位脱出に加えて、次は3位浮上でクライマックス・シリーズ出場を目指し応援します。

明日も、
がんばれタイガース!

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最新刊のエコノミスト誌の Education spending の元統計やいかに?

最新号のエコノミスト誌に Education spending と題して、OECD諸国ではGDP比で平均的に5%くらい教育費に支出している "OECD countries spent an average of 5% of GDP on education in 2015." との書き出しで始まる記事があるんですが、なぜか、その記事に引用されたグラフには日本が含まれていません。
私のこのブログではOECDなどの国際機関のリポートを取り上げるのをひとつの特徴としており、私自身も国際派のエコノミストとしてそれなりに詳しくなくもないわけですから、9月11日に公表されたばかりの OECD Education at a Glance 2018 であろうと当たりをつけてリポートを確認すると、p.258 に Figure C2.1. Total expenditure on educational institutions as a percentage of GDP (2015) と題して以下のグラフがありました。

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エコノミスト誌のグラフは高等教育 Tertiary education への教育費支出だけなんですが、リポート p.258 にはトータルの教育費支出のGDP比があります。やっぱり、日本はOECD平均からはかなり見劣りがしています。引退世代への手厚い給付のために、現役世代や子供や家庭や教育への目配りが行き届いていないおそれがあるんではないかと私は危惧しています。

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2018年9月15日 (土)

今週の読書は経済書を中心に大量に読んで計8冊!

よく理由はハッキリしないんですが、今週はよく読みました。経済書、それもマイクロな行動経済学の本が多かったので、スラスラと量がはかどったのかもしれません。和歌山の経済統計学会を往復した時間的な余裕がよかったのかもしれません。その中でも、行動経済学や実験経済学の本が2冊あり、私はおそらく平均的な日本人よりも合理的だと考えていますが、やっぱり、損失回避的な霊感商法のようなセールストークが効くんだということを改めて実感しました。以下の8冊です。

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まず、ロバート J. ゴードン『アメリカ経済 成長の終焉』上下(日経BP社) です。著者は米国のマクロ経済学を専門とするエコノミストです。本書は、英語の原題は The Rise and Fall of American Growth であり、2016年の出版です。かなり注目された図書ですので、ボリュームの点から邦訳に時間がかかったのだろうと私は受け止めています。米国の生活水準やその背景となる技術水準などにつき、米国の南北戦争後の1870年から直近の2015年までを、1970年を境に2期に分割して歴史的に跡づけています。そして、さまざまな論証により、1970年以前の第1期の時期の方が、197年以降の第2期よりも、生活水準の向上や生産の拡大のペースなどが速かった、と指摘し、その原因はイノベーションであると結論しています。そして、現在の「長期停滞」secular stagnation の原因をこのイノベーションの停滞、というか、イノベーションの枯渇に近い技術水準に求めています。要するに、「低いところになっている果実を取り尽くした」というわけです。加えて、現在進行形のIT産業革命についても、生産の現場におけるイノベーションというわけではなく、国民生活における娯楽や生活様式の変化に及ぼす影響の方が大きく、生産性向上や生産の拡大にはつながりにくい、とも指摘しています。ただ、マクロにこれら生産性や生産そのものを計測するGDPについては、たとえ物価指数がヘドニックで算出されていたとしても、生活の質の向上などが正しく計測されているとは思えない、とも付け加えています。ですから、定量的なGDP水準は生活水準を過小評価している可能性が高い一方で、たとえそうであっても、生産性や成長は1970年くらいを境に大きく下方に屈折したのではないか、という結論となっています。それは本書の対象である米国経済だけでなく、我が国でもご同様と私は考えています。その意味で、本書の結論は私のエコノミストとしての直観と共通する部分が少なくありません。ちなみに、私が官庁エコノミストの先輩で現在は日銀審議委員まで出世された方と共著で分析した「日本の実質経済成長率は、なぜ1970年代に屈折したのか」という学術論文もあったりします。

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次に、イリス・ボネット『WORK DESIGN』(NTT出版) です。著者はスイス出身で、現在は米国ハーバード大学の研究者です。かなり大きなタイトルなんですが、実際は男女間の不平等を是正するための行動経済学ないし実験経済学に関するテーマが主であり、女性に限らずいわゆる多様性とかダイバーシティの問題についても取り上げています。しかし、ハッキリいって、内容はかなりありきたりです。私はかなりの程度にすでに読んだことのある中身が多かったような気がします。逆に、この分野について初学者であれば、包括的な知識が得られる可能性が高いと受け止めています。ステレオタイプやバイアスといった平易な用語で行動経済学の原理を解説し、女性に対するアファーマティブ・アクションの重要性についてもよく分析されています。次の『医療現場の行動経済学』については別途の論点があるんですが、本書では、正義の問題について考えたいと思います。というのも、p.314 でダボス会議を主催する世界経済フォーラムのシュワブ教授が「ジェンダーの平等が正義の問題」と指摘しているからで、正義の問題として考える場合と、損得として取り上げるのは少し差がある可能性を指摘しておきたいと思います。というのは、この差を多くのエコノミストは無視して、すべてを損得の問題で片付けようとするように私は受け止めており、例えば、行動経済学や実験経済学ではなく、合理的な経済人を前提しつつ、殺人について、その殺人から得られる効用と捕まって処罰される可能性の期待値の比較考量で判断する、というのがかなり標準的なエコノミストの考え方ではないかと思いますが、行動経済学や実験経済学では違う可能性を指摘しておきたいと思います。すなわち、私が殺人や窃盗をしないのは正義の問題であり、ギャンブル、例えば、競馬やパチンコをしないのは損得の問題です。伝統的な合理的経済人を前提としない行動経済学や実験経済学では、こういった正義の問題と損得に基づく選択を扱えるハズです。その意味で、もう一歩のこの学問領域の発展を願っています。

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次に、 大竹文雄・平井啓『医療現場の行動経済学』(東洋経済) です。これも行動経済学がタイトルに取り入れられていますし、医療の分野で生き死にを扱いますので、実験経済学の要素は極めて薄くなっていますが、伝統的な経済学が大勝とする合理的経済人ではない、非合理性を全面に押し出している点については、ご同様ではないかと私は受け止めています。ただ、ジェンダーの問題と異なり、医療については医師と患者の情報の非対称性の問題が避けて通れないんですが、本書ではかなり軽く扱われている気がします。その昔の医師による一方的な医療行為の決定や選択から、インフォームド・コンセントが重視され始め、今では本書にもあるようなシェアード・ディシジョン・メーキングに移行しつつあるとはいえ、また、インターネットで病気や薬について豊富な知識が得られるとはいえ、まだまだ医師や薬剤師などと患者の間には情報の隔たりがあるのも事実です。ですから、政府は医療・投薬行為を規制し、自由な市場原理に任せておくことはしないわけです。その意味で、医療行為をほぼほぼ自由な市場行為に近い医者と患者の間の取引のように本書で描写しているのは少し疑問が残ります。基本は、医師と患者の間の十分な意思疎通による医療や投薬に関する決定に基づきつつも、正当な医療行為、特に、保険で賄うのと保険外になるのとでどこが違うのか、どう違えるべきか、といった議論も欲しかった気がします。類書と異なり、本書では患者のサイドに立った選択だけでなく、医師のサイドの選択も取り上げているだけに、もう一歩踏み込んで、医療や投薬を規制する政府当局の選択についても行動経済学や実験経済学の観点から解き明かして欲しかったと考えるのは私だけでしょうか。

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次に、大前研一『世界の潮流 2018~19』(プレジデント社) です。昨年2017年12月の公演記録を基に編集されているようです。このままでは我が国はスペインやポルトガルと同じように400年間の衰退に過程に入るといいつつ、それに対する対抗策のようなものは提示されていません。その意味で、無責任といえなくもありませんが、まあ、どうしようもないのかもしれません。日本はこの先も大きなパニックに陥ることもなく、政治的な安定性を維持しつつも、かつてのような活気ある高度成長期やバブル経済期の復活はありえず、移民を受け入れることもなく、かといって、内生的な大きなイノベーションもなく、平たい言葉でいえば「ジリ貧」といわれつつも、それなりに安定して豊かな社会や生活を享受できるのではないか、という意味では、私と同じような見方なのかもしれません。生産性の高い社会という目標はいいんですが、ご同様に、そのための方策というものはなく、個々人が努力するというのが本書の著者の基本的なスタンスなのかもしれません。

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次に、ジェームズ・フランクリン『「蓋然性」の探求』(みすず書房) です。著者はオーストラリアの統計や確率などの概念史などの研究者です。英語の原題は The Science of Conjecture であり、2001年の出版です。今週読んだ本の中で最大のボリュームがあり、軽く600ページを超えます。確率論が学問として登場したのはルネッサンス後の17世紀半ばというのが定説であり、本書でもその立場を踏襲しています。なお、確率の歴史をひもとくに当たって、本書ではホイッグ史観の立場を取っています。そして、パスカルないしデカルトといった近代冒頭の数学者で本書は終わっています。歴史を詳細に見ると、やや逆説的ながら、確率理論は17世紀以前にも発達していたし、同時に、ランダムな確率論が問題となるのは資本主義の確立を待たねばならなかった、というのが本書の著者の見方です。開発経済学の他に、私の専門分野のひとつである景気循環論や経済史の見方を援用すれば、マルクス主義的な商品による商品の生産や拡大再生産の考えを待つまでもなく、近代資本主義とは資本蓄積とその資本を所有するブルジョワ階級の出現で特徴づけられますし、その近代の前の中世では資本蓄積がなく、それゆえに成長はほとんど見られず停滞そのものの時代であり、従って、キリスト教だけでなく金利徴収は成長のない中で、禁止されていたわけです。ただし、生産の成長や資本蓄積ないながらも、リスク・プレミアムの観点からの金利はあり得ると本書の著者は見ており、その確率計算のため蓋然性の概念が発達した、との考えも成り立ちます。ただ、本書では私のようなエコノミスト的な確率に近い蓋然性の議論だけでなく、英語の原題通りに、論理学的な証明や論証、それも、数学的な論理学ではなく、法廷における論証や証明に近い議論も冒頭から展開されており、そのあたりでつっかえると読み進めなくなる可能性もあります。

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次に、松本創『軌道』(東洋経済) です。本書のテーマは、2005年4月25日に死者107名と負傷者562名を出した福知山線脱線事故から、いかにしてJR西日本が収益性や上場への展望を安全重視の姿勢に転換したかであり、著者は地元神戸新聞のジャーナリストとして、その10年余りの軌跡を追っています。事故はすべて現場の運転士の責任であり、民鉄との競合の激しいJR西にあって、「天皇」とさえ呼ばれた絶対的なワンマン経営者、そして、官庁よりも官僚的とさえいわれた国鉄からの体質をいかにして、自己被害者らとともに転換したかを跡づけています。加えて、著者のジャーナリストとしての視点だけでなく、ご令室さまとご令妹さまを事故で亡くし、ご令嬢さまも重篤な負傷を負ったご遺族の淺野弥三一氏の視点も導入し、複眼的な分析を展開しています。順調な組織運営の時には目につかないながら、こういった大規模事故はいうに及ばず、何かの不都合の際に顔を覗かせる組織の体質があります。事故は個人のエラーなのか、それとも組織の体質に起因するのか、また、別の視点として、何かの功績は経営者の業績としつつも、不都合は現場の末端職員に押しつける、などなど、組織体質を考える上での重要なポイントがいっぱいでした。日本企業は一般に、「現場は一流、経営は三流」と評価されつつも、本書で取り上げられているJR西日本のように国鉄大改革の功労者として居座り続けるワンマン経営者が現場の運転士を締め付けるような組織運営をしている例外的な企業もあるんだ、ということが、ある意味で、新鮮だった気すらします。この時期に出版されたのは、私には不思議だったりします。

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最後に、湊かなえ『未来』(双葉社) です。著者はモノローグの文体も特徴的なミステリ作家であり、本書は著者の得意とする教師や学園ものと位置づけられ、デビュー作である『告白』などと同じモノローグで物語が展開します。もっとも、単なるモノローグだけでなく、手紙とか日記のような形をとる場合もあります。女性である主人公が小学生の10歳のころから中学いっぱいから高校に入学するくらいまでのかなり長い期間が収録されており、主人公以外にモノローグを語るのは、友人、小学校の担任の先生、そして、モノローグを語る中では唯一の男性である主人公の父親、などです。相変わらず、暗い文体であり、主人公やほかの登場人物には学校でのいじめをはじめとして、さまざまな不幸な出来事がこれでもかこれでもかというくらいに発生します。伝統的なミステリのように最後に一気に謎が解明されるわけではなく、タマネギの皮をむくようにひとつひとつ謎が解き明かされていきます。そして、最後には主人公を取り巻くすべてが明らかになるんですが、だからといって、主人公が幸せになるわけでもなく、じっとりと暗い思いを残したままストーリーは終局します。私のように、この作者の作品が好きならば、読んでおくべきだと思いますが、いわゆるイヤミスというほどでもなく、また、私は従来からこの作者の最高傑作はデビュー作の『告白』であると考えており、それは本書を読み終わった後でも変更の必要はありません。すなわち、やや出来もイマイチという気もします。評価は難しいところです。でも、すでに出版された次の『ブロードキャスト』も私は借りるべく予定しています。

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2018年9月14日 (金)

今日は私の誕生日!!!

今日は私の誕生日です。とうとう60歳になりました。来年3月には定年退職となる予定です。還暦60歳の区切りいい誕生日ですので、一休和尚の狂歌を引いておきたいと思います。

門松は冥土の旅の一里塚
めでたくもありめでたくもなし

その昔は数えで年齢を数えましたので、正月元旦がすべての人々のお誕生日だったわけで、それを門松で象徴しています。
最後に、このブログの恒例でクス玉を置いておきます。

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2018年9月13日 (木)

またしても貧打が戻って中日に負けて最下位近し?

  RHE
中  日103110000 6120
阪  神000101000 292

貧打に戻って中日にカード負け越しでした。投手陣の台所が苦しいとはいえ、この中日3連戦すべて初回に先発投手が失点し、打線は打てたり打てなかったりで、今日は貧打に立ち戻ってしまいました。連戦で負け続けたりすれば、いよいよ、最下位が近いのかもしれません。

明日からのヤクルト戦は、
がんばれタイガース!

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大型案件受注で大きく伸びた機械受注と上昇幅がやや鈍化した企業物価!

本日、内閣府から7月の機械受注が、また、日銀から8月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比+11.0%増の9,186億円を示し、他方、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+3.0%と前月と同じ上昇幅を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、7月11.0%増 製造業・非製造業とも伸びる
内閣府が13日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比11.0%増の9186億円だった。増加は3カ月ぶりで、伸び率は2016年1月以来の大きさだった。製造業、非製造業ともに受注額が伸びた。
7月の受注額は製造業が11.8%増の4268億円だった。増加は2カ月ぶり。17業種のうち12業種が増加した。化学工業やはん用・生産用機械などの受注が伸びた。
非製造業は10.9%増の4941億円。2カ月ぶりに増加した。通信業や運輸業・郵便業などの受注が伸びた。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は13.9%増だった。
官公需の受注額は前月比57.0%増の3587億円と比較可能な05年4月以降で2番目の高水準だった。防衛関連などで大型案件があった。
内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。7~9月期の「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整値)の見通しは前期比0.3%減となっている。
8月の企業物価、前年比3.0%上昇 原油高など背景、上昇傾向は一服
日銀が13日に発表した8月の国内企業物価指数(2015年=100)は101.7で前年同月比3.0%上昇した。指数が前年実績を上回るのは20カ月連続。春先から続く原油高による化学製品の価格上昇などが押し上げた。
前月比では横ばいだった。調査統計局によると「米中の貿易摩擦問題への警戒感や新興国経済への懸念から、銅などの資源価格が下落した」といい、指数の上昇傾向は一服しつつある。
円ベースの輸出物価は前年同月比で2.9%上昇、前月比では0.3%下落した。輸入物価は前年同月比で12.2%上昇。前月比では0.6%下落した。ともに前月比での下落は5カ月ぶり。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示し、消費者物価指数(CPI)の先行指標とされる。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは406品目、下落は263品目だった。上昇品目と下落品目の差は143で、7月の確報値の153から減った。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、コア機械受注については、前月統計が2ケタ減でしたので、ある程度の反発は予想されており、例えば、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは中心値で前月比+5.5%増となっていて、レンジでも上限は+9.0%増でしたので、この上限を上回る大きな伸びとなっています。ただし、最近数か月はかなり荒っぽい動きを示しており、季節調整済のコア機械受注の前月比で見て、4月に+10.1%増の後、5月▲3.7%減と6月▲8.8%減で4月の大きなプラスは吹っ飛び、7月は▲11.0%増で5~6月のマイナスをカバーする、という2~3か月ごとに大きなプラスが出ては、その後は反動減もあってマイナスが続く、というとても細かい周期性があります。大型案件の受注が生じるという経済活動の実態を統計が表しているということなんでしょうが、それなら、毎月の統計にはせずに四半期で調査するという方法もアリなのかもしれません。取りあえず、7月の受注では、引用した記事にもある通り、防衛関連で大型案件の受注があった、ということのようですから、統計作成官庁である内閣府では基調判断は「持ち直しの動きに足踏み」で据え置いています。先月の統計発表時に同時に公表された7~9月期コア機械受注の見通しは前期比▲0.3%減ですが、マイナス見通しの四半期スタートの7月の結果としてはまずまず堅調な滑り出しと私は受け止めています。先行きについても、9月1日に公表された4~6月期の設備投資のような大きな増加は続かないと私は予想していますが、人手不足を背景に設備投資は引き続き緩やかな増加を示すものと期待しています。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、PPIのうち国際商品市況の影響を強く受ける石油・石炭製品が7月の前年同月比+26.2%上昇に続いて、8月も+25.3%の上昇と、引き続き国内物価上昇を牽引しています。石油価格ほどではありませんが、同様の素材関連として、化学製品+4.8%や鉄鋼+4.1%などの上昇もやや大きくなっています。私は中国の景気回復の足取りがそこまで、というか、国際商品市況における石油価格をここまで押し上げるだけの伸びを見せるとは思わなかったんですが、中国をはじめとする新興国の景気回復以外の要因で石油価格が上昇しているように思えてなりません。そして、我が国の物価は金融政策動向よりもエネルギー価格に敏感に反応しているようです。他方で、国内物価の前年同月比上昇率で見て、4月+2.0%の後、5月+2.6%、6月+2.8%、7月+3.0%に続いて8月も7月と同じ+3.0%ですから、企業物価の上昇率はやや鈍化しつつある、という見方もできるような気がします。

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2018年9月12日 (水)

4回のビッグイニングに一挙5点で中日に圧勝!!

  RHE
中  日200000003 592
阪  神20150000x 8121

初回に先制されながらも先発岩貞投手が粘り強く投げ、4回のビッグイニングに大山選手が決勝ホームランで中日に圧勝でした。最終回に中日打線に追い上げられましたが、藤川投手が最後を締めてセーブを上げました。連戦が続きます。

明日も、
がんばれタイガース!

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2018年9月11日 (火)

勝利目前でクローザーのドリス投手が打たれて中日に逆転負け!!

  RHE
中  日300110002 791
阪  神001310100 6100

先発メッセンジャー投手が危険球退場するなど荒れた試合展開の中で、それでも大山選手の勝ち越しホームランを守りつつも、勝利目前でドリス投手が打たれて、中日に逆転負けでした。連戦が続く中で、とても痛い1敗かもしれません。クライマックスシリーズは大丈夫でしょうか?

明日は、
がんばれタイガース!

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4-6月期2次QEは設備投資を中心に1次QEから上方改定され年率+3.0%の高成長!

昨日は、和歌山で開催された経済統計学会の全国研究大会での学会発表のためフォローし切れなかったんですが、内閣府から4~6月期のGDP統計速報、いわゆる2次QEが公表されています。1次QEの前期比年率+1.9%成長から2次QEでは+3.0%成長に大きく上方改定されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月期実質GDP、年率3.0%増に上方修正
内閣府が10日発表した2018年4~6月期の国内総生産(GDP)改定値は物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)で前期比0.7%増、年率換算で3.0%増だった。速報値(年率1.9%増)から大幅な上方修正で、成長率が年率3%を超えるのは16年1~3月期以来の9四半期ぶりだ。民間企業の設備投資が速報段階から大幅に上振れした。
4~6月期の内外需の寄与度をみると内需が0.9%分の押し上げ寄与となり、内需主導の成長を示した。内需の前期比でみた伸び率は15年1~3月期以来の13四半期ぶりの大きさとなった。一方、外需は0.1%分の押し下げ寄与となった。
内需のうち民間企業の設備投資は実質で前期比3.1%増と、速報値の1.3%増から大きく上振れした。財務省が3日発表した4~6月期の法人企業統計で設備投資額の前年同期比伸び率は約11年ぶりの大きさとなった。運輸・郵便や電気、化学の設備投資が堅調だった。
GDPの6割を占める個人消費は0.7%増と速報値から横ばい。18年1~3月期の0.2%減からプラス成長に戻した。伸び率は17年4~6月期(0.8%増)以来となる1年ぶりの高い水準だ。自動車がけん引し、飲食サービスも小幅に上方修正に寄与した。
民間住宅は2.4%減と、速報値の2.7%減からマイナス幅が縮小した。不動産仲介手数料が上方改定となった。
民間在庫のGDPに対する寄与度は0.0%と速報値から横ばい。4~6月期は在庫の積み増しや取り崩しに対するGDPへの寄与度は軽微だった。
生活実感に近いとされる名目GDPの改定値は0.7%増、年率で2.8%増。名目ベースでも速報値の年率1.7%増から大幅な上方修正で、17年7~9月期(3.2%増)以来の高い水準だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2017/4-62017/7-92017/10-122018/1-32018/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.5+0.6+0.2▲0.2+0.5+0.7
民間消費+0.8▲0.7+0.3▲0.2+0.7+0.7
民間住宅+1.3▲1.4▲3.0▲2.5▲2.7▲2.4
民間設備+0.1+1.3+0.9+0.3+1.3+3.1
民間在庫 *(▲0.1)(+0.4)(+0.2)(▲0.2)(+0.0)(+0.0)
公的需要+1.4▲0.5▲0.1▲0.1+0.2+0.2
内需寄与度 *(+0.8)(+0.0)(+0.4)(▲0.3)(+0.6)(+0.9)
外需寄与度 *(▲0.3)(+0.6)(▲0.1)(+0.1)(▲0.1)(▲0.1)
輸出+0.2+2.1+2.1+0.6+0.2+0.2
輸入+1.9▲1.5+3.3+0.2+1.0+0.9
国内総所得 (GDI)+0.6+0.6+0.0▲0.5+0.4+0.7
国民総所得 (GNI)+0.5+0.8▲0.0▲0.7+0.7+1.0
名目GDP+0.8+0.8+0.3▲0.4+0.4+0.7
雇用者報酬+0.6+0.7▲0.2+1.2+1.9+1.8
GDPデフレータ▲0.3+0.1+0.1+0.5+0.1+0.1
内需デフレータ+0.4+0.5+0.6+0.9+0.5+0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2018年4~6月期の最新データでは、前期比成長率がプラスに回帰し、赤い消費と水色の設備投資がプラスで大きく寄与している一方で、黒の外需(純輸出)がマイナス寄与となっているのが見て取れます。

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テーブルとグラフを見れば明らかなんですが、1次QEから2次QEへの変更の大きなポイントは設備投資です。法人企業統計に沿った上方改定といえます。その他の需要項目に関しては、住宅津市がややマイナス幅を縮小改定されたものの、大きね変更はなく、この設備投資の情報改定が内需寄与度を押し上げて高成長をもたらしたといえます。ただ、足元の7~9月期についてはプラス成長を維持することすら危うい、と大きのエコノミストは見込んでいるようです。すなわち、景気局面そのものがかなり成熟化しているという自律的な要因のほかに、猛暑は別としても、豪雨や台風に北海道地震といった災害がこの期間に目白押しで、マインドの悪化や外出の手控えから消費需要を押し下げたり、あるいは、生産や物流などの供給面からの影響も含め、景気にはマイナス材料となった可能性が高いと私は受け止めています。その意味で、4~6月期GDPの高成長は過去の数字かもしれません。加えて、さらに先行きの成長についても、米中間の貿易戦争に代表されるような通商摩擦がリスクとして上げられます。

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上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。内需主導の成長を裏付けているのは設備投資とともに消費なわけですが、上のグラフに見られる通り、その背景には順調な増加を続ける雇用者報酬があります。インバウンド消費も順調な拡大を続けているものの、かつて「爆買い」と称されたほどの爆発的な拡大局面は終了に向かっている印象ですし、国内労働市場の人手不足に伴う正規雇用の増加や賃金上昇により、雇用者報酬が順調に伸びを示しています。人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加圧力となっており、内需主導の成長をバックアップしていると考えるべきです。

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最後に、昨日は4~6月期GDP統計2次QEだけでなく、景気ウォッチャーと経常収支も公表されていますが、景気ウォッチャーのグラフだけ上にお示ししておきます。いずれも季節調整済の系列で見て、現状判断DIは前月差+2.1ポイント上昇の48.7を、先行き判断DIは前月差+2.4ポイント上昇の51.4を、それぞれ示しています。

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2018年9月10日 (月)

経済統計学会でシェアリング・エコノミーに関して学会発表をする!

昨日夕刻に東京を発ち和歌山に向かい、今日午前中の経済統計学会全国研究大会にて「シェアリング・エコノミー等新分野の経済活動の計測に関する調査研究」に関する学会発表をしてきました。このテーマでの学会発表は6月の日本経済学会に続いて2回目です。注目いただいているのは有り難い限りですが、今回の学会は役所の研究所の同僚と大挙して押し寄せて、計5セッションを連続で独占したりしました。まあ、そういう時もあります。今日の午後には和歌山を出て、先ほど帰宅しました。
私は京都出身で、京都駅から南に近鉄で10駅ほどのところに、大学生活まで過ごした両親の実家がありましたので、京都から先は、特に大阪を越えると長旅に感じます。新幹線で京都から新大阪まで十数分、さらに和歌山まで特急で1時間ほどなんですが、長く感じました。年齢的に疲れやすいのかもしれません。日経BP社から出版されているロバート J. ゴードン教授の『アメリカ経済 成長の終焉』上下巻各500ページ余りを持って行きましたが、往復で読み切ってしまいました。

4~6月期のGDP統計2次QEが公表されたりしていますが、まだ詳細は見ていません。日を改めて取り上げたいと思います。

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2018年9月 9日 (日)

先週の読書は経済書は少なくいろいろ読んで計7冊!

昨日に、米国雇用統計が割り込んで読書日が1日多くなったのが影響したのか、先週は7冊を読んでいます。ほとんど経済書らしい経済書はなく、話題の小説シリーズの最新刊や新書が入っています。以下の通りです。昨日のうちに自転車で図書館巡りを終え、今週もそれなりに大量に読む予定です。

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まず、ティム・ジョーンズ & キャロライン・デューイング『[データブック] 近未来予測 2025』(早川書房) です。著者2人は英国出身であり、未来予測プロジェクトである「フューチャー・アジェンダ」の創設者だそうです。本書の英語の原題も Future Agenda であり、2016年の出版です。もっとも、本書は「フューチャー・アジェンダ」の第2段であり、第1段は2020年をターゲットにしてすでに2010年に出版されていて、本書の著者2人は2018年の現時点で約90%が達成されたと豪語しています。基本はマルサス的な人口爆発など、その昔のローマクラブのような発想なんですが、コンピュータのシミュレーションをしたような形跡はありませんし、エネルギーの枯渇はアジェンダに上っていないようです。そのかわり、といっては何ですが、覇権といった地政学、あるいは、水資源や宗教的な要素を取り入れるなど、より幅広いアジェンダの提起に成功しているような気もします。しかし、さすがに、結論を明確に提示する点についてはやや物足りない気がします。曖昧な表現で正解率が上がるのかもしれません。ただ、明確な将来像の提示を期待するよりも、そこに至る議論の過程を透明に示している点は評価されるかもしれません。

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次に、大貫美鈴『宇宙ビジネスの衝撃』(ダイヤモンド社) です。著者は宇宙ビジネス・コンサルタントだそうで、私の想像を超えているので、よく判りません。本書の冒頭に、なぜIT業界のビッグビジネスは宇宙事業に参入するのか、という問いが立てられていて、ビッグデータの処理とか、移住計画までが並んでいるんですが、IT以外のビッグビジネスが食指を動かしていそうにない現状については不明です。確かに、宇宙にはまだまだビジネスの、というか、イノベーションのシーズが眠っているような気がしなくもありませんが、ロバート・ゴードン教授にいわせれば「低いところの果実は取り尽くした」、ということなのかもしれませんので、高いところに中にある果実を取りに行くんだろうと私は理解しています。それにしては、とてもコストがかかりそうなのでペイするんでしょうか。そのキーワードはアジャイル開発で、IT業界と同じように走り出しながら考える、ということのようです。役所に勤める公務員の私の想像力には限りがあるのだということを強く実感しました。もうすぐ定年退官ですから、しっかり勉強したいと思います。

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次に、西垣通『AI原論』(講談社選書メチエ) です。著者は情報学やメディア論を専門とする研究者であり、東大名誉教授です。本書では、かつての確率論的なAIから進化した現在のAIについて、機械であるAIに心があるかとか、感情が宿るか、などを考えようとしています。私はこの問題設定は間違いだろうと考えています。すなわち、心とか、感情の定義次第であり、その定義に従った機能を機械に搭載するだけの話ですので、心があるか、とか、感情はどうだと問われれば、そのような機械を作ることができる技術段階に達しつつある、ということにしかなりそうにないんではないでしょうか。そして、現段階では心や感情については解明されておらず、従って、機械にインストールすることが出来ない、ということだと私は理解しています。蛇足ながら、心や感情が完璧に解明されて、従って、機械にインストールされれば、それが新しい人類になって現生人類は滅ぶんだろうと思います。ネアンデルタール人とホモサピエンスのようなものと、私のように理解するのは間違いなんでしょうか?

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次に、稲垣栄洋『世界史を大きく動かした植物』(PHP研究所) です。著者は農学の研究者であり、本書では歴史や世界史のサイドからではなく、植物のサイドから世界史をひもとこうと試みています。取り上げられている植物は順に、コムギ、イネ、コショウ、トウガラシ、ジャガイモ、トマト、ワタ、チャ、サトウキビ、ダイズ、チューリップ、トウモロコシ、サクラの12種であり、コショウのように大航海時代を切り開く原動力となった植物もあれば、もっと地味なものもあります。なお、冒頭のコムギについては、コムギそのものではなく穀物としてのイネ科の植物全体の特徴を取り上げています。ジャガイモの不作がアイルランドから米国への移民を促進した、というのはやや俗説っぽく聞こえますし、オランダのチューリップ・バブルが世界で初のバブルだったのはエコノミストでなくても知っていそうな気もします。職場の井戸端会議でウンチクを語るには好適な1冊ではなかろうかと思います。

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次に、畠中恵『むすびつき』(新潮社) です。この作者の人気のしゃばけシリーズの最新刊第17弾だそうです。この作者の人気シリーズ時代小説は私が読んでいる限り2シリーズあり、妖の登場するしゃばけと登場しないまんまことです。しゃばけは体の弱い長崎屋の若だんな一太郎とそれを守る2人の妖の兄や、すなわち、犬神の佐助と白沢の仁吉を中心に、さまざまな妖が登場します。この巻では、生まれ変わりとか、輪廻転生がテーマとなっていて、長崎屋の若だんなの前世ではなかろうか、という200年くらい前の戦国時代くらいの物語をはじめとし、いつもの通り、ちょっとした謎解きも含めて、色んなお話が展開されます。やや佐助と仁吉の出番が少なく、一太郎も出番も多くはありません。一太郎の両親である藤兵衛とおたえに至っては、まったく顔を見せません。活躍するのは、いつもの鳴家は別格としても、付喪神の屏風のぞきと鈴彦姫、さらに、猫又のおしろと貧乏神の銀次、などなどです。私の出版されれば読むようにしていますが、そろそろマンネリなのかもしれません。どちらかといえば、まだまんまことシリーズの方が私は楽しみです。

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次に、高槻泰郎『大坂堂島米市場』(講談社現代新書) です。作者は経済学部出身の、おそらく、経済史の研究者です。本書では、大坂の米会所が8代将軍徳川吉宗により許可され始まって、さらに、おそらく、世界で初めて先物取引や今でいうデリバティブ取引を始めた歴史を跡づけ、実際に市場における取引と絶対王政に近かった江戸期の幕府権力との関係などが歴史的に分析の対象とされています。当時の「米切手」はコメの現物の裏付けなしに発行され流通しており、その意味では、現在の管理通貨制に近いと考えることができる一方で、歴史的な背景は近代的な自由な資本制ではなく、農奴制ないし封建制の経済構造下でいかにして近代というよりも現代的な裏付けなしの証券が取引されていたのかを、現実にはレピュテーションの面から解き明かそうとしています。江戸幕府やその地方政府である藩、あるいは大坂奉行所などが、極めて現代的な中長期的な取引費用の観点から行動していることがよく理解できます。江戸時代は支配階級として武士が君臨する一方で、本書でも「コメ本位制」と呼ばれているように、武士の経済的基礎はコメであり、コメ価格を高めに維持することが支配階級から要請されており、その意味で、コメの先物取引やデリバティブ取引が位置づけられています。

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最後に、更科功『絶滅の人類史』(NHK出版新書) です。著者は、分子古生物学の研究者であり、本書では、長い長い生物の進化の歴史の中で、ヒトとしては我々ホモサピエンス1種だけが生き残り、その前のネアンデルタール人などが絶滅した要因を解明しようと試みています。決して我々ホモサピエンスの頭脳が優れていて、能力的に優れた種として生き残ったわけではない可能性を示唆しつつ、ホモサピエンスの生存戦略の合理性にもスポットを当てています。私は従来から恐竜が絶滅しなければ、この地球上の生物の王者は何だったのか、おそらく、人類ではなかった可能性も小さくない、と思っているんですが、そこまで深く突っ込んだお話ではありません。未だに、人類がサルから進化したというダーウィン的な進化論を否定するキリスト教原理主義が一定の影響力を持っていて、人種間の偏見が払拭されていない現状にあって、私はこのような進化論的な科学的見方、すなわち、決して現生人類が何らかの意味で「優れている」ために生き延びたわけではない、という観点は重要だと受け止めています。ただ、大量にたとえ話が盛り込まれているんですが、判りにくい上にややレベルが低い気がします。それだけが残念です。

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2018年9月 8日 (土)

8月米国雇用統計の雇用者増は再び加速しFEDは金利引上げを継続するのか?

日本時間の昨夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+201千人増と、市場の事前コンセンサスだった+190千人の増加という予想を上回った一方で、失業率は前月と同じ3.9%という低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

Jobs report: Employers added 201,000 jobs in August
Hiring rebounded in August as employers added 201,000 jobs and the labor market continued to defy worker shortages and U.S. trade battles. Yearly wage growth hit a nine-year high.
The unemployment rate was unchanged at 3.9 percent, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 195,000 payroll gains.
On the downside, employment increases for June and July were revised down by a total 50,000. June's gain was lowered from 248,000 to 208,000 and July's from 157,000 to 147,000. Still, monthly gains for the year are averaging a robust 207,000.
Hiring can be volatile in August as teachers and other employees return to work after summer lulls. That makes it more challenging for Labor to adjust the employment totals to account for seasonal variations. In recent years, Labor has revised up its initial estimates for August, often significantly. Goldman Sachs reckons the measurement glitch reduced last month's job count by at least 40,000.
Other economists, though, have expected payroll growth to slow as employers increasingly struggle to find available workers now that the jobless rate has dipped below 4%. So far this year, the labor market has shrugged off the worker shortages, turning out an average of more than 200,000 job gains a month, up from 182,000 in 2017. That may be due to a pool of discouraged and other workers who had been on the sidelines, but some experts believe that supply will soon run thin.
Trade tensions also could have dented business confidence and dampened hiring last month, Goldman Sachs says. In early July, the Trump administration slapped tariffs on $34 billion in Chinese imports and announced a proposed list of tariffs on another $200 billion in Chinese goods.
Average hourly earnings rose 10 cents to $27.16. And so wages were up 2.9 percent from a year earlier, up from 2.7% in July and the biggest annual jump since 2009. The large increase could indicate that wage growth is finally picking up more rapidly amid an intense competition for workers.

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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米国の雇用が堅調です。先月7月こそ非農業部門雇用者の伸びが+200千人を下回って+147千人にとどまりましたが、その前の6月の+208千人と同様、8月も+201千人を記録し、米国連邦準備制度理事会(FED)が一定の目安と見ているといわれる+200千人増の水準を回復しましたし、失業率も4%を下回って7~8月は+3.9%を続けています。この雇用統計の数字を見る限り、FEDが利上げを継続するのに何の障害もなさそうで、現に、先月のジャクソンホール会合でのパウエル議長の講演 Monetary Policy in a Changing Economy では "As the most recent FOMC statement indicates, if the strong growth in income and jobs continues, further gradual increases in the target range for the federal funds rate will likely be appropriate." と利上げ継続が表明されています。ただ、「内憂外患」と申しましょうかで、国内的にはトランプ大統領が利上げに猛反対しています。8月統計では製造業雇用が久し振りに前月から減少しましたので、これも政権の利上げ反対姿勢を強める可能性があります。加えて、典型的にはトルコとアルゼンティンなんですが、通貨が大きく減価しています。このため、他の新興国や途上国などでも米国の利上げ幅を超える利上げを迫られる場合があり、世界的な金融市場の不安定な動きにつながりかねません。このあたりのバランスをどう考えるのか、利上げの継続かあるいは一時停止か、米国の金融政策当局の判断が注目されます。

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最後に、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、8月は前年同月比で+2.9%の上昇を見せています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、日本と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですから、利上げで対応すべきという意見が出るのは当然かもしれません。

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2018年9月 7日 (金)

「拡大」の基調判断続く景気動向指数と賃金上昇が見られ始めた毎月勤労統計!

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月差▲1.1ポイント下降して103.5を、CI一致指数も▲0.6ポイント下降して116.3を、それぞれ記録しています。また、毎月勤労統計のうち、名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+1.5%増の37万6338円に上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の景気一致指数、3カ月連続低下 自動車出荷など悪化
内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.6ポイント低下の116.3だった。低下は3カ月連続。市場予想の中央値は0.7ポイント低下だった。自動車関連の出荷が悪化した。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち6系列が指数を押し下げた。耐久消費財出荷指数が乗用車と二輪車の悪化を受けて低下した。鉱工業用生産財出荷指数も、北米向けの鉄鋼輸出が減少した影響でマイナスに寄与した。
内閣府は、一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。同表現は22カ月連続。
数カ月後の景気を示す先行指数は1.1ポイント低下の103.5と2カ月連続で低下した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は0.2ポイント低下の117.7だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。
7月の名目賃金、1.5%増 増加は12カ月連続、毎月勤労統計
厚生労働省が7日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、7月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比1.5%増の37万6338円だった。増加は12カ月連続。基本給の伸びが続いた。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.0%増の24万5010円だった。残業代など所定外給与は1.9%増。ボーナスなど特別に支払われた給与は2.4%増だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は0.4%増だった。
パートタイム労働者の時間あたり給与は1.7%増の1130円。パートタイム労働者比率は0.15ポイント低い30.53%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べると長くなってしまいました。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は、毎月勤労統計のグラフとも共通して、景気後退期を示しています。

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引用した開示にもある通り、CI先行指数が2か月連続で、CI一致指数に至っては3か月連続で前月から下降を示しているんですが、統計作成官庁である内閣府では基調判断は「改善」で据え置いており、22か月連続の「改善」となっています。CI一致指数のうち、プラス寄与は商業販売額(卸売業)(前年同月比)くらいのもので、マイナス寄与は絶対値の大きい順に、耐久消費財出荷指数、鉱工業用生産財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(小売業)(前年同月比)、有効求人倍率(除学卒)などが上げられています。基調判断が「改善」から「足踏み」に変化する際は、3か月後方移動平均がマイナスに転じ、さらに、マイナス幅が1標準偏差以上、という定義なんですが、3か月後方移動平均を見ると、4~6月は3か月連続でプラスを示したんですが、7月はマイナスに転じ▲0.40を記録しています。でも、まだ標準偏差の幅には達していない、ということなのだと私は理解しています。景気拡大は5年半を越えましたので、当然ながら、景気局面としては成熟化の段階に達している気がします。CI一致指数はかなりの程度に鉱工業生産指数(IIP)と相関が高いと私は考えているんですが、最近の生産の動向から考えて、ある意味で、当然の結果かもしれません。また、CI先行指数についても、プラス寄与は新設住宅床面積くらいで、その他は軒並みマイナス寄与を示しています。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。ということで、景気に敏感な製造業の所定外時間指数は低下を示していますが、賃金はそれなりに上向きと私は見ています。2番目のパネルの季節調整していない原系列の賃金指数の前年同月比のプラス幅も、3番目の季節調整済みの系列の賃金指数も、ともに上向きに見えます。さすがに、人手不足がここまで進んでいますので、正規雇用の増加とともに、賃金上昇の圧力はそれなりに大きいと私は受け止めています。

最後に、8月の米国雇用統計が公表されていますが、今夜のうちに取りまとめて明日早くにアップしたいと思います。

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2018年9月 6日 (木)

才木投手のナイスピッチングと20安打13得点の乱れ打ちで広島に爆勝!!

  RHE
阪  神001053130 13200
広  島000001110 370

先発の才木投手が6回1失点のQSでしっかりと試合を作り、打線は20安打13得点の乱れ打ちで広島に爆勝でした。もう、広島も1試合や2試合落としても痛くも痒くもないんでしょうね。でも、阪神は違います。クライマックスシリーズ目指して順位を上げることができそうな気もします。

明日のジャイアンツ戦も、
がんばれタイガース!

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来週公表の4-6月期2次QEの成長率は大幅な上方改定か?

今週月曜日9月3日の法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日の9月10日に今年2018年4~6月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の7~9月期から、この先の2018年の景気動向を重視して拾おうとしています。しかしながら、明示的に先行き経済を取り上げているのはみずほ総研だけで、伊藤忠経済研は少し違う角度から注目していました。みずほ総研は超長めに、伊藤忠経済研も少し長めに、それぞれ引用してあります。なにせ、2次QEですから法人企業統計のオマケの扱いの場合もあったりします。なお、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.5%
(+1.9%)
n.a.
日本総研+0.5%
(+2.1%)
4~6月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が上方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+2.1%(前期比+0.5%)と1次QE(前期比年率+1.9%、前期比+0.5%)から上方修正される見込み。
大和総研+0.7%
(+2.9%)
4-6月期GDP二次速報(9月10日公表予定)では、実質GDP 成長率が前期比年率+2.9%(一次速報: +1.9%)と、一次速報から大幅に上方修正されると予想する。
みずほ総研+0.7%
(+2.6%)
足元の経済指標をみると、7月の輸出・鉱工業生産は弱含んでいる。自動車輸出の落ち込みが北九州や中国・四国地方の税関で目立っていること、鉄鋼業の減産幅が東日本大震災以来の大きさとなったことなどから、西日本豪雨や台風の影響も大きかったとみられる。7月の水準が低いため、7~9月期の鉱工業生産は減産となる可能性が出てきたが、在庫調整圧力が一方的に高まっている状況ではなく、回復基調が途切れたとみるのは早計だろう。なお、猛暑については、7月のコンビニ・家電販売の押し上げには寄与した一方、外出の手控えを招いた面もあり、消費全体への影響は限定的だったようだ。
当面のリスクとしては、貿易摩擦の行方に最も注意が必要だ。不確実性の高まりが企業の投資計画を阻害することが懸念されるほか、米国が自動車・部品への追加関税を強行した場合、インパクトは各段に大きくなる。日本から米国へ輸出されている車・部品に単純計算で1兆円以上の負担となる上、現地生産車であっても、部品の内製化率は6割程度にとどまると試算され、関税賦課による部品コストの上昇が避けられない。自動車メーカーの負担増を通じ、日本国内の投資や雇用にも悪影響が生じることになろう。
ニッセイ基礎研+0.6%
(+2.5%)
9/10公表予定の18年4-6月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.5%)となり、1次速報の前期比0.5%(前期比年率1.9%)から上方修正されると予測する。
第一生命経済研 +0.6%
(+2.4%)
2018年4-6月期実質GDP(2次速報)を前期比年率+2.4%(前期比+0.6%)と予想する。設備投資の上方修正を主因として、GDP成長率は1次速報の前期比年率+1.9%から上方修正されるだろう。
伊藤忠経済研+0.6%
(+2.5%)
労働分配率の低下は、人件費の増加が業績改善に追い付いていないだけであり、最近のタイトな労働需給を踏まえると、今後は冬のボーナス増加などの形で人件費が増加、労働分配率が上昇するとみて良いだろう。そうなれば、企業業績の改善が家計所得を押し上げ、個人消費の拡大がさらなる業績改善に結び付く自律的な景気拡大の動きが一段と強まることになる。
米中貿易摩擦や新興国通貨の混乱、Brexitなど、海外には不確実性を高める要因が多数あるが、国内経済は自律的な景気拡大に向けた足場固めが進んでいるようである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.8%
(+3.0%)
2018年4~6月期の実質GDP成長率(2 次速報値)は、前期比+0.8%(年率換算+3.0%)と1次速報値の同+0.5%(同+1.9%)から上方修正される見込みである。景気が順調に回復していることが改めて示されことになりそうだ。
三菱総研+0.8%
(+3.2%)
2018年4-6月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.8%(年率+3.2%)と、1次速報値(同+0.5%(年率+1.9%))から上方修正を予測します。

ということで、取り上げたすべてのシンクタンクで2次QEは1次QEからの上方改定を予測しています。そして、1次QEがそもそも年率+1.9%成長でしたので、+2%を超える成長率予想となっています。下の三菱系2機関は+3%成長すら視野に入れているようです。需要項目別にはテーブルを示していませんが、主要な変更点は設備投資であり、法人企業統計に従って上方改定される、ということになりそうです。個人消費と外需については大きな変更はなく、在庫については増加を予想するシンクタンクもありますが、私自身は変更なしないし下方修正を見込んでいます。ということで、外需寄与度が1次QEから大きな変更なくマイナスのままで、消費がプラスのままでこれも大きな変更なく、設備投資が上方改定されますから、パッと見では内需主導の高成長、ということになりそうです。先行きについては、伊藤忠経済研のように企業収益から雇用者所得が増加し、さらに消費の拡大につながる、という楽観論もありますが、みずほ総研のように海外経済の貿易摩擦にリスクを見出すシンクタンクもあります。わたしも、先行きリスクは下振れの方が強いんではないかと考えています。ですから、どこまで、4~6月期の内需主導の高成長を評価するかは、先行きリスクとの兼ね合いもあるんではないかと思わないでもありません。
下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。ご参考まで。

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2018年9月 5日 (水)

岩貞投手のナイスピッチングと活発につながった打線で広島にボロ勝ち!!

  RHE
阪  神400100024 11100
広  島200001000 371

昨夜は、台風襲来で中止になったものと決めつけて、今朝の朝刊で試合結果を見てびっくりしてしまいました。昨夜のサヨナラに続いて、新井選手の引退表明もあり、広島に流れが行っているような気がしたんですが、何と、先発の岩貞投手が7回3失点のQSでしっかりと試合を作り、打線がつながって2ケタ安打の2ケタ得点で広島にボロ勝ちでした。10安打で11得点ですから、フォアボールを効果的に得点に結びつけたといえます。例年は失速の9月に順位を上げることができそうな気もしまず。

明日も、
がんばれタイガース!

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ブリニョルフソン教授らによる機械翻訳 AI による経済効果の研究成果やいかに?

8月20日の週に、全米経済研究所 (NBER) からブリニョルフソン教授らによる機械翻訳 AI による経済効果研究のワーキングペーパー "Does Machine Translation Affect International Trade? Evidence from a Large Digital Platform" が明らかにされています。引用文献を詳細に記すと以下の通りです。

人工知能のうち、機械翻訳 (Machine Translation) によって、どれだけの経済効果があったか、について定量的な分析結果を示しています。どのような分析をしたかというと、eBay に導入された eMT (eBay Machine Translation) がどれだけ米国の輸出を増加させたかについて差の差 (DiD) 分析を実施し、ラテンアメリカへの米国の輸出を17.5%増加させた、と結論しています。以下で簡単にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。

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まず、機械翻訳が導入された前後のラテンアメリカとその他地域への eBay を通じた米国からの輸出の推移です。直観的なグラフの印象として、機械翻訳導入前には大きな差はなかった一方で、機械翻訳を導入してから、その他地域向けに比較してラテンアメリカ向けの eBay を通じた輸出が順調に増加しているのが見て取れます。このラテンアメリカ向け輸出の増加が機械翻訳の効果であった可能性がうかがえます。

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同時に、これも状況証拠なんですが、上のグラフは輸出品目のタイトルの文字数による増加割合をみています。機械翻訳の効果がより大きいのは、短いタイトルではなく長いタイトルの可能性があるわけで、そのことがグラフから実感できるのではないかと思います。私自身は南米はチリで外交官をした経験がありますので、スペイン語をそれなりに理解し、英語とスペイン語の両方でよく似た単語の場合とまったく異なる場合を知っていますが、当然ながら、短いタイトルだと英語のままで理解できても長いタイトルの輸出品だと、もっとしっかりと確認する必要があるわけで、機械翻訳の効果がより大きくなるとの仮説はもっともだと受け止めています。

もちろん、学術論文ですから、グラフのシェイプだけで判断しているわけではなく、繰り返しになりますが、差の差 (DiD) 分析により定量的な把握を試みています。詳細には、冒頭に引用先のリンクを置いておきましたので、ご興味ある向きは論文を読んでみるのも一案かもしれません。

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2018年9月 4日 (火)

インテージ調査による今夏の甲子園高校野球のテレビ視聴実態やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、ネット調査大手のインテージから8月24日付けで「甲子園視聴データから見える地元愛 秋田でのテレビ観戦の盛り上がり実態は?」と題して、今夏の甲子園高校野球テレビ視聴実態に関するデータが明らかにされています。

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今年の夏の甲子園高校野球の注目は、秋田県の金足農高であった点は衆目の一致するところかと思います。優勝した大阪桐蔭高のOBをかなりたくさん受け入れていながら、藤浪投手をはじめとして、あまりパッとした活躍をしていない阪神を強く応援している私でもそうでしたから、あとは推して知るべしでしょう。ということで、上のグラフはインテージのサイトから都道府県別で大会全試合と決勝戦のそれぞれの接触率を引用しています。圧倒的に秋田県のテレビ接触率が高くなっているのが見て取れます。同時に、大会全試合では秋田県に次いで滋賀県が2番目につけています。近江高がベスト8に残ったのが影響しているのは明らかですが、お隣の京都府出身者として私にはここまで滋賀県民が高校野球に熱心だという実感はありませんでした。最後に、決勝戦に限れば秋田はもちろん、東北各県が熱心にテレビを見ていたようなデータが示されています。当然です。

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結果的に、極めて残念にも秋田代表の金足農高は決勝で大阪桐蔭高に敗れたわけですが、上のグラフはインテージのサイトから秋田県における決勝戦のテレビ接触率を時系列で追ったグラフを引用しています。試合開始直後から急激に高まったテレビ接触率が、ジワジワと高まって盛り上がりを見せていたところ、大阪桐蔭高が6-1と金足農高を突き放したあたりをピークに、今度はジワジワと低下を始めます。その後、低下と上昇を細かく繰り返しているのも見て取れますが、やっぱり、試合全体を通しての上昇から低下に転じたピークは、4回のスリーランだったようです。5回の6点よりも先に低下を始めていたのは興味深いところです。

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2018年9月 3日 (月)

史上最強の収益力で内部留保が積み上がる法人企業統計調査!

本日、財務省から4~6月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は7四半期連続の増収で前年同期比5.1%増の344兆6149億円、経常利益も8四半期連続の増益で+17.9%増の26兆4011億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで製造業が+19.8%増、非製造業が+9.2%増となり、製造業と非製造業がともに伸びを示し、全産業では+12.8%増の10兆6613億円を記録しています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資は前期比+6.9%増となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4~6月期の経常利益、過去最高 製造業がけん引、法人企業統計
財務省が3日発表した2018年4~6月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比12.8%増の10兆6613億円だった。増加は7四半期連続。製造業で生産能力投資が活発だった。全産業ベースの経常利益は前年同期比17.9%増の26兆4011億円だった。増益は8四半期連続で、調査が始まった1954年4~6月期以来、過去最高となった。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で6.9%増と4四半期連続で増加した。
設備投資の前年同期比の動向を産業別にみると、製造業は19.8%増加した。半導体や半導体製造装置向け部品の生産能力投資が増えた。非製造業は9.2%増加した。運輸業で駅周辺の再開発が活発だった。
「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額の内訳は製造業が季節調整済み前期比11.0%増、非製造業が4.7%増だった。
経常利益の内訳は製造業が27.5%増だった。自動車向け半導体製品の販売が堅調。非製造業は純粋持ち株会社の受取配当金が増加し12.4%増だった。情報通信業ではクラウド関連サービスが好調だった。
売上高は5.1%増の344兆6149億円と7四半期連続で増収となった。製造業は6.7%増だった。自動車や産業用機械向け電子部品、輸出用半導体製造装置、建設機械が伸びた。非製造業は4.5%増。資源価格の上昇で販売価格が上がった。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計した。今回の18年4~6月期の結果は、内閣府が10日発表する同期間のGDP改定値に反映される。
同時に発表した2017年度の法人企業統計によると、3月末時点の金融業と保険業を除く全産業の「内部留保」にあたる利益剰余金は、前年比9.9%増の446兆4844億円だった。調査開始以来、過去最高を更新した。
金融業と保険業を除く全産業の売上高は前年比6.1%増の1544兆1428億円、経常利益は11.4%増の83兆5543億円だった。経常利益は8年連続の増益で過去最高となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルに示されたように、売上高についてはサブプライム・バブル崩壊前はいうに及ばず、いわゆる「失われた10年」の期間である1990年代後半の消費税率引上げ直前の駆け込み需要の見られた1997年1~3月期のピークすら超えられていませんが、経常利益についてはすでにリーマン・ショック前の水準を軽くクリアしており、我が国企業の収益力は史上最強のレベルに達しています。季節調整済みの系列で見て、1~3月期の国内経済停滞の後、4~6月期は踊り場を脱しつつあり、季節調整済みの前期比で見て、売上高の伸びは+1.8%と低い伸び率となった一方で、経常利益は前期比+16.9%増を示しています。従来からのこのブログでお示ししている私の主張ですが、我が国の企業活動については一昨年2016年年央くらいを底に明らかに上向きに転じ、昨年2017年は年間を通じてこの流れが継続していることが確認できたと思います。また、設備投資についても徐々に伸びが本格化して来た印象です。これも季節調整済みの系列で見て、人手不足を反映して全産業ベースの設備投資は4~6月期に+6.9%増と伸びを高めました。業種別は季節調整していない原系列統計の前年同月比しか明らかにされていませんが、引用した記事にもある通り、製造業では、半導体や半導体製造装置向け部品の生産能力投資が増えた生産用機械が+64.9%増、また、非製造業でも、運輸業で駅周辺の再開発が活発だったことなどから運輸業、郵便業で+44.6%増を記録しています。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下し上向く気配すらなくまだ下落の気配を見せていますし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞し底ばっており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけは、グングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善の重要なポイントである賃上げ、あるいは、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。ですから、経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

最後に、本日の法人企業統計を基に、いわゆる2次QEが来週月曜日の9月10日に内閣府から公表される予定となっています。1次QEでは季節調整済みの系列の前期比+0.5%、前期比年率1.9%の成長率が、私の直感的な印象ながら、設備投資を中心に2次QEで上方修正される、しかも、かなり大幅な上方修正の可能性が高いと受け止めています。

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2018年9月 2日 (日)

打線がつながり15安打12得点で横浜にボロ勝ち!!

  RHE
横  浜000003000 3101
阪  神00501411x 12150

今季初先発の青柳投手がしっかりと試合を作り、打線がつながって横浜にボロ勝ちでした。クリンナップで6打点、7番藤川俊介外野手が5打点と打線は活発でした。投手陣も、青柳投手のヒーローインタビュー通りに、ソト選手に食らったホームラン以外は抜群の出来だった気がします。リリーフ陣もまずまずでした。例年は失速の9月が、今年は最高のスタートになりました。9月に順位を上げましょう。

3連勝しかない次の広島戦は、
がんばれタイガース!

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キース・ジャレットの伝説的ライヴを収録したアルバム After The Fall を聞く!

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チック・コリアとともに、、私がもっとも愛聴する現役ジャズピアノ奏者の1人であるキース・ジャレットのアルバム After The Fall を聞きました。3月に発売されたらしいんですが、Jazz Japan の購読をやめてから日比谷図書館で時折情報収集するだけになり、すっかり見逃していました。パーソネルはご存じの通りで、ピアノはもちろんキース・ジャレット、ベースがゲイリー・ピーコック、ドラムスはジャック・デジョネット、定冠詞をつけて "The Trio" といえば、この3人といえましょう。曲の構成は以下の通りです。

  • CD 1
    1. The Masquerade Is Over
    2. Scrapple from the Apple
    3. Old Folks
    4. Autumn Leaves
  • CD 2
    1. Bouncin' with Bud
    2. Doxy
    3. I'l See You Again
    4. Late Lament
    5. One for Majid
    6. Santa Claus Is Coming to Town
    7. Moment's Notice
    8. When I Fall in Love

どうしてこのアルバムが伝説的ライブと呼ばれるのかといえば、1996年に慢性疲労症候群という難病によって1998年までの2年間の休養を余儀なくされたキース・ジャレットが復帰以降、レギュラー・トリオでの第1弾の演奏を披露した1998年11月14日のニュージャージー・パフォーミング・アーツ・センターで行われたライヴの音源が収録されているからです。これまでは、復帰直後のライブとしては、1999年7月5日にパリでライブ録音された名盤 Whisper Not といわれて、私もウォークマンに入れるなど愛聴してきたんですが、それよりもずいぶんと前のライブ音源が発掘され発売されたわけです。
CD-1の Bouncin' With Bud、CD-2に When I Fall In Love を収録し、Whisper Not との類似性がありつつも、チャーリー・パーカーの Scrapple from the Apple、あるいは、ソニー。ロリンズの Doxy、また、コルトレーンの Moment's Notice をフィーチャーしたり、Autumn Leaves (枯れ葉) や Santa Claus Is Coming to Town (サンタが街にやってくる) など、馴染みのあるスタンダード曲も少なくなく、親しみの持てる構成となっています。
キース・ジャレットの演奏そのものは、どうしても、Whisper Not と比較すれば見劣りする部分があるものの、私のようなファンは必聴だと思います。万難を排して何が何でも聞いておくべきです。

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2018年9月 1日 (土)

福留選手の大車輪の活躍で横浜を下し久々の甲子園での勝利!!

  RHE
横  浜003000000 3103
阪  神20003030x 8120

序盤先制しながらもいつもの決定打不足で逆転された後、福留選手の大活躍で横浜に勝利でした。小野投手は4回で交代しましたが、打線が序盤から援護してもっと盛り上げていれば、さらに長いイニングを投げることも出来たハズで、やや気の毒な気もしますが、フォアボールが多いのが気がかりであるのも確かです。リリーフ陣はほぼほぼ完璧だった気がします。明日の青柳投手の初登板も楽しみです。打線は走塁もお見事だった福留外野手に尽きます。

明日も、
がんばれタイガース!

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今週の読書はいろいろ読んで計7冊!

今週の読者はいつも通り脈絡なく読み飛ばして、以下の計7冊です。すでに図書館を自転車で回って来たんですが、来週も同じくらいの分量を読みそうな予感です。

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まず、鷲田祐一[編著]『インドネシアはポスト・チャイナとなるのか』(同文舘出版) です。著者は一橋大学商学部の研究者ですが、学生などといっしょに執筆にあたっています。対象となる国は明らかにインドネシアなんですが、一橋大学のアジア的雁行形態論の流れの中で、先行する日本や中国との比較も大いに盛り込まれています。すなわち、日本はポストモダンの位置にあり、中国はモダンからポストモダンへの移行期にあり、インドネシアはモダンの最終段階にあることから、西洋的でまだ画一化された安価な大量生産品が売れる、といった見方です。そして、このインドネシアの歴史的な発展段階を米国マサチューセッツ工科大学のハックス教授らの提唱するデルタモデルなる戦略論フレームワークに沿って説明しようと試みています。私は商学やマーケティングは専門外なので、このあたりでボロを出さないうちに終わっておきます。

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次に、小谷敏『怠ける権利!』(高文研) です。著者は大妻女子大学の研究者であり、社会学のご専門ではないかという気がします。本書では、19世紀末に活動したフランスの社会主義者であるラファルグの考えを基本に、1日3時間労働を提唱したり、エコノミストの間では有名なケインズの「わが孫たちの経済的可能性」にも言及しつつ、「過労死」という言葉が世界的に日本語のままで通用するようになった悲しい我が国の労働事情を勘案しつつ、タイトル通りの怠ける権利や1日3時間労働で済ませる方策について考えを巡らせています。そして、最後の方でその解決策のひとつとしてベーシック・インカムが登場します。もともとそれほど勤勉ではないというのもありますが、私も命を失うくらいであれば怠ける方がまだマシな気がします。キリスト教プロテスタント的な勤労の概念に真っ向から反論する頼もしい議論です。

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次に、ジョニー ボール『数学の歴史物語』(SBクリエイティブ) です。著者は、想像外だったんですが、コメディアンであり、テレビ司会者の仕事から数学に興味を持ったようです。ただ、惜しむらくは、確かに数学の歴史を追おうとはしているものの、数学ではない物理学や化学、あるいは、天文学などの分野が大いに紛れ込んでいるほか、ニュートンの時代くらいまでの近代レベルの数学にとどまっています。すなわち、ガウスやリーマン、あるいは、ヒルベルトなどの名前こそ触れられていますが、彼らの業績はまったくスルーされていて、リーマン積分の限界を克服したルベーグ積分については人名すら取り上げられていません。中国の数学にはホンの少しだけ触れていますが、目は行き届いていませんし、やや仕上がりが雑な気がします。

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次に、前川喜平『面従腹背』(毎日新聞出版) です。話題になったモリカケ問題の主管官庁であった文部科学省の次官経験者の半分くらいの自伝です。かなり、忠実にご自身の半生を追っていますが、間もなく定年を迎える私自身の公務員人生を振り返って、こういった人物と仕事していたら、上司であっても、部下であっても、とてもストレスが溜まったのではないか、という気がします。要するに、「面従腹背」とは私のような京都人からすれば、嘘をついている、日会員証です。でも、公務員としてのトップである事務次官まで上り詰めたわけですので、それはそれで不思議な気もします。

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次に、薬丸岳『刑事の怒り』(講談社) です。作者は売れっ子のミステリ作家であり、本書は人気の夏目刑事シリーズ最新刊です。4編の中短編から成り、それぞれのタイトルは「黄昏」、「生贄」、「異邦人」、「刑事の怒り」となっています。冒頭に収録されている「黄昏」だけは、何かのアンソロジーで読んだ記憶がありました。なお、夏目刑事は池袋から錦糸町に異動になり、表紙画像に見られる通り、スカイツリーのあるあたりをホームグラウンドにした捜査活動になります。病院での医療関係者による殺人事件など、場所には関係ないながらも、最近の社会的な事件を背景にした作品も含まれていて、相変わらず、いい出来に仕上がっています。

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次に、筒井忠清『戦前日本のポピュリズム』(中公新書) です。著者は引退したとはいえ京都大学の研究者を長らく務めた近現代史歴史学者であり、歴史社会学の方面の大家です。ここ何年かの米国のトランプ大統領の誕生や英国のBREXIT国民投票、あるいは、ドイツ以外の大陸欧州における反移民を標榜する右翼政党の進出など、ポピュリスト的な政治動向が強くなる中で、新書のタイトル通りに、戦前の我が国のポピュリズムを歴史的にひもといています。すなわち、日露戦争直後の和平を不満とする日比谷焼き打ち事件、朴烈怪写真事件、軍縮交渉に関連した統帥権干犯事件、あるいは、高校でも習うような天皇機関説などなど、最終的に国際連盟を脱退し戦争に突き進んでしまう我が国の政治的なポピュリズムの傾向を歴史的に跡づけています。

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最後に、マージェリー・アリンガム『ホワイトコテージの殺人』(創元推理文庫) です。作者は前世紀初頭の英国ビクトリ女王時代末期1904年に生まれた女性推理作家であり、この作品の舞台は1920年代後半の戦間期の英国です。1928年の出版であり、この作家のデビュー作です。とても評判が悪い、というよりも、誰からも憎まれていて殺人を犯しそうな動機ある人物が周囲にウジャウジャいる悪漢が銃で殺された犯人探しです。動機ある人物がいっぱいいますので、ホワイダニットは成り立ちそうもありませんし、テーブルクロスが焼け焦げていてテーブル上に置かれた散弾銃での殺人であってハウダニットも明らか、ということで、フーダニットだけが成り立つんですが、推理小説の初期作品で、チンパンジーだか何かのサルだかが人の入れない隙間から入り込んで密室殺人を完成させた、というのがありましたが、この作品もそれに近いです。クリスティのレベルの作品を期待して読むとガッカリします。

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