« プロ野球のレギュラーシーズン全日程を消化し統計を振り返る! | トップページ | ピュー・リサーチによる米国中間選挙前の世論調査結果やいかに? »

2018年10月16日 (火)

ニッセイ基礎研「中期経済見通し (2018-2028年度)」を読む!

先週金曜日の10月12日にニッセイ基礎研から「中期経済見通し (2018~2028 年度)」と題するリポートが明らかにされています。文字通りの約10年間の中期予想なんですが、政府の名目GDP600兆円はやや後ズレしつつも2023年度に達成される一方で、日銀の物価目標である+2%には期間中に到達しない、と示唆しています。まず、やや長くなりますが、リポートから分析結果の要旨を4点引用すると以下の通りです。

要旨
  1. 2008年秋のリーマン・ショックをきっかけとした世界金融危機が発生してから10年が経過した。先進国のGDPギャップは2018年には10年ぶりにプラスに転じる見込みだが、潜在成長率はリーマン前の水準を回復しておらず、世界経済が完全に復調したとはいえない。
  2. 今後10年間の世界経済は3%台半ばから後半の成長が続くと予想するが、米中貿易戦争が激化し、世界的に保護主義的な政策が広がった場合には、世界経済が大きく落ち込むリスクがある。
  3. 日本はすでに人口減少局面に入っているが、女性、高齢者の労働力率の上昇、外国人労働力の拡大から労働力人口は増加が続いている。今後10年程度は人口減少による経済成長への影響を過度に悲観する必要はない。2028年度までの実質GDP成長率は平均1.0%となり、過去10年平均と同程度の伸びになると予想する。名目GDPの伸びは平均2.0%となり、2023年度に政府目標の名目GDP600兆円が達成されるだろう。
  4. 消費者物価上昇率は10年間の平均で1.3%(消費税の影響を除く)と予想する。デフレに戻る可能性は低いが、日本銀行が「物価安定の目標」としている2%を安定的に続けることは難しいだろう。

ということで、リポートの全容はほぼ上の要旨に尽くされているんですが、私自身の興味の範囲で、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

photo

まず、リポートから、ヘッドラインとなる実質GDP成長率の推移のグラフを引用すると上の通りです。なお、消費税率については2019年10月に10%に、2025年4月に12%に、それぞれ引き上げられることを想定しています。2012年度と2025年度に小さな成長率の低迷があるのは、前者は2020年の東京オリンピック・パラリンピックの後の反動であり、2025年度は消費税率引き上げの影響です。リポートにも、予測期間である10年間の実質GDPの平均成長率は+1.0%と明記しています。ですから、おおむね潜在成長率に近い水準での実績成長率と私は受け止めています。グラフは引用しないものの、潜在成長率についてもリポートに示されており、足元から予測期間中ほぼほぼ+1%近傍であると見込んでいます。

photo

次に、リポートから、名目GDPと実質GDPの予測のグラフを引用すると上の通りです。名目GDPに着目すると、足元の2018年度から3年間の名目成長率は平均1.8%と見込まれており、10年間の予測期間では名目GDP成長率は平均+2.0%と予想し、名目GDP600兆円の達成は2020年ころという政府目標から2023年度までずれ込むものの、名目GDP600兆円には到達するものと見通しています。まあ、当然です。

photo

他方、日銀物価目標のコアCPI上昇率+2.0%は予測期間内には達成できず、10年間のコア消費者物価上昇率は平均+1.3%を見込んでいます。リポートから、消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測のグラフを引用すると上の通りです。東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年度にはGDPギャップは+1%程度にまで達するものの、その翌年2021年度の反動によるマイナス成長で需給バランスが悪化するという予想となっています。

photo

最後に、リポートから、経常収支の推移のグラフを引用すると上の通りです。これは私の信念みたいなものですが、私は高齢化の進展とともに経常収支は必ず赤字化すると考えています。この私の見方が裏付けられており、来年度の2019年度から貿易収支が赤字化し始め、予測期間終盤2027年度から小幅ながら経常収支は赤字化すると予想しています。

最後に、いつもニッセイ基礎研のリポートと私が意見が合うのは消費低迷の原因であり、今回のリポートでも p.12 の日本経済の見通しの冒頭ページ第3パラで「消費低迷長期化の理由として、家計の節約志向や将来不安に伴う過剰貯蓄が挙げられることも多いが、これは消費停滞の主因ではない。直近(2016年度)の家計の可処分所得は現行のGDP統計で遡ることができる1994年度よりも2.3兆円少ない。一方、2017年度の家計消費支出の水準は1994年度よりも10%以上高く、このことは家計が貯蓄を減らして消費にまわしていることを意味する。消費低迷の主因は可処分所得の伸び悩みにあると考えられる。」と指摘しています。私もまったくその通りだと考えています。

|

« プロ野球のレギュラーシーズン全日程を消化し統計を振り返る! | トップページ | ピュー・リサーチによる米国中間選挙前の世論調査結果やいかに? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ニッセイ基礎研「中期経済見通し (2018-2028年度)」を読む!:

« プロ野球のレギュラーシーズン全日程を消化し統計を振り返る! | トップページ | ピュー・リサーチによる米国中間選挙前の世論調査結果やいかに? »