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2018年10月31日 (水)

またまた減産を示す鉱工業生産指数(IIP)と反転しない消費者態度指数と成長率・物価見通しが下方修正された日銀「展望リポート」!

本日、経済産業省から9月の鉱工業生産指数(IIP) が公表されています。季節調整済みの系列で前月から▲1.1%の減産を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月の鉱工業生産、2期ぶり低下 自然災害が響く
経済産業省が31日発表した2018年7~9月期の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前期比1.6%低下し、102.1だった。低下は2期ぶり。自然災害の影響で出荷が伸びなやみ、生産を抑える動きが広がった。
低下率は1~3月期(1.3%)を上回り、14年4~6月期(3.0%)以来の大きさだった。7月の西日本豪雨や9月の台風などの自然災害が響いた。経産省は「このまま明確な低下傾向になるのか懸念される」としている。
9月の鉱工業生産指数速報値は前月比1.1%低下し、101.4だった。低下は2カ月ぶりで、速報値としては18年1月(100.7)以来の低水準だった。
QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.3%低下)を大きく下回った。
9月の生産指数は15業種のうち11業種が前月から低下し、4業種が上昇した。
鉄道車両など輸送機械工業が2.5%減、フラットパネル・ディスプレイ製造装置などはん用・生産用・業務用機械工業が1.4%減だった。鉄鋼業も3.6%減。
一方、化粧品など化学工業は2.0%増だった。橋梁など金属製品工業は2.3%増えた。
出荷指数は前月比3.0%低下の98.5だった。台風などの影響で内航海運が止まるなどし、出荷が滞った。
在庫指数は2.3%上昇の113.3だった。上昇は4カ月ぶり。生産の減少に比べ出荷減が大きく、在庫が積み上がった。在庫率指数は7.8%上昇の123.5だった。
同時に発表した、メーカーの先行き予測をまとめた10月の製造工業生産予測指数は前月比6.0%の上昇となった。災害の影響からの反動増を見込むため、経産省は生産の基調判断を「緩やかに持ち直しているものの、一部に弱さがみられる」に据え置いた。
ただ、10月は例年予測が上振れしやすい。予測指数を補正した経産省の試算値は0.9%の上昇にとどまった。11月の予測指数は10月の予測指数に比べ0.8%低下を見込む。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲0.3%の減産でしたから、実績として▲1.1%の減産はやや大きいと私は受け止めています。ただ、その分、ということなんでしょうが、先月の統計公表時に10月の製造工業生産予測調査は1.7%の増産と出ていましたが、今月は+6.0%の増産に大きく上方修正されています。9月実績値は供給面で自然災害がマイナスに影響し、すなわち、台風21号の列島縦断に加えて、北海道の地震に起因する電力供給の制約があり、さらに、台風21号に続いて24号でも関西空港が閉鎖されるという物流面での影響もありました。業種別では輸送機械工業やはん用・生産用・業務用機械工業などがマイナスの減産を示していますが、我が国のリーディング・インダストリーである自動車については北海道地震による供給制約に加えて、外需に関して9月はEUで自動車燃費基準の変更があり、8月の駆け込みの反動で新車登録数が激減したことも需要面で下方圧力として影響が出たといわれています。ただし、はん用・生産用・業務用機械工業については、先行き設備投資需要から機械受注が高い水準を続けており、それほど大きな懸念はなさそうと私は受け止めています。なお、10月の製造工業生産予測調査の+6.0%増は、予測誤差について加工を行った試算によれば+0.9%の増産と予想され、今月の減産にほぼ匹敵すると考えてよさそうです。また、四半期でならして見ても、4~6月期の前期比+1.3%の増産の後、7~9月期は▲1.6%の減産となっています。

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9月のデータが利用可能となり、四半期データが更新されましたので、上にある通り、在庫循環図を書いてみました。久し振りだという気がします。上向きピンクの矢印の2013年1~3月期から始まって、直近の2018年7~9月期の下向き黄緑矢印まで、ほぼほぼ1周半の回転を見せていて、内閣府のサイトにアップされている月例経済報告の付属資料に従えば、上のグラフの赤い点線で示した45度線が景気循環の転換点であり、現在のように第1象限のラインを左上から右下に越え、さらに第4象限に突っ込むと、「意図せざる在庫増」から「在庫調整・在庫減らし局面」にはいったと見なされて、景気の山を越えた可能性が示唆されます。この在庫循環図から考えるまでもなく、景気の現状は拡張局面の後半戦に入っていることは明らかであろうと私は考えています。そして、たぶん、あくまでたぶんですが、景気拡大の前半期と考えているエコノミストはとても少ない一方で、景気後退への転換点が迫っていると考えるエコノミストはそれなりにいそうな気もします。ついでながら、11月14日に公表予定の7~9月期のGDP統計の予想がそろそろ出始めていますが、マイナス成長の予想が多そうな気が私はしています。

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鉱工業生産指数(IIP)を離れて、本日、内閣府から10月の消費者態度指数が公表されています。▲0.4ポイント低下して43.0を記録しています。消費者マインドは先月から反転した可能性があると思っていたんですが、ガソリン高や株安が消費者心理を冷やした可能性があります。少し詳しく見ると、4項目のコンポーネントのうち、「雇用環境」、「収入の増え方」及び「暮らし向き」の3項目が前月から低下しています。いつものグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げの
影響を除くケース
 2018年度+1.3~+1.5
<+1.4>
+0.9~+1.0
<+0.9>
 7月時点の見通し+1.3~+1.5
<+1.5>
+1.0~+1.2
<+1.1>
 2019年度+0.8~+0.9
<+0.8>
+1.8~+2.0
<+1.9>
+1.3~+1.5
<+1.4>
 7月時点の見通し+0.7~+0.9
<+0.8>
+1.8~+2.1
<+2.0>
+1.3~+1.6
<+1.5>
 2020年度+0.6~+0.9
<+0.8>
+1.9~+2.1
<+2.0>
+1.4~+1.6
<+1.5>
 7月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.8>
+1.9~+2.1
<+2.1>
+1.4~+1.6
<+1.6>

最後に、本日、日銀から「展望リポート」が公表されています。2018~2020年度の政策委員の大勢見通しは上のテーブルの通りです。3か月前の7月時点の見通しから一部に少し下方修正されています。ただし、景気判断については「緩やかに拡大している」と据え置いています。

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