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2018年10月21日 (日)

秋晴れのいいお天気が続く!

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今年は自身はともかく、豪雨被害などの異常気象や台風などの自然災害による撹乱、経済社会への撹乱が多かった気がするんですが、今日は秋晴れのいいお天気で、気温もそれなりに上がりました。日本気象協会の天気予報によれば、上に画像の通り、明日も秋晴れのいいお天気が続くようです。経済、というか、消費の観点からは、夏は暑く冬は寒く、春秋は穏やかに晴れ上がり、台風などの自然災害はなく、メリハリの効いた順調なお天気が望ましいんですが、こればっかりは何ともコントロールのしようがありません。上の画像は日本気象協会のサイトから引用しています。

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2018年10月20日 (土)

今週の読書は貧困に関する経済書をはじめ計7冊!!!

今週は貧困や開発に関する重厚な経済書をはじめ計7冊、以下の通りです。これから自転車で図書館を回りますが、来週はもっと読みそうな予感です。

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まず、マーティン・ラヴァリオン『貧困の経済学』上下(日本評論社) です。著者は、それほど有名ではありませんが、貧困や途上国開発に関する経済学の現場、特に、世銀のエコノミストを長く務め、現在は米国の大学の研究者をしています。邦訳タイトルは英語の原題そのままであり、The Economics of Poverty であり、オックスフォード大学出版局から2016年に刊行されています。上下巻通しでページ数がふられており、注や参考文献を除いても800ページを超える大分な著作です。極めて包括的な貧困に関する経済学を展開しています。通常、経済学は先進国経済を対象にしているんですが、先進国における貧困だけでなく、途上国における貧困や開発の問題も幅広く取り入れています。また、標準的な経済学だけでなく、マルクス主義的な経済学の視点にも配慮しているように見受けられました。ただ、BOXと称するコラムが余りに大量にあり、読みにくくなっている感は否めません。これだけ膨大なボリュームの本を読んでおいて、いくつかのトピックを取り上げるのは気が引けるんですが、ひとつはワシントン・コンセンサスについては肯定的な評価を下しています。まあ、ワシントンにある世銀のエコノミストを長らく務めて、まさにワシントン・コンセンサスを実践していたような人物ですから当然という気もします。また、これも当然のことながら、貧困は個人の自己責任に帰すべき問題ではなくマクロ経済や法制度や社会的な慣習も含めて、幅広く原因が散在しており解決策も多岐に渡る点は強調しています。理論やモデルだけでなく、実践的な個別事案の大作なども豊富に収録されていて、私にはとても勉強になりました。ただ、貧困というよりは開発経済学なんですが、昔から疑問に思っているところで、中国の成長や貧困削減は経済学的にどのように解釈されるのか、解釈すべきか、という問題には答えてくれていません。すなわち、アセモグル-ロビンソン的な inclusive な成長ではないですし、経済が豊かになっても一向に民主主義的な方向への変化は見られません。あの国は経済学の常識が成り立たないのでしょうか?

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/ 次に、服部暢達『ゴールドマン・サックスM&A戦記』(日経BP社) です。著者は、日産の技術者からMBAに留学した後、ゴールドマン・サックスに入社し、投資銀行業務、中でも、本書のタイトル通りにM&Aを中心とする業務に携わった経験がある人物です。なぜ、日産に入社したのかはそもそも不明なんですが、本書の中心となる経験はゴールドマン・サックスで積んだようですので、それなりに興味深い経験ではあります。しかも、私と同じくらいのそれなりの年令に達した人らしくなく、それほど「上から目線」でもなく、割合と、淡々と自分の経験を基にしたM&A活動について明らかにしており、それなりに好感が持てますし、読みやすくもあります。ただ、人生観は公務員の私なんぞと違って、いわゆる「ハイリスク・ハイリターン」型の人生を思考してきたような雰囲気があり、私の理解が及ばない点も少なからずあった気がします。日本の経営については、俗説ながら、ものづくりなどの現場は一流、経営は三流、などと揶揄される場合もありますが、本書の著者はM&A案件で接した経営者、何と、郵政省の事務次官経験者の通信会社社長も含めて、決して米国と見劣りすることはないと言明し、我が国経営者の質の高さも評価しています。おそらく、私もそうなんだろうと感じています。我々公務員もそうなんですが、我が国の経営者がボンクラではここまでの経済大国にはなれなかったでしょうから、歴史によって後付かもしれませんが、我が国企業の経営者は優秀であることは証明されているように私は感じています。繰り返しになりますが、人生観や処世術などの点では、私は理解できませんし、また、仮定を重ねて「ひょっとしたら」という程度のお話しではありますが、何かの歯車が狂っていれば、本書の著者はまったく違った人生を送っていた可能性がある一方で、私のような平々凡々たる公務員は、少々の歯車の狂いには動じない可能性が高い、という点も大いに感じてしまいました。それが人生観、世界観なんだろうという気がします。
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次に、湯澤規子『胃袋の近代』(名古屋大学出版会) です。著者は筑波大学の研究者であり、出版社から判断すれば学術書のように見受けられますが、食に関する近代日本の社会史であり、私のような専門外の一般読者にも十分タメになります。私が見た範囲でも、日経新聞読売新聞毎日新聞、などで書評に取り上げられていて、それなりに注目度が高いのかもしれません。ということで、明治後期ないし大正期の20世紀に入ってからくらいの我が国の食の社会史を跡付けています。ただし、家庭における食事ではなく、学校・工場やあるいは職場の寮の共同炊事、加えていわゆる外食の範囲の一膳飯屋などのいわゆる日常食であって、高級料亭などの非日常食は残飯屋を取り上げる際に登場するくらいです。ですから、地域的には学校や工場などの集中している都市部が中心になります。「同じ釜の飯を食う」という表現がありますが、集団で喫食し、食事だけでなく、文字通り寝食をともにするといった集団生活での食の役割などにも着目しています。もちろん、カロリー摂取だけでなく、衛生面での清潔性の確保も重要ですし、明治維新からの近代化という大きな流れの中で、江戸期にはなかった学校教育の推進や産業化の進展を支える背景としての食事の役割も目配りが行き届いています。細かな点かもしれませんが、在日朝鮮人と内地人とでおかずの盛りが違うとか、大阪で香々、東京で沢庵と呼ばれる漬物があらゆる外食に欠かせなかったとか、それなりに井戸端会議で取り上げることができるトピックも豊かです。

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次に、デズモンド・モリス『デズモンド・モリスの猫の美術史』(エクスナレッジ) です。猫がペットとして飼われ出したのは古代のエジプトという説がありますが、本書では、そのエジプトの猫の少し前あたりから、猫を題材にした美術史を回顧しています。すなわち、古代の旧石器時代の猫から始まって、我が国でも有名な美術家といえるレオナルド・ダビンチを筆頭にマネ、モネ、ゴーギャン、ロートレック、クレー、ピカソ、ルソー、ウォーホルなどなどの猫の絵画を、フルカラーで収録しています。250ページ近くのボリュームに130点余りの猫の絵画を収録して、税抜きながら1900円という価格は、それなりにお買い得感もあるような気がします。ごくごく古代では人間の狩りを手助けする猫の姿も描かれていますが、気まぐれを身上とする猫のことですから、それほど人間の生産活動に役立っている姿は多くありません。中世は魔女とセットにされて迫害されたりもしていたりします。私は基本的に犬派ではなく、圧倒的に猫派であって、今年に入ってからも、3月3日付けの読書感想文で、タッカー『猫はこうして地球を征服した』を取り上げたりしていますし、なかなか本書も愛着を覚えるものです。最後になりましたが、我が日本代表として猫の絵画が取り上げられているのは、浮世絵の葛飾北斎、歌川国芳、菱田春草のほか、近代洋画家の藤田嗣治などです。

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次に、瀧澤弘和『現代経済学』(中公新書) です。著者は中央大学の研究者であり、上の表紙画像に見られる通り、本書の副題はゲーム理論・行動経済学・制度論となっています。ですから、経済学のメインストリームであるミクロ経済学やマクロ経済学にとどまらず、ゲーム理論、行動経済学や神経経済学などの大きな最近の流れを見据え、実験や制度、経済史といった重要な領域についても解説を加えています。多様化した経済社会を分析する経済学の見取り図を示すべく幅広いトピックに焦点を当てています。ただ、私は経済学には、というか、少なくともマクロ経済学には、かなりの有用性があると考える一方で、やや制約を強調しているような気もします。例えば、今週のニッセイ基礎研の中期見通しを取り上げた際に、日銀物価目標は10年しても到達しない、という結論がありましたが、そういったことです。マイクロな経済学が実験経済学の手法を含めて、さまざまな展開をしている一方で、マクロ経済学は政策科学として万能ではないのは当然としても、少なくとも、雇用の確保などでは国民生活に大きな寄与をしている点は忘れるべきではありません。最後に、大きな経済学の流れを展開するには、新書という媒体は良し悪しなんですが、コンパクトに理解するには決して悪くないような気がします。

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最後に、<" title="ジェフリー・アーチャー『嘘ばっかり』(新潮文庫)">ジェフリー・アーチャー『嘘ばっかり』(新潮文庫) です。作者はご存じの英国の国会議員であり、売れっ子の小説家です。この作品は15編の短編を収録していて、それぞれ、時代背景が決して同じではなく、地域的にも欧州内ではありますが、英国にとどまらずフランスやイタリアなどなど多彩な短編を収録しています。特に、今までにない趣向としては、オー・ヘンリーの「運命の道」のように、作家が結末をひとつに決めかねて、3つの結末を用意した「生涯の休日」が目立ちます。ただ、オーヘンリーの短編と違い、というか、短編で有名なサキに近く、すべてがハッピーエンドで終わるわけでもなく、かなり皮肉の効いた仕上がりとなっています。私が最初にこの作家の連作短編集で読んだ『100万ドルを取り返せ!』のように、脱法的に金儲けをする短編、例えば、「上級副支店長」なんかも印象的でしたが、欧州各国の国際性や戦争と平和について考えさせられる「コイン・トス」が本書では私の一番のお気に入りかもしれません。

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2018年10月19日 (金)

消費者物価(CPI)上昇率はエネルギー価格上昇により+1%に到達!

本日、総務省統計局から9月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。でみて、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月からやや上昇幅を拡大して+1.0%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の全国消費者物価、1.0%上昇 原油高でエネルギー価格が上昇
総務省が19日発表した9月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合が101.3と前年同月比1.0%上昇した。上昇は21カ月連続。原油高の影響で、エネルギー価格が上昇した。
上昇率が1%台となるのは今年2月以来。総務省は「緩やかな上昇傾向は変わらない」とみている。
生鮮食品を除く総合では、上昇は全体の50.9%にあたる266品目だった。電気代やガソリン代が上がった。秋冬物の衣料品の価格も、前年に比べて上昇した。
下落は186品目、横ばいは71品目だった。
生鮮食品を含む総合は101.7と1.2%上昇した。8月の天候不順でトマトなど生鮮野菜が値上がりした。一部乳製品も引き続き高い。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIは101.1と前年同月比0.4%上昇した。欧州向け旅行が好調で、外国パック旅行費が上昇した。
ただ、携帯電話の通信料は下落率が拡大した。大手通信会社の割安な料金プランの導入に加え、格安スマートフォン事業者が実質的な値下げを実施した。生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIの上昇幅は8月(0.4%上昇)と同水準にとどまった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIは前月比で同水準だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、コアCPIの前年同月比上昇率で+1.0%でしたので、ジャストミートしました。企業物価についても同様の理由、すなわち、国際商品市況における石油価格の上昇の影響などから、7月、8月、9月と3か月連続での企業物価のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率が+3%を記録する一方で、消費者物価(CPI)の上昇ペースもやや加速しています。ただ、物価上昇がマイナスを続けるデフレ脱却はまだしも、日銀のインフレ目標である+2%とはまだ差があります。加えて、物価動向について考えるべき点が2点あります。第1に、先行き物価の動向については、先々月のブログで取り上げたように、携帯電話通信料の4割引き下げ、さらに、教育の無償化により物価上昇幅が大きく下振れする可能性があります。この点は先々月8月24日付けのブログで詳しく論じています。第2に、エコノミストはついつい日銀の物価目標のターゲットである生鮮食品を除くコアCPI上昇率に目が行きがちなんですが、実は、台風などの自然災害もあって、家計が実際に直面する生鮮食品を含むヘッドラインのCPI上昇率はコアCPI上昇率よりも高い点は忘れるべきではありません。すなわち、ヘッドラインCPI上昇率は8月+1.3%、9月+1.2%となっています。別の観点から、グラフは省略しますが、9月の前年同月比で見て、ぜいたく品に近い選択的支出に相当する物価上昇が+0.3%であるのに対して、国民生活に必要度合いの高い基礎的支出に相当する物価上昇が+2.1%となっており、また、月間1回程度以上購入する財・サービスの上昇率が+3.1%と月間1回程度未満の+0.8%を上回っており、おそらく、生活実感として物価上昇が統計よりも大きく受け取られている可能性が大きいんではないか、と私は懸念しています。もしそうだと仮定すれば、生活実感の物価上昇の高さに起因して消費が伸び悩む可能性もあります。この懸念を払しょくする必要十分条件は、物価統計とは別の次元ながら、賃金の上昇であることはいうまでもありません

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2018年10月18日 (木)

22か月振りに輸出が前年比マイナスを記録した9月の貿易統計について考える!

本日、財務省から9月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲1.2%減の6兆7266億円、輸入額は+17.0%増の6兆5871億円、差引き貿易収支は+1396億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の輸出、22カ月ぶり減 自動車や通信機など振るわず 貿易統計
財務省が18日発表した9月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1396億円の黒字だった。QUICKがまとめた民間予測(中央値は528億円の赤字)に対して3カ月ぶりの黒字となったが、前年同月と比べた黒字額は78.7%減少した。自動車や通信機などが振るわず、輸出が22カ月ぶりに減少した。原油高を背景にした輸入額の増加も続いた。
輸出額は前年同月比1.2%減の6兆7266億円だった。オーストラリア向け自動車や中国向け通信機などのマイナス寄与度が大きかった。米国向けの鉄鋼も大幅に減少した。
輸入額は同7.0%増の6兆5871億円。6カ月連続で増加した。サウジアラビアからの原粗油やオーストラリアからの液化天然ガス(LNG)が伸びた。原粗油の円建て輸入単価は49.7%上昇した。
財務省の担当者は「台風21号による関西国際空港(関空)の閉鎖で貨物輸送に影響が出た」と説明した。同省によると、関空の同月の輸出額は58.0%減の2336億円、輸入額は70.8%減の1061億円だった。
9月の対米国の貿易収支は5903億円の黒字で、黒字額は4.0%減少した。減少は3カ月連続。輸出は建設用・鉱山用機械などが振るわず0.2%減、輸入は原粗油やLNGなどが伸びて3.1%増となった。
対中国の貿易収支は3702億円の赤字だった。輸出は1.7%減と7カ月ぶりに減少した。
9月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=111円13銭。前年同月に比べて1.5%円安・ドル高に振れた。
同時に発表した2018年度4~9月の貿易収支は2220億円の黒字だった。ただ、黒字額は前年同期に比べ88.1%減少した。輸出は半導体等製造装置などの伸びで5.2%増、輸入は原油高などを背景に10.0%増となった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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引用した記事にもある通り、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、輸出額がマイナスで輸入額はプラスながら、差し引きの貿易収支は3か月振りの黒字を記録しています。ただ、上のグラフの下のパネルの季節調整済みの系列で見れば、輸出入ともに前月から減少しているのが見て取れます。もちろん、米中間の貿易摩擦に伴う世界貿易の縮小が早くも我が国の貿易に現れた、というわけでもないんでしょうが、世界的に先進国経済が景気拡大局面の成熟化が進み拡大テンポがかなり低下している、ハッキリいえば、景気後退が近づいている可能性がある、というのは事実なんだろうと受け止めています。そして、その唯一の原因ではないでしょうが、少なくとも、世界的な貿易摩擦が世界景気の下振れリスクをより大きくしているのも事実であろうと考えるべきです。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。引用した記事にもある通り、季節調整していない原系列の統計で見て、輸出がほぼ2年振り、すなわち、22か月振りに前年比マイナスを記録しています。先月の貿易統計を取り上げたブログでは「21ヶ月連続で前年比で伸びています」と書いた記憶がありますが、とうとうその連続の伸びも終わったわけです。上のグラフの真ん中のパネルに見るように、先進国経済の拡大テンポの低下が大きくなっており、我が国輸出への影響に関しては、一番下のパネルに見るような中国経済の拡大が先進国の減速に追いつかなくなっている、ということなんだろうと私は受け止めています。

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最後に、貿易統計ともやや関係して、一昨日10月16日に世界経済フォーラムから 2018 Global Competitiveness Index 4.0 が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされていますが、上の画像はトップ10を世界経済フォーラムのインフォグラフィックスから引用しています。米国、シンガポール、ドイツ、スイスに次いで、我が国は世界競争力ランキングの5位に入っています。

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2018年10月17日 (水)

ピュー・リサーチによる米国中間選挙前の世論調査結果やいかに?

来月の米国中間選挙 Midterm を前に、米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから一昨日10月15日付けで、Little Partisan Agreement on the Pressing Problems Facing the U.S. と題する調査結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。タイトル通りに、トランプ米国大統領の与党共和党と野党民主党の間で、米国の直面する課題に対する合意は余りないようです。以下、ピュー・リサーチのサイトから両党の候補者を明記して比較したグラフをいくつか引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから With few exceptions, wide partisan differences over the seriousness of problems facing the United States を引用しています。すなわち、米国の直面する課題のうちで重要と考えるものを上げてあります。上から4項目、すなわち、マイノリティの扱い、気候変動、銃犯罪、貧富の格差、さらに、一番下の違法移民の計5項目で両党の候補者の間で 'very big' problem と考える差が50%超と大きくなっています。もちろん、上の4項目は民主党候補が重要と考える一方で、一番下の違法移民だけは共和党候補の方が重要と捉えています。また、差は大きくないんですが、薬物中毒、連邦政府赤字、テロなどでは共和党候補が民主党候補を上回って重要視しているのが見て取れます。

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次に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Partisan differences in self-described identities and affiliations を引用しています。すなわち、候補者自分自身のアイデンティティや所属です。やはり目立つのが、一番上のライフル協会への指示で、共和党候補者が民主党候補者を大きく上回っており、逆に、一番下のフェミニストという点では民主党候補者が共和党候補者を大きく上回っています。米国の伝統的な価値の保有とか典型的米国人と自分自身を位置付けている候補者は、やや共和党が民主党を上回っているものの、いずれも50%を超えていて多数派といえます。他方、既婚者が私の感覚では少ないような気がしますし、典型的米国人はもっと毎週教会に通っているのかと思っていました。

今回の調査結果では、候補者だけでなく両党の支持者の属性などについても分析していて、"Wide education divide among Democratic voters in shares saying it really matters who wins in 2018" すなわち、民主党支持者の間では高学歴になるほど今回の米国中間選挙の重要性が高いと考えている、などの結果が明らかにされています。いつもの通り、経済評論のブログに分類しておきます。

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2018年10月16日 (火)

ニッセイ基礎研「中期経済見通し (2018-2028年度)」を読む!

先週金曜日の10月12日にニッセイ基礎研から「中期経済見通し (2018~2028 年度)」と題するリポートが明らかにされています。文字通りの約10年間の中期予想なんですが、政府の名目GDP600兆円はやや後ズレしつつも2023年度に達成される一方で、日銀の物価目標である+2%には期間中に到達しない、と示唆しています。まず、やや長くなりますが、リポートから分析結果の要旨を4点引用すると以下の通りです。

要旨
  1. 2008年秋のリーマン・ショックをきっかけとした世界金融危機が発生してから10年が経過した。先進国のGDPギャップは2018年には10年ぶりにプラスに転じる見込みだが、潜在成長率はリーマン前の水準を回復しておらず、世界経済が完全に復調したとはいえない。
  2. 今後10年間の世界経済は3%台半ばから後半の成長が続くと予想するが、米中貿易戦争が激化し、世界的に保護主義的な政策が広がった場合には、世界経済が大きく落ち込むリスクがある。
  3. 日本はすでに人口減少局面に入っているが、女性、高齢者の労働力率の上昇、外国人労働力の拡大から労働力人口は増加が続いている。今後10年程度は人口減少による経済成長への影響を過度に悲観する必要はない。2028年度までの実質GDP成長率は平均1.0%となり、過去10年平均と同程度の伸びになると予想する。名目GDPの伸びは平均2.0%となり、2023年度に政府目標の名目GDP600兆円が達成されるだろう。
  4. 消費者物価上昇率は10年間の平均で1.3%(消費税の影響を除く)と予想する。デフレに戻る可能性は低いが、日本銀行が「物価安定の目標」としている2%を安定的に続けることは難しいだろう。

ということで、リポートの全容はほぼ上の要旨に尽くされているんですが、私自身の興味の範囲で、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから、ヘッドラインとなる実質GDP成長率の推移のグラフを引用すると上の通りです。なお、消費税率については2019年10月に10%に、2025年4月に12%に、それぞれ引き上げられることを想定しています。2012年度と2025年度に小さな成長率の低迷があるのは、前者は2020年の東京オリンピック・パラリンピックの後の反動であり、2025年度は消費税率引き上げの影響です。リポートにも、予測期間である10年間の実質GDPの平均成長率は+1.0%と明記しています。ですから、おおむね潜在成長率に近い水準での実績成長率と私は受け止めています。グラフは引用しないものの、潜在成長率についてもリポートに示されており、足元から予測期間中ほぼほぼ+1%近傍であると見込んでいます。

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次に、リポートから、名目GDPと実質GDPの予測のグラフを引用すると上の通りです。名目GDPに着目すると、足元の2018年度から3年間の名目成長率は平均1.8%と見込まれており、10年間の予測期間では名目GDP成長率は平均+2.0%と予想し、名目GDP600兆円の達成は2020年ころという政府目標から2023年度までずれ込むものの、名目GDP600兆円には到達するものと見通しています。まあ、当然です。

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他方、日銀物価目標のコアCPI上昇率+2.0%は予測期間内には達成できず、10年間のコア消費者物価上昇率は平均+1.3%を見込んでいます。リポートから、消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測のグラフを引用すると上の通りです。東京オリンピック・パラリンピック開催の2020年度にはGDPギャップは+1%程度にまで達するものの、その翌年2021年度の反動によるマイナス成長で需給バランスが悪化するという予想となっています。

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最後に、リポートから、経常収支の推移のグラフを引用すると上の通りです。これは私の信念みたいなものですが、私は高齢化の進展とともに経常収支は必ず赤字化すると考えています。この私の見方が裏付けられており、来年度の2019年度から貿易収支が赤字化し始め、予測期間終盤2027年度から小幅ながら経常収支は赤字化すると予想しています。

最後に、いつもニッセイ基礎研のリポートと私が意見が合うのは消費低迷の原因であり、今回のリポートでも p.12 の日本経済の見通しの冒頭ページ第3パラで「消費低迷長期化の理由として、家計の節約志向や将来不安に伴う過剰貯蓄が挙げられることも多いが、これは消費停滞の主因ではない。直近(2016年度)の家計の可処分所得は現行のGDP統計で遡ることができる1994年度よりも2.3兆円少ない。一方、2017年度の家計消費支出の水準は1994年度よりも10%以上高く、このことは家計が貯蓄を減らして消費にまわしていることを意味する。消費低迷の主因は可処分所得の伸び悩みにあると考えられる。」と指摘しています。私もまったくその通りだと考えています。

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2018年10月15日 (月)

プロ野球のレギュラーシーズン全日程を消化し統計を振り返る!

土曜日から両リーグのクライマックスシリーズというポストシーズンのゲームが始まり、セリーグではジャイアンツが第2ステージ進出を決めています。他方、先日の中日戦で阪神タイガースはレギュラーシーズンを終えています。まあ、首位打者とか、ホームラン王とか、最優秀防御率なんぞは最下位チームの阪神の選手には何の関係もなかったようなんですが、プロ野球機構(NPB)からプロ野球の観客動員数などの統計が明らかにされています。

チーム名入場者数1試合平均平均前年比
広島東洋カープ2,232,10031,001+1.1%
東京ヤクルトスワローズ1,927,82227,152+5.0%
読売ジャイアンツ3,002,34741,699+0.1%
横浜DeNAベイスターズ2,027,92228,166+1.0%
中日ドラゴンズ2,146,40630,231+8.3%
阪神タイガース2,898,97640,831▲3.1%

NPBのリポートから一部を抜き出して取りまとめると上のテーブルの通りです。
ある程度は見れば明らかなんですが、セリーグ全体として史上最多を記録し、2年連続で1400万人突破という中で、広島と横浜はともに球団史上最多を記録し、特に、横浜は初めて200万人を突破しています。ジャイアンツも昨年2017年は2,958,890人と300万人を割り込みましたが、今年2018年は2年振りに300万人に達しています。そして、巨大なキャパの甲子園球場を持っていながら、我が阪神だけが昨年から観客動員数を減少させています。昨年2017年は全入場者数が3,034,626人に達し、セリーグの中で唯一300万人超えを誇っていたんですが、今年2018年は300万人を大きく割り込み、全入場者数では▲4.5%減、試合数が減った分を勘案した1試合平均でも上のテーブルにあるように▲3.1%減と、今年のタイガース野球の魅力が低下したのは統計からも明らかです。監督が交代する来季に向けて、面白さも含めて結果の出せる野球を望みたいと思います。ファンはちゃんと見ているのかもしれません。

来年こそは、
がんばれタイガース!

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2018年10月14日 (日)

甲田まひるのデビュー・アルバム「Plankton」はややビミョーな評価か?

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このところ、新しいアルバムを聞いていなかったんですが、先週は甲田まひるの「Plankton」を聞きました。16歳だか、17歳だかの10代女子高生のピアノを中心とするピアノトリオの演奏です。まず、アルバムの曲の構成は以下の通りです。

  1. Un Poco Loco (Bud Powell)
  2. Cleopatra's Dream (Bud Powell)
  3. Indiana (take 1) (James F. Hanley)
  4. Indiana (take 3) (James F. Hanley)
  5. Ruby、My Dear (Thelonious Monk)
  6. Plankton
  7. Celia (Bud Powell)
  8. Tempus Fugit (Bud Powell)
  9. Lady Bird (Tadd Dameron)
  10. Lament (J.J. Johnson)
  11. Ask Me Now (Thelonious Monk)
  12. My Crush

ずらりと12曲の中で4曲、⅓ はバド・パウエルの作品が並びます。バド・パウエル以外は、カッコ内に示してある通り、3曲目と4曲目がジェームズ・ハンリー、5曲目と11曲めがセロニアス・モンク、9曲目はタッド・ダメロン、10曲目がJ.J.ジョンソン、そして、無印の6曲目と最後の12曲目が甲田まひるのオリジナルとなっています。
バド・パウエルに何らかの思い入れのようなものがあるような気もしますが、私の耳にはセロニアス・モンクの曲の方がピアノの出来はいいように思われました。今年2018年5月の発売で、このピアニストのメジャーデビュー作です。発売時点で、「17歳の誕生日前夜」と宣伝文句にありましたから、高校生ということかもしれません。ですから、2001年生まれの奥田弦は同い年かもしれません。小学生くらいでデビューした奥田弦は例外としても、松永貴志もデビュー時点の年齢はそんなもんだったような気がします。デビュー作品から2-3枚目のアルバムの時点の松永貴志と比較するのは反則、というか、酷かもしれませんが、少なくとも、私は松永貴志の方が完成度高いピアノだったと記憶しています。まあ、何といいましょうか、Mappyとして世界中に14万人を超えるフォロワーを持つインスタグラムのファッショニスタとしての知名度も加味した評価で判断するんですかね。私は松永貴志のデビュー翌年の2作目のアルバム「Today」はウォークマンに入れて愛聴していますが、この甲田まひるの「Plankton」はビミョーなところです。トリオを組んだドラムスの石若駿は私が前々から評価している若手なんですが、ややブラッシングが多かった気がします。

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2018年10月13日 (土)

今週の読書はちゃんとした経済書はなく計7冊!

先週はティロル教授の重厚な経済書を読み、来週に予定している読書の本はすでに図書館回りを終えていて、ラヴァリオン教授の『貧困の経済学』上下を借りましたから、またまた重厚な経済書に取り組む予定で、今週はその谷間でマトモな経済書はなし、ということなのかもしれませんが、数はこなした気がします。以下の計7冊です。

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まず、橘木俊詔『ポピュリズムと経済』(ナカニシヤ出版) です。著者はご存じの通り、私の母校である京都大学経済学部の名物教授だった経済学研究者です。本来は労働経済学などのマイクロな分野が専門と記憶していますが、ご退官の後は、幅広く論評活動を繰り広げているようです。ということで、タイトル通りの内容なんですが、英国のBREXITの国民投票とか、大陸欧州における極右政党の伸長とか、何よりも、米国におけるトランプ政権の誕生とかの話題性を追って、ポピュリズムについて論じています。でも、本書こそがポピュリズム的な内容である点には著者ご本人は気づいていないようで、何か「もののあわれ」を感じてしまいます。ポピュリズムについて、典型的には、私はナチスを思い浮かべるんですが、著者は、その昔の「左右の全体主義」よろしく、南米のペロン大統領や最近までのチャベス政権などを念頭に、左翼のポピュリズムの存在も視野に入れたと称しつつ、右派の米国トランプ政権やすランスの国民戦線ルペン党首などの極右政党についても、左右両方のポピュリズムと称して同一の切り口で論じようとムチャなことを試みて失敗しています。どうしてムチャかといえば、右翼的なナショナリズムが内向きで排外的で、そして何よりも、ポピュリズムの大きな特徴である多元主義の排除と極めて大きな親和性がある一方で、左翼はインターナショナリストであり外向きで体外許容性に富んでいます。まさに多元主義の権化ともいえます。ナチス的な雇用の重視を持って、著者はポピュリズムの特徴と捉えているようですが、笑止千万です。俄勉強でポピュリズムを論じると、このような本が出来上がるという見本のような気がして、私も肝に銘じたいと思います。

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次に、稲葉振一郎『「新自由主義」の妖怪』(亜紀書房) です。著者は明治学院大学の研究者であり、社会哲学が専門だそうです。本書では、マルクス主義的な歴史観、すなわち、唯物史観を持って新自由主義の資本主義の段階を解明しようと試みていますが、私の目からは成功しているように見えません。19世紀後半にマルクスが大英博物館にこもって『資本論』を書き上げた時点では、ビクトリア時代の大英帝国がもっとも発達した資本主義国家であり、マルクス主義的な歴史観からすれば、資本主義から社会主義に移行する場合、もっとも発展した段階にある資本主義国が社会主義に移行するのが必然と考えられます。しかし、英国に社会主義革命は起こらず、レーニンの分析によれば独占資本が支配的とな理性産物だけではなく資本の輸出が行われるような帝国主義の段階が資本主義最後の段階であり、社会主義の前夜とされるようになります。さらに、まったく発達した資本主義ではなかったロシアとか中国で革命が成功して社会主義に移行し共産主義を目指すことに歴史的事実としてなるわけですが、他方で、欧米や日本などの先進国ではスミスなどの古典派経済学的な夜警国家を超えて、不況克服などのために、あるいは、いわゆる市場の失敗の是正のために、国家が積極的に資本主義に介入して国家独占資本主義が成立します。資本の側からはケインズ政策を応用した福祉国家の成立とみなされます。そして、1970年代の2度の石油危機と同時にルイス的な二重経済が終わりを告げて、典型的には日本の高度成長期が終了して、ケインズ政策の有効性が疑問視されて、1980年ころから英国のサッチャー政権、米国のレーガン大統領、日本の中曽根内閣などにより新自由主義的な経済政策、あるいは、その背景となるイデオロギーが幅を利かせ始めます。こういった歴史的事実に対して、本書の著者は、極めて唐突にも、産業社会論を持ち出したり、ケインズ政策への賛否などを考察した上で、マルクス主義的な歴史観と新自由主義の背景に同一とまではいわないものの、かなり似通った要因が潜んでいると指摘します。私には理解できませんでした。マルクスのように英国に発達した資本主義の典型を見たり、あるいは、レーニンのように資本輸出に特徴づけられた帝国主義が資本主義の最終段階であり社会主義の前夜であると見たりするのは、それぞれの個人の歴史的なパースペクティブにおける限界であり、生産力の進歩が見られる限り、何と名付けようと、どのような特徴を持とうと、資本主義は生き残りを図るわけですから、おのおのの観察者のパースペクティブに限定されることにより、資本主義の最終段階=社会主義の前夜を設定するかは異なるはずです。この自明の事実を理解せずに、教条的にマルクス主義的な歴史観からして、どの段階が資本主義の最終段階=社会主義の前夜かを論じるのはまったく意味がないと私は考えます。

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次に、グレゴワール・シャマユー『ドローンの哲学』(明石書店) です。著者はフランスの国立科学研究所の研究者であり、専門は科学哲学だそうです。原書のフランス語の原題は Théorie du drone であり、直訳すれば「ドローンの理論」となり、2013年の出版です。タイトルはかなり幅広い門構えになっているんですが、本書で焦点を当てているのはドローンの軍事利用、しかも、ほとんど偵察は取り上げておらず、殺人や破壊行為に限定しているように私は読みました。もちろん、こういった戦争や戦闘における殺人や破壊行為にドローンを用いる非人道的な面を強調し、強く非難しているわけです。ただ、私から見て戦争や戦闘そのものが大きく非日常的な非人道的行為であり、そこで用いられる兵器ないし何らかの道具は非人道的な色彩を帯びざるを得ないという気がします。銃でもって人を殺せば殺人罪に問われる法体系の国が多いと私は推察しますが、戦争において戦時法体系化で銃器で敵国の兵隊を殺せば、あるいは、勲章をもらうくらいに推奨ないし称賛される行為となり得る可能性があります。ですから、通常の刑法の体系とはまったく異なる戦争法規があり、実感はないものの、軍法会議という裁判形態があることはよく知られた通りです。加えて、銃器や戦闘機、軍艦などは戦争や戦闘に特化した兵器である一方で、とても非人道的に見える究極の兵器としては核兵器があり、これはその爆発力を平和利用することも可能です。もちろん、核兵器を平和利用した原子力発電その他であっても、事故の際の甚大な破壊的影響は残るとの意見はあり得ますが、ドローンは平和利用がより可能、というか、そのような破壊的な危険が極めて小さい道具といえます。その意味で、平和利用ではなく、ドローンを戦争や戦闘で利用する非人道性を強く非難すべきであると私は考えており、本書の著者の視点とのズレが大きいと感じました。

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次に、デイヴィッド・ライク『交雑する人類』(NHK出版) です。著者はハーヴァード大学医学大学院の遺伝学を専門とする研究者であり、ヒト古代DNA分析における世界的パイオニアといえます。本書の英語の原題は Who We Are and How We Got Here であり、今年2018年の出版です。日本語タイトルからは判りにくいんですが、要するに、現生人類ホモサピエンスないしその直前くらいのネアンデルタール人やデニソワ人などの旧人類を視野に入れ、現生人類の起源について、地球上でいかに移動し接触し交雑したか、特に、ホモサピエンスの出アフリカ以降の移動・接触・交雑を追って考察しています。ただ、本書でも指摘していますが、DNA分析でなく文化的な考古学的出土品、例えば、土器とか石器を研究対象とする場合、ヒトが移動したのか、それとも、その文化が伝えられたのかの識別が困難なんでしょうが、DNAで直接分析を実施するとヒトが移動し、かつ、邦訳タイトルにあるように、新旧人類間での接触と交雑があったのかどうかが明確に把握できます。その結果、交雑の中で遺伝的な特徴を失ってしまったゴースト集団の動向も含めて、とても興味深い事実が多数提示されています。加えて、第2部では地域別にヨーロッパ、インド、アメリカ、東アジア、アフリカにおける人類史をひも解いています。そして、やや論争的なのが第3部です。現生人類はホモ・サピエンスの1種であるのに対して、いわゆる人種がいくつか観察されるのも事実であり、白人もしくはコーカソイド、黒人もしくはネグロイド、そして、モンゴロイド、とあり、加えて、ナチスの時代に遺伝学はアーリア人の支配を正当化するために大きく歪められた、という歴史があるのも事実です。本書ではそれほど取り上げていませんが、旧ソ連でもスターリン的に歪められた遺伝学の系譜があったような気もします。本書の著者は、人種は遺伝的な特徴を備えた側面もあり、決して100%社会的なものではない、と考えているように私は読みましたが、本書が強調しているのは、人類集団間において些細とはいえない遺伝学的差異がある、ということであり、これは、人類集団間には実質的な生物学的差異はなく、集団内の個人間の差異の方がずっと大きい、とする「正統派的学説」とは異なります。さらにいえば、「政治的正しさ」ポリティカル・コレクトネスに反していると解釈されても不思議ではありません。トランプ政権下の分断的な米国政治情勢下では許容される可能性が大きくなった気もしますが、私にはやや気にかかりました。

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次に、ジム・アル=カリーリ[編]『サイエンス・ネクスト』(河出書房新社) です。我が家は5分も歩けば県境を超えて埼玉県に行けるような位置にあるんですが、その隣接の埼玉県にある市立図書館の新刊書コーナーに借りてもなく並べてあったので、ついつい手が伸びてしまいました。英語の原題は What's Next? であり、2017年の出版です。編者は英国の物理学の研究者であるとともに、テレビやラジオの科学番組のキャスターを務めているようです。ということで、第1部の人口動態や気候変動などの経済学とも馴染みの深い分野から始まって、第2部の医療や遺伝学、第3部の細菌話題のAIや量子コンピューティングやインターネット上の新技術、第4部の素材や輸送やエネルギー、第5部の惑星間航行やタイムトラベルや宇宙移民といったSFに近い話題まで、世界の科学者はいま何を考えているのか、幅広い分野の科学者たちが極めて判りやすく解説しています。内容がとても多岐に渡っていますので、私のような科学とはやや縁遠く専門分野の異なる人にも、何らかの興味ある部分が見い出せそうな気がします。英語の原題を見ても理解できる通り、邦訳タイトルとは少しニュアンスが違っていて、科学だけでなく社会動向や工学を含め、さらに、惑星間航行に基づく宇宙移民といったSFに近いようなトピックも含めていて、とても幅広く興味深い話題を集めています。私のようなエコノミストからすれば、社会の生産や生活に及ぼす技術動向が気にかかるところで、特に、AIなどが雇用に及ぼす影響などがそうです。現在までは新技術は雇用を奪う以上に新しい雇用を生み出してきており、ですから、歴史的に振り返ればラッダイト運動などは「誤った方向」だったと後付で言えるんですが、現在進行形のITC技術革命、2045年と言われているシンギュラリティの到達などなど、気にかかるところです。本書をちゃんと読めば何かのインスピレーションを得られるような気がします。

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次に、ドナルド R. キルシュ & オギ・オーガス『新薬の狩人たち』(早川書房) です。英語の原題は The Drug Hunter であり、邦訳タイトルはかなり忠実に原題を伝えていると考えてよさそうです。著者2人は、そのドラッグハンターとジャーナリストの組み合わせです。経済学は、数学を用いた精緻なモデル設計によって物理学や化学と親和性が高い一方で、医学や薬学とは作用の経路や因果関係が不明ながら経験的な数量分析により効果が計測できるという類似性も持っていると私は考えています。もちろん、私の専門に近い経済社会の歴史的な発展を生物的な進化に見立てる場合もあります。ということで、私は他のエコノミストと違って医学や薬学の本も読書の対象に幅広く含めていて、本書のその一環です。本書では近代以降における薬、特に新薬発見の歴史を植物由来の薬、合成化学から作る薬、ペニシリンなどの土壌に含まれる微生物から抽出した薬、そして最近のバイオ創薬まで、場は広く薬が生まれた歴史を跡付けています。アスピリンが初めて患者に投与されてから70年超の年月を経てようやく受容体が特定された、などなど、どうして薬が効くのか、その作用機序が明らかでなくても、何らかの実験により統計的に薬効が認められるか脳性が大きく、そこが実験のできない経済学、というか、マイクロには実験経済学という分野が広がっているものの、景気変動に関して財政学や金融論を中心としてマクロ経済への影響という点では実感が不可能な経済学とは違うところです。もちろん、経済学に引きつける必要はありませんが、薬の歴史についてのちょっとした豆知識的な話題を集めています。ただ、日本ではほとんど存在を感じさせませんが、クリスチャン・サイエンスのように医学的な治療や薬物の摂取を拒否する宗教も、例えば、米国では大きな違和感なく社会的存在として認められていますので、その点は忘れるべきではないかもしれません。

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最後に、市田良彦『ルイ・アルチュセール』(岩波新書) です。フランスのマルクス主義哲学者であるタイトルのアルチュセールに関する本であることは明らかなんですが、それをイタリア的なスピノザの視点から解き明かそうと試みています。すなわち、アルチュセールについては、偉大な哲学者という側面と妻を殺めた狂気の人という両面の評価があり、まったく同時に、マルクス主義に立脚している一方でカトリック信者であることを止めなかった、という両面性も考える必要があります。マルクス主義といえば、あるいは、そうなのかも知れませんが、私から見れば、アルチュセールはマルクス主義の本流を大きく外れるトロツキストの理論的基礎を提供しているような気がしてなりません。それは、フランスの構造主義、あるいは、ポスト構造主義に立脚するマルクス主義がかなりの程度にそうなのと同じかもしれません。本書で特にスポットを当てているアルチュセールの研究成果は『資本論を読む』であり、誠に残念ながら、フランス語を理解しない私にとっては邦訳が1989年であり、すっかり社会人になってからの時期の出版ですので、手を延ばす余裕もなく、よく知りません。なお、本書の著者は神戸大学をホームグラウンドとする研究者であり、私の母校での1年先輩、すなわち、浅田彰と同門同学年ではなかったかと記憶しています。参考まで。

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2018年10月12日 (金)

帝国データバンクによる「人手不足倒産」の動向調査の結果やいかに?

今週火曜日10月9日に帝国データバンクから「人手不足倒産」の動向調査の結果が明らかにされています。年度上半期の9月までの件数や負債総額などが入手可能となっています。負債総額は減少しているものの、倒産件数は前年同期比+40.7%の大幅増を示し、2年連続で前年同期を上回っており、2013年度の調査開始以降で半期ベースの最多を更新し、年度通期で初めて100件を超えた昨年2017年度(114件)を上回るペースで倒産が発生しています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果を5点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 2018年度上半期(2018年4~9月)の「人手不足倒産」は76件発生し、負債総額は110億4200万円にのぼった。件数は前年同期比40.7%の大幅増となり、2年連続で前年同期を上回った。調査開始以降、半期ベースの最多を更新し、年度通期で初めて100件を超えた2017年度(114件)を上回るペースで発生
  2. 負債規模別件数を見ると、「1億円未満」が45件と過半を占め、前年同期(22件)の2倍に
  3. 業種別件数を見ると、「サービス業」が前年同期比73.3%の増加で、最多の26件を占めた
  4. 業種細分類別の5年半累計件数では、「道路貨物運送」が38件(2018年度上半期12件、前年同期4件)で最多。以下、「老人福祉事業」は27件、「木造建築工事」は26件、「労働者派遣」は21件と続いた
  5. 都道府県別の5年半累計では、「東京都」が62件(2018年度上半期13件、前年同期5件)で突出している

pdfの全文リポートもアップされており、図表をいくつか引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフは、リポートから人手不足倒産の件数を引用しています。見れば明らかなんですが、2018年度上半期の人手不足倒産は76件発生しており、負債総額は110億42百万円に上っています。この期間で、負債総額は前年同期から▲42.3%の減少を示しているものの、倒産件数は+40.7%の大幅増を記録しています。帝国データバンクでは、2013年度から人手不足倒産の記録を取り始めているんらしいんですが、2018年度上半期までの5年半の期間で、人手不足倒産は累計447件、負債総額は946億95百万円に上っています。

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2013年度からの5年半の期間の人手不足倒産を産業別に見ると、累計の最多は建設業で148件、33.1%となっていて、サービス業が132件、29.5%でこれに続き、この2業種で全体の62.6%を占めています。上のグラフは、リポートから5年半の期間でのもう少し細かい業種細分類別上位10業種を取り上げています。何となく判る気がするんですが、道路貨物運送が累計で38件で最多となっています。通販市場の拡大などで配送需要が高まる中、ドライバー不足による新規受注難から資金繰りの悪化に陥り、倒産に至ったケースが目立つようです。続いて、老人福祉事業は、介護福祉士やケアマネジャーなどの有資格者の確保が追い付かず、十分なサービスを提供できないなどの理由から5年半で27件発生しています。

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最後に、上のグラフは、リポートから5年半の累計で見た都道府県別の人手不足倒産の件数を示しています。こういった経済事案では規模に連動する場合が多く、東京都がトップなのは当然という気もします。少子高齢化の進行により、人手不足はこの先も一定の期間に渡って継続する可能性が高く、それなりの経営努力が求められるとはいえ、ますます希少性を増す労働力を効率的に用いることが出来ず、人手不足に対応しきれない場合は市場から退出することとなります。すべてではないにしても、その一端がこの調査結果に現れているように私は感じています。

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2018年10月11日 (木)

金本監督辞任で阪神の次期監督やいかに?

我が家に帰宅してから、購読している朝日新聞夕刊で阪神金本監督辞任を知りました。記事へのリンクはコチラです。
冷たいかもしれませんが、当然と私は受け止めています。むしろ、17年振りの最下位にもかかわらず監督職に居座ったりしたら、とてもイヤな気持ちだっただろうと思います。我が家の上の倅は来年大学を卒業しますが、幸か不幸か、阪神タイガースの最下位を初めて目のあたりにしたわけで、私のような暗黒時代を知っている古いファンと違って、さらに、監督辞任は当然と考えそうな気もします。高校野球ではないんですから、「よくがんばった」だけではなく、結果が重視されるのは当然ですし、少なくとも、今年半ばあたりからの金本監督の采配は疑問だらけでした。むしろ、3年前までの和田前監督のように、育成はまったく無視して外国人選手とベテラン勢に偏重した起用の方が、ある意味で、一貫性あったとすら感じた試合もありました。ちょっと育成もやってみたけれど、サッパリ若手が伸びなかった、という結果に終わり、特に打者の若手がまったく伸びておらず、打ち気にはやってボールに手を出しては凡退する、というシーンが多かった気がします。投手陣も育成に失敗したのは同様で、榎田投手のように他球団に出して活躍されては言い訳も成り立ちません。
それにしても、次の監督は誰なんでしょうか?

秋季キャンプから鍛え直して来季こそは、
がんばれタイガース!

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高止まりする石油価格の影響で企業物価の国内物価上昇率は+3%が続く!

本日、日銀から9月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+3.0%と前月と同じかつ3か月連続で同じ上昇率を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の企業物価指数、前年比3.0%上昇 原油相場が上昇
日銀が11日発表した9月の国内企業物価指数(速報値、2015年平均=100)は102.0となり、前年同月と比べて3.0%上昇した。伸び率は8月確報から横ばいで、21カ月連続で前年同月を上回った。前月比でも0.3%上昇した。
米国によるイラン制裁を背景に、供給面での減少懸念から原油価格が上昇。原油相場の上昇を受けた石油関連製品の値上がりが伸びをけん引した。
品目別では、石油・石炭製品が前年同月比26.4%上昇した。鉄鋼が同3.9%、金属製品は同3.1%上昇した。
一方、非鉄金属は同1.7%下落した。米中間の貿易摩擦の激化に伴い、需要が押し下げられるとの懸念が背景にある。
今後の企業物価動向については「米中間の貿易摩擦に収束の兆しが見えず、需要面から押し下げ方向に働く可能性も念頭に置きつつ動向をみていきたい」(日銀調査統計局)という。

続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは以下の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、また、一番下は企業物価指数のうちの円建て輸入物価の原油の指数そのものと前年同月比上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2つのパネルの影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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繰り返しになりますが、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は9月統計でも7~8月と同じ+3.0%でした。基本は、国際商品市況における石油価格の上昇や高止まりに起因する部分が大きいと私は受け止めています。例えば、上のグラフのうち一番下のパネルではPPIのコンポーネントである輸入物価の原油価格の指数と前年同月比上昇率をプロットしていて、指数も上昇率も直近では7月がピークだったんですが、まだ9月統計で指数と上昇率ともに高止まりしているのが現状です。ごく一般的にいってながら、PPIは消費者物価(CPI)よりも国際的な動向の影響を強く受けますので、国際商品市況を別にしても、引用した記事にもある通り、米中間の貿易摩擦をはじめとする貿易動向の影響が価格面でどのように現れるのか、やや気がかりです。貿易摩擦の影響については、関税を引き上げた当該国ではその輸入品が当然に国内で価格が上昇する一方で、当該国以外では需給が緩んで価格下落につながる可能性が高いと私は考えていますが、加えて、先日取り上げた国際通貨基金(IMF)が「世界経済見通し」で指摘しているように、貿易摩擦の激化は世界全体の成長率を下振れさせる可能性が高く、その面から需給関係を緩和させてさらに価格下落の方向に圧力がかかる可能性がありますし、もちろん、個別の国によっては、貿易構造や産業構造などに起因して、いろいろと複雑な要素があります。

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2018年10月10日 (水)

2か月連続で増加した機械受注は基調判断を上方改定!

本日、内閣府から8月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比で見て、7月+11.0%の大幅増に続いて、8月も+6.8%増を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、8月6.8%増 基調判断「持ち直しの動き」
市場予想上回る

内閣府が10日発表した8月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比6.8%増の9815億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値は4.2%減だった。
うち製造業は6.6%増、非製造業は6.0%増だった。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は12.6%増だった。
内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」から「持ち直しの動きがみられる」に変更した。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは7月の2ケタ増の反動減を織り込んで、8月は▲4.2%減と見込んでいたんですが、実績では逆に+6.8%増とかなりの伸びを示しており、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きに足踏み」から「足踏み」を削除して「持ち直しの動き」に半ノッチ上方改定しています。基調判断のかいていは4か月振りだそうです。産業別に見て詳細はともかく、大くくりで、7月のコア機械受注2ケタ増のうち、製造業・非製造業とも2ケタ増を示し、加えて、8月の+6.8%増も製造業・非製造業とも+6%増ですから、決して、特殊要因による一時的な増加などの偏った受注増との印象はありません。また、7~9月期の見通しは前期比▲0.3%の見込みとなっているんですが、一定の反動減が予想される9月統計が前月比▲20%を超えるくらいの減少であってもこの見込みを超える計算になり、達成はほぼ確実な状況となっています。基本的に、日銀短観の設備投資計画に見られるように、人手不足などを背景に企業の設備投資の意欲は旺盛であり、機械受注統計のクセとして単月で振れの激しい点を差し引けば、引き続き、機械受注は緩やかながら増加のトレンドにあるものと私は考えています。

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2018年10月 9日 (火)

国際通貨基金(IMF)による「世界経済見通し」は貿易摩擦により成長率を下方修

今週末からインドネシアのバリ島で開催されるIMF世銀総会を前に、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」World Economic Outlook, October 2018 が公表されています。pdfの全文リポートもアップされています。今年2018年の世界経済の成長率は、7月の「世界経済見通し改定」から▲0.2%ポイント下方修正して+3.7%と見込んでいます。

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まず、IMFのブログサイトから成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。なお、上の画像をクリックすると、別タブでリポート pp.14-15 の Table 1.1. Overview of the World Economic Outlook Projections だけを抜き出したファイルが開きます。ということで、Exective Summary の書き出しは、"The steady expansion under way since mid-2016 continues, with global growth for 2018-19 projected to remain at its 2017 level. At the same time, however, the expansion has become less balanced and may have peaked in some major economies." となっていて、景気局面が成熟化からピークアウトに達しつつある可能性を示唆しています。成長率見通しについては、繰り返しになりますが、世界経済の成長率については、4月の「世界経済見通し」、7月の「世界経済見通し改定」でも、2018年、2019年ともに+3.9%から、今回の最新見通しでは▲0.2%ポイント下方修正されて、+3.7%と見込まれています。米中間の貿易摩擦の影響により成長率が下振れすると見込まれています。他方、我が国成長率については、今年2018年は4月時点の+1.2%が、7月には+1.0%に下方修正された後、今回の10月見通しでは+1.1%に上方修正されています。ついでながら、2来年2019年の我が国の成長率見通しは一貫して+0.9%と見込まれています。今年よりも低下するのは、2019年10月からの消費増税を織り込んでいるからです。

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さて、世界経済の成長率が下方修正された主因は、米中間の貿易摩擦の激化なんですが、貿易摩擦を5つのシナリオ別に実質GDPの乖離により計測した結果が上のグラフの通りです。リポート p.35 Scenario Figure 1. Real GDP in Trade Tensions Scenario を引用しています。黄色い自動車などの関税引き上げあたりからは、ほぼ、どの国も得をしない、ということになりそうなのですが、さすがに、米中両国では中国のダメージの方が大きく、また、米国よりもNAFTAメンバーのダメージの方が大きくなりそうな試算です。我が国と欧州は世界全体と大きな差はなさそうにも見えます。

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内閣府から9月の景気ウォッチャーが、また、財務省から8月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.1ポイント低下して48.6を、先行き判断DIも▲0.1ポイント低下して51.3を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆8384億円の黒字を計上しています。いつものグラフは上の通りです。

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2018年10月 8日 (月)

最下位が確定しヤクルト引退投手陣の引き立て役に回る阪神貧打線!!

  RHE
阪  神000010040 591
ヤクルト24000000x 661

ヤクルトにまたまた負けて、ついに、17年振りの最下位確定でした。ヤクルト引退投手陣の引き立て役に回った貧打線が哀れを極めています。まさか、金本監督の続投はないんでしょうね。次の監督に阪神再建を託したいと思います。これでホントに今季の野球観戦を終えたいと思います。

来季こそ、
がんばれタイガース!

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2018年10月 7日 (日)

先週の読書は重厚な経済書や甲子園グラウンドキーパーの著書など計7冊!

先週は、いつも位のペースで読書した気もしますが、感想文の冒頭に取り上げるティロール教授の『良き社会のための経済学』がやたらとボリュームがあり、通常の四六判よりも大判である上にページ数も600ページを超えていて、それだけで2冊分くらいに相当していたような気がします。今週も数冊をすでにいくつかの図書館から借り受けています。

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まず、ジャン・ティロール『良き社会のための経済学』(日本経済新聞出版社) です。著者は、フランスの経済学者であり、2014年のノーベル経済学賞受賞者です。私は産業構造などのマイクロな分野がご専門と理解しているんですが、このクラスになれば金融をはじめとするマクロ経済学の分野での貢献も少なくありません。特に、バブルについてはかなり独特な見方を示しており、典型的には、p.340からのあたりになるんではないかと思います。私も地方大学に出向していた際の紀要論文で取り上げたことがあります。明治はしておらず、仮想通貨でややごまかしている気味はあるのもの、著者のバブルの眼目は貨幣 fiat money であろうと私は考えていますただ、それを突き詰めて考えれば、金本位制のような本来価値のある何かでなければ貨幣になりえず、バブルでしかない、というのは、私にはやや違和感あります。本書は経済に関する幅広い入門書という位置づけですが、例えば、大学新入の経済学の初学者ではやや苦しい気がします。少し経済についての見識あるビジネスマン向けか、という気もします。ただ、どういう経済学を背景にしているか、といえば、もちろん、かなりスタンダードで標準的な経済学、ということもできるんですが、左派を標榜する私のようなエコノミストからすれば、財政均衡、とまではいわないものの、増税や歳出削減などによる財政再建を目指した財政政策とか、あくまで市場による資源配分の効率性を前提にしていたりと、やや右派的な経済学であることは確かです。そのあたりは、リベラルなクルーグマン教授やスティグリッツ教授の議論とは少し経路が違う点は読み取って欲しい気もします。

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次に、金沢健児『阪神園芸 甲子園の神整備』(毎日新聞出版) です。著者は、まさに、阪神園芸甲子園施設部長の職にあり、甲子園球場整備グラウンドキーパーの責任者です。本書冒頭にもありますが、昨年10月のセリーグのクライマックスシリーズの阪神と横浜の泥んこの中での試合が記憶にまだ残っていて、甲子園球場の整備に注目が集まったところです。その甲子園で水はけがいい、というのは、球場のマウンドを頂点とする勾配の問題であると著者は指摘しています。要するに、マウンドからの勾配が均等であって、どこにも水が溜まらない、ということらしいです。種を明かせばそういうことかという気もしますが、我が阪神タイガーズのホームグラウンドであるだけでなく、高校野球の聖地としても、歴史も、収容人数も、注目度も、何から何まで野球のスタジアムとしては日本一の甲子園球場ならではのエピソードが満載です。著者が50歳そこそこですから、あまりに古いタイガースの選手、例えば藤村富美男とか、村山実とか、はエピソードに出てきませんが、投手では能見投手、走塁では引退した赤星選手のグラウンド整備に関するエピソードが語られていて、守備としては、「弘法筆を選ばず」よろしく鳥谷遊撃手は何の注文もつけない、というのが「グラウンドは選べないでしょ」という発言とともに引かれています。歴代阪神選手としてもっとも多くのヒットを放つとともに、神守備の遊撃手であり、歴代阪神選手の中でも私がもっとも敬愛するひとりである鳥谷選手らしい気がしました。いずれにせよ、阪神ファンであるなら、あるいは、高校野球ファンも、ぜひとも手に取って読んでおくべき本ではなかろうかという気がします。

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次に、ベン・メズリック『マンモスを再生せよ』(文藝春秋) です。著者は、ベストセラーを連発するノンフィクション・ライターであり、カジノでのカード・カウンティングを取り上げて、映画化もされた『ラス・ヴェガスをブッつぶせ!』とか、えいが「ソーシャル・ネットワーク」の原作である『facebook』などをものにしており、本書も映画化の話が進んでいるそうです。ということで、本書では、ヒトゲノム解析計画の発案者の一人ハーバード大学のジョージ・チャーチ教授を主人公に、タイトル通りに、絶滅したマンモスを再生するストーリーです。というか、より正確には、アジアゾウの遺伝子を操作してマンモスにする、ということらしいです。英語の原題である Woolly とは、毛やヒゲで「もじゃもじゃ」という意味です。絶滅した生物をDNAを解析することによって復活させる、というのは、私でなくても映画の「ジュラシックパーク」のシリーズを思い起こすだろうと思うんですが、数千万年から1億年以上前の琥珀に閉じ込められた蚊が吸った恐竜の血は宇宙からの放射線その他により決定的に琥珀になり切っていて、生物として復活させることは不可能である一方で、せいぜい2~3000年前に死んで、しかも死後に急速冷凍されたマンモスは復活させることが可能、というか、アジアゾウに遺伝子を組み込んでマンモス化することは可能だそうです。そこは私にはよく理解できません。ただ、私のようなシロートから見ると、単なる科学的な、あるいは、知的好奇心という以上に、このプロジェクトの持つ意味が理解できませんでした。途中でスアム研究所というのが紹介されていて、富裕層を顧客にしたクローン・ビジネスを展開している営利企業だそうで、実際に何をやっているのかといえば、可愛がっていたペットのイヌが死んだ後に、そのクローンを再生する、というビジネスだそうです。これなら営利企業として成り立つような価格設定にすればいいわけですから、エコノミストの私にもビジネスとして理解できます。しかし、マンモス復活に何の意味があるのか、単なる見せ物なのか、私には根本的な意味がよく理解できませんでした。

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次に、松田雄馬『人工知能はなぜ椅子に座れないのか』(新潮選書) です。著者は、大学・大学院終了後にNECに就職して基礎研究に従事し、今では独立しているような経歴です。本書では、人工知能(AI)の研究の歴史とともに、人間の知覚についてもニューロンからの理解を展開しつつ、最終的にはシンギュラリティの到来、特に人間を凌駕する知性としてのAIに対する懐疑論を展開しています。本書の著者が「無限定な空間」と表現している知覚の対象は、レーニン的には無限の認識対象を人間は有限にしか認識できない、ということになるんですが、私が考えるに、AIについてはあくまでアルゴリズムに基づくデータ処理の問題であり、それを人間のような知覚や認識と同一視するのは、少し違うような気がします。著者の定義するような人間の知を超えるAIは将来ともに出来ないかもしれませんが、それは逆から見て、将来にも出来そうにないAIの存在を見越した人間の知を定義しただけ、という気もします。少なくとも、チェスや将棋や碁に関しては「勝つ」という意味で人間の知を超えたAIが誕生していることは明らかであり、それにハードウェアたるロボットの筐体を組み合わせれば、あるいは、情報処理の面でも肉体能力の点でも、人間を超える存在が出来、それが人類を滅ぼす可能性も否定できない、というのが悲観派の見方ではないでしょうか。こういった現実的な実際の存在としてのAIやその入れ物としてのロボットを考慮することなく、将棋の羽生の「ルール変更」でAIを撃退するといった、定義の問題でリアルな問題を回避できるかのような議論な私には疑問だらけです。私はこの著者の『人工知能の哲学』を読んだ記憶があるんですが、やっぱり、ピンと来なかった気がします。

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次に、山川徹『カルピスをつくった男 三島海雲』(小学館) です。著者はノンフィクション・ライターであり、私は初めてでした。ややクセのある文体で少し戸惑うかもしれませんが、読み始めればそうでもないと思います。カルピス創業者の三島雲海を中心に据え、明治期から大正・昭和の戦争の時期を経て、戦後の高度成長期までを視野に入れた長期にわたるドキュメンタリーです。表紙画像からもうかがわれる通り、カルピスのルーツは中国東北部からモンゴルあたりの遊牧騎馬民族の発酵食品だそうで、箕面の浄土真宗の寺に生まれた主人公が戦前期に大陸に渡って日本語教員をしながら、モンゴルまで足を伸ばした経歴が下敷きとなっています。ただ、企業経営者としての活動の中心となる高度成長期以降は、さすがに、著者の専門範囲外なのかどうか、「今は昔の物語」の感があります。実際に、カルピスは企業としては味の素の傘下に入り、さらにアサヒビールのグループに売られたわけですから、評価はいろいろなんだろうという気がします。ただ、本書でも紹介されているように、市その昔に「初恋の味」というキャッチフレーズで宣伝され、国民の99.7%が飲用経験ある国民的飲料ですから、誰もが何らかの思い入れがある身近な飲み物ですし、親しみを持って本書を読む人も少なくないと思います。その昔、私などはカルピスを希釈して飲むという経験を持っていますが、20歳前後の我が家の倅どもなんぞはペットボトルに入ってストレートで飲むカルピスしか知らないような気もします。その時代の移り変わりを実感できる読書であろうと思いました。

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次に、尾脇秀和『刀の明治維新』(吉川弘文館) です。著者はポスドクの歴史研究者です。本書のタイトルは刀なんですが、あとがきにもある通り、帯刀という行為についての歴史的な位置づけや世間一般の受け止めの変遷について、戦国期から江戸期を通して明治初期の廃刀令までの期間です。当然、場所的には江戸や京といった大都会が中心なんですが、都市部からやや遅れがちな地方についても目を配っています。ということで、刀といえば、江戸期の前の豊臣秀吉のもとで刀狩りが実施され、支配者たる武士階級以外から武器を取り上げたんではないかと私は認識していたんですが、本書ではきっぱりと否定されており、江戸期は農民や町人も刀を所持していたと指摘しています。その上で、人に何らかの司令を下す立場にある豪農とか神職、あるいは、大工の棟梁や鳶職などはその立場を象徴する刀を帯びていた、との事実を史料から明らかにしています。しかも、そういった支配層だけでなく、一般大衆でも旅行中や正月などの非日常の場においては帯刀していた事実を確認しています。進んで、豪商がお上に寄進したり、何らかの寄付行為などで苗字帯刀が許されたわけですから、何らかの象徴的な身分標識としての帯刀行為を浮き彫りにしています。そして、上の表紙画像にある通り、明治維新からはその帯刀という行為がガラリと意味を変じたわけで、ザンギリ頭に洋装で刀を捨てて馬に乗った文明が、ちょんまげ和装で刀にしがみついた旧弊を見下ろしているわけです。手の平を返すように、帯刀という行為が権威の象徴や身分標章から、単なる凶器の携行と貶められた、と結論しています。まあ、そうなんでしょうね。

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最後に、有栖川有栖『インド倶楽部の謎』(講談社ノベルス) です。著者はベテランの領域に入りつつある新本格派のミステリ作家であり、本書は後期の作家アリスの火村シリーズの中でも特に人気の国名シリーズ最新刊です。7人のメンバーがインド、特にその思想的背景かもしれない輪廻転生で結ばれたインド倶楽部で、前世から自分が死ぬ日まですべての運命が予言され記されてインドに伝わる「アガスティアの葉」のリーディングの後に、関係者2名が相次いで殺されます。まあ、「アガスティアの葉」というのは、著者の独創なんでしょうが、アカシック・レコードの個人版みたいな位置付けなんでしょうね。それはともかく、舞台は神戸ですので兵庫県警の樺田警部、火村を快く思っていない野上警部補、遠藤刑事などが登場します。その昔の、名探偵、みなを集めて、「さて」といい、あるいは、名探偵コナンのように「犯人はお前だ」と指差すような派手なラストの犯人指摘を含む全貌解明シーンでなく、ページ数で真ん中あたりから少しずつ事件の概要が読者にも判るように手じされ始め、タマネギの皮をむくように一歩一歩すこしずつ事件の真相に迫りつつ、それでも、最後は驚きの結末が待っています。新本格派ですから、やや動機が軽く扱われていると感じる読者もいるかも知れませんが、謎解きとしてはとても良質のミステリです。

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2018年10月 6日 (土)

米国雇用統計で雇用者増は鈍るも失業率は半世紀ぶりの低水準を記録!

日本時間の昨夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+134千人増と、市場の事前コンセンサスだった+180千人の増加という予想を大きく下回って伸びが鈍化した一方で、失業率は前月とからさらに低下して3.7%となり、1969年12月の3.5%以来、約半世紀ぶりの低い水準を記録しました。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を10パラ引用すると以下の通りです。

Economy added 134,000 jobs in September, unemployment falls to nearly 50-year low
Unemployment fell to a nearly 50-year low in September even as employers added a disappointing 134,000 jobs amid increasing worker shortages and possible effects from Hurricane Florence.
The unemployment rate fell from 3.9 percent to 3.7 percent, lowest since December 1969, the Labor Department said Friday. The rate is calculated from a separate survey of households than the job growth figure.
Economists had estimated 185,000 new jobs were created last month, according to a Bloomberg survey.
Goldman Sachs expected the hurricane to reduce employment by 33,000 in the Carolinas. But Morgan Stanley said the storm likely affected too limited of an area and struck too late during the week of Labor's survey to have a meaningful impact. Workers are counted as employed as long as they show up for any part of their pay period.
Yet employment in leisure and hospitality, which includes hotels and restaurants, fell 17,000 last month, suggesting the storm was a factor.
"The headline payroll number is a weather story," Ian Shepherdson, chief economist of Pantheon Macroeconomics, wrote in a note to clients.
The number of workers across the country who stayed home because of weather increased by 276,000 last month on a non-seasonally adjusted basis, compared to a median 7,000 rise over the past 10 September jobs report, says Jim O'Sullivan, chief US economist of High Frequency Economics.
Still another wrinkle is that Labor tends to undercount September employment in its initial estimate and revise it up later, O'Sullivan says.
On the positive side, payroll increases for July and August were revised by a total 87,000. July's gain was raised from 147,000 to 165,000 and August's from 201,000 to 270,000. That largely offsets the weak September showing.
Meanwhile, the labor market faces other challenges. Businesses are having a harder time finding qualified job candidates. Many analysts expect the crunch to slow hiring in the months ahead despite strong economic growth.

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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繰り返しになりますが、9月の米国非農業部門雇用者増は8月の+270千人増から大きく鈍化して+134千人増にとどまった一方で、失業率は8月の3.9%からさらに低下して3.7%と約半世紀振りの低い水準を記録しています。雇用者増の鈍化と失業率の低下は一見して非整合的な動きなんですが、ほぼ完全雇用の状態にある米国労働市場では、雇用者募集をかけてもスラックがほぼ尽きた状態になっているとすれば、新たな雇用増は生み出されないわけで、労働市場が完全雇用水準に達したということであれば、雇用増の鈍化と失業率の低下は整合的といえます。そして、この労働市場における人手不足はトランプ政権の減税政策がもたらしたと考えられます。まだ、中国製品締め出しの貿易戦争の影響は出ていないとみられるからです。加えて、労働市場が完全雇用であるならば、トランプ政権の圧力がどうあれ、独立した中央銀行である米国連邦準備制度理事会(FED)の利上げ継続路線はサポートされるということになると考えるべきです。もちろん、個人消費支出(PCE)デフレータは8月に前年同月比+2.2%まで上昇幅を拡大しており、物価上昇圧力も増しています。

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最後に、その物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、9月は前年同月比で+2.8%の上昇と、このところ、+3%近い上昇率が続いています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですから、利上げを継続して対応すべきという意見が出るのは当然かもしれません。

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2018年10月 5日 (金)

改善が続く景気動向指数と13か月連続の賃金上昇が続く毎月勤労統計!

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも8月の統計です。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月差+0.5ポイント上昇して104.4を、CI一致指数も+1.4ポイント上昇して117.5を、それぞれ記録しています。また、毎月勤労統計のうち、名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+0.9%増の27万6366円に上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の景気一致指数、4カ月ぶり上昇 自動車出荷など改善
内閣府が5日発表した8月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.4ポイント上昇の117.5だった。上昇は4カ月ぶり。自動車や半導体製造装置の出荷が改善した。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象になる7系列のうち5系列が指数を押し上げた。耐久財消費財出荷指数が乗用車と二輪車の改善で上昇した。投資財出荷指数も半導体製造装置の好調を背景にプラスに寄与した。小売業の商業販売額も猛暑の影響でコンビニエンスストアの飲食料品を中心に増加した。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。同表現は23カ月連続。
数カ月後の景気を示す先行指数は0.5ポイント上昇の104.4と3カ月ぶりに上昇した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は0.2ポイント上昇の117.7だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。
8月の名目賃金、前年比0.9%増 増加は13カ月連続、毎月勤労統計
厚生労働省が5日発表した8月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、8月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比0.9%増の27万6366円だった。増加は13カ月連続。基本給の伸びが続いた。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.4%増の24万3809円だった。残業代など所定外給与は1.0%増。一方、ボーナスなど特別に支払われた給与は7.4%減だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は0.6%減だった。名目賃金は増加したものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が上昇し、実質賃金を押し下げた。
パートタイム労働者の時間あたり給与は2.8%増の1137円。パートタイム労働者比率は横ばいの30.70%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べると長くなってしまいました。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は、毎月勤労統計のグラフとも共通して、景気後退期を示しています

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CI先行指数は3か月振りの上昇、CI一致指数も4か月振りの上昇を示し、CI一致指数は3か月後方移動平均、7か月後方移動平均とも前月のマイナスから上昇に転じています。従って、基調判断が「改善」から「足踏み」に1ノッチ下方修正される条件は、かなり機械的ながら、3か月後方移動平均の符号がマイナスかつマイナス幅が1か月、2か月、3か月の累積で1標準偏差以上ということですので、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「改善」で据え置いており、23か月連続の「改善」となっています。なお、CI一致指数のうち、プラス寄与は大きい順に、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(小売業)(前年同月比)、鉱工業用生産財出荷指数、生産指数(鉱工業)となっており、逆に、マイナス寄与の絶対値が大きい順に並べると、有効求人倍率(除学卒)、商業販売額(卸売業)(前年同月比)が上げられています。また、CI先行指数でプラし寄与が大きいのは最終需要財在庫率指数と鉱工業用生産財在庫率指数です。景気動向指数はかなりの程度に鉱工業生産指数(IIP)と相関が高いと私は考えているんですが、いずれにせよ、景気拡大は5年半を超えて6年に近づきつつあり、当然ながら、景気局面としては成熟化の段階に達している気がします。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。ということで、景気に敏感な製造業の所定外時間指数は低下を示していますが、賃金はそれなりに上向きと私は見ています。2番目のパネルの季節調整していない原系列の賃金指数の前年同月比のプラス幅も、3番目の季節調整済みの系列の賃金指数も、ともに上向きに見えます。さすがに、人手不足がここまで進んでいますので、正規雇用の増加とともに、賃金上昇の圧力はそれなりに大きいと私は受け止めています。

最後に、9月の米国雇用統計が公表されていますが、今夜のうちに取りまとめて日を改めてアップしたいと思います。

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2018年10月 4日 (木)

鳥谷選手の球団最多安打を最後に今季の野球観戦を終える!!

  RHE
ヤクルト000100001 280
阪  神000010000 160

阪神がヤクルトに負ける直前に巨人が広島に勝ちを収めて、タイガースのクライマックス・シリーズ出場可能性消滅でした。その上、ヤクルトに負けて最下位低迷です。鳥谷選手の球団最多安打だけが今日の収穫でした。これで今季の野球観戦を終えたいと思います。

来季こそ、
がんばれタイガース!

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国際通貨基金(IMF)「世界経済見通し」分析編を読む!!

昨日、国際通貨基金(IMF)から来週のIMF世銀総会に向けて、「世界経済見通し」分析編 World Economic Outlook, October 2018: Analytical Chapters が公表されています。少し長くなりますが、章ごとのタイトルとサマリーを IMF のサイトから引用すると以下の通りです。

Chapter 2: The Global Recovery 10 Years after the 2008 Financial Meltdown
This chapter takes stock of the global economic recovery a decade after the 2008 financial crisis. Output losses after the crisis appear to be persistent, irrespective of whether a country suffered a banking crisis in 2007-08. Sluggish investment was a key channel through which these losses registered, accompanied by long-lasting capital and total factor productivity shortfalls relative to precrisis trends. Policy choices preceding the crisis and in its immediate aftermath influenced postcrisis variation in output. Underscoring the importance of macroprudential policies and effective supervision, countries with greater financial vulnerabilities in the precrisis years suffered larger output losses after the crisis. Countries with stronger precrisis fiscal positions and those with more flexible exchange rate regimes experienced smaller losses. Unprecedented and exceptional policy actions taken after the crisis helped mitigate countries’ postcrisis output losses.
Chapter 3: Challenges for Monetary Policy in Emerging Economies as Global Financial Conditions Normalize
Inflation in emerging market and developing economies since the mid-2000s has, on average, been low and stable. This chapter investigates whether these recent gains in inflation performance are sustainable as global financial conditions normalize. The findings are as follows: first, despite the overall stability, sizable heterogeneity in inflation performance and in variability of longer-term inflation expectations remains among emerging markets. Second, changes in longer-term inflation expectations are the main determinant of inflation, while external conditions play a more limited role, suggesting that domestic, not global, factors are the main contributor to the recent gains in inflation performance. Third, further improvements in the extent of anchoring of inflation expectations can significantly improve economic resilience to adverse external shocks in emerging markets. Anchoring reduces inflation persistence and limits the pass-through of currency depreciations to domestic prices, allowing monetary policy to focus more on smoothing fluctuations in output.

お手も長くなりましたので、これだけでもういいんではないかという気もしますが、国際機関のリポートに注目するのはこのブログの特徴のひとつでもありますし、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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この第2章では、リーマン・ショック後の10年を振り返って、直後の景気後退 Great Recession が現時点まで継続的な影響を有している、と指摘しています。すなわち、1982年の世界的な景気後退の際には、購買力平価で換算して世界GDP46パーセントを占める48国が景気後退によるGDPの低下を経験したのに対して、2008年のリーマン・ショック後の2009年には世界経済の⅔に当たる91国がGDPを減少させた、としています。上のグラフはリポート p.73 から Figure 2.1. Correlation of GDP Deviations between Periods (Percent) を引用しています。景気後退直後と現時点に近い期間でのGDPの乖離がの相関係数が0.9ほどですので、ほぼ一致しているといえます。要するに、リーマン・ショックで大きく落ち込んだ国は今でも落ちたまま回復し切れていない、ということになります。

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第3章では、2000年代半ばまでのディスインフレ期を経て、現在の米国金利引上げに象徴されるような金融政策の正常化が進んでいる時期に、インフレの落ち着きのサステイナビリティを検証しています。長期的なインフレ期待が実際の各国のインフレ率のバラツキにつながる一方で、インフレ率が落ち着いたままの水準を続け、為替のパススルーが限定的であれば、金融政策はマクロ経済の安定化政策に割り当てる余地が出来る、と指摘しています。なお、上のグラフはリポート p.73 から Figure 3.1. Headline Consumer Price Index Inflation (Percent) を引用しています。2004年でディスインフレが終了し、その後、直近の2015年以降では、新興国が引き続きディスインフレが継続している一方で、先進国が少しずつジワジワとインフレ率を上昇させていて、金融政策の正常化を進める必要性が大きくなったのが見て取れます。

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2018年10月 3日 (水)

楽天インサイト「副業に関する調査」の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週9月27日に、楽天インサイトから「副業に関する調査」の結果が明らかにされています。私は公務員なので副業は原則として許されていないんですが、この調査結果では、有職者の約3割が副業経験あり、副業未経験者の約4割が今後副業をする意向、という結果が示されていたりします。

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まず、グラフは引用しませんが、副業経験については、「現在副業をしている」と回答した人は14.1%、「過去に副業をしたことがある」は16.6%、「副業をしたことがない」は69.3%となり、現在と過去で約3割が副業を経験したことがあるという結果になっています。その上で、上のグラフは副業内容の回答結果を楽天インサイトのサイトから引用しています。「投資(株式、不動産、仮想通貨など)」(13.5%)と回答した人が最も多く、次いで「接客・販売」(9.9%)、「不動産運用」(9.2%)、「ネットオークション・フリマアプリによる販売」(9.2%)が多くなっています。また、これもグラフは引用しませんが、現在副業をしている人に、副業をしている理由を聞いたところ、「給料が足りないため」(47.5%)と回答した人がもっとも多いとの結果に続いて、「趣味、生きがいのため」(36.9%)、「仕事がなくなったときの保険のため」(17.7%)となっています。加えて、会社の人(同僚・上司・人事)が副業をしていることを知っているかどうかについては、「知っている」が54.6%と過半に上っています。公務員の私にはちょっとびっくりです。

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最後に、上のグラフは現在副業をしていない理由楽天インサイトのサイトから引用しています。「体力的に余裕がないから」、「時間がないから」、「やりたい副業がないから」、「会社で禁止されているから」などが上げられています。私はどれにも当てはまるような気がします。ただし、もう半年足らずで定年退職ですから、一気に収入ゼロに陥ることは避けたく、そろそろ年明けくらいになったら、副業ならぬ次の働き口を探し始めたいとは考えています。

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2018年10月 2日 (火)

4か月振りに上昇した消費者態度指数は反転したと考えるべきか?

本日、内閣府から9月の消費者態度指数が公表されています。前月から+0.1ポイント上昇して43.4を示しています。4か月ぶりに前月を上回っています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

9月の消費者態度指数、4カ月ぶり改善 基調判断据え置き
内閣府が2日発表した9月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数は前月比0.1ポイント上昇の43.4と4カ月ぶりに上昇した。「耐久消費財の買い時判断」に関する指標が改善した。内閣府は基調判断を「弱い動きがみられる」に据え置いた。
指数を構成する意識指標を項目別にみると、「耐久消費財の買い時判断」が42.4と前月比0.4ポイント上昇した。新型「iPhone(アイフォーン)」の発売が影響したとみられる。「収入の増え方」も41.9と0.1ポイント上昇した。
一方、「暮らし向き」の指標は41.5と0.2ポイント低下した。地震や台風の被害があった北海道や近畿で悪化が目立った。
「雇用環境」は横ばいの47.7だった。消費者態度指数に含まれない「資産価値」の意識指標は0.8ポイント高い43.4となった。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比0.1ポイント高い81.7だった。「低下する」は0.2ポイント高い3.4%、「変わらない」は0.7ポイント低い12.2%だった。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と答えればゼロになる。
調査基準日は9月15日。調査は全国8400世帯が対象で有効回答数は6130世帯、回答率は73.0%だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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消費者態度指数を構成するコンポーネントを前月差でみると、、「耐久消費財の買い時判断」が+0.4ポイント上昇し42.4、「収入の増え方」が+0.1ポイント上昇し41.9 となった一方で、「暮らし向き」が▲0.2ポイント低下し41.5、「雇用環境」が変わらず47.7となっています。最近半年余りの動向でも、直近のピークは昨年2017年11月から今年2018年1月の3か月連続で44.6で横ばいを示した後、先月まで緩やかに低下した後、9月はわずかながら上昇したものの、最近までの低下傾向が反転したのかどうかは現時点では何ともいえない気がします。9月調査の日銀短観に反映された企業マインドは、ヘッドラインの大企業製造業で見る限り、3四半期連続で下げているのは昨日取り上げたばかりです。ということで、直近の消費者マインドの低下については、西日本豪雨といった災害の影響も反映しているんでしょうが、引用した記事にもある通り、統計作成官庁の内閣府では9月の消費者マインドの基調判断を「弱い動きがみられる」と、8月統計の公表時に半ノッチ下方修正したままで据え置いています。

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2018年10月 1日 (月)

3四半期連続で大企業製造業の業況判断DIが悪化した9月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から9月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは6月調査から▲2ポイント低下して+19を記録した一方で、本年度2018年度の設備投資計画は全規模全産業が前年度比+8.5%の増加と6月調査の+7.9%の増加からさらに上方修正されました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業・製造業の景況感3期連続悪化 日銀短観
日銀が1日発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス19だった。前回6月調査のプラス21から2ポイント悪化した。悪化は3四半期連続だった。3四半期連続の悪化は、2007年12月調査から09年3月調査までの6四半期連続の悪化以来となる。台風21号や北海道地震など相次いだ自然災害や、原材料価格の上昇などが業況感を下押しした。石油・石炭製品や窯業・土石製品、繊維などの悪化が目立った。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。9月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス21を下回った。回答期間は8月27日~9月28日で、回収基準日は9月10日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス19と横ばいの見通し。市場予想の中央値(プラス20)を下回った。先行きについては米国と主要国との貿易摩擦が激化するとの懸念が根強く、生産用機械などに慎重な雰囲気が残っている。
18年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=107円40銭と、実勢レートより円高・ドル安だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス22と前回を2ポイント下回った。業況感の悪化は16年9月調査以来8四半期ぶり。台風や地震など自然災害の影響と、それを背景とした国内外の旅行客の減少、人手不足による人件費の上昇などコスト増が逆風となった。3カ月先のDIは横ばいのプラス22だった。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス23となり、前回(マイナス21)から一段と低下した。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。1992年調査(マイナス24)以来およそ26年ぶりのマイナス幅だった。
18年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比13.4%増と、市場予想の中央値(14.2%増)を下回ったものの、6月調査からの修正率は小幅にとどまった。収益の増加傾向を受けた企業の設備投資意欲は強く、人手不足を背景にした省力化投資の需要も追い風となった。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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9月調査の日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIについて、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+21でしたので、やや下振れしたんですが、主因は石油価格の上昇ないし高止まりではないか、と私は考えています。というのは、大企業製造業を業種別に見て、6月調査から9月調査への悪化幅が大きい順に並べると、石油・石炭製品▲11ポイント、窯業土石製品▲11ポイント、繊維も同じく▲11ポイント、非鉄金属▲8ポイントなどとなっており、加工業種が6月調査から9月調査へ変化なしの保合いなのに対して、素材産業が▲6ポイントの悪化を示しています。大企業レベルでは、電気機械と自動車という我が国主力産業がともに9月調では6月調査から+1ポイントの業況感改善を示していたりします。他方、非製造業では典型的に地震や豪雨などの自然災害の影響が出やすい産業で悪化が大きくなっています。すなわち、物品賃貸▲9ポイント、電気・ガス▲6ポイント、不動産と対事業所サービスがともに▲5ポイントなどです。先週9月27日に取り上げたニッセイ基礎研のリポートでは、「9月に発生した自然災害による景況感への下押し圧力も限定的」とのことだったんですが、その前の西日本豪雨はそれなりのインパクトあったかもしれません。もちろん、米中間の貿易摩擦を含めて世界経済の先行きの減速懸念というのが製造業・非製造業の景況感悪化の背景にあるんでしょうが、それ以上に、というか、市場の事前コンセンサス以上に日銀短観の景況感が悪化したのは石油価格の高騰である可能性を指摘しておきたいと思います。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。特に、雇用人員については規模の小さい中堅企業・中小企業の方が大企業より採用の厳しさがうかがわれ、人手不足幅のマイナスが大きくなっています。新卒採用計画は9月調査では実施されていませんが、各種報道によれば、あるいは、本日の内定式に行って来た我が家の上の倅に聞いても、就活は売り手市場が続くようです。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2018年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で異例の▲0.7%減という高い水準で始まった後、6月調査では+7.9%増に大きく上方改定され、9月調査ではさらに+8.5%まで高まっています。上のグラフを見ても判る通り、9月調査の設備投資計画の伸び率はこのところはせいぜい+6%強くらいでしたので、今年2018年度の設備投資計画はかなり高い伸びを見込んでいると考えるべきであり、特に、別の日経の記事では、「貿易戦争の影響で設備投資を具体的に先送りしたという事例はほとんどない」との日銀の発言を引用しており、もともと、企業の手元にあるキャッシュフローは潤沢な上に、失業率が2%台前半まで低下した人手不足へ対応した合理化・省力化投資需要の高まり、加えて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを視野に入れ、今年度2018年度の設備投資は期待してよさそうです。

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