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2018年11月13日 (火)

2018年冬のボーナスは増えるのか?

先週までに、例年のシンクタンク4社から年末ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下の表の通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因ですので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研の公務員ボーナスだけは地方と国家の両方の公務員の、しかも、全職員ベースなのに対して、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員の組合員ベースの予想と聞いたことがあり、ベースが少し違っている可能性があります。注意が必要です。

機関名民間企業
(伸び率)
公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研39.3万円
(+3.3%)
72.2万円
(+5.9%)
今冬の賞与を展望すると、民間企業の一人当たり支給額は前年比+3.3%と、年末賞与としては2年連続のプラスとなる見込み。
背景には、2018年度上期の好調な企業収益。個人消費、設備投資など内需の持ち直しのほか、販売価格の引き上げにより売上が増加。一方で、変動費の抑制など収益体質の強化も進んだため、売上の増加が利益の拡大に結びつきやすい構造に。
大企業の雇用が大きく増加したことも、一人当たり賞与の押し上げに作用する見込み。製造業、情報通信業など、もともと支給水準の高い業種の正規雇用者が増加し、全体をけん引。
第一生命経済研(+4.2%)n.a.民間企業の2018年冬のボーナス支給額を前年比+4.2%と予想する。夏(前年比+4.7%)に続いて高い伸びになるだろう。ただし、毎月勤労統計では、サンプルの入れ替えやサンプルを加重平均する際のウエイト更新の影響に伴って2018年1月以降に断層が生じており、実態よりも伸び率が大幅に上振れていることに注意が必要である。実態としては、18年夏が前年比+2.1%程度だったとみられ、冬については+1.9%になると予測している。
(途中略)
7-9月期の個人消費は、台風、地震といった自然災害が相次ぎ、外出機会が抑制されたことが下押し要因になったことに加え、野菜価格やエネルギー価格の上昇も痛手となり、低調な推移となった。10-12月期については、こうした下押しからの反動に加え、冬のボーナス増も後押しとなることから、個人消費は再び増加に転じると予想される。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング39.2万円
(+3.0%)
72.4万円
(+6.3%)
2018年冬の民間企業(調査産業計・事業所規模5人以上) のボーナスは、企業業績の拡大が続き、労働需給が極めてタイトな状況下で、前年比+3.0%と堅調に増加すると予測する。
雇用者数の増加が続いており、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数も増加が見込まれる。冬のボーナスの支給労働者数は4,,217万人(前年比+1.3%)に増加し、支給労働者割合も83.5%(前年差+0.2%ポイント)に上昇しよう。また、ボーナスの支給総額は16.5兆円(前年比+4.4%)に増加する見通しである。夏に続き、冬も支給総額が高い伸びとなることは、今後の個人消費にとってプラス材料である。
みずほ総研38.8万円
(+2.0%)
76.6万円
(▲0.7%)
民間企業・公務員を合わせた冬季ボーナスの支給総額は、前年比+2.4%(前年: 同;3.1%)と増加基調を維持するだろう。上記の通り公務員の支給総額は減少が見込まれるものの、民間企業の堅調な伸びがけん引する公算である。ボーナス支給総額の拡大による家計の所得環境の改善は、個人消費に対する当面の下支え要因となろう。
ただし、消費者マインドの動向を表す消費者態度指数が引き続き弱含んでいることを踏まえると、今冬はボーナス支給総額の増加ほど消費が拡大しない可能性がある。消費者マインドが弱含む一因と考えられるのが、物価上昇である。物価面では、今後、ガソリン価格の上昇ペースが徐々に鈍化していくとみられる一方、電気代の伸びが拡大するとみられ、物価の基調を示すコア消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)は前年比+1%前後の上昇傾向を続けると見られる。こうした物価上昇による実質所得の目減りが、家計の積極的な消費拡大を抑制する要因となろう。

ほぼ今冬の年末ボーナスは1人あたりでも、支給総額でも、民間企業でも、公務員でも、それなりの増加を示しそうなコンセンサスがありそうです。しかし、ボーナスが増加する一方で、上のテーブルに取り上げたシンクタンク4機関の消費に対する考えがビミョーに違っていることが読み取れます。日本総研はボーナスから消費への波及についてはコメントしていないのに対して、第一生命経済研と三菱リサーチ&コンサルティングはボーナス増は消費にプラスとの見方を示しているものの、みずほ総研は消費者マインドの動向も引きつつ、物価上昇から実質所得の目減りにより消費が抑制される可能性を示唆しています。確かに、日本では、長らく見られた雇用慣行として長期雇用と年功賃金があって、かなりの程度に恒常所得仮説が成り立っており、残業やボーナスと消費の関係はそれほど相関は大きくない、ないし、やや不安定であるというのが従来からの定説です。もちろん、こういった雇用慣行は大きく変化しており、どこまで従来の見方が成り立つのかも何ともいえないところです。ただ、一般論としてボーナスの増加が消費にマイナスの相関を持つとは考えられないわけですから、1年弱に迫った消費増税も考え合わせて、それなりの消費への効果を見込んでいるエコノミストも少なくないと私は考えています。
下のグラフは三菱UFJリサーチ&コンサルティングのリポートから引用しています。

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